15 “ボリューム”について
DON氏は“テケテケ”を行う曲を演奏する時、ギターのボリュームをフルにします。つまり、リズム・カッティングをしている時は、“テケテケ”時とのボリュームの差をつけるために、ギターのボリュームを下げているわけですね。実際に私はベンチャーズ公演の本番前のステージにて、DON氏のギターをそのままのセッティングで弾かせていただいた事があるのですが、ギターのボリュームをフルにして“ジャラ〜ン!”と鳴らした時のアンプからの出音のデカさには驚きました。そのくらい“テケテケ”時のボリュームは大きいという事で、アンプ側のボリュームは変わらないのですから、カッティング時にはギターのボリュームをかなり絞っておかなくては大変な事になってしまうというわけです。
ベンチャーズのコピーバンドでリズムギターを担当されている方々であれば、こうしたボリュームの操作は行っている事と思います。バンドアンサンブルにおいて、個々のボリューム(音量)のバランスというのは非常に重要な部分です。メンバーの誰かの音だけが大きい、又は小さいようでは、バンドとしてのバランスは取れません。基本的にはドラマーの叩く音量に他のメンバーの音量を合わせるのが良いのではないでしょうか。特にP.Aが無いステージでは絶対です。そして、リードギターの音量と同じ位の音量を目処に、リズムギターの音量を決めます。ここで研究してきた“ケテケテ”はリヴァーブを効かせた最近のDON氏の“ケテケテ”なので、リヴァーブを使った時点で音は『遠く』感じられますし、“テケテケ”はミュートをする奏法なので、その分音量も小さくなります。ですから、リードギターより明らかにうるさくはならないハズなのです。「自分はリズムギターだから、控え目でいいや・・」なんて思ってはいけません(笑)。リードギターよりも少し大きい位でも、“テケテケ”をしっかりと弾く事が出来れば問題ないハズだと私は考えています。後は“勇気”と“努力”と“決断力”なのです(笑)。
ベンチャーズの場合、『パイプライン』、『ダイアモンド・ヘッド』、『ウォーク・ドント・ラン '64』など、“テケテケ”のある曲は、DON氏はリヴァーブのスイッチをオンにして、ギターのボリュームをフルにして演奏するわけですが、曲の中でボリュームを変える事はしません。【リズム・カッティング時=ギターのボリュームを絞った状態】と【“テケテケ”のある曲=ギターのボリュームをフルにした状態】の2パターンを使い分ければ良いわけです。“テケテケ”のボリュームは先に書きました。そこから、リズム・カッティング時にバランスが良くなるようにギターのボリュームを絞り、そのボリュームを覚える(コントロール・ツマミの目盛りを覚えておく)事により、バランス良く鳴らす事が出来るというわけです。これも非常に重要な部分です。リハーサル時などにベンチャーズをよく聴いている人にチェックしてもらうとか、ワイアレスを使用しているのであれば、客席後方に立って自分の耳で確認するなどして、基本となる音量バランスをしっかり頭の中にインプット出来ているようにしたいものです。
また、『曲の中でボリュームを変える事はしません。』と書きましたが、例えばテケテケの代表曲でもある『ウォーク・ドント・ラン '64』の“8拍テケテケ”の前の6小節(C _ Am _ F E)。ここは、それまでのミュートで“トッテッ・トッテッ・・”という弾き方と違って、コードをミュート無しで鳴らす部分です。ここを通常のリズム・カッティングと同じように弾いてしまうと、ギターのボリュームはフルになっている上にミュート無しで弾くわけですから、そこだけとても大きな音になってしまい、バランスが崩れてしまいます。このような時にDON氏は、ピックを弦に薄く(弱く)当てながらコードを鳴らしています。こうする事によって、その部分のボリュームを機械的な操作ではなく奏法によって下げ、他とバランスを揃えているわけなんですね。このテクニックは、瞬時にギターのボリュームを変えたいけれどもツマミで調節できない時に使うもので、『さすがDONさん!』という“技”でもあるわけです。細かい部分ではありますが、こういう処理を出来ているか出来ていないかだけでも、バンドのレベル的な印象は結構違ってきたりするものです。
16 今更言うのも何ですが・・・
ここまでお話してきた内容は、使用機材に関してはギターがジャズマスターやアリアのベンチャーズ・モデル、アンプはローランド社のJC-120で、スプリング・リヴァーブ・ユニットを使用するという事が前提でした。テケテケをする時のサウンドに関しては、ピック、弦の種類、そして奏法的な部分も含めて用意出来ていればある程度DON氏に近い感じが出てくるはずです。
では、リズム・カッティング時ではどうでしょうか。ピックを持ち替え、リヴァーブをオフにしてギター側のボリュームをグっと絞り、カッティング・・・。そうです。「んん?」って感じになりませんでしたか?
実はアンプ側のトーン・セッティングは変わらないので、テケテケ優先で作ってあるトーン・セッティングですと、今度はカッティング時のサウンドがDON氏っぽくないのです。特にトレブルが効き過ぎていて、『カキーン』という金属的な耳に刺さるようなサウンドになってしまうのです。どちらかと言えば、カッティングのみの曲を演奏する事が多いハズですから、これではいけません。DON氏が使用していたアンペグのヘッド+EV社のスピーカに換えたJC-120や、カノウプス社のサーフ・リヴァーブ・アンプを持っていれば、こんな事にならずに済むのでしょうが(苦笑)、ノーマルのJC-120を使用する場合は、ここがネックとなってしまいます。
では、どうするか。テケテケ、カッティング、この両方に於いてある程度満足出来るようなサウンドの妥協点を見つけ、トーンをセッティングするか、適したサウンドを出してくれる他のアンプを探すしかありません。
そこで私は、先に書いた『JC-120に装備された2つのチャンネル両方を使用し、チャンネル1をテケテケ用にセッティング、チャンネル2をリズム・カッティング用にとセッティングを変える』という方法にしたわけです。予めアンプ側でテケテケ用、カッティング用の2種類の音量・トーンの差をつけておき、足元でチャンネルを切り替えようとするもので、私としては、この方法を用いる事によって格段に演奏しやすくなったと思っていますし、サウンド的にも満足できています。しかしこれはDON氏のセッティングとは全く違ってしまうので、参考になるかどうかは分りませんが、以下に説明します。
17 こんな工夫はいかが?
私がJC-120の両チャンネルを使用(シールドを両チャンネルに挿す)する事を考えたのには、いくつかの理由があります。まずは『テケテケ時とカッティング時のトーン・セッティングを変えたい』という事、『ギターのボリュームは、フルのまま弾いていたい』という事、『テケテケとカッティングの切り替えを瞬時に可能にしたい』という事などです。トーン・セッティングに関しては前に書いた通りで、ギターのボリュームをフルで・・と言うのは、常にギター側のボリュームをフルで使えれば、カッティング時にギターのボリュームをかなり絞る場合と比べて、当然ボリュームの“可変幅”を広く使う事が出来、音量の“微調整”が行いやすくなると考えたからです。瞬時に切り替えしたいというのは、東京ベンチャーズの場合、曲中の一部でリヴァーブを効かせなければいけない箇所が出て来る事があり、リヴァーブスイッチのオン・オフとギターのボリュームの上げ下げを一瞬で同時に切り替えるのが困難だったからです。
では、私のセッティングを図で示します。

ギターはアリアの“DON”清原モデルとしていますが、VM-2002でもほぼ同様です。そこから、ラインセレクターに繋ぎます。(実際にはワイヤレスシステムを使用していますが、繋ぐ順番やセッティングは変わりません。)このラインセレクターはボリュームのプリセットとして使用しているもので(又はギターを2本用意する場合の切り替え用)、単純にリズム・テケテケの切り替えには必要ありません。よって、無くても構いません。
次にBOSSのチューナーへと繋ぎます。踏むとミュートになるようにしていますので、ライブ時には外に音を出すことなくチューニングできて便利です。これも無くても構いません。
この後、2つ目のラインセレクターに繋がります(BOSS)。ここを踏むと、リズム・カッティングとテケテケの切り替えが出来ます。モードは踏む毎に『ループA』と『ループB』に切り替わるようにセットしておき、『ループA』は“A-SEND”からスプリング・リバーブ(スプリング・キング)に入り、ジャズコーラスのチャンネル1のHIのジャックに繋がれます。こちらがテケテケのセッティングになります。『ループB』は“B-SEND”からジャズコーラスのチャンネル2のLOWのジャックに繋がれます(ジャズマスターを使用する場合は、HIのジャックに繋ぎます。)。こちらはリズム・カッティングのセッティングになります。つまりこのスイッチで、アンプ側の両チャンネルでセットしたトーンとボリュームによる別々の出力が出来るというわけなのです。
アンプのセッティングは図の通りです。基本的にボリュームの差をかなりつけており、テケテケのチャンネルはトレブルを上げ気味にして、ミドルとベースはやや下げています。リズム・カッティングのチャンネルは、ご覧の通り“ドンシャリ”にしています。また、どちらのチャンネルも“ブライト・スイッチ”はオフにしています。ただし会場の音響や、アンプをレンタルして音が悪い場合など、ごく稀にオンにする時もあります。アンプのコーラスやトレモロは使いません。ディストーションも使いません。
リズム・カッティングの音を出すチャンネル2ですが、なぜLOWに繋ぐかと言うと、HIに繋ぐと音がわずかに割れてしまうからです。これはアリアのギターの出力が大きい事が理由です。ですから、ジャズマスターを使う時には、HIに繋ぐ事の方が多いです。ギター側のボリュームが一緒の場合、LOWに繋ぐとその時点でボリュームは小さくなりますのでアンプ側のボリュームで調整してください。
1つ目のラインセレクターは、ボリュームのプリセットとして使っていると説明しました。これをボリューム・ペダルに替えても勿論構いません。私の場合は、先に書いたようにギターを2本繋ぐ時の為や、ラインセレクターだとボリューム・ペダルよりも小さなスペースで済むという理由で使っています。更に、この2つのラインセレクターの組み合わせによって以下の4つのプリセットが可能となっています。
1:リズム・カッティング
2:リズム・カッティングで、ボリューム増
3:テケテケ
4:テケテケで、ボリューム減
この4種類のボリューム・プリセットによって、ギター側の操作の煩わしさはほとんど無くなりますし、曲間での切り替えも瞬時に出来、いろいろなケースにも対応できます。
リバーブにダンエレクトロ社の“スプリング・キング”を使用しているのは、持ち込む機材を最小限にしたかったからで、この一式をエフェクター・ボードに納めた事で、飛行機や新幹線で移動する地方でのライブにも持って行く事が可能となりました。よって、持ち込みがそんなに苦にはならないライブでは、チューブワークスのリアル・チューブ・リヴァーブのユニットを使う場合もあります。“スプリング・キング”には実際にスプリングが入っています。チューブは使っていないので、音的には“チープなサウンド”とも言えますが、アンプに内蔵されたリヴァーブよりは深く効きますし、何しろリヴァーブ・ユニットよりは遥かに軽く、エフェクター・ボードに収納可能というメリットはあります。

ツマミは3つ。フェンダーのユニットと一緒でシンプルです。向かって1番左の“ボリューム”は、フェンダーのユニットで言えば“ミックス”。原音とリヴァーブ音の割合を決めます。中央の“トーン”はそのまま。そして“リヴァーブ”は“デュエル”ですね。リヴァーブの深さを決めます。そしてダ円形をした茶色い部分。これは“キックパッド”となっていて、ラバーが貼ってあります。ここを“蹴る”と、ワイプアウトの“ビチビチ・バッシャ〜ン!”という音がするというワケですが、実際は何処を蹴っても鳴ります(笑)。価格は199ドル。実際には1万6千円前後で購入可能ですが、オークションやショップのサイトをくまなくチェックすれば1万円以内での購入も可能です。ACアダプターでも電池でも使えますが、アダプターは付属していません。私はエフェクター・ボード内にあるパワー・サプライから引いています。9Vです。
17 なんて楽しい“テケテケ”!
いかがだったでしょうか。このようなセッティングも便利だし、“アリ”なのではないかと思っています。ここから更に貴方のアイディアを加えるのも良いでしょうし、アレンジして貴方に合った使いやすいセッティングを考えてみても良いでしょう。
何にしろ、まずは“テケテケ”をしっかり演奏できるようにしなくてはなりません。これからも究極の“テケテケ”修得へ向け、お互いに頑張って練習して行きましょう!最後までおつき合いいただき、有難うございました!!