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【参考】原子力発電の仕組み



L18_fig27.gif  原子力発電は、核分裂の熱を利用して蒸気を発生させ、これでタービンを回して電気を起こすものである。原子力というと、きわめて高度な技術を使っているように思われるかもしれないが、基本的には、火力発電における化石燃料の燃焼を核分裂で置き換えたものでしかない。
 ウラン235のような原子核は、中性子をぶつけると巨大な運動エネルギーを持つ2つの原子核に分裂するが、このとき数個の中性子を放出することが知られている。放出された中性子の多くは、外部に飛び出したり核分裂しない物質に吸収されるが、何割かは別のウラン原子核にぶつかって、再び核分裂を引き起こすことになる。ここで、分裂の際に放出される中性子の中の平均k個が別のウランを分裂させるものとしよう(kの値は、ウランの密度や中間物質の素材に依存する)。k>1の場合、分裂するウランの個数は時間とともに指数関数的に増加し、遂には爆発的に反応が進む(右図はk=2のケース)。一方、k<1になると、分裂数は次第に減少して、あるところで核反応は停止する。この2つの状態の境界となるk=1の状態は「臨界状態」と呼ばれ、このときだけ核反応は定常的に進行し、一定の割合でエネルギーが放出される。原子力発電の原子炉では、この臨界状態を実現することにより、コンスタントに熱を生み出している。
L18_fig28.gif  原子炉内で臨界状態を作るには、次のようにする。まず、ウラン燃料を濃縮してウランの密度を高め、炉内の状態でkが僅かに1より大きくなるようにする。このままでは、核反応が爆発的に進行してしまう(実際には、水のボイド効果などによって暴走は食い止められる)ため、余分な中性子を吸収する素材(カドミウムなど)で作られた制御棒を挿入し、核反応をコントロールしている。制御棒を炉内に深く挿入すると、より多くの中性子を吸収して核分裂は抑制され、制御棒を引き出すと、吸収される中性子が減って核分裂が促進される。定常運転中の原子炉では、常にk=1の臨界状態になるように制御棒の挿入量を微調整している(右図)。制御棒を利用して核分裂をコントロールする技術は、1942年にフェルミによって開発された。
 最もポピュラーな加圧水型軽水炉と呼ばれるタイプの原子炉では、炉心部で発生する分裂熱を、水の循環によって蒸気発生器へと送っている(下図;この他に多用されているタイプに沸騰水型軽水炉がある)。炉心部で300℃以上に熱せられた1次冷却水(気化しないように圧力が加えられている)は、蒸気発生器で2次冷却水に熱を与えて蒸発させ、自分は気化熱を奪われて温度が下がった状態で炉心に戻される。1次冷却水は炉心を通過する際に放射能を帯びるため、外部に漏れ出さないように密閉された内部で循環している。1次冷却水から熱をもらって生じた高温の蒸気の流れは、パイプを通してタービン翼にぶつけられ、これを回転させて(電気誘導の原理によって)電気を生み出す。タービンを通過した蒸気は復水器で水に戻され、また蒸気発生器に送られる。このように、核分裂の熱で湯を沸かして電気を起こすのが、原子力発電の仕組みである。
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©Nobuo YOSHIDA