Hサイクル処理水

【39】Hサイクル処理水

一般の軟化装置Naサイクルについて は【37】および【38】で述べましたが、Naサイクルの軟化装置の他に幾つかの基本となるイオン交換樹脂装置やシステムがあります。図1にその例を示します。ロ .Hサイクル処理の他はハ.MB型、ニ.2B型、ホ.2B3T型のいずれも純水装置といわれるものですが、本章ではロ .Hサイクル処理塔から述べることにします。

[1] Hサイクル処理
Hサイクル
処理は、再生剤としてNaClの代わりに塩酸(HCl)のような鉱酸を用いて強酸性陽イ オン交換樹脂を再生 し、酸性の処理水を得る装置です。また、基本的な操作はNaサイクルと同じで 再生された樹脂はR-H型になり ます
図1のロH塔に原水を通すと、原水中の陽イオン(例えばCaCl2Ca2+)はH型強酸性陽イオン交換樹脂R-SO3HのH交換されHClとなり、処理水はCaやMgばかりではなくNaやKも含まれない塩酸、硫酸、硝酸などが混合した酸性 の軟水になります。Naサイクルの軟化装置に対し、このようなR-H型の樹脂を用い鉱酸で再生する装置をHサイクル軟化装置とい うこともあります。
図2はこのHサイクル処理の原理を示したものですが、この図は
【37】イオン交換樹脂:水の軟化(1)図6 軟化の原理のNaがHに変わったものと同じです。また、@は塩化カルシウム(CaCl2)を例にとって図2を説明したものです。
 

図1 イオン交換のシステム

図2 Hサイクル処理の原理




R(-SO3H)2+CaCl2 →R(-SO3)2Ca+2HCl+2H20……@
Rは樹脂母体を表します。

しかし、Hサイクル処理塔は単独で使用されることは少なく、多くは図1のニ、ホのように他の樹脂を使用した塔 (あるいは筒)や、装置と組み合わせたシステムとして使用されます。 また、酸性軟水という名称はあまり使われず、Hサイクル軟水や単にHサイクル水という場合が多いようです。

[2] Hサイクルとアルカリ度
さて、ここでNaサイクル処理水(軟水)で生成する主な塩類をもう一度見てみましょう。【3】不純物濃度と分析表 「分析表の一例」で 述べたように、水中の塩類を構成する主なアニオン(陰イオン)は下表の4種類です。
 

アニオン

Naサイクル

Hサイクル

炭酸水素イオン HCO → NaHCO  → HCO
硫酸イオン SO → NaSO  → HSO
塩化物イオン Cl → NaCl   → HCl
硝酸イオン NO3
 
→ NaNO3
 
 → HNO3
 
これらのアニオンは、Naサイクル処理では表の炭酸水素ナトリウム以下硝酸ナトリウムまでの4種のNa塩になりますが、原水をHサイクル処理したときにはそれぞれが表のように炭酸から硝酸までの酸になります。
 しかし、ここで注目したいのはHサイクル処理で炭酸水素イオンHCO すなわち、アルカリ成分(酸消費量)H CO遊離炭酸になる場合です

一般に
遊離炭酸は大部分が二酸化炭素のまま水に溶解しており、その一部が分子状の炭酸(HCO)に、またそのごく一部が解離してH+とHCO3-に なっています。この水中の遊離炭酸は、大気中の炭酸ガスの分圧が低いため炭酸ガスとなって大気中に放出されやすいので、気液接触、すなわち気瀑(瀑気)によって除去することができます。
Hサイクル処理水は、原水中の硫酸イオンや塩化物イオン、硝酸イオン などにより鉱酸酸性となっているので、このような強い酸性の条件下では弱酸である遊離炭酸は解離 しません。したがって、Hサイクル処理水中の遊離炭酸は炭酸ガスとして
気瀑(瀑気)によ り容易に除去することができます。

例として、A式に原水中の炭酸水素
カルシウムのCa2+がHサイクル塔内でHと交換し 、生じた
HCOが分解し炭酸ガス として放出される状態を示します
R(-SO3H)2+Ca(HCO3)2  → R(-SO3)2Ca+2CO2↑+2H20……A
すなわち、炭酸水素塩はHサイクル処理水中では水になってしまいます。これは原水中の塩類がなくなり、Hサイクル処理水中の溶解固形分が減少する ということです。このことは後述する脱アルカリ硬水軟化や純水装置などで意味をもってきます。(05.9.2)