【23】腐食とスケール(U)

1942年にLarsonとBuswell(アメリカ)はランゲリアのpHsの計算法に補正を加えましたが、その後、この煩雑な計算を簡単に行うため、多くのグラフや表が発表され実用に供されるようになりました。
日本で飽和指数(SI )による水質の管理が注目されるようになったのは1950年台で、当時大きな冷却水システムを持っていた化学会社、石油精製会社、製鉄会社などがアメリカなどの文献を元に研究を始めたものと思われます。
E.Nordell ; Water Treatment for Industrial and Other Uses,1951や、L.W.Fitzpatrick ; Cooling Water Gets the Treatment, Industry and Power 67, No.1, 1954 などにおける飽和指数( SI)を求める表が、1950年台の後半には国内のあちこちで見られるようになりました。

[3] 飽和指数(SI )の求め方
pHsは計算グラフによって簡単に求められますが、グラフが複雑なので本文ではこれを省き、下記のB式とその係数換算表によって求める方法を述べることにします。
この方法は、上述のNordellやFitzpatrickの方法によるものです。
     pHs = (9.3+A+B) - (C+D) ……B
     A……蒸発残留物係数     B……温度係数
     C……カルシウム硬度係数   D……アルカリ度
A、B、C、Dの各係数は、対象となる水の分析値と換算表から求めることができます。
次に各係数の換算表を示します。

A、B、C、Dの換算表

計算例:
被処理水の水質が次のような値であるとき、
 
蒸発残留物=190mg/l カルシウム硬度=65mgCaCO3/l アルカリ度=38mgCaCO3/l
温度=20℃ pH=7.1

 A=0.1、B=2.1、C=1.4、D=1.6となります。
したがって、
pHs = (9.3+0.1+2.1) - (1.4+1.6) = 8.5
この水のpHが7.1ですから、
SI = 7.1 - 8.5 = -1.4
となり、SI<0ですから、この水は腐食性の水と判定します。
A、B、C、Dの換算表を用いて求めたpHsは近似値であり、水の他の成分の影響もあり正確な値というわけにはいきませんが、判定の結果は十分実用に耐えると思います。ただし、SI は定量的なものではなく、数字の大きさが必ずしもそのまま傾向の大きさを表すわけではありません。例えば、SIが-1.4と-1.1と言う場合どちらも腐食傾向ですが、-1.4の水が必ず腐食傾向が強いというわけではないのです。しかし、現在までの実施例や経験から SI が-1以上なら防食効果が期待できると言われています。

※.日本の水は一般に腐食傾向にあると言われますが、実際にSIを求めてみるとSI<0の水が非常に多いようです。
水道水もその例外ではなく、1992年(平成4年)に厚生省生活衛生局水道環境部長通知「水道水質に関する規準の制定について」で、快適水質項目とその目標値を定めました。その中の腐食性に係わる項目の一つとして「ランゲリア指数(腐食性)」を設け、目標値は「-1程度以上とし、極力0に近づける」としています。
このための改善を行うのにアルカリの注入やエアレーション(気曝)などがありますが、その中で「消石灰注入法」「消石灰・炭酸ガス注入法」が最も適しており、実際にそれらの設備が販売されています。(2000.6.7)