科学の常識2-U

以下は感想文「科学の常識2」の続編である。朝日新聞科学グループ編:「今さら聞けない科学の常識2」、講談社BLUE BACKS、'09の第3章の後半からである。
TVのCMを見ていると、タレントになった都知事の息子さんが、長い石段で膝関節痛発生のおばあさんを指差している。サプリメントの広告だ。ヒアルロン酸だろう。この酸は保水力高く、ゲル状で関節を守る。年齢とともに減少する。だが巨大分子が経口摂取で吸収されて、患部にそのままの形で到達するとは思えない。本書も疑問を投げかけているが、このHPの「コラーゲン」にもこの酸に対し同じ主旨の発言を載せている。
新型インフルエンザが猛毒性でなくてよかった。まだ私にはワクチン注射の順番がこないが、流行も峠を越したから、落ち着いて手洗い励行、うがい励行しつつ模様眺めをしている。インフルエンザ・ウィルスは脂質膜に覆われているので、石鹸水洗浄、アルコール洗浄が消毒に有効だそうだ。危ない年層の接種は終わったようだから、フラクタル幾何学的発想で言えば、日本にはもうこのウィルスは大流行できなくなったはずだ。このHPの「感染症は世界を動かす(その2)」に梅毒、結核に次いでインフルエンザを取り上げている。1/8の毎日.jpによると、科学技術振興機構の西浦博・さきがけ研究員らの研究で、ヒト細胞侵入のための表面突起ヘマグルチニン(HA)の先端構造が新型インフルエンザとスペイン風邪ウィルスおよび同時期流行性インフルエンザ・ウィルスでと同一であり、60歳以上のヒトが感染しにくい理由と分かったという。
本屋の脳科学とか心理学とかとにかく心に関する書棚を覗くと、茂木健一郎氏の著作が多数並んでいる。一昔前は河合俊雄氏であった。このHPの「心の脳科学」に心を物理現象としてとらえるMRI設備の解説がある。解像力が3mm程度だが、ダイナミックな心の動きを脳位置関係から把握できるようになったとある。ヒトの脳の前頭前野は、ヒトをヒトたらしめる、高度の精神活動の司令塔であると分かった。だが具体的問題になると、どんな風に心を働かせたかは、たとえ簡単な問題に対してでもほとんど分からない。一般性がないからここからは主観が語るロマンの世界なのだ。「神様」の解説がいる。その神様が茂木先生であり、河合先生である。
第4章は食品。「本格焼酎」の政令原料にジャガイモが入っていないのでオヤと思った。網走で見つけた焼酎:「オーツクの地酒・北緯四十四度」の原料がジャガである。その工場はついに見学できなかったが、南西諸島では石垣島の漢那蒸留所と奄美大島の富田酒造所を見学した。前者は泡盛(本HPの「石垣島'09」参照)、後者は黒糖焼酎(HPの「名瀬と黒糖焼酎」参照)を醸造する。黒糖も本格焼酎の原料にはない。「本格」になるには回分式単蒸留品である必要がある。黒糖の表示も原産地が7島の品に限られるという。仏教伝来で日本から養豚の肉を食う習慣が消えた。でもイノシシやシカという野生動物の獣肉は時には食ったようだ。鬼平犯科帳に料理の邪道扱いで出てくる。沖縄ではその習慣が維持されたという。アグー豚といい、コレステロールが低く脂身の甘い極上品だが高価だという。何度か沖縄観光をしているのに初耳であった。食糧自給率を100%とする方策があるという。田畑を全部芋畑にする。バカも休み休み言えだ。
第5章は産業・資源。1/9の読売にハイブリッド快走'09年販売プリウス首位という記事が出た。今のプリウスはニッケル水素電池だが、プラグ・イン・ハイブリッドの新型プリウスはリチウムイオン電池になると発表されている。私が大学を出た頃の実用二次電池は鉛蓄電池オンリーだった。20年ほど昔に買った平井、高橋:「電池の話」にはニッケル水素電池まではあるが、リチウムイオン電池は載ってない。まだ実用化に遠かったからだ。リチウム電池は載っている。進歩の早い業界である。実用化されたリチウムイオン電池の発明者は日本人である。予算仕切りの蓮舫民主党参議院議員のように2番目でいいなんて言っていたら、日本の今日の自動車業界など無かっただろう。
ハイブリッド自動車はジーゼルエンジンを取り込まねばならない。日本が捨ててかかったジーゼルの公害対策は、欧州で格段の進歩を遂げた。IT技術をフルに活用して、燃料噴射を詳細に制御する方法のようだ。電子立国日本などと言って、集積回路産業が日の出の勢いであった時代があった。産業のコメと言われた。今では韓国や台湾に追い越され苦戦している。本書には別の産業のコメが出ている。ベアリングだ。世界の需要の1/3を日本が生産し、その4割が自動車産業に行く。ITと違ってこちらの王座は長年にわたって継続している。集積回路産業は、高性能機械を装置産業から仕入れて、それを並べれば、あとは、極端な話、オペレーションのソフトを作ればいいのだから、道具作りからやる物づくりに入らなかった。技術の底が浅かったのであろう。だから容易に真似られたのだろう。この推測は当たっていようか。
第6章は家電・生活。地デジは'03年末から放送を開始した。しばらく様子を見てのち26インチの液晶TVを買った。今なら46インチの大型が買えるほどの値段だった。そのころはそんな大型は量販店の店頭になかった。私はこの方面の知識はさっぱりだった。久保田ら3名:「デジタル放送がわかる本」、吉野監修、オーム社、'00の内容は何もかも新鮮であったと記憶している。今でも時折は参照する。技術本では珍しい存在だ。データを圧縮して送信し、受信してから解凍する。そのための時間遅れ(4秒ほどらしい、受信機ごとに異なる)が必要だから、時報を出せない。緊急地震速報にとっては致命的欠陥だ。東京スカイツリーは'12年完成予定とか。東京タワーは放送塔ではなくなり、失業状態になりあるいは取り壊されるかも。一度上がっておかねばと思う。京都を私より地方からの学生の方がずっとよく知っていて驚いたことがある。私は京都育ち京都在住だったから、いつでも見れるという安心感があって、出かけるのはたいてい奈良だった。その轍を踏んではならぬ。
国立西洋美術館の地階だったと思うが、支柱の免震構造を見せてある。貴重なコレクションの防災対策として当然だ。他の美術館もそうなっているのかな。免震、制震とも建築費は3-10%高く付く。中越地震で免震構造のビルが地表の1/4ほどの加速度しか受けず、怪我人は出ず、食器散乱もなかった。じわじわと対策のある建物が増えているそうだ。超高層ビルは、長周期振動の影響は、既設建造物の対策は、などいろいろ疑問が湧くがそこまでは説明してない。NHKスペシャルで「MEGAQUAKE巨大地震」のシリーズが1/10から始まった。市街建設以来今まで一度も地震がなかったシアトル西のプレート境界に地震の巣があり、300年昔に巨大地震を発生した。それが日本の古記録から立証されたという。南海トラフが潮岬先端から地滑りを始めると伊豆半島から日向灘にいたる大地震になって、関東平野では、長周期震動が、鉢の中の水が揺れるように長時間にわたって続くという。近代都市では過去になかった高層ビル特有の災害が発生する。1/12ハイチにM7の大地震が発生した。
最終の第7章はIT。本章を神妙に読む。私の学校教育はアナログ時代だった。ひかり電話、携帯電話、PC、インクジェットプリンター、電子マネーETC、ETC。本書に出てくるデジタル電子機器は一応我が家にもある。電気式の鍵にも慣れた。でもも一つITは分かっていないと自覚している。生体認証、偽札防止、携帯フィルタリングには経験がない。私にはある時期から急に迷惑メール(spam)が次々に届くようになった。そこで迷惑メール対策に、登録送信者あるいは組織以外からのメールは拒否するようにセットした。登録名を名乗る迷惑メールが来るケースは至って希だ。登録送信者に自分を入れておいたら、私になりすまして送ってくるメールがあったので、それを削除したらゼロになった。プロバイダー側の技術向上で、迷惑メール発信国ランキングでの日本の順位が29位に下がったという。鐸木能光:「シンプルに使うパソコン術」、講談社Blue Backs、'07によると、グーグルのGmailは最強のspamフィルターだそうだ。やってきたメールをGmailに一旦転送してチェックをしてもらってから、自分のアドレスに送り返してもらう。1/13の読売夕刊によると、そのグーグルが中国撤退を検討中だという。政府検閲と、政府筋と思われるサイバー攻撃が理由という。サイバー攻撃は人権保護活動家のメール内容を覗き見するためであった。

('10/01/13)