【13】濾過の基本:緩速濾過と急速濾過

浄水場の風景(濾過池)
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緩速濾過
この方法の特徴は、原水(処理される元の水)が細かい径の砂層(濾層)を一日3〜6メートルとごく遅い速度で濾過されることです。このようにして濾過すると、砂層の表面に微生物の粘質膜ができ、この微生物膜の働きで濁りや細菌、藻類、油やアンモニア生窒素、有機物や異臭味、鉄やマンガンまでもが効果的に除去され、美味しくて安全性の高い水を つくることが出来ます。除去される細菌にはもちろん病原菌も含まれます。また、ある程度の水質変化に対して緩衝性があります。微生物の膜は表面から20〜30p下層の砂にまで及びます。
このように緩速濾過法では美味しくて安全な水を作ることが出来ますが、戦後、この緩速濾過法中心の水道が急速濾過法中心の処理法に大きく変換しました。これは次項に述べる急速濾過法を主とするアメリカの技術に影響されたこと、1950年代半ばから我が国の産業、経済が急速に発展成長したこと、これに応じて水道水の需要が急増したこと、また、水道普及率がめざましく伸びたことなどによります。
急増する水道水の需要を賄うために、多くの浄水場が新設或いは拡張されましたが、特に規模の大きい浄水場では浄水システムに急速濾過法が採用されました。
これは、規模の大きい浄水場の新設、拡張には用地難を伴うことが多く、また維持管理作業の面でも困難を伴うことから、狭い敷地で大量の水を処理できる急速濾過法が採用されることになったわけです。
また処理する原水がある程度以上良質の水でなければならない緩速濾過の場合、水道水源環境の汚染による原水水質の劣化も緩速濾過池※の使用比率の減少につながりました。
※.水道の場合、装置という用語を使用せず、濾過装置を濾過池、沈殿装置を沈殿池などのように言います。
緩速濾過池は、急速濾過池に比べてその濾過速度からも明らかなように20〜30倍の面積が必要となりますが、薬品処理などの付属設備は不必要になります。
この両者の得失は浄水場の規模によって変わり、一般に規模が大きくなるほど急速濾過法が有利になり、規模が小さくなるにしたがって緩速濾過法が有利になることが多いようです。
大規模な浄水場では、緩速濾過法は付属設備が不必要なことを考慮に入れても、急速濾過法の数倍以上の敷地面積を要するとされています。
最近の上水道事業における急速濾過池使用率の全国平均は約92%位ですが、給水人口2万人以下の小規模上水道になると緩速濾過池の使用率が増加して10%を越えるように
なり、1万人以下の給水人口では20%を超えるようになりました。
また、緩速濾過の計画浄水量は、それまで僅かずつ減少していたものが、平成5年度からは横ばいとなっています。(水道統計の経年分析より、水道協会雑誌第791号)
美味しくて安全な水を作ることの出来る緩速濾過法は、敷地の問題や水源水質などの条件に問題がなければ、あるいは克服できる可能性がある場合には 、今後、積極的に見直されるべきで
しょう。
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緩速濾過に対する砂濾過の方法で、1872年にアメリカで出現したとされています。日本では、第二次大戦後にアメリカの影響を受けて、上水道、工業用水道ともにこの濾過法が急速に普及しました。
急速濾過は、緩速濾過の濾過速度に比較し濾過速度が非常に速いことが特徴で、上水道で採用されている濾過速度は、約5m/h(メートル/時間)です。しかし、最近では工業用水を 中心に濾過速度を早くする試みが多くなりました。10〜15m/hなどは普通の速度となりつつあり、それ以上の速度の濾過法も出現しています。
この濾過法の特長は、濾過速度が速いため設備面積が少なくてすみ、大量の濾過水をつくることが出来ることです。 しかし、砂層に生物膜が出来ず、物理的な濾過が主体で水質の変動に対する緩衝性が少ないため、薬品処理で安全性を確保せねばなりません。このため上水道における急速濾過では 塩素処理による消毒が必須条件になります。 また、水の美味しさの点でも緩速濾過法におよびません。
急速濾過法は砂などの濾材(最も一般的な濾材は砂ですが、そのほか無煙炭粒=アンスラサイト粒やガーネット粒などが用いられることもあります)による物理的な濾過が基本であり、除去作用は緩速濾過のように砂層の生物膜によるものではありません。
したがって、急速濾過法では清澄な水を得るために細かい径の濾材を用いると濾過抵抗が増加しますし、また、採水量を大にするために粗い径の濾材を使用すれば、濁質や微生物の漏洩が多くなり
ます。このようなことから、結果的に適度な粒径の濾材を使用することになります。このため、急速濾過法ではある程度の細かい濁質や細菌など微生物の漏洩は避けられませんし、また、増水時の急な濁質の増加に対してはすぐに閉塞してしまうなど、原水水質の変化に対する緩衝性もあまりありません。
以上のようなことから、急速濾過方式ではこのような濁質などを効果的に除去するために前段に薬品沈澱池を置いているのが普通です。
薬品沈澱池では、原水に凝集剤を加えて濁質や微生物をフロック※化し
たものを沈降分離して除去します。さらに上澄水中に残留したフロックは急速濾過装置(池)で濾過されます。しかし、細菌などは漏洩しますから、急速濾過法では塩素処理による消毒が必須条件にな
ってくるわけです。これらのプロセスが組み合わされて急速濾過システムが構成され ることになります。
※.フロック:水中に懸濁するコロイドなどの微粒子が結合して集合体となり、さらに大きくなって沈降しやすくなったり、濾過しやすくなった凝集体。(1998.9.15)