河内弁聖書「マルコによる福音書」

1.四人の漁師を弟子にするより

イスラエルという国がございますが、その国にガリラヤ湖という湖がござい
まし
た。
 湖というくらいですからその辺の池やとか溜池やとかと値打ちが違います。

何といっても、湖なのでございます。

さて、イエスはガリラヤ湖のほとりを歩いてはったら、シモンとアンデレが
湖で
網を打っているのをご覧になったんです。

「アンデレ、何べん言うたらわかるねん。その網の持ち方違う言うてるやろ
 、そ
ういやあの、違う言うねん。」

「何でそないにさっきから小言ばっかり言うんや。もうちょっと兄貴らしく
 親切
に教えられへんのか。」

「何を生意気なことぬかしてるねん。そんなもち方で投げても魚採れるかア
 ホ。
網は水面対してにパァーと開くように投げるもんじゃ。おまえみたいに
 網をダ
ンゴにして掘り込んだら百年経っても魚採れるかドアホ。」

「そないに偉そうに言うんやったら兄ちゃんやってえな。」

 「そういうこと言うやろ、もうしゃーないなあ、よう見とれよ。こないして
 なあ
ソーレ。」

と言ったとたんにアンデレがシモンの背中押したもんですからたまりまへん
、シ
モンも網と一緒に<ドボーン。>

「こらーーーー!!網投げてるのに背中押すやつがあるか。」

 「はーい、ここにいまーす。」

「しばいたろかこら。おい、何してんねん手かさんか。」

「手貸すのん?返してや。」

「何をしょーむないことぬかしてるねん。」

シモンはアンデレの手をとってはい上がろうとしたんですが、バランスを崩
して
二人とも<ドボーン。>

「何をするねんこのクソ兄貴は。」

「ジャカァッシャイ!おまえがちゃんと引っ張らんからながな。待て俺が先
 に上
がる待てっちゅうのに、あ、ああーーー。」

<ドッボーン!!>

「あのなあ、コントやってるんやないぞ。ちょっと冷静になっておちついて
 上が
ろう。ええか、わしが先に上がっておまえを引っ張ったるから、こら!
 そこで何
でわしの足を引っ張るんじゃコラ。」

<ドッボーン!!!>

「おーい、あそこでいちびっとる二人、あれはシモンとアンデレと違うか?
  」

「どうやらそうらしおまんなあ。あの二人毎日あの調子でっせ。あれでよう
 毎日
暮らして行けまんなあ?」

「ほんまになあ、あ、またはまりよった。誰か助けてやればええのに。」

「まあ、もうちょっと見てまひょ。面白いでんがな。」

「はあ、はあ、はあ、はあ、ほんまにえらい目に遭うはほんまに。アンデレ
 、お
まえ今日は飯抜きじゃ。」

 「えーーーー。何でーーー??」

 「何でもヘチマもあるか。見てみ、今日一匹も魚採れへんかったがな。おま えがドン臭いから魚みな逃げてしもたやないか。」

「そんなこと言うたかて飯くらい食わしてあなあ。」

「やかましい。」

「せやかてお腹減ったもん。」

「口答えするな。いっぺんドタマいたろか。」

「痛−たー。何すんねん兄ちゃん。」

 「おまえが悪いんやないか。」

「違うわい。兄ちゃんの教え方が悪いんじゃ。」

「何をーー。」

さあ二人は取っ組み合いの喧嘩になってしまいました。そこへわって入った
のが
イエス様なんです。

「これ。待ちなさい。喧嘩はいかん、いかんこら。おい!コラ!痛い。痛い
 がな
コラ。待ておまえら。ドサクサにまぎれて私を殴っとるやろ。あー痛た
 ー。」

「ああ、えらいすんまへん。いや、こいつがあんまりグズグズ言うもんでっ
 さかい。」

「違うわい!兄ちゃんが悪いんじゃ。わーーーん。」

「泣くなええ年して。」

「どこのお方か知りまへんが、えらいすんまへんでした。コラ!おまえも頭
 下げん
か。」

「え、エライどうも。」

「それだけか。もうちょっと謝りようがあるやろ。」

「まあまあ、二人とも仲直りして。どないや、私について来えへんか。人間
 をと
る漁師にしてやろやないか。」

「何やて!人間とる。人間みたいなんとってよろしいんか?」

 「そやでオッチャン。人間とったら人さらいやんか。警察に捕まるで。」

「いやいや、私はそういう意味で言うておるのと違うんじゃ。ええか、人間
 をとる
というのはさらって行くのと違う。神の御心に合うように人の心を変
 えていくこ
とを言うておるんや。」

「へー、兄ちゃんこのオッチャン何や難しいこと言わはるけどついて行くか
 ?」

「それはそうと、この辺で見かけん顔でんなあ、あんたどちらはんでんねん
 ?」

「私はなあ、ナザレのイエスっちゅうもんや。」

「おい聞いたかアンデレ、ナゴヤのイエヤスはんやて。」

「違うがな。ナザレのイエスじゃ。」

「あ!ダジャレのエビヨスさん?」

「どんな耳してんねんおまえら!」

「せーのー、こんな耳。」

「あ、あのなあ。おちょくってるんかおまえら。ついて来るんか来んのか。
 」

「まあまあ、そない怒りなはんな。あんさん怒った顔似合いまへんで。お供
 させて
もらいまんがな。どこまでも。」

「兄ちゃん、えらいあっさり言うやんか。」

「この人の目みてみ、澄んだ目したはるがな。この辺の漁師連中の目とえら
 い違う
で。」

「ほんなら何か、この辺の連中の目っちゅうのは汚〜い、臭〜い目やっちゅ
 うんか
?」

「そんな意味で言うてるんと違うがな。」

「ほんならどんな意味やねん。わしにかて解かるように言うてえな。」

「こない言うたら解かるんか。おまえとここで漁師してるよりましや。」

「そない言うてくれたらよう解かるんや。」

「何じゃそら。」

三人がその場から立ち去ろうとすると、船の中で網の修理をしていたゼベタ
の子ヤコブとその兄弟ヨハネが声をかけてきたんです。

「あー。シモンとアンデレ、おまえら仕事せんとどこへ行くねん?」

「そやぞおまえら。わしらに内緒で何ぞうまいもん食いに行くんやろ?」

「ちがうわい!!ワシらはこの人の弟子になって、これからはこの人と行動
 を
共にするんじゃ。」

「そんなんズルイぞおまえ・ズルイぞおまえ・ズルイぞおまえ・ズルイぞお
 まえ。」

「何がずるいんじゃ。」

「ワシらも連れて行ってえなあ。」

「イエスはん、あんなこと言うてまっせ。どないしまひょ?」

「おまえらもついてこい。」

そこでヤコブとヨハネは親父のゼベタイらをほったらかしてついていったん
です。

「しかしイエスさま。ご覧のとおりのガラッパチばっかりでっせ、こんな連
 中何か
お役に立ちまんのか?」

「えらい失礼なことをぬかすやないかシモン。ガラッパチっちゅうのは誰の
 ことぬ
かしてるねん?」

「おまえや。」

「何をこら!ドタマいたろか。」

「ほんならおまえガラッパチて何か知ってて怒ってるんか?」

「知らんわイ!!」

「知らんねんやったら怒るな。」

「ほんならどんな意味やねん?」

「俺もよう知らんねん。」

「何じゃそら。」

イエスさまはただニコニコしたまま、カファルナウムというところを目指し
て旅に
でました。


汚れた霊に取りつかれた子をいやす

一行が他の弟子達のところへと来てみると、何やら大勢の群集と議論して
はったんです。

「何でや?」

「何でもじゃ。」

「何でもとは何じゃ?」

「何でも言うたら何でもじゃ!!」

「その何でもというのは・・・」

「ジャカァッシャイ!!おまえらさっきから何を言うるんじゃ。」

「そんなこと言うたかてあんた。」

「ほんならおまえは何でか知ってるんか?」

「そらおまえ、やっぱり薩長同盟がなかったら倒幕でけへんと思うな。」

「何をわけのわからんことを言うてるんじゃ。」

「おい、イエスさまやんけ。」

「あ!イエスさまや。」

わけのわからんことで言い合いしていた連中はイエスさまのところへ駆け寄
って挨拶しました。

「おまえらは何をさっきから議論してたんや?」

群集の中のある者が答えました。

「いや、先生じつは内の息子のことでんねんけどな、こいつあんた霊に取り

つかれてものが言えまへんねん。霊がこの子に取りつくっちゅうと所かまわ

ず地面に引き倒しよりまんねん。そうするとでんなあ口かわ泡吹いて歯軋り

して体をこわばらせてあんた。この霊を追い出してくれとあんさんのお弟子

さんに頼みましたんやがよーしょりまへんのや。」

「何とまあ信仰のない時代やないけ。いつまでわしはおまえらと一緒にいて

られると思うんじゃ。いつまでおまえらに辛抱してなあかんのじゃ。その子

わしのところに連れてこいや。」

連中は息子をイエスさまのところに連れてきたっちゅうと、霊はイエスを見
たとたんにその子を引きつけさせよった。地面にひっくり返って転げまわっ
て泡を吹いた。

「オヤッサン、こんな風になったんは何時頃からや?」

「小さい頃からです。霊は息子を殺そうとして、もう何べんも火の中やら
水の中へ掘り込みよりよったんです。もしおできになるんやったら憐れに
思うて助けとくなはれ。」

「何をコラ。おできになるんやったらやと?信じる者には何でも出来るん
じゃ。」

「いや、信じます信じます。信じまんがなそないに怒りなはんな。エライ
すんまへん。信仰のないわてを助けとくなはれ。」

イエスさまは霊を怒りました。

「おいコラ!ものを言わせず耳を聞こえさせない霊よ。わしの命令や、こ
の子から出ていけ!」

「えーーーーーーそんなん嫌や。」

「出て行けちゅうねん。」

「嫌や言うてるやろ。ここは居心地がええねん。」

「出て行け言うんじゃドアホ!!言うこと聞かへんねんやったらそのド頭
体にめり込まして臍の穴から世間おがませるぞ!!」

「ヒェーーーーー!!」

霊は叫び声をあげてひどく引きつけさせて出て行きよりました。
その子は死んだようになったんで多くの者が言い合いました。

「イヤ、死んでしもたでこの子。」

「ほんまや、何も殺さいでもええのになあ。」

「死んでへんわい!!」

イエスさまが手を取って起こさせると、その子は立ち上がりました。

イエスはある家に入らはると、弟子達はこう言いました。

「何でわしらは霊をよう追い出さんかったんでっしゃろ?」

「あの手のもんわなあ、祈りによらんと絶対追い出されへんのや。」

「へー、大したもんやなあしかし。」


種まく人のたとえ

 イエスは湖のほとりで教え始めはったんです。
 それはもうぎょうさんの人たちがそばに集まってきはりました。
 イエスは船に乗っていろんなたとえ話を聞かせながら教えはりました。

「ええか、よう聞きなはれや。種蒔く人が種まきに出はったんや。」

「何の種です?」

「何の種でもええがな。」

「ええことおまへんがな。花なら花、野菜なら野菜と言うてもらわんと。」

「うるさいなあ!これはたとえ話やっちゅうてるやろ。黙って聞け。その種
を蒔いてる
間にや、ある種は道端へ落ちたんや。」

「落ちたんやったら拾たらよろしいがな。」

「シバイタロカこら。黙って聞け!」

「その種を鳥が来て食べてしもたんや。」

「せやから言うてまっしゃろ。早いこと拾たらよかったんや。」

「おい誰かこいつの口ふさいどいてくれ。横からチャチャ入れやがって、怒る
ぞしまいに。
ええか、ほかの種は、石だらけで土の少ないところに落ちた、そ
こは土が少ないよってす
ぐに芽出したんやが、日が昇ると根がないんで枯れて
しもたんやな。」

「水やらんさかい枯れんねん!」

「ほかの種は茨の中に落ちたんや。すると茨が伸びて覆いふさいだんで、実を
結ばんかっ
たんやなあ。」

「ほんならその茨カマで刈り取ったらよろしいがな。」

「いね!ボケ・カス・瓢箪・ラッパ。わしはおまえと掛け合い漫才してるんと
違うぞ。
ツッコミばっかり入れやがってからに。今度何かぬかしたら必殺飛燕
一文字五段蹴り食
らわすぞ。黙って聞け!それでや、ほかの種はよい土地に落
ちて芽生えて育った。実を
結んで、あるものは三十倍、あるものは六十倍、あ
るものは百倍にもなったんや。」

さあこのたとえ話を聞いた連中は、話の意味がようわかりません。

「おい、さっきの話わかったか?」

「いや。おまえは?」

「サッパリ解らへん。だいたい横町のトメがチャチャ入れさらしたから余計や
。」

「そらな、種はちゃんと畑に蒔かんとあかんは、道ばたやとか茨の中やとか、
やっぱり
そんなとこへ蒔いたら、無茶したらあかんわぁ。往生しまっせ。」

「どや、大ヶ塚のご隠居はんに聞いてみたら?」

「そやなあ、あの爺さん物知りやからな。いっぺんたずねて見ようか。」

「ご隠居はん。イエスさまねえこんなこと言うたはりまっけど、どない思いな
はる?」

「せやなあ、やっぱりーーーー。ゴホ・ゴホ・ゴホ・ゴホ・ゴホ、カァーペェ
!!」

「汚いなあほんまに。」

「いや、やっぱりーーー種蒔いてるだけやったらーーーーーやっぱりーー、ア
カンでぇ。」

「どないしなはんねん?」

「肥蒔かんとーーーええ実は結ばん。この間なあ農協の組合長が言うとったが
、最近ええ
肥料がでけたらしいで。何でも新ピロエースとか。」

「それは水虫の薬やがな。畑に水虫の薬蒔いてどないしまんねんほんまに。誰
やねんこん
なジイサンに訪ねてみい言うたんは。」

さーそれから連中はいろんな人と話し合いましたり、聞きに行ったりしまし
たが、ど
ーしても解りません。

「おい、こないなったら素直に主に教えてもらおうな。どいつもこいつも理解
してる奴
いてへん。」

「そやけどなあ…・。わしらあたかも理解してるかのように、ああなるほどっ
て言うて
たやろ?おまえなんかさすがにええこと言うわはりまんなあって言う
てたがな。」

「そんなこと言うたかて、始から何言うたはんのんか解らんような顔してたら
、主が気の
毒やがな。今更あれどんな意味でんねん?言うて聞けるか?」

「それやったらおまえ聞いてあなあ。」

「何でわしが聞かんなんねん。」

「そんなもん主は優しいお方やて。聞いたから言うて怒って必殺飛燕一文字五
段蹴りしゃ
はれへんて。」

「ほんならおまえ聞けや。」

「いやや。」

「何でやねん。」

「何でもヘチマもあるか。おまえ聞け!」

「そう言うおめえが聞け。小学校のとき風紀委員やったやないか。」

「そんなもん関係あるか。おまえは学級委員やったがな、おまえが聞かんかあ
。」

「ジャカァッシャイ!!何をゴチャゴチャ言うとるんじゃ。」

「ああ!これは主よ。」

「これの意味はな、種蒔く人っちゅうのは神の言葉を蒔いてる人のこっちゃ。
それから、道端のもの言うのはやなあ御言葉が蒔かれてそれを聞いてもすぐに
サタン
が来て彼らに蒔かれた御言葉を奪い取ってしまいよるわけや。石だらけ
のところに撒
かれるっちゅうのは御言葉を聞いたらすぐに喜んで受け入れよる
、ところが根がない
もんやさかいしばらく続いてもちょっとイヤなことがおこ
ったらじきにつまづいてし
まいよる。また、茨の中に蒔かれるっちゅうのは御
言葉は聞きよるねんで、聞きよる
んやがこの世の中の悩み事とか富やら誘惑な
、その他いろいろな欲望が心の中に入り
込んでて実らへんのや。その点ええ土
地に蒔かれたものは御言葉も聞いて受け入れる
人やな。こんな人は三十倍も六
十倍もはたまた百倍も実を結ぶと、こういうこっちゃ
な。」

「それみい!わしの言うとおりやったやろ。」

「何をぬかしとるねん。今まで解れへん言うて泣いてたくせに。」

「泣いてへんわい!」

四千人に食べ物を与える

 イエスはあちこちでいろいろな奇跡を行っているうちに、それはそれはたく
さんの群集
が一緒についてきたんです。
 

「それにしてもギョーサンの者がついてきましたなあ。」

「そうでんなあ。それはそうと我々何処へ向かってまんねん?」

「さーそれがようわからん。いろんな奴がいてまっせ見てみなはれあのグルー
プ、みんな
笹もって何か言うてまっせ。」

「商売繁盛で笹もってこい!あそーれ!!商売繁盛で笹もってこい。」

「何でんねんあれは?」

「さーどこぞの新興宗教違いまっか。ほれ、あっちにもおかしいのがいてまっ
せ。」

「巡礼に御報謝〜!!」

「ほんまに何を考えとるねんあいつらは!!しかしそれにしても腹減りまへん
か。」

「そうでんなあ、さっきからわしも腹減って腹減って、もう帰ろかなあと思う
てたところ
ですわ。」

「そうでんなあ、ちょっと前に言うてみまっさ。お〜い!は〜ら〜へ〜ったぞ
〜!!飯食
わせ〜。」

「俺もハラペコやぞ。どないすんねん!!どこぞにマクドナルドないんか?」

「そんなもんあるか!!」

「おーい後ろから伝令や。」

「何やねん?」

「何でも腹減ってもう動かれへんから、道端の石をパンに変えてくれて言うて
まっせ。」

「そんなことできるか!」

さてみなさん。イエス様は後方からのぼやきを聞く前から弟子達を集めてこう
言われてい
たんです。

「おいどないする。群集に何か食わせんといかんなあ。このまま家に帰らせて
もきっと途
中で疲れきってしまうやろう。」

「あのねえ大将いや主よ。そんなこと言われたかてこんな人里はなれたところ
でいったい
どこからパンを手に入れまんねん?こんなにぎょーさんいてまんね
んで。」

「パンはいくつあるねん?」

「7つでおます。」

「そうか。それをこっちへ貸せ。」

「あんたみんな食うてしまうのんと違うやろなあ。」

「じゃかぁっしゃい!!貸せ言うたら貸せ。ハッタオスゾ〜ばかもの!!」

イエスは群集をじべた(地面)に座らせ、7つのパンを取り感謝の祈りを唱え
てこれを裂
き、人々に配るようにと弟子達に渡たさはった。弟子達は群集に配
った。また小さい魚が
少しだけあったんで、賛美の祈りを唱えてそれも配るよ
うに言われたんです。

 すると摩訶不思議!人々は食べて満腹したんやが、残ったパンの屑を集めた
ら7籠もあ
ったんでっせ。だいたいまあ4千人はいてましたかなあ。

 イエスは彼らを解散させはると、弟子達とともに舟に乗ってダルマヌタの地
方に行かは
りました。

「おい。」

「何や?」

「わしら満腹したなあ。」

「そやなあ、腹一杯やなあ。」

「何で腹一杯になったんや?」

「そらあパンと魚食うて腹一杯になったんやろ。」

「何であないぎょーさんパンと魚あったん?」

「そんなこと俺に聞かれても知らんがな。」

「そんなこと言うたかてパン7つしかなかったんやで。わしら群集も含めて4
千人はいて
たがな。なんでパン7つと魚一匹でみんな満腹するねん。わしらは
蟻か?」

「ぼやくなや!!満腹したからええやろ。」

「そんなこと言うけど何でか不思議やんけ。」

「あのなあ、日頃からもの考えるほうやないんやから難しいこと考えるな。黙
って主につ
いていったらええんや。」

「おまえ俺をアホやとぬかすんか?」

「ほんなら何か?おまえはアホと違うんか?」

「アホや。」

「ほんならええがな!」

「あっそうか。」

「おいおいおまえら何をゴチャゴチャ言うてるねん?」

「いや何ペテロはん。こいつが訳のわからんこと言うんで困ってまんねん。」

「何がわけのわからんことやねん!!」

「こら喧嘩をするな。まあさっきにことはあれは主がまた奇跡をお示しくださ
ったんや
ろ。」

「それやわからんのは。」

「何でわからんのや?」

「ほんなら何か?イエス様がお祈りしたらパンと魚がどっと増えたということ
はやで、
神はパン屋と魚屋なんか?」

「もうしょーむないこと言うてんと向こう岸つくまで黙って寝てろ。」


中風の人をいやす

 イエス様がカファルナウムに来られますと、おるお家にいらっしゃることが
知れ
渡ったたんですなあ。八方からぎょーさんの人達が集まってきたんです。
 おかげでその家の戸口はいっぱいになってしまいました。

「もし、ちょっと開けてえな。押すなちゅうのに。痛いなあ人の足踏むな。」

「ジャカァッシャイ!!人の耳元でごちゃごちゃぬかすな!」

「やかましいのはおまえじゃ。」

「誰やどさくさにまぎれて人の懐へ手突っ込んでるんは!」

「ハークション!!」

「汚いなあほんまに。おのれの鼻水顔についたやないか。」

「もし、あんさんひょっとしてチカンと違いまっか?」

「な・何を言うねん?」

「あんさんこのお嬢さんのお尻を触ってるつもりやろうけど。触ってるんはわ
しの
ケツでっせ。」

「コラコラ!そう押すな。主がこれから御言葉を述べられるからちょっと静か
にせ
え。そこ、こら、おまえやおまえ。さっきから何をごちゃごちゃ言うてる
ねん。」

「えらいすんまへん。後ろから押しよるんでほんまに、どうも。痛いなあこら
。押
すな言うてるやろ。」

「何を言うとるんじゃ!おまえの後ろは壁やがな!誰も押してへんがな。一人
でい
ちびってからに。ええか皆の衆、静かに聞くんやぞ。」

さあこんな調子で大混雑のこの家、いったい誰の家やねん?まあそれはええと
して、
遅れてやってきたのが4人の男でございます。この4人の男達が運んでき
たのが、
中風のオヤッサンでございます。

「ええ!エライ大勢の人やないか。入られへんで、どないしょ?」

「ちょっと入れてもらわれへんのかにな?ちょっとすんまへん。入れとくなは
れ。
いやわしらと違いまんねん。このオヤッサンの中風ねえ、えらいひどいん
ですは。
何とか救世主さまに見てもらおうおもてまんねん。

ちょっとすんまへん入れてもらえまへんか?」

「やかましいわい!!入れて欲しいんはみな同じじゃ。ドアホ!」

「アカン、こら埒がアカン。何かええ方法ないやろか?」

「いっそのこと4人そろてセーノーであの群集に突進したらどうや。みな将棋
倒し
になっ人の背中の上から我々がトントントンとオヤッサンかたげて行った
ら救世主
さまのところへ行けるんとちがうか?」

「えらい荒っぽいがな。そんなんアカン。」

「こんなんどお?」

「どないするねん?」

「みなでな鍋の中に手ごろな石いれて“えらいこっちゃ!火事や火事や火事や
”言う
てさけんだら、みなびっくりして飛んで逃げよるで。その隙にすっとオ
ヤッサン運び
いれるちゅうのはどう?」

「まあおまえの考えつく程度の知恵はようわかった。よう考えたなあ。別に無
理に頭
使わんでもええから黙っとり。」

「おい。こないしてても埒がアカンがな。あの家の屋根へ登ろ。屋根に穴あけ
て上か
ら吊るして降ろしたらええがな。」

「おお、それはええ考えや。それで行こう。よっしゃみな登れ。」

「皆登ってきたか?」

「登ったで。」

「みな登ってきたで。」

「いや、登ったはええけどオヤッサンは?」

「うん。下で寝かしたある。」

「アホかおまえら。わしらだけ登って肝心のオヤッサンおいてくる奴あるか。

さあこうして登った屋根に穴をあけて、中風のオヤッサンをイエスさまのいら
っしゃ
るところへと床をつり降ろしたんです。

 イエスさまはその人たちの信仰を見ると中風のオヤッサンにこういいました

「子よ。あんさんの罪は赦されまっせ。」

ところがそこに律法学者が数人座っていたんです。彼らは心の中でこんな風に
考えてい
たんです。

「こいつは何でこんなことぬかっしょるんやろ?神を冒?さらしとる。神のほか
に罪を
赦せることができるもんか。」

しかし、イエスさまはこいつらの考えてることがちゃーんとお見通しなんです

「何でそんな風に考えてはりまんねん?中風の人に“あんさんの罪は赦された
”言う
のと“起きてさっさと床かついで帰りさらせ”というのとどっちが易し
いと思います?
まあ人の子が地上で罪を赦す権威を持ってるちゅうことを知ら
せたろやないか。」

 そして、中風の人にこない言うわはりました。

「わては、あんたに言いまっせ。起き上がって床を担いでさっさと家に帰りな
はれ。」

するとオヤッサンは「ハイ!」言うてシューット起き上がって床を担いで出て
行き
ました。

 さあこれを見ていた人たちはびっくりしたもなにも。

「ヒェー!こんなん今までみたことおまへん。」

言うて神を賛美しゃはったそうな。

とりあえずおしまい