白衣低血圧


中高年に多い高血圧に、白衣高血圧と分類される症候があるそうだ。普通は正常なのに、病院にきて白衣の医者や看護婦に出会うと、たちまち血圧が跳ね上がる人種がいるのである。高血圧の人は精神的安静に留意し、ストレスをできる限り回避して生活するのが投薬以前の心構えとされているのもうなづける。
私も化学であるから時には白衣を着ている。ただ、たいていは実験の薬品対策ではなくて防寒着代わりか、講義の時のチョーク対策である。さてこの白衣を見て諸君の血圧は上がるか下がるか、これはちょっとしたクイズだ。と部屋に来た卒研生に聞いたらニヤニヤして答えなかった。昔だったらもう先生を見ただけで緊張したから、大半は血圧上昇型だったろう、しかし今は手取り足取りおまけにどんな暴言場合によっては暴力をふるっても絶対安全な相手としての、神様仏様に近い人がマスコミの空想する理想的先生像らしいし、そう都合良く解釈して実行してもらっているやからが多いから、きっと今の学生は学校では白衣低血圧に掛かっているのではないか、と言ったら、やっと半々と思いますと答えた。
高分子最近号に対談が載っている。京大で授業のアンケートを取ったらもっと分かりやすい内容にしてくれというのがあったそうだ。天下の京大でもそうだ、レベルの高低はあってもこの年齢層は、自分に合わせて教えてくれるのが当たり前と信じているのではないか。高等教育なのである。就学年限内にレベルに達しないなら、自分から退学する以外ないことは感覚的には理解していないのであろう。しかしこの傾向は今に始まったことではない、退職した女性事務官がだんだんお子様が多くなりまして、と久しぶりに母校を訊ねたとき片目をつぶってみせた。お子様とは学生ではない、若手の先生のことであった。お子様を小暴君に仕立てたのは我々である。ということでなるだけ卒研生はほったらかしにすることとしたら、アンケートに書かれた。「もっと面倒を見るべきである。」ばかめ。誰が書いたかすぐ解るんだぞ。またへそを噛ますか。
皆さん、ひとつ学生生徒どもの通常時血圧と教室時血圧を比較して、どちらを向いているかご一報下さい。

('95/05/06)