広岡さんを偲んで 2
投稿者:TN&TN
投稿日:2018年12月31日(月)20時03分4秒
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たった三年間であんなに長くなった。50年分をこの調子で書いていれば大変な量になってしまう。自分史も兼ねてとという厚かましい思惑はすて、できる限り広岡さんの事だけになるようにしてみようと思う。といっても広岡さんと所属を異にするようになってからは、それぞれの交際範囲が増え、時たま交差する関係者とのことを時間立てて思い出すのは至難であり、必然的に書けることもすくなくなる。
Webで「nkysdy:広岡公夫」で検索すると広岡論文の共著回数と共著者名が分かる。それによると、169:広岡公夫、28:酒井英男、23:中島正志、10:川井直人・・・・となっている。「nkysd:中島正志」では76:中島正志、23:広岡公夫、22:藤井純子、12:川井直人、10:夏原信義・・・・であった。このデータの意味はそれなりに面白いが、広岡&中島は常に共同研究者であったと言えるだろう。
広岡さんの福井大学への転任は1971年の1月だったので、私たちは1970年中はせっせと試料採取に励み古地磁気研究に打ち込んだ。広岡、中島、夏原で出かけた北海道サンプリングは、学部4年生だった鳥居くんの協力もあり翌年にはJGG論文になった。考古地磁気による地磁気永年変化の解明のため、全国各地の古窯の焼土採取や三宅島での溶岩採取なども実施している。
1970年の9月から11月に広岡さんは川井先生と時枝さんとでイランに出かけている。その間に福井大学に行く前に学位論文を京都大学理学部に提出しろという話になり、私と夏原君で今までの考古地磁気測定結果の最終整理や図表の作成を分担した。広岡さんの必死の追い込みで「Archaeomagnetic study for the past 2000 years in southwest Japan」として結実した。この学位論文は今も考古地磁気年代推定のための最も重要な基礎資料として使われている。
この年の寒い日、アメリカからの研究者夫婦を広岡さんの車に乗せ、私は技官の田中さんの車に乗って城崎にサンプリングに出かけた。サンプリングが終わり宿に向かう夕暮れ時、田中さんが橋を見誤り、車は川へ。車は3回転して橋桁にぶつかり停止した。割れたドアの窓ガラスから脱出したが寒さに震えた。転落中、こんなことで死ぬのかと不思議に冷めた気持ちだった。広岡さんも田中さんも学生の私がもしケガをしていたら大変なことになっていたろうと、顔色がなかったことを覚えている。
忙しさに紛れ広岡さんと分かれる寂しさを紛らわしていたが出て行かれたあとの古地磁気測定室は侘しかった。夏原君や鳥居君たちとよく酒を呑んだ。夏原君の家で酔い潰れていた1971年2月10日、父が急死した。葬式には広岡さんや時枝夫婦が福井、松江から駆けつけてくれた。
広岡さんは阪大時代はビールも酒もほとんど呑まなかった。しかし、福井に奥様たちが来られるまで酒屋の2階を間借りされていたためか少しずつ酒を呑むようになられた。
1971年7月5日〜7月20日,72年5月28日〜6月20日
「伊豆・小笠原・マリアナ弧状列島に沿った古地磁気永年変化の研究および古地磁気,K-Ar,Srアイソトープ比の測定による弧状列島の成因の研究」
学振日米科学 日代表:小嶋 稔(東大助教授)、米代表 R.T Merrill(ワシントン大助教授)、座主繁男(東大技官)、広岡公夫(福井大助教授)、川井直人(阪大教授)、青木豊(東大院生)、中島正志(阪大院生)、E.E. Larson(コロラド大教授)、R.L.Reynold(コロラド大院生)、S.Levi(ワシントン大院生)
1971年と1972年には上のような日米共同研究に参加した。この時の記録は
TN&TN's Blog(2015年7月14日)「海外調査の思い出(3)−パガン、サイパン、グアム」に詳しい。
阪大・福井大は地磁気永年変化、東大は年代測定やアイソトープ比の測定、米国組は岩石組成や古地磁気とそれぞれ得意分野が少しずつ異なるが、研究への興味は重なっていて結構よいチームだった。この調査で、東大やワシントン大、コロラド大の研究者たちと一緒に調査をして、阪大グループの研究方法や技術にそれなりの自信を持てたことが最大の収穫だったように思う。
当時、火山岩の古地磁気測定で確かめたいと思っていたことを、パガンでいろいろやってみた。後に結論が出たものもあるが、検証できなかったものもある。写真をみているとそのいくつかの試行を懐かしく思いだす。広岡さんも私も若かった・・・。
為替が固定レートだったのは1972年まででこの旅行が最後でした。そして、大学院生を研究者として遇し正規の調査隊員にしてくれる最後ということでした。その後は大学院生を海外に連れて行くときは臨時に教務職員に採用した形にするようになった。学生では事故が起きたときの保障ができないからという理由らしい。
この日米共同研究は私の学位論文にも繋がるだろうという思惑が私や川井先生にはあった。しかし、琵琶湖での200mコア試料の古地磁気研究という仕事が舞い込み事情は一変した。川井研究室の古地磁気関係者全てを動員しなければならない大仕事になり私はこれにかかりきりになった。コア試料を福井大学の積雪研究室に保管して貰った。そしてそのコアを夏原君が制作したカッターで縦半分に切断し、一辺2cmのプラスチックキューブを連続して埋め込み、それをコアから取り出し残留磁化測定用試料とした。この作業を福井大学で実施したので、広岡さんには随分お世話になった。
測定しなければならない試料が6000個以上あり、皆さんの協力を仰ぐしかなかったが私はほぼ毎日、研究室に泊まり込んでいた。
結果として「Secular Variation of Geomagntic Field in the Quternary」という学位論文になった。またもや夏原君が私のドタバタを見かねて図表の作成のすべてをやってくれた。また鳥居君、浅井君、高木君にも助けて貰った。本当に皆様のおかげでした。
博士課程修了後の二年間(1973年、1974年)は日本学術振興会の奨励研究員として引き続き川井研究室で研究生活を続けた。東大海洋研と共同で、海洋からのコア試料についても測定を始めた。広岡さんとの協力関係は密接で多数の論文になって残っている。
1970年 城崎サンプリング

1971年 パガンにて

広岡さんとの共著論文
1.Kawai, N., Hirooka, K. and Nakajima, T., 1969, Palaeomagnetic and Potassium-Argon Age Informations Supporting Cretaceous-Tertiary Hypothetic Bend of the Main Island Japan. Palaeogeography, Palaeoclimatol., Palaeoecol., Vol.6, pp.277-282.
2.Kawai, N., Nakajima, T., Torii, M., Hirooka, K. and K. Yaskawa, 1971, On a Possible Land Block Movement of Hokkaido Relative to the Main Island of Japan. J. Geomag. Geoelectr., Vol.23, pp.243-248.
3.Kawai, N., Nakajima, T. and Hirooka, K., 1971, The Evolution of the Island Arc of Japan and the Formation of Granites in the Circum-Pacific Belt. J. Geomag. Geoelectr., Vol.23, pp.267-293.
4.Kawai, N., Hirooka, K., Nakajima, T., Tokieda, K. and Toshi, M., 1972, Archaeomagnetism in Iran. Nature, Vol.236, pp.223-225.
5. Kawai, N., Nakajima, T., Yaskawa, K., Hirooka, K. and Kobayashi, K., 1973, The Oscillation of Field in the Matuyama Geomagnetic Epoch. Proc. Japan Acad., Vol.49, pp.619-622.
6.Kawai, N., Nakajima, T., Hirooka, K. and Kobayashi, K., 1973, The Transition of Field at the Brunhes and Jaramillo Boundaries in the Matuyama Geomagnetic Epoch. Proc. Japan Acad., Vol.49, pp.820-824.
7.Kawai, N., Nakajima, T., Hirooka, K. and Kobayashi, K., 1973, The Oscillation of Field in the Matuyama Geomagnetic Epoch and the Fine Structure of the Geomagnetic Transition. Rock Mag. Paleogeophys., Vol.1, pp.53-58.
8.Larson, E.E., Reynolds, R.L., Merrill, R., Levi, S., Ozima, M., Kinoshita, H., Zasshu, S., Kawai, N., Nakajima, T. and Hirooka, K., 1974, Major-element Petrochemistry of Some Extrusive Rocks from the Volcanically Active Mariana Islands. Bull. Volcanolog., Vol.38, pp.361-377.
9.Larson, E.E., Reynolds, R.L., Ozima, M., Aoki, Y., Kinoshita, H., Zasshu, S., Kawai, N., Nakajima, T., Hirooka, K., Merrill, R. and Levi, S., 1975, Paleomagnetism of Miocene Volcanic Rocks of Guam and the Curvature of the Southern Mariana Island Arc. Geol. Soc. Am. Bull., Vol.86, pp.346-350.
10.Levi, S., Merrill, R., Larson, E.E., Reynolds, R.L., Aoki, Y., Kinoshita, H., Ozima, M., Kawai, N., Nakajima, T. and Hirooka, K., 1975, Paleosecular Variation of Lavas from the Marianas in the Western Pacific Ocean. J. Geomag. Geoelectr., Vol.27, pp.57-66.
11.Kawai, N., Nakajima, T., Tokieda, K. and Hirooka, K., 1975, Palaeomagnetism and Palaeoclimate. Rock Mag. Paleogeophys., Vol.3, pp.110-117.
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