高森 千穂のページ

お薦め児童文学


 お気に入りの創作児童文学を、ピックアップしてみました。
 私は本を読む時は、基本、まず図書館で借ります。そして気に入ったら、書店に注文して手元に取り寄せます。よってこのリストも、図書館でなければ見かけることのない本ばかりになっています。もし「読んでみたい」と思われた方は、まず、図書館をあたってみて下さい。それから書店に注文してみると、手に入る場合もあります。出版年の古い本でも再版されていたり、また、在庫があったりするものです。

 お薦め本は毎回追加していきます。新着分には色をつけています。詳細は「作品タイトル」をクリックして下さい。

51〜100(その2)紹介へ
100〜150(その3)紹介へ
151〜200(その4)紹介へ
201〜(その5)紹介へ

インデックス
 著者名作品タイトル
1赤木 由子二つの国の物語
2犬飼 和雄でいらぼっちの松
3今西 祐行ねことオルガン
4打木 村治天の園 第一部〜六部
5後藤 竜二故郷
6佐藤 多佳子サマータイム
7斉藤 洋海にかがやく
8しかた しん国境 第一部
9しかた しん国境 第二部
10しかた しん国境 第三部
11鈴木 喜代春十三湖のばば
12砂田 弘さらばハイウェイ
13砂田 弘東京のサンタクロース
14那須 正幹ぼくらは海へ
15にしざきしげる海にむかう少年
16古田 足日雲取谷の少年忍者
17堀内 純子ふたりの愛子
18三田 誠広いちご同盟
19山中 恒とべたら本こ
20湯本 香樹実夏の庭─The Friends
21和田 登想い出のアン
22ロバート・ウェストール海辺の王国
23ジル・ペイトン・ウォルシュ夏の終わりに
24ジル・ペイトン・ウォルシュ海鳴りの丘
25ジル・ペイトン・ウォルシュ焼けあとの雑草
26ジル・ペイトン・ウォルシュ死の鐘はもうならない
27ピーター・カーター反どれい船
28ルーマ・ゴッデントウシューズ
29ルーマ・ゴッデンバレエダンサー 上下
30イリーナ・コルシュノフゼバスチアンからの電話
31キャサリン・ストーマリアンヌの夢
32エイダン・チェンバーズおれの墓で踊れ
33ピーター・ディッキンソンエヴァが目ざめるとき
34リザ・テツナー黒い兄弟
35ジョン・ニクソンクリスティーナの誘拐
36ヴィリ・フェーアマン少年ルーカスの遠い旅
37ヴィリ・フェーアマン隣の家の出来事
38カーリン・ブラッドフォード九日間の女王さま
39デーナ・ブルッキンズウルフ谷の兄弟
40カルル・ブルックナージーノの明日
41オトフリート・プロイスラークラバート
42ジェイ・ベネット誕生日の殺人者
43ジャック・ベネットラッキー・ドラゴン号の航海
44ペーテル・ポールヤンネ、ぼくの友だち
45イザベル・ホランド顔のない男
46ジェラルディン・マコーリアン不思議を売る男
47パット・ムーンダブルイメージ
48ロイス・ローリーザ・ギバー 記憶を伝える者
49ロイス・ローリーふたりの星
50バーバラ・ワースバクレージー・バニラ

1.「二つの国の物語」 赤木 由子
★理論社 1995年
★小学校高学年以上
 「戦後50年特別企画」で、三部作が一冊になって再刊されました。
 昭和10年から21年にかけて、満州国を舞台に少女・ヨリ子の成長を描いた物語です。両親を亡くし、兄夫婦を頼って鶴岡から満州へ一人渡ったヨリ子。日本の支配力の強かった太平洋戦争前、敗戦色が濃くなり反日運動が盛んになった戦争末期、そして立場が逆転し難民となる敗戦後。ヨリ子はどの時代も自分の目で見据え、自分の頭で考え、そして《自分が正しい》と思ったことを実行するのでした。
 目の前に起こる出来事を次々と追っていき、めまぐるしく場面を切り替える手法は、「小説」というよりは「手記」であり、「文学」と呼ぶにはふさわしくないかもしれません。しかし作者の体験に基づいたこの長編作品は、読む者を離さないし、そのあまりの迫力に愕然とさせられます。「作られた物語」をはるかにしのぐ、作者自身の人生の重さを感じさせらる作品です。
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2.「でいらぼっちの松」 犬飼 和雄
★ぬぷん児童図書出版 1984年
★小学校高学年以上
 天正十年(1582年)の山梨が舞台。武田家の金座・志木金座職人の太郎は、金で永楽通宝をつくり、武田勝頼夫人にささげることが夢でした。でも、当時の金座の技術では容易なことではなく、しかも、織田家・徳川家の台頭で、武田家そのものの存続さえ危ぶまれていました。
 武田屋形から見える松の大木。その松の木に日の光があたると金色に輝き、さながら金座の部落の守り神・巨人でいらぼっちに見えました。太郎はこの松を《でいらぼっちの松》として、心の支えにしていました。でも歴史を変えることはできません。武田家は滅び、同時に太郎の夢も砕かれてしまいます。
 少年の夢と挫折──ラストで、でいらぽっちの神話をつぶやく太郎の姿が、非常に印象的でした。なお「でいらぼっち」ですが、先ごろ公開された話題の映画「もののけ姫」にも《ディダラボッチ》として登場していました。日本の神話では有名な神様?のようです。
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3.「ねことオルガン」 今西 祐行
★小峰書店 1973年
★小学校低学年向け
 野良猫ののらおじさんは、ある日捨て猫のこねこと出会います。泣いてばかりのこねこのために、えさをとってきてやったり、飼ってくれそうな家を探してあげたりします。それは、のらおじさん自身が、かつては幸せな家庭に暮らしていたのに、冷たいご主人にもらわれてからは辛い目にばかりあって、せめて幼いこねこには幸せになって欲しいと思ったからです。のらおじさんは、とうとう、こねこを飼ってくれそうな家を見つけます。それは女の子がオルガンをひいている家……かつて、のらおじさんが暮らしていた幸せな家に、とてもよく似た家でした。
 ここで紹介する本の中で、最もグレードの低い本です。私が幼い頃読んで、大変感動した本です。オルガンの鳴る家にこねこが迎えられ、のらおじさんがひっそりと去っていくラストに、わんわん泣きました。しっかりタイトルを覚えていたので、大人になってから本を手にいれることができ、今でも時々読み返しています。自分自身の体験から、こどもはこういう本が好きなんだ、と再認識する本でもあります。
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4.「天の園 第一部〜六部」 打木 村治
★偕成社文庫 1974年
★中学生以上
 大正時代初期、比企郡唐子村(現・東松山市)を舞台に、保少年の六年間を描いた物語です。児童文学版・大河小説とでもいうべき作品です。作者の打木村治さんの自伝小説でもあります。
 えんえんと少年の日常生活が繰り広げられるのですが、ちっとも飽きさせないのは、保の母・かつらや、姉・久仁子が非常に魅力的であり、また、唐子の自然描写が素晴らしいせいだと思います。この話を読んで、私は唐子に行ってみたくなりました。
 日本の作品ですが、この作品もアニメ「世界名作劇場」として見てみたいです。日常を丁寧に描いているところなど、名劇の最も得意とするところですし。
 なお続編「大地の園(第一部〜四部)」も、偕成社文庫から刊行されています。「天の園」が保の小学生編で、「大地の園」は中学生編です。
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5.「故郷」 後藤 竜二
★偕成社 1979年
★中学生以上
 北海道の野菜・果樹農家を舞台に、1950年代後半から1960年代前半までを描いた作品です。高度経済成長の波に翻弄され、離農を余儀なくされる主人公一家。作者・後藤竜二さんの自伝的小説でもあります。
 農家の子どもとして生まれた主人公の、成長にともなう心の揺れが克明に描かれています。野菜・果樹農家としての家庭の事情と、進学の希望のはざまに陥り、悩みながらも、懸命に自らの生き方を模索する主人公《ぼく》。しかし、農民の生活を嫌い、都会でゆるゆると生きることを選んだ《ぼく》は、離農という事実を前にすると、ひどく戸惑うのでした。
 北海道の厳しい自然や、近代化の押し寄せる世情の中でも、したたかに生きる農家の姿。町で生まれ育った私には、ただただそのたくましさに驚かされ、そして申し訳なく思うばかりでした。
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6.「サマータイム」 佐藤 多佳子
★偕成社 1993年
★小学校高学年以上
 市民プールで、主人公・進が出会った二歳上の少年・広一。自動車事故で片腕を失った広一は、ピアニストの母親譲りの才能をもって、片手でピアノを弾きます。広一とピアノに興味を示す進。そして進の姉・佳奈。「サマータイム」の調べにのって、三人の時は、駆け足で通り過ぎていきます──
 児童文学というよりも、少女小説といった方が近いです。それが新鮮で、すらすらと読めました。主人公の少年たちが非常に私好みの美少年系で、児童文学にありがちな「典型的な少年」になっていないところに好感がもてました。
 「九月の雨」他、主人公を変えての連作が続きますが、だんだんと変に気取った文章になってしまって、魅力が半減してしまったのが残念。
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7.「海にかがやく」 斉藤 洋
★講談社 1994年
★小学校高学年以上
 昭和20年代の終わり。夏のある日、海辺の町の漁師の子・二郎の前に、東京から一人の少女がやってきます。船元の厳造じいさんの孫娘・夏生。頭がよくて気が強く、私生児であることにこだわりを持つ夏生とともに、二郎は、その後の人生を左右するほどの、思い出深い夏の日を過ごすのでした。
読んでいて、潮の香りが感じられました。素朴で正直な漁師の子どもたち。何歩も前を歩いている都会の子・夏生。海に住むという龍神。無礼講の夏祭。そんな風景の中で、子どもたちが、なんと生き生きとしていることか。久々に「日本児童文学は面白い」と思った作品でした。
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8.「国境 第一部・1939年 大陸を駈ける 」 しかた しん
★理論社 1986年(1995年6月に三部作が1冊にまとめられて再刊)
★中学生以上
 読書は心を豊かにする──この言葉があてはまるような本でした。「国境」三部作を読んでいた日々は、「読んでいる」という事実だけで、周囲が違ってみえましたし、毎日の生活に張りがでました。
 15年にわたる日中戦争を題材に、日本軍の横暴に耐え抜いた朝鮮・蒙古民族の誇りをテーマにした物語です。よって、決して楽しい本ではありません。しかし、非常に読み応えのある大河小説でした。一応児童文学の形式をとってはいますが、一般向け小説といっても差し支えないです。ロマンやサスペンスもうまく盛り込まれ、読者を飽きさせません。是非、大河ドラマや、お正月の12時間時代劇として見てみたいものです。
 なお、初版(三部作時代)の挿絵は、漫画家・真崎守の手によるものです。児童文学の挿絵に真崎守をもってくるあたり、並の本ではないことを証明しています。そして、この挿絵が、またとっても素敵なんです。
 第一部は1939年。日中戦争が泥沼化し始めた頃が舞台です。
 主人公・昭夫は、当時日本領だった朝鮮・京城に暮らす、京城帝国大学予科生。ある日、満州軍官学校に入学した親友・信彦が、演習中に死んだという知らせを受けますが、昭夫はどうにも信じられません。  そこへ信彦の妹・和枝に「信彦は実は生きている。兄を探してほしい」と言われます。満州のためなら死ねる──そう言って大学予科の入学を突然やめ、軍官学校へ入学した信彦。信彦の死には、何か秘密がある。直感した昭夫は、親友の面影を追って満州へ旅立ちます。  昭夫が、五族──日・満・漢・蒙・鮮──全民族の共和制国家だと思っていた満州。  しかし目の当たりにしてみると、そこは日本軍が暴力で占領した地、言わば、「無理矢理大地に国境線を引いて、日本の領土とした地」でした。そして、そんな日本に対して、密かに反乱を企てる、蒙古民族の姿を知るのでした。
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9.「国境 第二部・1943年 切りさかれた大陸」 しかた しん
★理論社 1987年(1995年6月に三部作が1冊にまとめられて再刊)
★中学生以上
 「国境」第二部は1943年。日中戦争から太平洋戦争へと拡大し、なおかつ、日本の敗戦の色が濃くなった時代です。
 昭夫は城大理工学部三年生に進学。仁川(インチョン)の陸軍造兵廠で、「城大学徒報国隊」として勤労奉仕をしています。学生の身ながら、技師の立場で、朝鮮人工員を使って小銃を作る毎日です。
 技術は国境を越える──そう思って機械工学を専攻したはずのに、数年のうちに周囲は戦時色一色となり、その流れに身を任せるように日々を過ごす昭夫。しかし、造兵廠内で、朝鮮人工員の逃亡が続き、その後ろには強力な抗日組織があることに気づいた時から、昭夫の周囲が少しずつ変わっていきます。
 何が正義なのか。何が真実なのか。
 悩む昭夫は、流されるままの自分の生き方を見つめ直し、抗日運動へと傾いていくのでした。
 全3巻のうち、もっともスリルとサスペンスにあふれる巻です。
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10.「国境 第三部・1945年 夏の光の中で」 しかた しん
★理論社 1989年(1995年6月に三部作が1冊にまとめられて再刊)
★中学生以上
 「国境」 第三部は1945年。8月14日、日本の敗戦直後の朝鮮が舞台です。主人公も昭夫から、城大予科生・公雄に替わり、昭夫はサブキャラとなります。
 敗戦とともに、日本軍が強引に大陸に引いた国境線は、あっという間に消え失せます。しかし、消えた国境線に替わり、また新たな国境線が、朝鮮半島に引かれようとしていました。38度線──ソ連とアメリカの駆け引き、そしてその駆け引きの道具として、昭夫の設計した小銃の図面が浮上します。
 なぜこのシリーズが「国境」という題名を持っているのか。第3巻を読むと、とてもよくわかります。そうか、作者の言いたかったことはこれだったのか、としみじみと思わせる巻です。最後の最後まで、どういう展開になるのか、まったく読めませんでした。作者のしかたしんさんの、並々ならない力量を感じました。
 「国境」三部作。今後、いかなる作品と出会おうとも、私の中で、児童文学ベスト10には、間違いなく入る作品となりました。ずっと手元に置いておきたい(墓場までも連れて行きたい)本です。
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11.「十三湖のばば」 鈴木 喜代春
★偕成社文庫 1981年
★小学校高学年向き
 青森県津軽半島の十三湖のそばで、大正・昭和の時代を生き抜いたおばあさんの一代記。飢えと貧しさから、夫や子どもを次々と亡くしつつも、淡々と生き続けるばば。津軽弁の語り口がやさしくもまた、ものがなしい作品です。
 後書きに、この作品を読んだ小学生の少年の感想文が載っているのですが、これがまた素晴らしいのです。私は作品以上に、読書感想文に感動しました。作品を越えた感想、というものもこの世に存在するのだなぁ、と思ってしまったのでした。
 十三湖は、偶然にもこの作品を読む数年前に訪れていましたが、真夏であるにもかかわらず、人の姿もほとんどない淋しい湖でした。
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12.「さらばハイウェイ」 砂田 弘
★偕成社文庫 1976年
★小学校高学年向き
 ハードカバー版も偕成社から出版されています。この本はかなり古いので、手に入りにくいのが残念です。
 タクシー運転手の竹内青年は、ある日仕事中に子どもをはねてしまいます。ハンドルがうまく効かなかったのが原因だったのですが、「欠陥車だった」と訴えても、誰にも耳を貸してもらえません。はねた子どもの入院費を払うために、そして欠陥車を作った自動車会社に復讐するために、竹内青年は誘拐を計画します……
 決してハッピーエンドではありませんが、欠陥自動車問題など、社会の不条理を描いており、児童文学としては異色の作品です。
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13.「東京のサンタクロース」 砂田 弘
★理論社 1971年
★小学校高学年向き
 この本は新版で、初版は1961年ですので、35年も前の作品になります。でも私が今まで読んだ児童文学の中で、最も感動した本です。私が創作する上で、目標としている作品でもあります。
 なにぶん古い本ですので、一般書店では売られていませんし、所蔵している図書館も少ないです。でも、もし見かけたら是非読んでいただきたいです。
 舞台は昭和30年代の東京。祖母と二人暮らしの貧しい少年《ルパン君》。ルパン君は、《東京ルパン》と名乗り、金持ちからスリをして暮らしています。その《東京ルパン》を追う、青年新聞記者の徳永さん。少年と青年のぶつかり合いをとおして、当時の社会問題を浮き彫りにしています。
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14.「ぼくらは海へ」 那須 正幹
★偕成社文庫 1992年
★小学校高学年以上
 家庭にそれぞれ問題のある五人の少年たち。進学塾に通う誠史・雅彰・勇・邦俊と、塾には行っていない嗣郎。放課後、塾の始まる時間まで五人は、工事の中断した埋め立て地の小屋で、自分勝手にそれぞれの時間を過ごしています。ある日五人は、船を作ることを思い立ちます。自分たちで作った船で、海に出ること。少年たちは夢をふくらませます。
 少年たちは《海》に何を見出したのか。一度は同じ夢を見ながら、ある者は夢を捨てて現実に帰っていき、ある者は事故で命を落とします。そして、死を暗示させて、物語は終わります──
 那須正幹といえば、ユーモア児童文学「ズッコケシリーズ」が有名です。私もユーモア作家だと思っていたのですが、この作品を読んで、那須さんに対する認識が一変しました。80年代の問題作と言われた作品ですが、読んでみて納得。日本児童文学の中では、重厚な作品の一つです。
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15.「海にむかう少年」 にしざきしげる
★講談社 1994年
★小学校高学年向き
 母親を交通事故で亡くしたナオ少年は、都会の家を一人離れ、おじ夫婦の入江の町で暮らすことになります。母の死を受け入れられず、また、父からも見放されたように感じるナオ。そんなナオが唯一興味を持ったのは、岬の洞穴に住むというカワウソでした。新しい友人・セイとともに、カワウソを捕まえるべく、「立ち入り禁止」の洞穴へ入って行くナオでしたが……
 入江での遊びや生活が生き生きと描かれていると同時に、海の怖さ、厳しさも感じました。そしてこの厳しさが、この作品のテーマ「生と死」をうまく引き締めていると思いました。若い頃遠洋漁船に乗っていた作者ならではの作品ではないでしょうか。
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16.「雲取谷の少年忍者」 古田 足日
★フォア文庫 1986年
★小学校高学年以上
 戦国時代。孤児の小助・大助兄弟は、雲取谷の忍者に拾われます。少年忍者に成長した二人は、忍者同士の戦いに巻き込まれます。しかし、支配者に言われるがままの戦いに、兄弟たちは疑問を抱き始めます。そしてその疑問は、兄弟に、それぞれの望みを抱かせます。──兄・小助には「侍になって人を支配すること」を、弟・大助には「百姓になって自分で自分の生活を築いていくこと」を……
 忍者物といっても、いわゆるエンターテイメントとは異なったリアルな作品です。被支配者としての百姓忍者の姿。その姿を通した社会批判。それでいて、面白さはちっとも失われていない。私が児童文学の可能性を知った作品でもあります。
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17.「ふたりの愛子」 堀内 純子
★小峰書店 1992年
★小学校高学年以上
 肺結核で療養所で暮らす愛子。病院での十五歳から十七歳までの愛子の生活と、その心の内が、鮮やかに、そしてとても美しく描かれています。
 満州からの引き揚げ途中に両親を亡くし、育ての祖母も亡くし、身寄りといえば若い伯母一人。孤独な愛子を支えるのは、好意を示してくれる病院の若い先生と、心の中に住む「もう一人の愛子」だけでした。先生との淡い恋、そして満州での記憶を紐解いていくうちに、愛子は自立の道を見つけていきます。
 通常は私は少年が主人公の作品に共感を覚えるのですが、こんなにも素直に少女の心の中に入っていけた物語は初めてでした。
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18.「いちご同盟」 三田 誠広
★集英社文庫他 1991年
★中学生以上
 この本は一般書の扱いです。でも私は児童文学(ヤングアダルト)だと思っています。
 死を夢見る中学三年生の主人公。繊細さゆえに他者との係わりがうまくいかないのですが、癌で死にゆく少女と係わった時から、少しずつ変わっていきます。少女の《死》という共通の悲しみを体験することで、初めて他者との関係を築き、生きていこうとする……というストーリーは、私には非常に鮮烈でした。夭逝する少女を登場させるなど、ともすれば陳腐な作品になりそうな題材を、少年の成長ストーリーに仕上げたところは、見事としか言いようがありません。
 私はこの作品で三田誠広さんのファンになりました。ちなみに「いちご同盟」は有名な作品で、映画にもなりましたし(私は見ていませんが)、中学三年生用の教科書(東京書籍)に部分的に掲載されています。中学生の「夏休みの課題図書」にも選定されているようです。中学生たちが「課題図書」「教科書の本」として敬遠しないことを願ってしまうのでした。
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19.「とべたら本こ」 山中 恒
★理論社(名作の愛蔵版) 1977年
★小学校高学年向き
 この本は、初版が1960年ですから、35年以上前の作品です。「名作の愛蔵版」は第3版で、しかも1992年に第18刷となっていますから、いかに息の長い作品であるかがわかると思います。
 父親が競馬で大穴をあててから、吉川カズオの家庭は崩壊します。父親は酒ばかりを飲んで働かなくなり、母親はそんな父親に腹をたて、カズオに当たり散らします。家を飛び出したカズオは、「山田カズオ」や「高橋カズオ」として、数奇な運命をたどることになります。他人になりすましたカズオが見た物。それは、大人世界の汚さであり、世の中の不条理でした──
 今でこそ、児童文学で「離婚」や「家庭崩壊」はタブーではなくなり、それどころか流行であるかのようにさえ感じますが、35年以上も前にこのような作品が描かれていたことは驚きです。しかも、当時の世相を踏まえ、どこまでも子どもの視線を貫いていながら、作者自身の怒りを痛烈に感じるのです。これほどの《痛み》をもった作品は、最近の児童文学に、果たしてあるのでしょうか。
 現代の子どもたちに、どこまで受け入れられるか不安は残りますが、少なくとも25年ほど前の子どもは、受け入れることができました。この作品は約25年前に、テレビドラマ化されているのです。そして、当時小学校低学年だった私は、一生懸命見ていました。少し難しい内容で、今一つ理解できていなかったのですが、今回この本を読んで、断片的に頭の片隅に残っていた映像が、一つのストーリーとして結ばれました。
 おためし、おためし、とべたら本こ〜
 テレビドラマ化された時の主題歌です。ここの部分しか覚えていませんが、今でも時々思い出したように口ずさんでしまいます。
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20.「夏の庭─The Friends」 湯本 香樹実
★福武書店 1992年
★中学生以上
 「死んだ人が見たい」それが、ぼくと、山下と、河辺の思いつきでした。近所の「もうすぐ死にそうな一人暮らしのおじいさん」を見張ることに。はじめは探偵きどりで、おじいさんの家を探ったり、おじいさんの尾行をする三人でしたが、やがておじいさんと言葉を交わし、家の中に入りこむようになってからは、《友情》が芽生えていきます。
 おじいさんと三人の少年たちの心のふれあいが、とても温かく描かれています。離婚やキッチンドランカーなど現代の問題を描きながらも、非常に懐かしい香りのする作品です。ちょうど、私が幼い頃に見た「児童文学映画」のようで、一つ一つの場面が鮮やかに目の前に浮かびました。作者が、ラジオ・テレビドラマの脚本を執筆しているせいでしょうか。最近の児童文学の中では、もっとも感動した作品です。
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21.「想い出のアン」 和田 登
★岩崎書店 1984年
★中学生以上
  この本は、当初「青い目の星座」として1980年に岩崎書店より刊行されました。1984年に映画化されるにあたって「想い出のアン」に改題されました。
 北信濃のサナトリウムを舞台に、周作少年とカナダ人の少女・アンを主人公に、昭和11年から20年という、戦争の時代を描いています。カナダのキリスト教徒たちの支援によって建てられたサナトリウム。戦時色が濃くなる中、「敵対国の宗教キリスト教」ということで徐々に迫害を受けていきます。そしてアン一家もまた、強制連行されてしまいます……
 映画「想い出のアン」も見ましたが、信濃の四季を背景に、たいへん美しくも悲しいものでした。映画と本では若干ストーリーが異なっています。私は本のストーリーの方が好きです。
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22.「海辺の王国」 ロバート・ウェストール
★徳間書店 1994年
★中学生以上
 1942年イギリス北部。ドイツ軍の空襲で家族と家を失ったハリーは、海辺の町を犬とともにさまよいます。あてのない旅で出会う人々。楽しい体験。辛い体験。そして、旅の終わりにハリーは、《王国》とも呼ぶべき、自分の居場所を見つけます。でも、現実に立ち返る時、その王国は、無残にも打ち砕かれてしまいます……
 読んでみて、ロバート・ウェストールの最高傑作、児童文学の歴史に残る作品、と賞されているわけがわかりました。それほどまでに、読み応えのある作品です。読みながら、何度も何度も涙しました。そして、あまりにも厳しすぎるラスト。とても言葉では言い表せません。
 戦争文学は、日本児童文学の得意とするところだと思っていましたが、海外の戦争児童文学は、もっともっと、その上をいくのだな、というのが正直な感想です。
同一作者の他作品 「お薦めその2」にもあり
同一作者の他作品 「お薦めその4」にもあり
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23.「夏の終わりに」 ジル・ペイトン・ウォルシュ
★岩波書店 1991年
★中学生以上
 イギリス・コーンウォール半島の海辺の別荘で、夏の終わりをすごすマッジとポール。毎年夏に、いとこ同士の二人は必ず祖母のこの別荘ですごすのですが、今年の夏はいつもの夏と少し違っていました。マッジが少し大人になったこと、そして別荘の隣に、盲目の大学教授が避暑に来ていたこと──
 文体が現在形となっており、不思議な雰囲気がありました。ストーリーを楽しむというよりは、瞬間瞬間の文章表現に酔う、といった感じです。しかし、まだ子どものポールと、少し大人になったマッジのすれ違い、また最後のどんでん返し(ってほどではないが)は印象的でした。
 ちなみに、イギリスの文学を読むと、「海辺の町」=「コーンウォール」というぐらい、この地名はよく目にします。イギリス本島西南部のこの地、是非、一度訪ねてみたいです。(でも日本発の既成イギリスツアーに組込まれているのは、未だ見たことない……)
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24.「海鳴りの丘」 ジル・ペイトン・ウォルシュ
★岩波書店 1991年
★中学生以上
 「夏の終わりに」の続編です。「夏の終わりに」から数年。祖母が亡くなって海辺の別荘の女主人となったマッジは、夏休みの間、別荘を学生の読書会に提供します。教授の息子・パドリックと、その妹のダウン症児のモリー。モリーをめぐるパドリックと両親の葛藤を通して、マッジは徐々にパドリックへ惹かれていきます。
 前半は退屈でしたが、後半、物語が動き出してからは、一気に読めました。少女マッジの物語に、唐突に老婆マッジが姿を現す書き方は、独特の雰囲気を醸し出しています。(日本児童文学でこんな書き方をしたら、おそらく一蹴されるに違いない……) ラスト、老婆・マッジのつぶやきには、涙が止まりませんでした。
 この本を手に取って読まれた方は「なぜ、これが《お薦め》なんだ?」と思われるかもしれません。倫理的に問題のある場面もありますし。私もそう思いつつこの文章を書いていますが、全編読み終わった後の、不思議な余韻と満足感。やはり読み応えがある、と言わざるを得ないのでした。
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25.「焼けあとの雑草」 ジル・ペイトン・ウォルシュ
★福武文庫 1990年
★中学生以上
  1940年。第二次世界大戦下のロンドンが舞台です。疎開先から逃げ出した十五歳の少年・ビルは、空襲のさなか、地下鉄駅で少女・ジュリーと出会います。ジュリーもビルと同じように、疎開先へ行く船から逃げ出していました。二人は「保護」の手を逃れ、空き家で二人だけの生活を始めます。お互い本名を明かすことも、それまでの生活を明かすこともなく、まるでままごとのような生活でしたが、ビルには充実した日々となりました……
 ウェストールの「海辺の王国」と同じく、第二次世界大戦下のイギリスを舞台にした物語です。大人の保護を逃れ、子どもが空襲下の町で暮らしていく、というストーリーも似てはいますが、「焼けあとの雑草」は、戦争を背景とした、少年と少女の心の交流の物語です。ジュリーを思うビルの心、そして切ないラストと、戦争物というよりも青春物と呼ぶ方がふさわしい気がします。
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26.「死の鐘はもうならない」 ジル・ペイトン・ウォルシュ
★国土社 1985年
★小学校高学年向き
  1665年9月。イギリスのダービーシャー州イーアム村で発生したペストは、1年余りの間に村人の八割の命を奪いました。村人たちは、ペストに怯えながらも、村の中にこもり、病気の蔓延を防ぎます。この本は、そんな歴史的事実を踏まえたものです。
 隣の村に恋人のいる少女・モールの手記という形で、物語は進みます。次々と死んでいく友人、隣人、家族。病気をめぐって意見の対立する、清教徒の牧師と国教徒の牧師。病気を前にして、村人たちは激しく揺れ動きます。
 中盤までは若干退屈ですが、後半は一気に読めます。そして印象的なラスト。J.P.ウォルシュの作品は、どれもラストが圧巻なので気に入っています。
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27.「反どれい船」 ピーター・カーター
★ぬぷん児童出版 1983年
★小学校高学年以上
  19世紀初頭・イギリス。両親を亡くした15歳のジョン少年は、自立するために、見習い仕官として海軍の軍艦に乗り込みます。西アフリカ艦隊《センチネル号》。奴隷船を取り締まる船です。
 見習いに対するいじめ、奴隷船《ゆうれい号》との戦い、奴隷・リアポとの出会い、遭難……数々の事件をとおして、ジョンは一人前に成長していきます。
 ヨーロッパ諸国・アメリカの植民地政策と、イギリスの奴隷廃止政策。重い歴史を背景にした作品ですが、重厚であると同時に、はらはらどきどき、といった娯楽的要素も含まれています。やや文章が読みづらいのが難点ですが、全編読み通すと、なんともいえない満足感が得られます。(これはピーター・カーターの作品、すべてに言えることですが)
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28.「トウシューズ」 ルーマ・ゴッデン
★偕成社 1996年
★中学生以上
 「バレエダンサー」(次の項で紹介しています)の姉妹編です。イギリス王立バレエ学校が舞台で、登場する先生は「バレエダンサー」と共通していますが、主人公等は異なります。
 優れたバレエダンサーを母にもつ主人公ロッテ(シャーロット)。生まれた時に母と死に別れ、ロンドンのバレエ学校兼小劇場《ホルバイン》で、衣装係をしている伯母に育てられます。《ホルバイン》でその才能を認められたロッテは、王立バレエ学校に進学し、バレエダンサーへと成長していきます。
 前作「バレエダンサー」に比べ少女小説的な色合いが濃いですが、その分、古典名作に近い雰囲気になっていて、一気に読めました。
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29.「バレエダンサー 上下」 ルーマ・ゴッデン
★偕成社 1997年
★中学生以上
 97年7月に再刊されました。バレエダンサーを目指す姉弟の話です。生まれながらにバレエダンサーになることを約束された姉・クリスタルと、天性の才能を持ちながら、家族の応援を得られずに、孤独にレッスンを続ける弟・デューン。すぐれた才能を持ちながらも、性格的に歪んだクリスタル。いちずにバレーにうちこむデューン。ロンドン下町のバレエ学校や王立バレエ学校を舞台に、二人の成長をじっくりと描いています。
 こういう作品こそが、《アニメ・世界名作劇場》にでも登場しないかと願っているのですが・・・・(名劇自体が無くなってしまいましたけど)
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30.「ゼバスチアンからの電話」 イリーナ・コルシュノフ
★福武書店 1990年
★中学生以上
 17歳のザビーネのボーイフレンドはゼバスチアン。3歳年上の学校の先輩です。自分勝手でバイオリンのことしか頭にないけれど、繊細さにひかれ、彼に夢中になるザビーネ。「環境に無害の薬を作りたい」という夢を捨て、銀行員になってお金を稼ぎ、ゼバスチアンが音楽で身を立てるバックアップをしようとします。でも、そうやって、ゼバスチアンに尽くそうとすればするほど、彼はザビーネから離れていきます。
 「君の夢はどうなっちゃったの? どうして化学の実験をやめちゃったの? そんなにべたべたされるのは嫌だよ」
 ゼバスチアンと別れ、自分自身を見つめ直すザビーネ。同時に、依存関係で結ばれている両親の姿も見つめ直します。
 「私の本当にやりたいことは何?」
 《女性の自立》なんて陳腐な言葉では片づけたくない、少女の芯の強さを描いた小説です。ザビーネの揺れる心、そして決心。見事に描かれています。
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31.「マリアンヌの夢」 キャサリン・ストー
★富山房 1977年
★小学校中学年以上
 マリアンヌは10歳の誕生日に重い病気にかかり、ベッドで寝たきりの生活になります。ひいおばあさんの裁縫箱でみつけた鉛筆で、スケッチブックに絵を描いて退屈さを紛らわすマリアンヌ。ところがその鉛筆で描いたものは、夢の中で現実になるのです。家の絵。家の住人、マーク少年。家を取り巻くいやらしい石たち。マリアンヌの現実と夢を交錯させながら、物語は展開していきます。
 絵に描いた物が、夢の中で現実の物となる──読んでいて、大人の私ですら、ものすごく怖かったです。オカルトチックな展開がとても魅力的で、登場人物たちが恐怖にかられる心理描写も見事。それでいて、病気の子どもを優しく見守る作者の温かな視線を感じる作品です。読中の恐ろしさに対照して、読後はとてもさわやかで感動しました。(ちょっと古い本であるせいか、訳はイマイチですが)
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32.「おれの墓で踊れ」 エイダン・チェンバーズ
★徳間書店 1997年
★中学生以上
 同性愛──少年愛を扱った作品です。作品中では「心の友」と婉曲表現されていますが、ここに描かれているのは、まぎれもなく少年同士の友情ではなく恋愛です。
 16歳のハル少年は、ボート事故から救ってくれた18歳のバリーに惹かれ、間もなく二人は恋に落ちます。バリーが生活のすべてになるハルと、次第にハルが重荷になっていくバリー。ある日二人は口論となり、喧嘩別れしたすぐ後、バリーはバイク事故で亡くなってしまいます……
 テーマ自体は男女間ならば割とよくあるものかもしれません。しかし、これが少年同士だと、かくも美しくそして悲しく胸に迫るのはなぜでしょう。バリーの墓をとりつかれたように掘り起こすハル。誓いどおりにバリーの墓で踊るハル。こういう描写があるせいでしょうか。
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33.「エヴァが目ざめるとき」 ピーター・ディッキンソン
★徳間書店 1994年
★中学生以上
  十三歳の美少女・エヴァは、交通事故で瀕死の重傷を負います。二百日余り眠り続けた後、目覚めてみると、チンパンジーの姿になっていました。脳をチンパンジーに移植され、人間とチンパンジーの二つの心を持つことになったエヴァは、進化の限界に達し、後退を始めた人間社会の中で、「新しい存在」としての自分の居場所を見つけていきます。
 地上のほとんどの自然が破壊され、高層ビルに住む人類は、シェーパーと呼ばれる立体テレビの前で時間の大半を過ごしている──そんな未来社会で、チンパンジーのエヴァが選んだ生き方とは……進化と退化。考えさせられる本です。
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34.「黒い兄弟 上下」 リザ・テツナー
★福武文庫 1995年
★小学校高学年向け
 世界名作劇場「ロミオの青い空」の原作です。福武書店からハードカバー版も出版されています。文庫版は、表紙がアニメの絵柄となっています。
 イタリア国境に近いスイス・ソノーニョ村の少年・ジョルジョ。旱魃で生活が逼迫した結果、ジョルジョはイタリア・ミラノの煙突掃除として、人買いに売られます。
 ミラノで最低の生活をしながら働くジョルジョ。同じく人買いに売られた煙突掃除の少年たちとともに秘密結社「黒い兄弟」を結成し、友情を支えに、辛い現実を乗り越えていきます。
 アニメ「ロミオの青い空」は、前半は原作にかなり忠実だったのですが、後半はオリジナルに作り変えられていました。でも、私としては、ストーリーとしての面白味は、やはり原作の後半にあると思います。
 というわけで「ロミオの青い空」を見たことのある方には、是非手にとっていただきたい一冊です。
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35.「クリスティーナの誘拐」 ジョン・ニクソン
★評論社 1984年
★小学校高学年以上
 「評論社 SOSシリーズ」の一冊です。
 石油財閥ラティモア家の一人娘・クリスティーナが誘拐されます。数日間の監禁のあと、無事解放されますが、なんと犯人はクリスティーナ自身となっていました──祖母から大金を巻き上げるために、自ら誘拐を企てたのだ、と。いくら否定をしても、誰もクリスティーナの話に耳を傾けてくれません。
 クリスティーナは一人で真犯人を捜し始めます。そしてその過程で気づきます。家族の歪み、大人社会の汚なさ、それからお嬢様としての自分自身の甘え──
 スピーディな展開と巧みな構成で、読み出したら止まりませんでした。それとともに、エンターテイメントの要素を十分にもちながら、主題《自分が自分自身であるために》が、無理なく伝わってくる秀作です。
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36.「少年ルーカスの遠い旅」 ヴィリ・フェーアマン
★偕成社 1991年
★中学生以上
  1870年頃。ドイツの田舎に住む、14歳の少年・ルーカス。ルーカスの父・カールは、ルーカスが幼い頃に、莫大な借金を残して失踪。祖父がその借金を返すために働いています。思うように借金の返済をできない祖父は、大工の棟梁として、アメリカに渡り大金を稼いでくる計画をたてます。ルーカスも、祖父の大工仲間とともに、見習いとしてアメリカに行く決心をします。自分の跡をつがせたい祖父は、喜んでルーカスを連れて行きます。
 旅の途中で、そしてアメリカでの大工の仕事をしている最中、ルーカスはある噂を耳にします──父もアメリカに渡っているらしい。それも画家として…… 顔も覚えていない父親ですが、ルーカスはその面影を懸命に追います。その過程で、ルーカスは父と祖父の間にあった葛藤に気づきます。──父を大工にしたかった祖父と、画家になりたかった父── 
 祖父と父の生き方をとおして、自分の生き方を見つけていく少年・ルーカス。でも、この物語は少年の成長物語というよりも、《親子の葛藤》が主題の気がします。そういう意味では、児童文学としてより、大人の小説として読んでみると面白いかもしれません。
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37.「隣の家の出来事」 ヴィリ・フェーアマン
★岩波書店 1991年
★中学生以上
 ドイツののどかな田舎町で起こる少年殺人事件。その殺人容疑は、《ユダヤ人だから》という理由で、近くに住むジギ少年一家にかかります。村人の心の中で徐々にふくらんでいくジギ一家への差別と迫害。それはついに、無実の一家を村から追い出す結果となります。その中で、ジギと最後まで友情をつらぬく少年カールの姿が、感動的に描かれています。
 ナチス台頭の少し前の時代を背景に、善良な市民が狂気に突き動かされていく様。そして迫害の中でもくじけない少年たちの友情。重厚な作品です。
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38.「九日間の女王さま」 カーリン・ブラッドフォード
★すぐ書房 1991年
★中学生以上
  1554年2月12日。エリザベス女王の2代前のイングランド女王・ジェーンの処刑の日でした。貴族たちの権力抗争に巻き込まれ、望まぬ女王の地位についたものの、たった9日間でその座を追われ、十六歳で生涯を閉じた悲劇の女王・ジェーン。歴史書ではほんの一、二行しか触れられないジェーンの、九歳から十六歳までのいきざまを描いた本です。醜い権力争い、自分の娘のことも権力を得るための道具としか扱わない両親、その中で自分を見失わず気高く生きたジェーンの姿に胸を打たれます。世界史の苦手な私ですが、イギリス史をひもとこう、という気を起こさせた本でした。
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39.「ウルフ谷の兄弟」 デーナ・ブルッキンズ
★評論社 1984年
★小学校高学年向き
 両親を亡くしたバート・アーニー兄弟。二人は伯父の家に引き取られますが、この伯父が生活破綻者で、二人を置き去りにして姿をくらましてしまいます。兄弟が離れ離れになってしまうことを恐れたバートは、伯父さんが行方不明であることを隠し続け、とぼしいお金をやりくりして、なんとか二人だけの生活を続けようとします。そんな時、伯父の家のそばで殺人事件がおこり、兄弟たちが事件に巻き込まれます……
 サスペンスタッチの物語ですが、その背景には兄弟愛があり、また秋から冬にかけての美しい自然描写もあり、とても温かな気分になれます。
 評論社のSOSシリーズの一冊ですが、非常に面白い当シリーズの中でも、私のイチ押しの作品です。
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40.「ジーノの明日」 カルル・ブルックナー
★福武文庫 1990年
★中学生以上
 三十年ほど前のイタリア・ナポリが舞台です。孤児ジーノ少年は、建築技師になるために田舎から大都会・ナポリに出てきます。しかし頼りのおばの家はなく、またおばも行方不明でした。路頭に迷ったジーノは、浮浪児の仲間に入れられ、スリや乞食まがいのことをさせられます。でも、ジーノの夢は建築技師になること。ジーノはなんとか浮浪児たちから離れ、自分の夢を実現させようとします。
 ナポリの浮浪児たちの生活がとてもリアルに描かれています。そして過酷な環境にありながらも、夢をつかもうとするジーノの姿は、とてもさわやかです。
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41.「クラバート」 オトフリート・プロイスラー
★偕成社 1980年
★中学生以上
 ドイツとポーランドの国境地方に伝わる「クラバート伝説」に基づいた物語です。非常に有名なファンタジー作品です。偕成社文庫(上下)版もあります。
 門付けをして暮らしていた十四歳の少年・クラバート。ある日夢で聞いた声にさそわれて、水車場の見習いになり、また親方から魔法を習うようになります。楽な生活を続けるクラバートですが、年に一度、仲間が一人ずつ死んでいくという風習、そして親方の悪事を知っていくうちに、親方との対決を決意します。
 「一年目」「二年目」「三年目」という形式をとり、同じ日々でありながらも、微妙に違う生活を描く構成は、実に見事です。美しくもおどろおどろしい版画の挿絵も見事。この本も、現在の私の「児童文学ベスト10」に入る作品です。
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42.「誕生日の殺人者」 ジェイ・ベネット
★評論社 1984年
★小学校高学年向き
 これも「評論社 SOSシリーズ」の一冊です。
 シャノン少年は、17歳の誕生日に、一通のバースデー・カードを受け取ります。《誕生日おめでとう。人殺し》そこに書かれていた衝撃的な文字。しかもその筆跡は、シャノン自身の物でした。
 シャノンの心の奥底には、暗い記憶が眠っていました。──誰かの17歳の誕生日パーティで、人が死んだ。そして自分はその場に居合わせていたはずなのに、何も覚えていない。古い記憶と、バースデーカード。シャノンは思い始めます。もしかして、あの時自分は、誰かを殺したのではないか、と……。
 勘のするどい人には、とちゅうで種が割れてしまうようですが(私は鈍いので、最後までトリックがわからなかった)、ミステリアスな事件を背景に、不気味な出来事に揺れ動く少年の心理が、非常に私の心をとらえました。昨今はやりの《自分探し》に通じるものもある作品です。
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43.「ラッキー・ドラゴン号の航海」 ジャック・ベネット
★福武書店 1990年
★中学生以上
 ベトナム戦争が終わり、南北ベトナムは統一され、社会主義国家として出発しました。しかし、クァン少年一家は、南ベトナムのサイゴン(ホーチミン市)で小売店を営んでいたことから「資本主義者」として、再教育センターや新経済地帯へ送られることになります。家族がばらばらになるのを拒んだ一家は、小さな船でベトナムを脱出し、自分たちを受け入れてくれる国を探して、広い海へ乗り出します。
海賊、台風、飢え。極限状態で、ある者は精神を病み、ある者はそれまで見せなかった底力を見せます。あくまでも客観的に、淡々と一家の姿を描く文章は、ルポのようで、かえってその苦難が胸に迫ります。実は、この本を読むまで、私は「難民」の実体が全然わかっていませんでした。自分の無知さを鋭く指摘された本でもあります。
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44.「ヤンネ、ぼくの友だち」 ペーテル・ポール
★徳間書店 1997年
★中学生以上
 1954年。スウェーデン・ストックフォルムの街が舞台です。主人公・クリッレの前にある日あらわれた、赤毛の少年。少女のように華奢だけれど、身が軽く、そして非常に攻撃的。ヤンネは自分の素性──名字も、住んでいるところも──いっさい明かさなかったけれど、クリッレにとっては「親友」であることに間違いありませんでした。そのヤンネについて、ある日警察官に尋問されます。ヤンネの身に何がおこったのか、ヤンネはいったい何者なのか──
 悲しいほどに切ない気持ちにさせられました。過去と現在を交錯させながら、ヤンネの正体へ徐々にせまっていく構成は、時にわかりづらく、時に冗長でいらいらさせられますが、全体としてみた場合、やはり「見事」としかいえないです。読み終えた時、それまで提示されていた情報の断片が一つにつながり、あまりにも悲しいストーリーが形作られている──こういう冒険的な作品は、海外児童文学ならではと言えるのではないでしょうか。
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45.「顔のない男」 イザベル・ホランド
★富山房 1994年
★中学生以上
 14歳のチャールズは、結婚・離婚を繰り返す母親と、父親の異なる姉・妹の四人家族。女ばかりの家族で、さらに自分一人頭が悪く、早く家を出たいと思っていました。寄宿学校への受験を前に、不安定になるチャールズは、夏休みに一人の青年に出会います。顔半分にやけどを負い《顔のない男》と呼ばれている男、ジャスティン。チャールズはジャスティンとの交流をとおして、勉強や生き方を学ぶとともに、彼自身にも徐々に惹かれていくのでした。
 「同性愛の芽生えを描いた作品」となっています。確かにそういうシーンもあるのですが(言われるまで気づかなかったのだけれど)、少年が青年に惹かれ、心を許していく様が非常に美しく繊細に描かれていて、どきどきしてしまいました。こういう作品も認められる海外児童文学は本当に面白い……
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46.「不思議を売る男」 ジェラルディン・マコーリアン
★偕成社 1998年
★小学校高学年以上
 古道具屋を営むエイルサ親子の元に突然現れた謎の青年・MCC。クリケット用のズボンをはき、緑色の上着を着、本を片時も離さないMCCは、古道具屋に住み込み、古道具の由来をお客に語り、古道具を買わせます。MCCの話にはエイルサ親子も魅了され、さらにエイルサは、MCC自身にも惹かれていきます。
 劇中劇というか、MCCの語る物語が、短編小説のような趣があります。良質なファンタジー短編集といった方がいいかもしれません。原題は「A PACK OF LIES」(嘘の束)。MCCの正体を考えると、邦題よりも原題の方がずっといいのですが。
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47.「ダブルイメージ」 パット・ムーン
★さ・え・ら書房 1998年
★小学校高学年向き
 祖母を亡くし気落ちしている祖父を元気づけるために、デイビットは祖父の家に手伝いに行かされます。久しぶりに訪れる田舎の家でデイビットが見つけたもの──それは、納屋に隠された、自分そっくりの少年が写った古びた写真でした。デイビットは、写真の少年の消息を探るうちに、祖父の家庭におきた過去の悲劇を知るのでした。
 子どもを亡くした親の気持ちが、悲しいほどに胸に迫ってくる話です。若干メロドラマ的で、子どもが読んだ場合と大人が読んだ場合では、かなり感想が違ってきそうですが、素直に読め、優しい気持ちになれる話です。
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48.「ザ・ギバー 記憶を伝える者」 ロイス・ローリー
★講談社 1995年
★中学生以上
 コミュニティーと呼ばれる社会で暮らすジョーナス少年。規則で守られ、家族も職業も個人にマッチした物が与えられ、争いも苦しみもない穏やかな社会、コミュニティ。12歳になったジョーナス少年にも、職業が与えられます。それは《記憶を受けつぐ者》でした。
 理想郷・コミュニティを造りだすにあたって、封印された人類の過去の記憶。その記憶を引き継ぐことになったジョーナスは、コミュニティが果たして理想郷なのかどうか、悩み始めます──
 多少設定の甘さが感じられ、また物語前半の展開がまだろっこしいですが、非常にユニークな作品でした。後半はどんどん引き込まれましたし、希望が見出せるラストが印象的でした。日本児童文学にはない、海外ならではの作品です。
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49.「ふたりの星」 ロイス・ローリー
★講談社 1992年
★小学校高学年向き
 第二次世界大戦下のデンマークが舞台です。わずか3時間でドイツ軍に降伏したデンマークは占領地となります。さらに、首都・コペンハーゲンに住むユダヤ人狩りも始まります。主人公・アネマリーは、親友のユダヤ人の少女・エレンをドイツ軍から守るため、秘密結社の行動に手を貸すことになります。
 全てを知った上で勇気を出すことは難しい。その事実を納得した上で、アネマリーは、自らに知らされた秘密を胸に、ドイツ兵に立ち向かいます。「勇気」という面から戦争に迫った作品です。
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50.「クレージー・バニラ」 バーバラ・ワースバ
★徳間書店 1994年
★小学校高学年以上
 ワーカホリックの父親。アルコホリックの母親。同性愛者の兄。そんな家族の中で14歳のタイラー少年は孤独で、学校でも友達もいなく、唯一の趣味「野鳥の写真を撮ること」にのめりこんでいます。
 一人だって寂しくない。鳥がいれば──そう思っていたタイラーですが、同じように孤独に鳥の写真を撮る少女・ミッツィに会った時から、周囲が違って見えてきます。まるで「ありとあらゆるものが目にみえない絵筆で美しい色にぬりかえられたみたい」に……
 この作品をお薦めに選んだのは、少年が孤独を乗り越えていく過程で、あえて問題を周囲の環境に求めず、少年の心情にだけ絞っていたからです。繊細な少年の心の動きが、非常に美しく描かれた作品です。
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