【29】水の異臭味
汚れ始めた水源の水
我が国における2001年度のミネラルウォーター使用量は、国民一人が1年間に9.8リットルを飲んだことになり、この量は10年前の約4倍に達し、また、家庭用浄水器の普及率は約30%に達しているとマスコミは伝えています。
水道の普及率が96.6%(平成13年3月31日現在:日本水道協会による)ですから、 ミネラルウォーターや家庭用浄水器が普及すると言うことは、我が国では少なくとも飲料水に関しては次第に水道水離れをおこしているように思えます。水道水は まず安全が第一ですが、1960年代後半(昭和40年代)頃から始まった「臭いのない、おいしい水」を求める傾向は更に広がりをみせてきているようです。
これに対して
高度浄水処理
など新しい 浄水技術が実施に移され、また、下水道の普及率の増加(平成13年度末普及率:63.5%)など、当局の良質な水道水への不断の努力は勿論なされています。厚生労働省によれば水道水の異臭味のピークは平成2年度の21625千人で、その後ほぼ減少傾向が続き、平成12年度は3785千人とピーク時の17.5%になっています。また、高度浄水処理水のきき水の結果は 、ミネラルウォーターよりおいしかったなどの報道も伝えられています。
[1] 水の異臭味
水の味についてはすでに
【6】おいしい水
で述べましたが、水道水の
異臭味としてはカビ臭 が多く
他に藻臭、腐敗臭、カナケなどがあります。しかし、
これら異臭味の 多くは水道水源であるダム、湖沼、貯水池など停滞水域の富栄養化による藻類や放線菌の発生、増殖によるもの
と言ってよいでしょう。
カビ臭や藻臭は主に植物性プランクトン(藻類)や菌類(特に放線菌)によりますが
、他に原生動物などによるものもあります。 また、これらの臭気は単にカビ臭や藻臭と言って片づけられないものが多く、魚臭やら青草臭、なかには芳香と言ってよいようなものもあります。
藻類にはたくさんの種類がありますが、水道水の異臭味に関係するのは藍藻類、珪藻類、緑藻類などで、
特に異臭味が問題になるのはカビ臭を発生するフォルミジウム、アナベーナ、オッシラトリアなどに代表される藍藻類です。
カビ臭の原因となる物質は、これら藍藻類や放線菌から出るジオスミン、ジメチルイソボルネオール(2-MIBと記されることもある)
などですが、カビ臭でもみな同じ臭いではなく多少違いがあり、例えば2-MIBは墨汁を思い起こさせるような臭いがします。
次は発臭微生物の例です。
◎藻類による異臭味:
藍藻類:
藍藻類による異臭味の被害は特に多く、
フォルミジウム(カビ臭)、オッシラトリア(カビ臭)、アナベーナ(カビ臭)
などがよく知られています。
珪藻類:
シネドラ…青草臭、フラギラリア…芳香性の藻臭。
緑藻類:
パンドリナ…微魚臭.、ボルボックス…魚臭。
◎放線菌による異臭味:
放線菌は真菌類(カビ類)とバクテリアの中間に位置する菌類で、藍藻類とともにカビ臭が強く被害件数も多いとされています。
◎腐敗臭:
湖底やダムの底などにおける嫌気性醗酵(無酸素状態)
によるもので、主として硫化水素 やアンモニアなどの臭いです。
ビル、マンションなどの屋上給水タンクで 管理状態の悪い場合に発生することも間々あります。 (このためビル衛生管理法…通称ビル管法…および水道法によって給水タンクの維持管理が定められています)。
また、 稀ですが、井水中に硫化水素が検出されることもあります。
◎カナケ(金気)
:
鉄やマンガンを含む水は独特の異臭味があり、昔から“
カナケ
”や“
シブ
”のある水として嫌われていました。このカナケは 鉄やマンガンに限らず、管材から溶出する銅や亜鉛などによるものもあります。
鉄やマンガンは最初から地下水に含まれる場合もありますが、水道水では鉄は多くの場合
鋼管の腐食
によって生じ、マンガンは配管中に
沈積したマンガン酸化物
の剥離によって生じます。
◎下、廃水の混入による臭気:
あってはならないことですが、注意しなければなりません。フェノール類による臭気、石油臭、タール臭などが下、廃水の混入時に異臭味として感じられますが、特にフェノール類は消毒に使用される塩素と反応し、さらに強い臭気を発するなどもっとも問題が多い ようです。
[2] 水道水源における異臭味対策
◎ダム、湖沼、貯水池などにおける異臭味対策:
異臭味の対策は根本となる水源の富栄養化の抑止、次いで水源における原因微生物の発生、増殖の防止が大切であり、浄水場での異臭味対策は最後の手段であることは論を待たないところです。
本項では、水源での微生物の発生、増殖の防止対策について簡単に述べることにします。
・硫酸銅の散布:
藻類の初期発生地点に散布するのが効果的とされます。
・遊離塩素の注入:
寒天質の微生物などに有効です。
・低層水の放流:
低層の嫌気性の水の放流。
・取水位置の変更:
比較的きれいな中層水からの取水。
・ブラックアウト:
粉末活性炭による日光の遮蔽で植物プランクトンの増殖を阻止し、また異臭味を吸着します。アメリカではダムなどでの実施例があるようです。 浄水場での粉末活性炭の使用とは異なります。
・水の人工循環 :
水の循環とあわせて気曝も行われるものに空気揚水筒があります。水深が少なくとも5m以上、できれば10m以上あれば効果的と言われています。湖水面近くの藻類も一緒に循環し、中層および下層でブラックアウト効果を受け、増殖を抑制されたり死滅したり します。
◎河川における異臭味対策:
・礫間接触酸化:
河川の自浄作用の応用です。5〜10cmの小石を利用し、その礫面にできる水垢(生物膜)が浄化作用を行います。1〜2時間の接触で効果 があるとされています。
例、団地の人工の小川やせせらぎ。
・
地下浸透
:
欧米、特にライン川沿いなどに多く見受けられます。扇状地 や河川敷などが利用されますが、小規模なものは覆土した小石中に水を通すことによっても効果を得ることができます。
例、印旛沼水系の河川などで応用されています。一般に5〜10年で更新します。(02.11.24)