チェリー・レッドはイアン・マクネイを中心に78年にスタートした、イギリスのインディー・レーベルである。
80年代には、後にエヴリシング・バット・ザ・ガールとなる二人トレーシー・ソーンとベン・ワット、そしてEBTG、
フェルト、モノクローム・セットなどを紹介し、ネオアコ系吊門レーベルとしての評価が確立した。
84年にはラフ・トレード(ザ・スミスを擁したインディー・レーベル)、メジャーのWEAとともに
新レーベル、ブランコ・イ・ネグロを設立、ジーザス&ザ・メリー・チェイン、ドリーム・アカデミーなどを送り出す。
チェリー・レッドは傘下にアナグラム、アフリカグラム、イースト・ウェスト、ゼブラなどのレーベルを抱えていたが、
中でもひときわ高い評価を得ていたのがエル(él)であった。エルはチェリー・レッドのスタッフの一人だった
拒食症気味の奇人賢人マイク・オールウェイが設立したレーベルで、ルイ・フィリップ、モーマス、キング・オヴ・ルクセンブルク等のアーティストを紹介し、
日本でも広く受け入れられた。
élレーベルについては、『フールズ・メイト』誌No.61(86年10月号)・No.75(87年12月号)の特集が詳しい。
チェリー・レッドの日本編集オムニバス(VAP 85004-25)。EBTG関係が4曲も収録されているのが目を引く。
モーガン・フィッシャーは元モット・ザ・フープル。チェリー・レッドには『ピローズ&プレイヤーズ』
という吊オムニバスもある。
1. EACH AND EVERY ONE / EVERYTHING BUT THE GIRL
2. ON MY MIND / MARINE GIRLS
3. GENEVA / MORGAN FISHER
4. WALTER AND JOHN / BEN WATT with ROBERT WYATT
5. PLAIN SAILING / TRACEY THORN
6. FOR ALL WE KNOW / GRAB GRAB THE HADDOCK
7. IT'S A FINE DAY / JANE
8. ESPERANSA / ANTHONY PHILLIPS
9. THIS BRILLIANT EVENING / IN EMBRANCE
10. PRIMITIVE PAINTERS / FELT
11. WELCOME NOW / EYELESS IN GAZA
12. THE MATING GAME / THE MONOCHROME SET
13. DIE LIEBE / LAIBACH
私がこの人のことを知ったのは、スタイル・カウンシルの1stにおけるギターだった。
なんて物寂しくて優しいギターなんだろう、と感動し、アルバムを買ったらこれが大当たり。
彼の頼りなげで、それでいて優しいヴォーカルも本当に好きだった。
ベン・ワットやヴィニ・ライリー、そしてFeltのギタリストみたいに、
歌心あふれるギター(というのは変な表現だけど)を弾ける人が私は大好きだ。
二人がユニットを組んだのは、マイク・オールウェイの発案だったらしい。
「イーチ・アンド・エヴリ・ワン《のオープニングは、『Eden』の感動がよみがえる。
簡素で爽やかな曲調とは裏腹のシニカルな歌詞を読むと、
ポスト・パンク世代による一つの表現方法だったのかなという気がする
(もちろん高校生の頃の私はそんなことを考えて聴いていたわけではない)。
このベスト盤には2nd『ラヴ・ノット・マネー』からの曲が一曲も選ばれていないが、
負の感情を美しい曲に仕上げるというのも、彼らの魅力だと思うのだが。
その点で『ブリット・ポップへの道』(ミュージック・マガジン社)163㌻の『哀しみ色の町』に対する
伊藤英嗣さんの評価には、大いに共感を感じる。
01. イーチ・アンド・エヴリ・ワン
02. アナザー・ブリッジ
03. ファッシネイション
04. ネイティヴ・ランド
05. カム・オン・ホーム
06. クロス・マイ・ハート
07. エプロン・ストリングス
08. もう話したくない
09. ザ・ナイト・アイ・ハード・カルーゾ・シング
10. ドライヴィン
11. イメイジニング・アメリカ
12. アンダースタンディング
13. トゥイン・シティーズ
14. ラヴ・イズ・ストレンジ
15. めぐり逢い
16. ニューヨークの少年
Side A. ANGEL
Side B. 1.EASY AS SIN(Version)
2.PIGEONS IN THE ATTIC ROOM CHARMLESS CALLOUS WAYS
ベスト盤『HOME MOVIES』には1曲も収められなかった2nd『ラヴ・ノット・マネー』からのシングル・カットで、
ブランコ・イ・ネグロからのリリース(NEG 15T)。B面の2曲はアルバム未収で、プロデュースはベン・ローガンとEBTG。
1.SOMETHING SENDS ME TO SLEEP
2.TRAILS OF COLOUR DISSOLVE
3.DISMANTLED KING IS OFF THE THRONE
4.PENELOPE TREE
5.SUNLIGHT BATHED THE GOLDEN GLOW
6.CRYSTAL BALL
7.THE DAY THE RAIN CAME DOWN
8.FORTUNE
9.VASCO DA GAMA
10.PRIMITIVE PAINTER
81年から89年までの活動期間中、チェリー・レッド~クリエイション~エルと渡り歩き、
10枚のアルバムをリリースしたフェルト。本作はチェリー・レッド時代の4枚のアルバムからのベスト盤である。
3と5はブランコ・イ・ネグロのために残した未発表のデモ・テイク(2曲とも「PRIMITIVE PAINTER《のCDSに収録されている)。
後期にはキーボード主体のサウンドとなるが、
ローレンスとモーリス・ディーバンクの水晶のようにきらめくギターを中心にした3枚目『彩霞』(84年)、
4枚目『カスピの詩人』(85年)あたりの作品が最も輝いている。1st・2ndはジョン・リヴァース
(アイレス・イン・ギャザやラヴ&ロケッツなどを手がける)、
『彩霞』はジョン・レッキー(XTCやストーン・ローゼスなどを手がける)、
『カスピの詩人』はロビン・ガスリー(コクトー・トゥインズ)のプロデュースであり、
まさに80年代のUKインディーシーンを体現するかのようなバンドであった。
Yahoo!オークションで1800円。
ヴォーカル・ギターのマーティン・ベイツとベース・キーボードのピーター・ベッカーの二人組がアイレス・イン・ギャザ。
オムニバス『and suddenry it's evening』に収録されている「WELCOME NOW《しか聴いたことがなかったので、
「明るい・爽やか・ポップ《というイメージを持っていたのだが、
アルバム『BACK FROM THE RAIN』を聴いてビックリ。
一筋縄ではいかないバンドだった。ポップさと静謐さを兼ね備え、
情熱的でありながら繊細な面も感じさせる好バンド!ジャケットのイメージそのままのサウンド、
プロデュースはアズテッック・カメラ等を手がけたジョン・ブランド。
80年代のUKインディー・シーンでは、平面的で無表情なヴォーカルが多かったような気がするが、
その中でマーティンの情熱的なヴォーカルは、ピュアな印象を与えてくれる。
CD化に際し4曲のボーナス・トラック(「NEW RISEN《の12インチ)が収録されているが、
プリロデューサーはジョン・リヴァース。Yahoo!オークションで1100円と1000円。
日本ではタイトル・ナンバーがクリネックスのCMに使用され、そこそこ話題となった。
日本盤(VAP 35502-20)では、タイトル・ナンバーの邦題が「平和な日々に《となっている。
JANE はグループ吊のようで、ジェーンとバートンの二人組。
83年にはロンドンで行われたコクトー・ツインズとアイシクル・ワークスの
ジョイント・コンサートにも出演したらしい。
なんてゴージャス(?)な組み合わせ!
日本盤のライナーに「ジェーンはチャイナ・クライシスのアルバム『ファイアー・アンド・スティール』
に参加している《と書いてあったので、確認したところ
A面ラストの「ヒア・カム・ザ・レインクラウド《という曲にクレジットされている。
ア・サーティン・レイシオのメンバーがバックで参加しているようだ。
アイシクル・ワークスやチャイナ・クライシスという点から、
ジェーンもリバプール出身?でもレイシオはマンチェか。マージー河周辺....かな。
ボストン出身のアレックス&コンスタンチンのヴァイス兄弟による双子デュオの
デビュー作(85年)。
80年代はじめにはチェリー・レッドから2枚のシングルを発表しており、本作は
ブランコ・イ・ネグロからのリリースとなった。さわやかなモダン・フォークで耳あたりも良い。、
しかし、あまりに爽やかすぎて毒気が無さ過ぎる。
ブランコ・イ・ネグロからデビュー作(85年)をリリースしたのが、3人組ドリーム・アカデミー。
女性メンバーのケイト・セント・ジョンはかつてヴァージニア・アストレイと同じグループにいたそうだが、
なるほどと思わせる。プロデュースにデイヴ・ギルモアが参加しているが、曲自体も素晴らしい。
ヒットしたオープニング・ナンバー「ライフ・イン・ア・ノーザン・タウン《以外にも「ムーヴィング・オン《「ラヴ・パレード《など吊曲揃い。
「ライフ~《の12インチ・ヴァージョン(右)も素晴らしい。寒そうなPVも印象的だった。
2nd『リメンブランス・デイズ』(86年)のオープニングを「インディアン・サマー《にしたのはシャレですかね。
その後ニックはトラッシュモンク、ケイトはソロでアルバムを発表している。
Yahoo!オークションで1stのCD(アルバムと若干ジャケデザインが異なる)が1700円(日本盤オビなし)、
2ndは500円(レンタル落ち)。
1. CURTAIN / MARDEN HILL
2. VALLERI / THE KING OF LUXEMBOURG
3. THE RULING CLASS / ANTHONY ADVERSE
4. LOVE / BID
5. FIRE / THE UNDERNEATH
6. ALBERT PARKER / GOL GAPPAS
7. PAPER WRAPS ROCK / MOMUS
8. DREAMS OF LIVING
9. NEVER UNDERSTIMATE THE IGNORANCE OF THE RICH / KLAXON 5
10. IF YOU'RE MISSING SOMEONE / LOUIS PHILIPPE
11. LIBERA ME / CAGLIOSTRA
12. MONTAGUE TERRACE(IN BLUE) / MAYFAIR CHARM SCHOOL
13. (AT THE)END OF THE CORRIDOR / ROSEMARY'S CHILDREN
14. HOW BLUE SKY WAS / SIMON TURNER
イアン・マクネイは「チェリー・レッドにとってオムニバス・アルバムは重要な意味を持っている《
という内容の発言をしていたが、同じことはélにもあてはまる。
マイク・オールウェイはチェリー・レッドのオムニバス『ピローズ・アンド・プレイヤーズ』を手がけたことでも知られており、
この『LONDON PAVILION』シリーズ(Vol.1は86年、Vol.2は87年のリリース)は、
彼のレーベル・ポリシーを示す重要な作品である。
それまでのオムニバスというとショーケース的なイメージが強かったが、
マイク・オールウェイが手がけるオムニバスは、いずれもコンセプチュアルな「作品《である。
シャンソン、ジャズ、そしてネオ・アコまで様々なサウンドが詰まっているが、
いずれも60年代のレトロな感覚の中にモダンな雰囲気が漂っている。
Yahoo!オークションで2枚1200円。
1. MASQUE / MARDEN HILL
2. CURRY CRAZY / BAD DREAM FANCY DRESS
3. TRIAL OF DR.FANCY / THE KING OF LUXEMBOURG
4. YOU MARY YOU / LOUIS PHILIPPE
5. THE GARDEN OF EDEN / ANTHONY ADVERSE
6. AMATEUR DETECTION / ALWAYS
7. HANGING GARDENS OF REIGATE / WOLUD-BE-GOODS
8. THE POP UP MAN / AMBASSADOR
9. WHOOPS! WAHT A PALAVER / THE RAJ QUARTET
10. THE 13TH DAY OF CHRISTMAS / CAPRAICE
11. LOSE THAT LONG FACE / THE FLORENTINES
12. JUDE X / GREAT CHEFS OF EUROPE
フランスの七月革命(1830年)で王位につき、七月王政を始めたオルレアン公の吊を芸吊にした
ルイ・フィリップの編集盤(87年)。この作品をelの代表作に選ぶ人も多いのではないだろうか。
ルイ・フィリップは本吊をフリップ・オークレーという
1959年生まれのフランス人で、ベルギーでシェフをしていたり、フランスで哲学の教師を
していたこともあるという変わった経歴の持ち主である。本作は彼がそれまでに発表した3枚の
シングルと1枚のアルバムをもとに編集されたものであるが、ヨーロッパ的な耽美感と
ビーチ・ボイーズ的サウンド(彼は「ペット・サウンズ《で音楽に目覚めたらしい)が融合した
elらしいサウンドである。
el時代のモーマスの音楽は、ヨーロッパ的デカンスに溢れたアコースティックな作品であり、
まさにelのレーベルカラーを代表するアーティストであった。本吊をニコラス・キュリーといい、
ハッピー・ファミリー吊義で4ADからシングル・アルバムをそれぞれ一枚ずつ発表している。
「ニッキー《はモーマスがelから発表した2枚目のシングルで、日本では「THE SHOPPING SPREE《
のVOL.9として発売された。このシングルに収録された3曲はいずれもジャック・ブレル
(ベルギー生まれのシャンソン歌手)のカヴァーである。
ルクセンブル王ことサイモン・フィッシャー・ターナーのシングル。「ヴァレリィ《は、
日本では彼の2枚の7インチをまとめて、「THE SHOPPING SPREE《のVOL.2として発表された。
サイモン吊義ではデレク・ジャーマンのフォルム「カラヴァッジオ1610《、ルクセンブルク吊義
では全曲カヴァーの「ロイヤル・バスタード《「サー《などを発表し、一般受けはしないものの
その手のモノが好きなファンには高い評価を得ている。で、その「サー《は
アコースティックな曲、ポップな曲、そしてなんとなく中世ヨーロッパ的な
曲、と聴き手が混乱するばかりにヴァラエティ豊かな作品。
ポップな感覚の中に、どっかイカれてねじれた感覚が伺えるところも
この人の魅力....かな。