イオン交換樹脂:水の軟化(1)

【37】イオン交換樹脂:水の軟化(1)

【V】水の軟化
[1] 軟化の原理

                                               

図5 硬水軟化

図6 軟化の原理

図5は水の硬度成分を除去する硬水軟化装置の簡単な原理図で、Rはイオン交換樹脂層です。
硬度成分(Ca、Mg)を含む原水が樹脂塔(筒)内に導入され、塔中に充填されたNa型陽イオン交換樹脂層(R)中を通過し処理水(軟水)となって塔外に流出します。

図6 (イ)(ロ)
は、Na型陽イオン交換樹脂によるカルシウムイオン(Ca2+)の除去の模式図です。実際には樹脂の一粒一粒には 膨大な数のイオンが存在しています。
Na型陽イオン交換樹脂としては一般に強酸性イオン交換樹脂、例えばダイヤイオン SK1B(Na)や、アンバーライト IR120B(Na)などが用いられます。


[2] イオンの吸着帯とイオン交換帯

図7 イオン交換帯
図7AおよびBを共に軟化装置の樹脂塔とします。
まず、塔Aに硬度成分を含む原水を通すと、塔内イオン交換樹脂の上層端からNaがCa2+やMg2+に置き換えられ、 やがて硬度成分で飽和された樹脂層(黒色で表した部分)は次第に上層から下層へ厚さを増します。このとき硬度成分で置換された層の下層部分(黒色グラデーション部分)は硬度成分飽和層の黒色部分 から未反応のNaが次第に多くなる淡黒色の樹脂層へと変化します。すなわち、黒色グラデーション部分の樹脂層は、まだイオン交換反応が行われている部分です。
この黒色部分の層をグラデーション層を含めてイオンの吸着帯といいます。また、グラデーションの部分をイオン交換帯と称します。イオン交換帯の先端が樹脂 塔の下端に達すると硬度の漏出が始まります。前章【36】【U】[1]図4 貫流点でのイオン漏出量の変化は、 イオン交換帯の先端が塔下端に達して硬度の漏洩が始まり、やがて硬度の漏洩が原水中の硬度と同じ量になるまでの変化の曲線を描いたものです。

[3] 樹脂層中のイオンの分布


図8 樹脂層のイオン分布

前項樹脂塔A内の樹脂層中のイオン分布を見てみますと図8のようになります。Ca吸着層とMg吸着層は図7における黒色部分を、Mg+Na層はNaとの交換によって樹脂に捕捉されたMgと未反応のNaとが共存するイオン交換帯(黒色グラデーション部分)に相当します。 最下層はまだイオン交換にあずからない未反応のNaのみの層です。
この上層から下層への吸着順序は、【35】[2]イオン交換の三つの基本のA.イオンの選択性の順序にしたがって、丁度クロマトグラフ的に層状に分布していることが分かります。



[4] 樹脂の再生

イオン交換帯の先端がカラムの下端に達すると硬度が漏れ始めますから、採水を終了します。採水終了は、B.T.P.に達する前にあらかじめ適当に定めた点で 実施するのが普通です。次いでイオン交換能力を元の状態に戻す再生操作に入ります

図9 樹脂の再生

再生では硬度成分を交換吸着した樹脂をまたNa型に戻す必要がありますが、このためにはイオン交換の三つの基本のB.交換吸着する強さの順を逆転させるには、順位の低いものの高濃度の溶液を使用しますを応用します 。再生は図9のように再生液(通常5〜10%程度の食塩水)を上部から下降流で流すのが一般的です。このように食塩水で再生する軟化装置のタイプをNaサイクルの軟化装置と称することがあります。
※.部分再生:工業用や市販の軟化装置では、僅かですが硬度成分の漏洩があるのが普通です。これは、塔内の樹脂を100%完全にNa型に再生して使用することは、経費が嵩み実用的ではないからです。 これを説明したものが前章の図3 再生レベルと貫流容量です。
すなわち、実用的なイオン交換容量であるB.T.Cap(換言すれば採水量)は使用する再生剤の量(再生レベル:Regenelation Level、略称R-L)とともに増大しますが、再生効率は次第に低下します。このため、軟化装置は軟水の収量および質再生レベルとの経済的な兼ね合いを考慮して 再生レベルを下げて運転することになります。このように完全再生に対し、再生レベルを下げて樹脂を再生することを部分再生と言うことがあります。 部分再生は軟化装置に限らず他のイオン交換装置についても採用される普遍的な再生法です。(05.3.1)