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第4章.欠 陥 の 立 証 と 推 定

 §1.推定規定とは
 推定規定の3要素(条文は製造物責任研究会の製造物責任法試案(1975))
 (1)欠陥の推定:「製造物を適正に使用したにもかかわらず、その使用により損害が生じた場合においても、その損害が適正な使用により通常生じうべき性質のものでないときは、その製造物に欠陥があったものと推定する」
 (2)因果関係の推定:「製造物に欠陥が存する場合において、その欠陥によって生じうべき損害と同一の損害が発生したときは、その損害は、その製造物の欠陥によって生じたものと推定する。
 (3)存在時期の推定:「損害発生の当時存在していた製造物の欠陥は、相当な使用期間内においては、製造物が製造者の手を離れた当時すでに存在していたものと推定する」
 他の法規における立証と推定
 【立証】日本の民事訴訟法においては、原告側に立証責任が課せられ、その程度は、客観的には高度な蓋然性が、主観的には裁判官の確信が要求される。

 (条文省略)

 【推定】「…事業活動に伴い…人の健康を害する物質を排出した者がある場合において、その排出によりそのような危険が生じうる地域内に同種の物質による公衆の生命または身体の危険が生じているときは、その危険は、その者の排出した物質によって生じたものと推定する」

 (人の健康に係わる公害犯罪の処罰に関する法律 第5条)

 推定規定に対する諸見解
 「法律上の推定を行うことは他の民事訴訟とのバランス上問題があり、推定の要件の定め方も容易ではない。また、真の原因が他にある場合でも製品に欠陥があるとされたり、それが損害の原因であるとされるおそれがあることから、産業界からもその影響につき強い懸念が示されている」

 (国民生活審議会消費者政策部会報告、1992.10.)

 「推定規定がなければ、製品のどの部分にどんな欠陥があったかをほぼ完全に立証する必要に閉まられる。でも自動車などはハイテク技術の固まり。消費者側が証明するのは至難の技だ」

 (欠陥商品問題に詳しい関根幹雄弁護士の談話、日経新聞1993.12.6.)

 「推定規定は法理論上問題がある。またこれを盛り込んでいたら、おそらく産業界の反対にあい、法案はつぶされていただろう」

 (国民生活審議会会長・加藤一郎氏の談話、日経新聞1994.4.16.)

 推定規定によらない被害者負担の軽減
 (1)ディスカバリ(情報の開示):裁判所は、欠陥の存在に関する特定された証拠の提出を求めることができる。
 (2)「証拠の優越」による証明:原告/被告双方から提出された証拠を比較考量し優越する側の立論を認める。
 (3)事実上の推定:裁判官の裁量によって推定を行う。
 ※アメリカでは、(3)の事実上の推定が一般的に行われる(米国法律協会による不法行為法リステイトメントに、欠陥や因果関係の推認(infer)を認めるという規定がある)ことに加え、(1)と(2)も制度的に整っているので、被害者側の立証負担が軽い。
 §2.推定に基づく判例
 (L−トリプトファン事件)必須アミノ酸の一種「L−トリプトファン」を使った健康食品を摂取した結果、「好酸球増加筋肉痛症候群(略称EMS)」と呼ばれる重度の筋肉痛になったり、めまいを訴える人が多発した。事件が明るみに出たのは、89年11月初めに掲載された米ニューメキシコ州の地方紙「アルバカーキ」の記事による。米食品医薬品局(FDA)は2週間後には各メーカーにリコールを指示、12月初めには輸入禁止措置をとった。一方、国立健康研究所(NIH)などと連動して原因究明調査を開始した。
 メーカーは、最大手の昭和電工のほか、協和発酵、三井東圧化学など数社。このうち、米国で7割近いシェアを持つ昭電製品との関係が疑われており、同社が88年暮れから89年6月にかけて製造したものに特有の不純物があるとの報告書も提出されているが、医学的な因果関係は明らかになっていない。昭電は94年までに米当局が認知した1510人の患者(死亡者含む)の大半と和解したが、和解金や弁護士費用、原因究明費などが累計で1500億円に及んだ。
 日本で昭和電工のL−トリプトファン入り健康食品は「ローヤルトリプトファン」の商品名で91年まで販売された。株主優待サービスなどを通じて入手した人の何人かにEMSと類似の症状が現れたが、因果関係は立証されていない。(詳細は別掲)

 (カラーテレビ発火事件)(別掲)


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