新ビデオ


工業新聞を毎日見ていて実感するのは、化学関連の記事が極端に少なくなったことである。相変わらずの特許文献の繁盛ぶりを見ると、微にいり細をうがつ研究開発は山のように行われているのだろうが、産業界からみた化学には、かっての金属有機化合物のようなパンチの効いた指導原理はもう絶えて久しいようである。電子製品関連でも同じ事が言えそうである。だがこちらは市場が若く発展期のためか、国産外国産入り乱れての新製品合戦が紙面を賑わせている。メディアのシステムだのソフトだのが絡むので当分は面白い世界である。そんな中でビデオデッキを買った。3代目である。今回は今の僻地に移り住んでからの設置であるから、一からの調整という意味で初代と比較できて面白かった。
特筆すべきは衛星放送のパラボラアンテナ調整が、いとも簡単だった事である。初代の設置は分度器に磁石まで持ち出してカッカして合わせたがついにものにならず、それでも工学出身かと家族の中での信用はがた落ちだった。やってきた専門店の連中もそう易々とは調整できなかった。それがこの3代目はビデオの表示を見ながらアンテナの上下左右の角度を目分量で変えるだけで、すぐに画面がテレビに飛び込んだ。ほんのの3ー4分だったろう。アンテナが角度に鈍感になったのか、ビデオが微小信号でも拾ってくれる精か知らぬが、なんとも設定し易くなったものだと感嘆する。便利な機能は他にも色々付いているが、もう一つあげると時報に時計を自動的に合わせる機構である。テンプル式から水晶発信器式へそれもシングルからダブルへと時計の精度はどんどん上がったが、長年月経てばやっぱり誤差を生じ、録画の開始終了のタイミングにずれを生じるのが1代目の欠点だった。
日本には応用研究があって基礎研究がないと言うのが、アメリカが経済戦争に敗色濃くなったときの非難であった。目の玉が飛び出るほどの特許料を支払って実施権を得ているのに、基礎研究ただのり論がアメリカ中心に声高に唱えられた。研究投資をどちらに向けるかは研究経済哲学の問題である。バカげた論理だと思っていた。笑って済ます訳には行かなかったのは、マスコミがこの論理を自国の産業界の後進性を示す材料ととらえた事である。私は時折マスコミに他国の論理で自国を低評価する傾向があるのを疑いの目で眺めている。さてこの優れもの。円建てだったら半値、ドル建てだったら2ー3割割高となっていた。基礎研究優先国は、誰もが喜ぶこれらの機能を安価に提供するのを卑しい研究と見下げているのだろうか。けっこうその気配はあるのだが、断定できるほど透徹した目は持っていない。ご意見拝聴したいと思っています。

('95/07/10)