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消し幕   けっこう目立つ!怪しい幕


振り落とし…歩いて退場する幕

歌舞伎 「恋飛脚大和往来」 新口村の場

定式幕が開くと、ゆらゆら揺れる水色の浅葱幕が舞台開口部を隠しています。
柝(き=拍子木)の音を合図に、その浅葱幕が切って落とされると

現れるのは白一面の雪景色と
その真ん中で肩を寄せ合う梅川と忠兵衛の二人…

ほんとうに、息をのむような美しい場面です。

この、幕を一瞬のうちに落とす演出技法が「振り落とし」です。
振り落としに使う幕は、通常の舞台幕のように上部に吊り紐(チチ紐)は付けず、
幕の最上部に沿ってひもを渡して適当な間隔で幕地に止めておきます。
幕を取り付ける横棒(バトン・振り竹)には、短い突起が等間隔に並んでいて、
その突起に幕の上部のひもを引っ掛けておきます。
横棒を少し回転させると、突起からひもがはずれて幕が落ちる仕掛けです。

劇場舞台の振り落とし用バトン

歌舞伎の「振り落とし」場面をスローモーション・ビデオで見ると、
幕はタランと垂れているのではなく、舞台奥から客席方向に張り出すようにふくらんでいて
幕の表面が所々動くので、陰に何人かの人が立っていることもわかります。
生地は、定式幕よりもやわらかく薄手のもののようです。

この、幕の陰にいる人たちは大道具方で、振り落としの幕は彼らの真上に落ちます。
落ちてくる幕をかぶって受けた大道具方は、その状態のまま舞台袖に退場します。
(舞台間口の広い歌舞伎座では、幕が上手と下手に分かれていて、両サイドに退場)

振り落としの幕だけを見ていたら、幕が歩いて退場するというおかしな眺めなのですが
観客の目は新たに出現した舞台に釘付けになっているので、
落ちた幕の行方を見ている人は少ないことでしょう。

この振り落としの手法をつかった鮮やかな場面転換は、歌舞伎特有のとても印象的な演出方法のひとつです。

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