戦前、緩速濾過法を中心としてきた我が国の水道は、戦後、急速濾過法中心の処理法に大きく転換しましたが、このことは【13】濾過の基本:緩速濾過と急速濾過で触れました。
また、急速濾過法がその負荷を軽減するために前段に薬品沈澱池を設けるのが一般的であることについても述べました。
さて、
水を静置して濁りを沈降させたり、あるいは市販の明礬(ミョウバン)を水に加えて濁りを
フロック状にし、沈降させて上澄水を得ることなどは昔から行われてきました。これは水中の懸濁粒子を沈澱によって分離しようとするもので、自然沈澱と凝集沈澱の二つの方法があります。
[1]自然沈澱
自然沈澱は水中の粒子を重力によって沈降分離させる方法です。自然沈澱の基礎となる理論の一つにスト−クス(Stokes. 英.1850 )の式※があります。
※.スト−クスの式.
![]() |
前項でも述べたように、コロイドやそれに近い大きさの微粒子や微生物は、自然沈澱で除去するのが非常に困難になります。そこで、これらの微粒子を薬品を用いて凝集させ、多孔性の大きなフロックとして沈澱分離する方法が行われています。このような方法を凝集沈澱法と言います。
凝集に用いられる薬品を凝集剤、凝集剤の働きを助ける薬品を凝集助剤、凝集するのに最適なpHに調節する薬品をpH調節剤といいます。これらの薬品には多くの種類がありますが、主なものを次に挙げ
ます。
◎凝集剤:
硫酸バン土〔硫酸アルミニウム.Al2(SO4)3.nH2O〕.
PAC〔ポリ塩化アルミニウム.Aln(OH)m .Cl3n-m〕.
アルギン酸ナトリウム(海草から抽出.あまり使用されない).
有機高分子凝集剤(飲料水処理には使用されない).
◎凝集助剤:
アルギン酸ナトリウム(硫酸バン土などと併用するときは助剤として).
ベントナイト.
粉末活性炭.
活性珪酸.
◎pH調整剤:
苛性ソ−ダ(水酸化ナトリウム).
炭酸ナトリウム.
硫酸.
一般に、凝集には最適のpH範囲があり、このpH範囲内に原水を調整するためにpH調整剤が添加されます。
硫酸バン土についていえば、凝集pH範囲は5.5
〜8.0 の間位ですが、最適pH範囲は6.5 〜7.0 の間位です。この範囲内で水中のアルカリ成分と反応して水酸化アルミニウム[Al(OH)3]
を生じます。生じた水酸化アルミニウムは微粒子を吸着し、そして更にそれらが吸着、凝集しあって次第に大きな重いフロックに成長し沈降します。
PACは次のような優れた特長を持っているので、現在、浄水場では硫酸バン土に代わり広く用いられるようになりました。
○アルカリの消費量が硫酸バン土の数分の一以下である。
○適性注入率の幅が硫酸バン土より大きく、安全性が高い。
○高濁度の水に対しても非常に有効である。
○攪拌時間が短くて大きなフロックが形成されやすい。
○フロックは大きくて重いから沈降性がよい。
○低温時での凝集沈降性がよい。
○フロックが密であるので壊れにくく、濾過水中に漏洩しにくい。
粉末活性炭とベントナイトは、凝集の核として、また重りとしても用いられますが、前者はそのほかに有機物の除去、異臭味や色度の除去も兼ねて添加されます。(2001.12.15)