バンドスコアに載らないDONさん奏法!

解説:“DON”清原 (加筆・修正・再編集:2006年7月)


第9回目『HOW TO PLAY』は、DON氏のコードフォームにおける特徴的な部分をお話させていただきます。「こう押さえれば、あなたも今日からDONさん!!」というものではないかもしれませんが、“雰囲気”は明らかにDON氏に似てくると思います。また、私の研究は基本的にはDON氏の70年代以降が中心で、特に90年代以降のプレイスタイルが基となっております。“モズライト・イヤー”のプレイスタイルにはあてはまらない部分もあるかと思いますが、何処かで参考にしていただければ幸いです。

●DON氏のコードフォームに見られる特徴

リズムギタリストであるDON氏は、その役割を独自のコードワークやカッティング・テクニックによって担っています。パーカッシブで、ド迫力のカッティングから、ボリュームを抑えた繊細なバッキングまで、単純だと思われがちなコード・バッキングの中にも実に多くのアイディアを盛り込んだ素晴らしいプレイを聴かせてくれます。私はDON氏のカッティングをコピーしていくうちに、いくつかの特徴的な事を見つけました。DON氏をコピーするにあたって、少しでも参考にしていただければ幸いです。

●DON氏の手はデカイ(笑)

DON氏は、手の平が厚く大きく、指が極太です(笑)。この“手の大きさ”または“指の長さ”というのは実に重要で、そこから生まれたプレイも数多いと思います。つまり、ある程度の手の大きさ、指の長さがないと、同じように弾けないという事です。指を開いて数フレット飛ばしの押え方や、シェイクハンド・グリップ(図-1)を使って6弦を親指で押さえるコード・フォームなどは、手が小さい、または指が短いプレーヤーには不可能になってしまう場合もあります。また、BOB氏の場合はリードプレイ時にアームバーを指に引っ掛けたままプレイする事が多いですが、これもある程度の手の大きさや、指の長さが必要だと思います。そして、軽く引っ掛かった指の振動によって、実は微妙にアームが効いたフレーズになっているところが、BOB氏のリードプレイにおける雰囲気の要因になっていると思うのです。

話しが逸れてしまいましたがDON氏の場合、その手の大きさ(指の太さ)から逆に弊害となっている部分があるようです。それはハイ・コードが押え辛いのではないかという部分で、フレット間が狭くなるハイ・コードでは、ポジションに指を置ききれない押え方があるようです。窮屈な指の置き方をしながらハイ・コードを押さえる事も勿論あるようですが、曲のコード進行やテンポによっては、工夫をしているように感じられる部分もあります。9フレットあたりを使うハイコードになると、かなりフレット間が狭くなるのでDON氏はあえてそのコードだけ5フレット以下のポジションに移動させ弾いたりしているのです。特にライブ時の演奏では顕著で、『ハワイ・ファイヴO』などは転調しながらコードを押さえるフレットが上がっていくので、この方法を用いているようです。スタジオ録音の場合はサウンドを優先とさせる為もあるのでしょう、そのまま上のフレットでもコードを鳴らす場合もあり、例えば映画“愛すべき音の侵略者達”で有名な『ストップ・アクション』では、2コ−ラス目からの3コード(E-A-D)を7フレットセーハのEを押さえたまま12フレット、17フレットまで移動させて組み立てているように聴こえるのですが・・・。徐々に曲が盛り上がる事を考えると、実に納得のいくコードポジションだと私は思いました。

●DON氏のよく使うコードフォーム

ベンチャーズの曲の多くは、あまりテンションなどを含んだコードを使用しない、いわゆる基本的なコード進行です。メジャーコードの場合、DON氏のハイ・コードにおけるフォームは(図-2)と(図-3)がほとんどです。同じくマイナーコードの場合は、(図-4)及び(図-5)になります。すでにV-fanのみなさんは御存知の事と思いますが、DON氏はほとんどシェイクハンドグリップでコードを押えません。これは、6弦から1弦までを全て鳴らそうという意識からで、シェイクハンドで押さえると6弦や5弦をミュートとする場合が多く、サウンドに低音が足りなくなってしまうからです。DON氏とBOB氏が2人でベンチャーズを始めた頃、サウンドが薄くならないようにとDON氏が考え、それが現在でもVサウンドの重要な部分となっているのです。 その他にベンチャーズの曲でよく出てくるコードとしては、7thコード、9thコード、ディミニッシュ・コードくらいでしょうか。単純なコード進行なのにそう思わせないところは、Vのアレンジの素晴らしさとDON氏のコードワークにおけるアイディア・工夫によるものでしょう。同じコードでもローコード・ハイコードを使い分けたり、ネック寄り・ブリッジ寄りで弾き分けてサウンドに変化を持たせたり、コードを鳴らす時にダウンピッキングだけで弾く、もしくはアップピッキングだけで弾くと言うように、実に多くの“センスの良さ”を感じる箇所があります。そしてこれらはテクニックとしても決して簡単な事ではないのです。リズムを維持するだけでなく、プラスアルファーの“ノリ(グルーヴ感)”を曲に与えなくてはなりません。DON氏のパートがなぜ“リズムギター”なのか・・・。それは、この事が関係しているからなのだと思うのです。

●DON氏の7thコード

(1)7thコードで“弾かない”(笑)

7thコードの場合、メジャーコードでは(図-2)のフォームから小指を離せば7thとなりますし、マイナーコードですと(図-4)、(図-5)それぞれのフォームにて小指を離せばマイナー7thとなります。しかし私の見た限りでは、譜面上では7thのコードでも、7thの音を入れないでDON氏はそのままメジャー(マイナー)コードを弾いている場合もあるようです。何を基準とするのかと言うと説明が難しいのですが、ほとんどが感覚的であると思います。雰囲気・・・と言うのでしょうか(苦笑)。例えば『十番街の殺人』ですが、最近のライブ演奏時におけるAメロに入ってDの次のF♯7は、F♯で弾いている可能性があります。

(2)7thコードをハイポジションで弾く

逆に“7thを強調する”場合もあります。DON氏はいくつかのアイディアを使っていて、まず“ハイ・ポジションで強調する”という場合です。これは7thが出てくるまで、コードを押さえているフレットが開放弦を多く含むローコード、または5フレット以下の場合に有効だと思われ、DON氏のフォームはメジャーコードの場合、先程の(図-2)から小指を離した押え方になりますが、その際に例えばC7を出すのであれば、7thコードだけを8フレットセーハ(バレー)のフォームまで一気にポジションを移動して鳴らします。例として『アパッチ』のサビ部分、F---G---C-Am----- F---G---C---C7--- のC7部をハイコードで弾く事がありますね。更にその部分をお得意の16分で“ジャガジャガ〜”と大きな音で鳴らし、アクセントにしていたりするのです(図-6)。直前のコードであるCは、ローコードです。ここからいきなりハイ・ポジションの7thコードを鳴らせば、誰もが『おぉっ!』と思うことでしょう(笑)。この場合、特に同じCコードなのでその違いを出すという意味でも効果的ですね。こういった所のDON氏の“センスの良さ”がお分かりいただけますでしょうか?


では今回はこのへんで。次回は『7thコード』の続きから『9thコード』などへも絡めたお話をさせていただきます。