[1]石灰軟化法、石灰ソーダ軟化法
これらの方法についての詳細は本文では触れませんが、基本的には消石灰(水酸化カルシウム)のみで硬度を除去する石灰軟化法、および消石灰とソーダ灰(炭酸ナトリウム)
を併用して硬度を除去する石灰ソーダ軟化法があります。これらの方法は、水の硬度成分を炭酸カルシウムや水酸化マグネシウムとして析出させ、これを凝集、沈殿、
濾過によって除去する方法です。
日本では腐食性の水が多いため腐食防止の目的で使用される消石灰が、大陸では硬度を低減させるために使用されています。
石灰軟化法:
@およびA式は、炭酸塩硬度(一時硬度)を消石灰で処理し、カルシウム硬度は炭酸カルシウムとして、マグネシウム硬度は水酸化マグネシウムとして析出
沈降させ除去する石灰軟化法を示します。この方法は炭酸塩硬度の多い水の処理に適し、また、溶存固形物が増加することもありません。
Ca(HCO3)2+ Ca(OH)2
→ 2CaCO3 ↓+ 2H2O ……@
Mg(HCO3)2+ 2Ca(OH)2
→ Mg(OH)2↓+ 2CaCO3↓
+ 2H2O……A
しかし、原水中にマグネシウムの非炭酸塩硬度(永久硬度)があると、
MgCl2 +
Ca(OH)2 → Mg(OH)2↓+
CaCl2……B
B式のように反応し、形は変わりますが、非炭酸塩硬度である CaCl2 や CaSO4 がまた生成してしま
います。このため非炭酸塩硬度を処理する場合には、消石灰およびソーダ灰を併用する石灰ソーダ軟化法が採用されます。
石灰ソーダ軟化法:
石灰ソーダ軟化法では、もともと原水中にある非炭酸塩硬度やB式で生成した非炭酸塩硬度を、次のC式のように炭酸ナトリウムと反応させ、炭酸カルシウムとして析出沈降させ除去し
ます。 しかし、NaClやNa2SO4のような溶解塩類を増加させてしまう欠点もありま
す。
CaSO4 + NaCO3 = CaCO3
↓+ Na2SO4……C
[2]軟化水の再炭酸化
石灰軟化法や石灰ソーダ軟化法では、処理水のpHが高いばかりではなく、水中にコロイド状や過飽和の炭酸カルシウムが多く非常に不安定で、このまま使用すると配管や機器に著しい炭酸カルシウムのスケールを生じます。このため、通常軟化プラントを出た処理水に炭酸ガス(二酸化炭素)を加え再炭酸化と言う処理を施します。
再炭酸化により水のpHは下がり、炭酸カルシウムは炭酸水素カルシウムとなりますが、さらに水中に十分な従属性遊離炭酸を残すようにすれば、炭酸水素カルシウムは安定化し、炭酸カルシウムを析出することはなくなります。
また、必要に応じ[22]、[23]で述べた飽和指数(SI)を用い、所望の水を得ることも出来るようになります。
CaCO3 + CO2 + H2O → Ca(HCO3)2……D
しかし、再炭酸化した軟水をSI≦0とすることはなく、またそのようなことをするのは大量の炭酸ガスを消費することになるので、実際には経済的な面も考慮し実用的な範囲内でSIを0に近づけるようにしています。
したがって、腐食傾向の多い日本の水とは異なり、接触する配管や機器に炭酸カルシウムのスケールを生じることが多いわけです。これが冒頭で述べた「大陸の水は、特に内陸部で、炭酸カルシウムのスケールを生ずる水が多く、それによる配管閉塞のトラブルが多い」と言う原因になっています。
[3]日本の水は軟水
原水の水質や処理の条件にもよりますが、再炭酸化した軟化水の硬度は通常
50mgCaCO3/l
以上の場合が多く、100mgCaCO3/lとか150mgCaCO3/lの硬度のものも少なくありません。
しかし、この程度の硬度になると、わが国ではは水道水やその他の用水、或いは一般天然水の硬度に相当し、もちろん軟水とは言いません。
ちなみに、WHO(国際保健機構)の飲料水水質ガイドラインは、硬水と軟水について次のように記しています。
| 軟水 |
0-60 mgCaCO3/l |
| 中程度の軟水 |
60-120 〃 |
| 硬水 |
120-180 〃 |
| 高度の硬水 |
180 〃 以上 |
このガイドラインによれば、我が国の水道水や工業用水の60〜70%位、地下水の30〜40%位が軟水ということになり、また、中程度の軟水まで入れれば日本の水の大部分が軟水と言うことになってしまいます。
日本で我々が通常軟水と言えば、イオン交換樹脂を用いた軟化装置による軟水を指しますが、この場合の軟水中に漏洩する硬度は、ほぼ0〜1mgCaCO3/l
で非常に少ない値です。世界的に見れば軟水の概念もずいぶん違うものです。(2000.8.1)