
高校生のみなさん、将来どんな仕事をしようかな、大学で何を勉強しようかなって考えることがあるでしょう。
そのような問いに対する、みなさんの先輩の方々の助言です。進路決定の参考
にしてください。@「人間って?」 岩 本 宣 明(作家)
大学に行くのは決めたけど、さて、一体、何を勉強したいのか、自分でも分から
なくて困ってる人、いませんか。こういうのを、本末転倒っていいます。本来なら、
学びたい事があるから大学に行くというのが順序ですよね。でも、実際にはそうもいかないのが現実のようです。 そこで、ちょと、
受験勉強から寄り道して、「一体、私は、何が勉強したいのか考えてみよう」というのが、コラム「?」です。▼第一回目は「人間って何」です。
「私って何?」と考えこんじゃったことありませんか。勉強々々ってお尻を叩かれたり、失恋したり、大切な人が死んじゃったりと、辛いことがあって自分は独りぼっちだと感じた時、人間は自分って何?と、考えるものです。この問いこそ、すべて
の学問の出発点と言えます。私って何?は、すぐに人間って何、命って何、世界 って何、という疑問に繋が ってゆきます。こうして、学問の世界は広がって行くのです。「人間とは何か」という問いに、模範解答はありません。むしろ、この問への 答えによって、その人の人間観や世界観が明らかになってしまいます。この「人間 って何」という問いに対する答えを探す学問のことを「哲学」といいます。哲学にもいろいろあります。これまでの哲学の流れを学ぶ「哲学史」、人間が
生きる社会の方に焦点をあてる「社会学」(いわゆる“未開社会”のシステムを調 べて「人間とは何か」を問う文化人類学は近年花形の学問です)、人間はどう行動 すべきかを問う「倫理学」、神と人間をテーマに研究する「宗教学」などなど。人間 を問うのは哲学だけではありません。もっと科学的にやろうというのが、心理学や 精神医学。さらに遺伝子や分子のレベルまで掘り下げて調べようというのが、動物行動学、進化心理学、分子生物学といった分野です。これは理学部にあります。悲しくなったり、憂鬱になったりするのはなぜか。はたまた、恋愛するのは?
セックスしたくなるのは?という問いまで、科学は解明しようとしています。それぞれについて、詳しくは紹介しきれないので、何冊か本を紹介します。
こういう寄り道が大切です。
「ソフィーの世界」(NHK出版)/
「そんな馬鹿な」(講談社)/ものぐさ精神分析(中公文庫)/「性と出会う−人類学者の見る・聞く・語る」
▼「工学って?」 マヌエル・ブリット
(通産省工業技術院名古屋工業技術研究所主任研究官。ベネズエラ人)
不思議なことに工学で飯を食っている人間は「工学とは?」と聞かれて、すぐに答
えられる正確な答えを持っていません。研究所で働く人に聞いてみたところ、「物 つくりだろう」という答えが返って来ました。これは決して変な答えではありません。なぜなら、工学の現場で働いている人はみんな物をつくっているからです。研究所には優れた人材が集まっていますが、ほとんどの研究者は、特に超一
流の大学を卒業したわけではありません。大学院まで行って「からだ」を鍛えてきた人もいれば、長い間に企業の研究所や現場で豊かな経験を積んできた人もいます。研究所では、研究員はグループを組み、それぞれの経験を生かしながら、どうすれば社会に役に立つ物をつくれるかを考えて、物をつくったり、つくった物を評価したりします。研究の課題は膨大かつ複雑でとてもではありませんが1人 では「物にならない」。しかし、有名大学を卒業していなくたって、一流の研究所でエンジニアとして立派な仕事をしている人はたくさんいるのです。設計技術、製造技術、評価技術、さらには、なんとマーケティング技術にまで
エンジニアの仕事は広がっています。機械工学、化学工学、電気工学、或いは材料工学といったなじみの深いたものから、今では、社会工学、再工学(リエンジニアリング)といった訳のわかりにくいコンセプトまでよく耳にします。それほど現代社会で工学は期待されています。▼
○○工学の○○によって、つくる物は変わってくるのですが、いずれにせよ、 最終的に工学という世界は「物つくり」です。簡単なことですから、エンジニアになってみるのは意外に楽しいものです。楽しい仕事をしながら、社会や人類の 役に立つチャンスもあります。▼
物をつくるのには2つの道があります。1つはすでに世の中にある物を改造 する道。もう1つは全く新しい物を発明する道です。しかし、今、社会に必要とされているのは創造性に富んだエンジニアです。いくら知識が豊富で改造が上手でも、創造性がなければ、エンジニアとしては失格といわれるほどなのです。テストの問題を解けるからといって、必要とする物をつくれるという保証はありません。厳しいと思われるかもしれませんが、科学の基礎研究で分かった事実や情報を応用して、社会に役立つ物をつくったり、最良の用途を探す「物創り」の世界では中途半端な創造性では「物にならない」のです。B「心って?」 岩 本 宣 明
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道ですれ違っただけの人に、胸がときめいしまったり、おいしい物を食べて頬 がゆるんだり、大切にしていた物を壊してしまい悲しんだり、毎日毎日、私達の心は大忙しです。受験を間近に控えて、不安になったり、いらいらしたりしているのも心。心って、いったい何なのでしょうか。心とは何か。これは、まだ、科学的には決着のつかない問題です。科学者の中でも決着が付いていると考える人と、いや、分からないと考えている人とで意見が分かれているのです。そもそも、どんな問題でも、科学の力で解決できるのだと信じる考え方の方にも問題はあります。最近になって、科学にだって究明できないことはあるのだと、正直に語り始める科学者は多くなっています。
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そんな科学者の中で今、最もホットな関心事の一つとなっているのが「心」の 問題です。心って何なのでしょうか。心はどこにあるのでしょうか。▼
「心の働きは脳の活動だ」という視点から脳の研究を続けている人々がいます。脳といってもジャンルは様々に別れ、医学部系の解剖学からアプローチする人も
あれば、理学部系の分子生物学という分野からアプローチする学者がいたりと様々です。いずれにしろ、こうした学者らは、脳の働きを解明することで心の問題も理解できると考え、脳を細胞や細胞をつくる分子、さらには神経を使って情報を伝達する化学物質のレベルで研究を続けています。もちろん、心の問題を脳とは距離を持って研究している分野もあります。文学
部系の伝統的な心理学はその代表例です。心理学では、人間の行動を観察し たり実験したりすることで、喜んだり悲しんだりする心の働きの原因は何かを探る努力を続けてきました。しかし、脳の仕組みが明らかになってくるに従って、文科系心理学の旗色は必ずしも芳しい物ではありません。そこで、従来の文系の枠から離れて、心理学の方法論は踏襲しながらも、自然科学の方法も最大限に取り入れて人間と人間の心を研究しようという人々もいます。これが、最近多くなってきた「人間科学」という分野です。さらに「心」の働きは遺伝子に支配されていると主張する人や、科学や物質か
ら離れて、人間の心を社会的にあるいは哲学的に考察していこうという立場も もちろん健在です。「心」といってもアプローチの仕方は様々です。どんな研究分野があるのかよく勉強してみましょう。
C「お金って?」 (大高和雄 毎日新聞経済部記者)
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長野オリンピックが2年後に迫ってきました。政府は、お祭り気分を盛り上げる ため、金(1万円)、銀(5000円)、銅(白銅=500円)の記念コインを発行します▼
ところが、この1万円金貨は1万円では買えません。ケースに入れて、1枚 3万8000円で売り出すからです。高すぎる気もしますが、大蔵省の担当者は「金の地金の価値だけで1万8500円もするからだ」と説明しています。▼
金貨には、@1万円A3万8000円B1万8500円ーーという3つの価値があることになります。一体「お金って」何なのでしょう。▼
あなたが、3万8000円でこの金貨を買っても、売る時にもその値段が付くとは限りません。記念コインを扱う専門店に持って行けば、もっと高い値がつくかも知 らないし、安く買い叩かれる可能性もあります。「金の地金の価値」という 1万8500円も、時々刻々と変わっているはずです。▼
このように、価値というのは本来、売りたい人と買いたい人(需要と供給)の力 関係で変わるものです。ところが、いつでも、どこでも変わらない価値を持つものが1つあり、それが「お金」なのです。素材が金であっても紙であってもお金としての価値は変わりません。▼
なぜそんなことが出来るのか、お金が生まれた経緯や、そもそも価値とは何 かというテーマを突き詰めているのはマルクス経済学です。ソ連崩壊で、実践的な意味は薄れたものの、哲学に近い面白さは変わりません。▼
もっと現実的にお金を扱う学問もたくさんあります。例えば、価値が決まる メカニズムを科学的に解明しようというのが「理論経済学」。ここでは人間の欲望まで数式で表現されます。「財政学」は、みんなの生活を良くする政府のお金の使い方を研究します。景気が悪くなるとなぜ、道路や橋をつくり始めるのか。その理由と効果も学びます。▼
お金をめぐる活動の中心は会社でしょう。お金の流れは帳簿に記録され ます。その記入法や読み方を学ぶのが「会計学」。公認会計士や税理士になるには欠かせません。近頃は、大企業の脱税事件を捜査する検察官にも、この専門知識が求められているそうです。▼
ほかにも円高や円安にる仕組みや、その功罪を研究する「国際金融論」、「貿易論」等々。「お金」は現代社会の血液。お金の勉強を深めていくと、 社会の仕組みも見えてきます。メールは