【31】塩素処理あれこれ(T)

浄水場にとって消毒のための塩素処理は欠かせない処理であり、特に急速濾過法を採用する浄水場では不可欠の条件【25】水の消毒ですが、浄水処理ではこの消毒の他に除鉄、除マンガン、アンモニア性窒素や藻類 、臭気の除去にも塩素が使用されています。

[1]塩素の注入点

塩素処理が始まった最初の頃は、消毒を目的として濾過池の後に塩素を注入する一点注入法、いわゆる後塩素処理だけでした。 しかし、原水中に細菌や藻類、あるいは鉄やマンガンなどが存在し、沈殿地や濾過池に付着して目詰まりなどの障害を起こしたり、また、原水に臭気などが存在する場合には後塩素処理だけでは対応できません。
このような問題の解決のため、1920年代にニューヨーク市では後塩素処理に加え、着水井など浄水場入口(または凝集・沈澱池前など)に塩素を注入する前塩素処理が採用されるようになりました。
前塩素処理:
前塩素処理にはもちろん消毒の目的もありますが、その他に
  イ. 藻類など微生物のコントロールとそれによる凝集・沈澱や濾過の効率改善
  ロ. Fe2+除去Mn2+の 除去
  ハ. アンモニア性窒素の除去( 不連続点塩素処理
  ニ. 濾過池内などの嫌気性腐敗の防止
などの効果を期待することができます。
前塩素処理と後塩素処理を併用する場合これを二重塩素処理と称します
さらにその後、凝集・沈澱池と濾過池との間に注入する中間塩素処理も行われるようになり、最近では、二重塩素処理に中間塩素処理を加えた三重塩素処理も行われるようになりました(下図参照)。

     

二重、三重塩素処理あるいはこれ以上の多点に塩素を注入する方法を、一括して多重塩素処理と言います。
中間塩素処理:
水道水源の汚染が進み、また、水質分析技術が向上するのに伴い、1970年代になるとトリハロメタン(THM)の問題が顕在化してきました。
しかし、前塩素処理では、遊離塩素と原水中のトリハロメタン前駆物質との反応によるトリハロメタン生成の問題を避けて通れません。この問題の解決方法として前塩素処理に代えて中間塩素処理の採用がクローズアップされるようになりました。
中間塩素処理は、凝集沈殿処理により原水中のトリハロメタン前駆物質を出来る限り除去した後に塩素処理を行い、THMの生成を低減させようとするものです。
トリハロメタン前駆物質のあまり多くない水道原水の場合は、前塩素処理を中間塩素処理に変更するだけで効果を期待できます。また、注入点の位置を変えるだけなので変更の実施も容易にでき る利点があります。
中間塩素処理は高度処理にもよく組み込まれます。

[2]不連続点塩素処理
(1) 不連続点
この処理方法は、ブレークポイントクロリネーション(break-point chlorination) とも言われている方法で、1939年にグリフィン(Griffin、アメリカ)が発見した現象によるものです。1939年頃には塩素処理は欧米諸国、特にアメリカにおいて広く用いられる ようになっていましたが、グリフィンは、塩素処理により発臭物質が生成する現象を追求しているうちに不連続点塩素処理法を見出しました。
下記は不連続点塩素処理の説明図です。
T:塩素要求量のない水(例:局方精製水や超純水など)
U:塩素要求量のある水
V:アンモニア性窒素を含む水

原水中には還元性無機物質、還元性有機物質、アンモニア性窒素等塩素を消費する物質が含まれています。また、藻類など微生物も塩素を消費します。
これら塩素を消費する物質が極端に少ない、例えば局方精製水や超純水などに塩素を添加していった場合、水中の残留塩素はすべて遊離塩素でその量は塩素の注入率に比例して直線的に増加します。T線がこれにあたります。
また、塩素を消費する物質を含有しているが、アンモニア性窒素等は含まれない水の場合はU線のようになります。
しかし、アンモニア性窒素を含む水に塩素を添加していくと、最初のうちは添加量に伴って残留塩素が増加しますが、ある点(a点)までくるとその量は極大値に達し、今度は残留塩素 が減少し始めます。そして、極小点(b点)に達すると、また塩素の量に比例して残留塩素量が直線的に増加します。これがV線であり、b点を不連続点 (ブレークポイント:break point)と言います
この現象は、まず水中のアンモニア性窒素と注入した塩素とが反応してクロラミン(結合塩素)を生じ、塩素の添加量の増加に伴ってクロラミンの量は増加してやがて極大点aに達します。この時点での残留塩素は主として結合塩素です。
次いでa点を過ぎると、クロラミンは更に加えられた過剰の塩素によって分解され窒素を生じ、b点に達するまでにクロラミンは分解されて無くなるか極めて少なくなります。 したがって、b点ではアンモニア性窒素は除去されているわけです。
b点以降は、
水中にアンモニア性窒素がありませんから加えた塩素量に比例して今度は遊離塩素が増加します。
このように不連続点を超えて塩素を注入する処理方法を不連続点塩素処理と言いますが、実際の処理ではブレークポイントでの塩素要求量よりやや過剰の塩素を加え、遊離残留塩素を0.3〜1mg/l残留させるようにしています。

塩素要求量と塩素消費量:
水に塩素を添加していき所定の時間(通常約1時間余)接触させて後に残留塩素を測定し、遊離残留塩素が検出され始めたときの塩素注入率を塩素要求量と言います。 これに対し、同様に結合型残留塩素を検出し始めたときの塩素注入率が塩素消費量です。
なお、図中横の点線は残留塩素を検出し始める限界(Detection Limit)の線です。(03.8.13)