ロバート・A・ハインライン


ハインライン、余りメジャーではないかもしれない。
以前から知ってはいたものの、余り興味を引かれる作品は読んでいなかった様でした。。
一応読んだ事は有るけれど、図書館にてであり、内容すら覚えていないくらい退屈であったと思う。




ところが、ある作品で強烈なカウンターを食らったような衝撃を受けた。
!!!はじめてハインラインの小説が面白いと感じた。
それは

『夏への扉』

でした。これは、まあ、言うなればタイムスリップ小説ですが、行きついた未来が2001年である。

50年代の終わりに書かれ、舞台は70〜2001年であるが、ハインラインの夢見た未来は
手塚治虫よりかはほんの少しだけ現実に近かった・・・。
とはいっても、やはりSFだな、と言った内容では有りますが。

間抜けな男が冷凍睡眠によって未来に送られ、そこから未来で開発されたタイムマシンで
過去に戻ると言った内容。
その途中で様々な肉付けがあるものの、ありきたりのストーリー展開です。

しかし不思議な事に、内容にぐんぐん引き込まれて行き、気が付くと残りページが殆ど無い・・・と言った按配でした。

冷静にストーリーだけを見ると大した事は無いのですが、緻密に構成されたストーリーは
違和感無く読む者を引きこむ力を持っています。

これと、あと2〜3の作品以外はやや暴走気味で、その上多分にアメリカ人的発想が多く盛り込まれているので、
退屈な面が多いですが、これに限っては(ハインラインにしては)良くブレーキが利いていて場面の移り変わりに
飽きが来ないという点においても、間違い無く傑作でしょう。

SFが好きで、まだ読んでいない方には、お勧めの一冊です。

人形つかい』


この作品もなかなかです。
奇妙なナメクジ状生物に寄生された人間がその生物の意のままに操られてしまうと言う内容です。
「遊星からの物体X」などもこれと同じですが、アメリカが舞台の所がちょっとスケールがでかい感じです。
しかもその後、太陽系全土に飛び火する広大な展開になります。

侵略物は他の作者にも数多くありますが、攻撃的なアメリカ人をダイレクトに描いた作品として
なかなか面白いと感じました。

#登場人物が猫をかぶっている作品が多いですからねぇ・・・

心に残ったのは、この作品は完結ではないということです。
宇宙生物の本拠地に掃討に出発する所で終わっています。
不屈の精神と、積極的にかつ、徹底的に敵を排除するところなどは、いかにもアメリカ的です。

ハインラインはいつの日か続きを書きたかったのかもしれませんね。
(もう、それがかなわなくなってから久しいですが)





今度は一転、問題作品を取り上げてみましょう。

『月は無慈悲な夜の女王』

大作です。とにかく長い。
革命物の代表的作品ですが、もうちょっと簡潔にまとめる事はできなかったのか?と思ってしまうくらい長い作品。
結局理解する事はできませんでしたが、きっといつの日か読み返す時があるでしょう。
その時はじっくりと時間をかけてかみしめようと思います。
まあ、革命その物に余り縁の無い日本人には理解しがたい面もあると思います。
それに、多分に宗教的な意味合いも含まれているせいでもあるでしょう。
日本人は基本的に仏教か神道で、カトリック的思想は受け入れ難い・・・とこれは考え過ぎでしょうか?

ま、一言で言うと、『冗長に過ぎる』、これです。(by鶴田謙二)

『宇宙の戦士』

邦題はこれですが、映画化もされました。レンタルビデオで出ています。
で、この『スターシップ・トゥルーパーズ』ですが、ヒューゴー賞を受賞しています。
が、
この小説の後書きが20ページを超えるところが問題の大きさを示しています。
極端に評価が二分します。
内容的に簡潔に申しますと、この作品はアメリカ版「未来帝国宇宙陸軍四方山話」といった所でしょうか?
はっきり言って、徴兵制度も、軍隊も存在しない(はずの)日本人にはまず共感できないでしょう。
これが受賞した事は、ヒューゴー賞自体、アメリカ人の価値観でしか評価していない事の裏返しでしょう。
お国の為に命をなげうって、軍隊で尽くすというのは感動的であるかもしれませんが、
鼻先からしっぽまでそれづくしですと、食傷気味になりますね。

思想だの精神だので物議をかもし出したこの作品ですが、一番面白かったのが、
裏表紙のコメント、『ヒューゴー賞に輝いた巨匠の問題長編』というくだりでした。

はっきり言って、つまんなかったです^^;
(映画、借りてみようか迷います。)(笑)

『悪徳なんかこわくない』(上・下)

あらすじは金持ちのじいさんが、若いお嬢ちゃん(成人)の身体を手に入れ、脳味噌をすげ替える・・・・
と何処かで聞いた事のあるようなストーリーです。

私は当初、「こいつはきっと、ドタバタの展開で面白そうだぞ。」と思い、八重洲のブックセンターで購入。
夜行バスの中で読み始めたのですが、バスに酔っちゃいました(+_+)

もう、何と言って良いのかひたすら気持ち悪い。
理由は予想をはるかに上回る展開でした。

まあ、最初は予想通りの展開ですが、次第に倒錯した世界にのめりこんで行きます。
じじいは、自分の身体にうっとり。
脳味噌がじじいなので、これは想像したくない!!!!!
話し方もお姉さん言葉になり、行動も歯止めが利かなくなります。
ナルシスト路線まっしぐらです。
其の内、「結婚する」と言う展開になって行きます。

相手の男性が気の毒で仕方ありません。まさに詐欺事件でしょう!
身体が寿命なので脳味噌だけ乗せ替えたのですが、間違い無く脳味噌の寿命も近づいている事でしょう。
そんな事は一言も書いていませんが、どうしてもその方向に考えが及びます。

痴呆になったらどうするつもりでしょう?(どうにもなりませんが)

オカマさんは2丁目あたりにいるという未確認情報が入っていますが、
それとこれとは全く問題の次元が違います。

歳相応の身体であればまだしも、これほど違和感の有る設定の小説はこれが初めてでした。

読む人によっては、面白いと感じる事もあるでしょうが、『歯止めの利かないハインライン』むきだしでしで、
本当に気持ちの悪い駄作であると思いました。

最後の方では、脳味噌が棄てられて、無い筈のお嬢ちゃんの精神がなぜか割り込んでくるようになり、
やがてじじいと一体化してしまいます。
許せないのは、このお嬢ちゃんは恨み言の1つも言わず、すべてにおいて、じじいを肯定するとこにあります。

もし、私がこの女性の立場なら、『じじい、脳味噌返せ!』もしくは、『身体返せ!!』でしょう。

ハインライン独特の小説の世界に引き込む力が裏目に出て、強烈な拒絶反応を引起した作品でした。




戻る