【22】腐食とスケール(1)

水道や工業用水道にとって、その水が腐食性の水なのか、あるいはスケール(水垢)形成傾向の水なのかは非常に大きな問題です。配管や、機器類が 腐食したり、スケールで閉塞したりでは大きな損害を被ります。
大まかに言って日本の水は腐食性のものが多く、大陸の水は特に内陸部で炭酸カルシウムのスケールを生ずる水が多いといえるでしょう。わが国では、 ビルやマンションなどで蛇口から「赤い水」が出て問題になることがよくありますが、これは主に鉄管の腐食によるものです。
一方、大陸諸国ではスケールの発生による配管の閉塞が多く、内陸部ではこの傾向が特に強くなります。しかし、鉄管の腐食による「赤い水」のトラブル はあまり多くありません。
この傾向の違いは、水に接する部分に炭酸カルシウムが析出、沈降して皮膜が形成されるか否かによるとされています。炭酸カルシウムが析出、沈降し、 その皮膜が肥厚するとスケールとなって管などが閉塞しますが、鉄などの管壁を腐食することはありません。これは炭酸カルシウムの皮膜が水と管壁の接触を断ち、防食の役目を果たすからです。逆の場合は水と管壁が 直接接触し、金属壁面が腐食します。
腐食もスケールも形成しないような水にすることはできないでしょうか。

[1] 炭酸塩平衡
前章【21】従属性遊離炭酸と浸食性遊離炭酸で、 水中での炭酸カルシウム(CaCOと遊離炭酸(COと の関係について述べました。この平衡関係(炭酸塩平衡:カーボネート バランス)を表す@式で、反応が右に進む場合は水中に浸食性遊離炭酸が存在し、水は浸食性(腐食性)をもっています。左に進む場合は浸食性遊離炭酸はなく、炭酸水素カルシウムを溶存させておくのに必要な従属性遊離炭酸が不足しており、炭酸カルシウムが析出します。 また、平衡状態にあるときは、水は浸食性もなく、また、炭酸カルシウムを析出することもありません。腐食もスケールも形成しないような水にするには、このような平衡状態に近づければよいわけです。

CaCO+ CO+HO Ca(HCO……@

この平衡状態の条件を調べることによりpHsと言う平衡定数が誘導されます。
pHsとは飽和pH(saturation pH)と呼ばれますが、@ 式が平衡状態にあるときの水のpHを示します。すなわち、その水の遊離炭酸の量が、炭酸水素カルシウムの溶存に必要なだけの従属性遊離炭酸量である場合の水のpHです。あるいはまた、炭酸カルシウムがが飽和しているときのpH とも言えます。勿論この時浸食性遊離炭酸はありません。
pHsを誘導する過程については省略します。

[2] ランゲリア飽和指数
炭酸塩平衡とその水処理への応用については、配管や装置、機器類の腐食やスケールの問題を診断し予防する必要から重要視され、1900年代前半からいろいろの研究がなされました。なかでもアメリカのランゲリア(Langelier)の研究成果は、実用的に価値の高いものとして現在でもよく用いられています。
1936年にランゲリアはpHsの計算用グラフを考案し、また同時に飽和指数(saturation index=SI)を提案しました。 これがランゲリアの飽和指数あるいはランゲリア指数(Langelier index)と言われているものです。
飽和指数は、これをSIとすると
      SI=pH−pHs……A
ただし、 pH : その水の実際のpH     pHs : 飽和pH
のように表されます。
この式で、

SI>0  ならスケール形成
SI<0  なら腐食進行
SI=0  なら腐食、スケールいずれも進行せず

のように判定します。(2000.4.15)