【15】自然水のpH
[汲み上げた地下水は変化する]
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夏、炎天下での一杯の冷たい井戸水のうまさは、なんともたとえようがありません。最近は田舎でもあまり井戸を見かけなくなりましたが、地下水は良質の水道水源としてまだまだ多用されています。
地下水においしい水が多いのは、カルシウムやマグネシウム、ナトリウムどのミネラル、および炭酸ガスが適度にバランスよく含まれ、その上水温が10〜15℃と冷たく、おいしい水の条件を満たしているものが多いからです。しかし、わが国の地下水には、水を不味くする原因となる鉄やマンガンを含むものも結構多いようです。地下水を汲み上げて放置しておくと鉄分で水が赤くなる場合がありますが、これは地下水中の炭酸ガスが大気中に放出されて水のpHが高くなり、また空気中の酸素が溶け込むことによって、水中の鉄分が酸化され水酸化第二鉄を生じ るためです。
炭酸ガスや酸素などの気体が水に溶解したり、あるいは析出して放出されるのは、気曝(きばく)の原理として知られているヘンリー(Henry)の法則によっています。
大気中における炭酸ガスの分圧は非常に低いですから、地下水のように炭酸ガスを多く含む水は、大気中でその量が著しく減少します。おいしい地下水も、気曝すれば炭酸ガスを失い、水質のバランスが変化しておいしくない水になってしまいます。註:ヘンリー(Henry)の法則とは、
「温度一定のとき、一定量の液体に溶解する気体の質量は、その気体の圧力(分圧)に比例する」というものです。水中の遊離炭酸、M-アルカリ度※およびpHの関係を取り扱ったものに、水処理でよく用いられる便利なティルマンTillmanの式(次章【16】 に掲載)があります。 (※M-アルカリ度=酸消費量)
pH=log{M-アルカリ度(mgCaCO3/l)×0.203×107/CO2}…Tillmanの式
この式を整理してさらに簡略化すると次式のようになります。
pH=6.31+log{M-アルカリ度(mgCaCO3/l)/CO2(mg/l)}…Tillmanの式@
Tillmanの式をグラフ化したものがいくつかありますが、例えばTillmanの式@により、下図のように酸消費量と遊離炭酸との比とpHの関係をグラフ化することができます。 気曝により遊離炭酸は炭酸ガスとなって大気中に放出されますが酸消費量は変わりませんから、図により気曝によって遊離炭酸の量が減少すれば水のpHは高くなることが分かります。
酸消費量/遊離炭酸とpHとの関係今、ある地下水のM-アルカリ度が50mgCaCO3/l、遊離炭酸の量が50mg/lとします。酸消費量/遊離炭酸の比は1ですから、このときのpHは図より約6.3となります。次にこの水を気曝した結果遊離炭酸の量が5mg/lになれれば酸消費量/遊離炭酸の比は10となります。したがって、気曝後水のpHは図より約7.3となります。
このグラフを更に詳細に書くことにより、pH、酸消費量、CO2の三者のうちいずれか二つが分かれば、他の一つを簡単に求めることができます。自然水や一般用水中には遊離炭酸や炭酸水素塩の他にもたくさんの成分が含まれていますから、これらの成分の影響を受けたり、また、遊離炭酸もCO2としてガス化しやすいので、Tillmanの式による結果が非常に正確というわけにはいきません。
しかし、汚染されていない自然水や水道水、良質の工業用水などでは比較的よく当てはまるので、ある程度の目安をつける場合などには、いろいろと活用の道が考えられます。
所望のpH値にするときの酸、アルカリ添加量の概算値を求めるなどはその一例でしょう。(1999.1.17)