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除マンガン濾材 |
マンガンの場合も地下水中においては鉄と同様に二価のイオンMn2+として存在し、ほとんどの場合重炭酸マンガンMn(HCO3)2を形成しています。
マンガンは鉄に比べ酸化還元電位が高いため、Fe2+と違って中性付近のpHでは酸化されず、pHが10以上ぐらいになってはじめて空気によって酸化されるようになります。したがって、Mn2+を含む地下水を汲み上げて気曝しても、マンガンは酸化されずにイオン状のままで存在します。
このようにMn2+は酸化されにくいため、たとえば河川水中ではほとんど酸化析出せず、Mn2+として水中に存在します。
戦前、戦中を通じて日本の水道水は緩速濾過による処理が主であり、また、良質の地下水などはそのまま直送する方式をとっており、いずれも塩素消毒はしませんでした。
緩速濾過ではMn2+はほとんど除去されますし、たとえマンガンが水道水中に存在しても、塩素による消毒はほとんど行われませんでしたから、通常の状態ではマンガンによる「黒い水」の問題は起こらなかったのです。
しかし、戦後は占領軍の指示により塩素消毒が確実に行われるようになりました。また、戦後の復興が次第に軌道に乗り、特に昭和30年代に入って産業が急速に進展し、人々の生活レベルも向上してくるのに伴って水の需要も急激に増加しました。
このような情勢になると、
@.緩速濾過に比較し設置面積が少なくてすむこと。
A.従来の浄水場敷地内で大きな拡張が可能であること。
B.アメリカの濾過の主流が急速濾過であったこと。
などの理由により、我が国における濾過法は水道用水、工業用水の如何にかかわらず、急速濾過法へと急転換しました。
なるほど通常の状態ではマンガンは酸化されませんが、塩素存在下では中性付近でも非常にゆっくりですが酸化されるようになります。酸化されたマンガンは黒色の水和2酸化マンガン(MnO2・mH2O)となって析出し、次第に水道管などの管壁にスラッジとなって沈殿付着します。
ところが悪いことに、沈着した水和2酸化マンガンは、この塩素によるマンガンの酸化を助ける触媒、すなわち自触媒なのです。
水中のMn2+は管壁に付着したスラッジ(水和2酸化マンガン)の存在により、@式のように塩素 (この場合次亜塩素酸ナトリウム NaClO とします)によって酸化されて MnO2・mH2O となり、またスラッジ上に沈着します。反応は瞬時に行われます。
上に述べたマンガンによる黒い水の障害をを逆手にとればどうでしょうか。Mn2+を含む水に塩素を注入し、水和2酸化マンガンを被覆した濾材層中を通過させれば、上記@式の反応が起こり、Mn2+が除去できるはずです。
この考えは正しく、水和2酸化マンガンで被覆された濾材が充填されている除マンガン装置が実用化されています。除マンガン装置の外観は前の章の除鉄装置と同じようなものです。
この例も空気酸化による除鉄装置と同じく、毒をもって毒を制する、災いを転じて福となす例ではないでしょうか。
(1999.9.19)