(3)クロラミン(結合塩素)について
クロラミン(結合塩素)については【25】水の消毒で述べましたが、クロラミンには次の3種類があります。
・mono-chloramin(モノクロラミン)…NH2Cl
・di-chloramin(ジクロラミン) …NHCl2
・tri-chloramin(トリクロラミン)…NCl3
このうちジクロラミンとトリクロラミンには臭いがあり、特に後者には強い臭いがあります。また、モノクロラミンとジクロラミンは安定であり長時間分解しません。
3種のクロラミン中いずれのクロラミンを生ずるかはpHと非常に関係があり、低pHにおいてはトリクロラミン、ジクロラミンが生成し、pHが7以上ではモノクロラミンが多くなります。これらはほぼ次のような見当です。
・pH<4.4 ではtriのみ
・4.4<pH<5 ではdiのみ
・5<pH<8 ではmonoとdi
・pH=7 ではmono≒di
・pH>8 ではmonoのみ
が生じます。
前項(1)の不連続点塩素処理図はpHが中性付近の場合ですが、重量比で NH3-N : C12 = 1 : 5(a点)まではモノクロラミンが増加します。その後次第にジクロラミンが生成し、その比が 1:7.5
ではモノクロラミンより割合は少ないが、ジクロラミンの絶対量は極大となります。
ブレークポイント(b点)での NH3-N : Cl2 の重量比は約10であり、モノクロラミンとジクロラミンの量はほぼ等しくなり
ます。その後はトリクロラミンが少しずつ増加します。しかし、トリクロラミンは非常に分解し易いので普通はあまり問題になりません。
ブレークポイントはあらかじめ試験によって定めておく必要がありますが、不連続点塩素処理図のような典型的なカーブは、塩素添加後2〜4時間を経ないと得られません。したがって、
不連続点塩素処理を実際に行うには約2〜4時間ほどの接触時間が必要となります。
※.クロラミンに関する興味ある実験
この実験は、武田福隆氏によるもので、雑誌“水”の『水処理道場日記(85)』に掲載されたものです。
活性炭は遊離、結合にかかわらず塩素を除去しますから、氏はアンモニアをクロラミンの形で除去できる可能性があるのではないかと考えたわけです。こんなうまい話はないので早速実験してみたのですが、結果は否でした。
確かにクロラミンは除去されたのですが、アンモニアは処理前と処理後にほとんど差がなく、そのまゝ漏洩しました。クロラミンは可逆反応を起こし、遊離塩素とアンモニアに分解していたのです。
[3]過剰塩素処理(super chlorination)
不連続点塩素処理では約2〜4時間前後の接触時間が必要ですが、短時間で同様の効果を得るために過剰塩素処理という方法がとられることがあります。
この方法は、ブレークポイントを越えて数mg/l以上の遊離残留塩素を処理水中に残し、短時間で酸化を行った後活性炭やチオ硫酸ソーダなどで脱塩素し遊離塩素を0.3〜0.6
mg/1とする方法です。
しかし、水道でこの方法を採用することはまずなく、特殊な環境のもとで少量の水を処理するとか、緊急に飲料水を必要とする場合などに用いられる方法です。
[4]クロラミン法(chloramin chlorination)
クロラミンは殺菌力は弱いが持続性があるので、この利点を利用して長時間殺菌力を持続させる処理方法がクロラミン法です。クロラミンのうち、monoおよび di
−chloramin
は安定で長時間分解しません。しかし、その殺菌効果は遊離塩素の1/25程度であり、もし、同量なら同じ効果を得るのに100倍の時間を必要とします。
戦前札幌市では、当時としては珍しい急速濾過を上水道に採用しましたが、急速濾過には塩素消毒が必須条件です。しかし、おいしい清澄な水になれてきた日本人には塩素による臭味は好まれ
ませんでした。そのため、市当局ではわざわざ水中にアンモニアを加え、塩素処理をして無味、無臭に近いmono-chloraminを発生させて消毒しました。この方法がクロラミン法ですが、塩素処理が普及している現在、管理方法の復雑さもあってほとんど実施されていません。
(03.11.10)