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舞台美術演出のための幕類
歌舞伎の幕類解説
中村勘三郎襲名披露公演 祝い幕
振り落とし…歩いて退場する幕
「消し幕」… けっこう目立つ!怪しい幕
「道行旅路の花聟(はなむこ)」の定式幕
三色の縦縞模様という、シンプル・デザインの定式幕は歌舞伎舞台を象徴する粋な幕です。
(定式幕の配色については歌舞伎の幕類解説をご覧ください)
一般の劇場舞台に分厚い綴織緞帳が設置されるようになったのは
第二次大戦後の1950年代後半になってからのことですが、
歌舞伎の定式幕は、200年以上昔の江戸時代から伝わる格式・伝統ある幕なのです。
(詳しくは緞帳の歴史参照)
現在ではもちろん歌舞伎座や南座にも豪華な綴織緞帳がかかっていますが、
緞帳が掛かっている開演前の舞台は、どこか「よそ行きの顔」といった印象を受けます。*2
開演が近づき綴織緞帳が上がって、定式幕の掛かった舞台が現れると
急に華やいだ芝居の雰囲気が劇場内に満ちてきて、
幕の向こうで人が動く気配にもワクワクした感じを覚えます。*3
ボタン操作で機械的に昇降するだけの緞帳と異なり、
大舞台の定式幕は人が幕を引っ張って開け閉めします。*1
主役が花道から退場する、幕外(まくそと)の場面では、
一旦引かれた定式幕の裾がすっと舞台奥に引っ込んだり、
黒御簾内の演奏者から花道の役者さんが見えるようにするため
幕の両袖端が少し内側に動いたりしますが
それらの作業はみな、人の手によって行われるため、まるで幕が生きているような印象を受けます。
ただ上下に動くだけの緞帳には真似できない芸の細かさです。

←幕間(まくあい)に「動く」定式幕
幕間、定式幕の向こう側の舞台上では次の演目の準備が進められ
あわただしい作業音と共に時々幕が動いたりめくれ上がったりします。
この「動く定式幕」を、「奥で何やっているのかな?」と思いつつ眺めているのがけっこう楽しい…
歌舞伎では定式幕の他にも、沢山の幕類が使われますが
単にものを隠したり表したりするだけでなく、実に多様多彩な演出に用いられます。
また襲名披露舞台の祝い幕(贈り幕)のように、劇場内を華やかに演出する幕もあります。
これほど多種多様の舞台幕を効果的に使う演劇は、世界にも他に類を見ないのではないでしょうか。
*1 現在の歌舞伎座の定式幕は厚手のしっかりした平織り木綿布で作られていて
幕全体の重さは50〜60sくらいはありそうです。
幕を開けるときには途中に補助が入り、何人かで開けているようです。
しかし700〜800sある綴織緞帳に比べれば、定式幕は軽やかな幕といえます。
*2 (明治・大正時代には、一番目狂言は定式幕、中幕狂言には緞帳幕が使われ、
二番目狂言・世話物には客筋からの贈り幕を用いるのが習慣であった、ということです。
歌舞伎定式舞台図集・解説 p17
尚、新歌舞伎や松羽目舞台の舞踊では緞帳幕を使用します。平凡社・歌舞伎事典参照
*3 定式幕の設置位置は、緞帳の手前と後ろ、両方の場合があるようです。