|
絵本というと海外の作品に注目が集まりがちだが、日本の絵本にも良い作品は多い。この作品は「現代の日本の良い絵本」だと思う。しかも洋風ティストではなくて、バリバリの和風絵本なのだ。伝承系の昔話ではなく「創作物語」だっりするのも素晴らしい。単純な筋書きだが、しみじみ良い物語に仕上がっているので、ざっと粗筋だけをご紹介。
主人公は「じろきち」という父親と2人暮らしのおおかみである。 ある日、ちいさな女の子をさらってくる。父子は、女の子を育てて大きくなったら食べるちもりだったのだが、じろきちは、どうしても女の子を食べることができなくて父にそむいて、女の子と一緒に家を出る……
どうして、女の子を連れて逃げる気持ちになったのか、自分でも理解できないままに父を捨てて言えを出る、主人公が愛らしくてたまらない。彼が抱いた気持ちは「恋愛」というものではなさそうだが彼が女の子を「大好き」と思っていたことに間違いななさそうだ。なにしろ主人公は「おおかみ」なので「誰かを好きになる」という感情を知らなかったのだ。彼の抱いた「戸惑い」は、人間であてはめるなら「初恋の戸惑い」という感じだろうか。
ちなみに、この絵本は「切り絵」という手法が使われているので民芸調な、昔話調な雰囲気で、「メルヘン」な物語とのアンバランスさが、かえって作品を引き立てているよう。子供の読む絵本だからこそ上質な「絵」はポイントが高いように思う。この作者の切り絵だったら、絵本でなくても1枚欲しいな……と思ってしまった。
物語も、絵も、素晴らしくてお気に入りの1冊なのだが私の周りでこの絵本を読んだ人の感想をリサーチしてみると、不思議なことに「女の子・女性」よりも「男の子・男性」の受けが良いようだ。年齢に関係なく男性陣は「じろきち」に男の純情を感じているのだうか?おおかみだって、愛に生きてもいいぢゃないか……とか?
日本の魅力的なモチーフを使いつつ、新しい要素を取り入れることに成功したなかなか魅力的な1冊だと思う。
|