10時00分 開廷
(証人 北里大学医学部 法医学教室教授)
検 (鑑定書を提示し)「24頁に13・14が無いが?」
― 97頁の135・136の間違えである。
24頁を97頁に、13を135に、14を136と訂正する。
検 都子さんの歯科診療記録を鑑定書に添付しなかった理由は?
― 私が作成したものでない(警察の資料)ので、添付しなかった。
検 生前の顔写真については?
― 同じ理由で添付しなかった。
(その他数点を、検察官が鑑定書に記載されている内容等について、簡単に確認して終り、10時15分弁護士の反対尋問に移る)
弁 都子さんの遺体発掘に立ち会ったね。
― はい。
弁 主尋問で、人骨の一部が出たとき鑑定したと言ったが、どんなことを鑑定したのか。
― 人骨か否かの鑑定であって、鑑定書の記載と関連は無い。
弁 遺体の写真撮影は何処で行なったか。
― 大学の研究室で行なった。
弁 発掘したままの状態で撮影したのか。
― 土が付いていたので洗浄して撮影した。撮影は1日で終った。
弁 頭蓋骨と骨盤で女性と判定しているが、その理由は?
― 人間の骨で性差が一番ハッキリしている部位であるので、頭蓋骨と骨盤によって性別の判定をした。
弁 迷い無く女性であると?
― 頭骨だけでも女性と判定できた。
弁 骨盤については?
― 頭骨と骨盤で女性と判定した。鑑定には間違いはない。(コツトウコツ?)で判定するのも学会の常識である。
弁 年齢については、何によって判定したのか?
― 年齢の判定では、主に上腕骨の状態で行い21才以上と判断した。
弁 どうして21最上と判断できたか。
― 骨端腺が完全に消滅しており、成長が止まった状態だった。
弁 骨を切断しているが、その理由は?
― 骨髄・骨質の鑑定のために。
弁 骨髄・骨質の鑑定でわかるものは?
― 骨端腺を外から見るか、中から見るかによって違いがある。また、切断面で年齢の上限が推定できる。
弁 切断面で推定すると言うと?
― 骨の成長には個人差があり、経験で推定している。
弁 骨量・骨端腺・切断面それぞれに推定するのか?
― トータルで推定するので、具体的に個々の数値は記憶していない
弁 推定年齢の表し方は?
― 10才・20才・30才と言った年齢状態で判断する。飽く迄も経験による判断である。
弁 それ以外で、年齢推定の根拠としたものは?
― 鎖骨・胸骨の状態も加味し、27才以上とした。
弁 最低27才と判断したのか。
― 27才(+・−)の意味がある。
弁 (B4版の用紙を渡し、頭骨について細かく質問をし、図面にその説明を書き込ませる“鑑定書に環状縫合・ラムダ縫合、等とあるが、どの部分なのか書き込んでほしい”と言った情景が延々と続く)
― どんな書物にも書いてあることなので、このような質問は考えてもらいたい。
裁判長 (うなずく?)
弁 調べればわかるだろうが、調べなければわからない鑑定書だからあえて聞いた。
歯の状態も年齢の判定に重要と思うが?
― 推定の一つになる。
弁 歯の鑑定に当っては、日大医学部の資料を使っているがその理由は?
― 国内で専門的に研究しているのは、3大学〔日本大学・神奈川大学・東京医科歯科大学〕しかない。日大とはこれまで鑑定のブレーンとして長年やっていた。
弁 推定年齢は29〜33才となっているが、計算式から出した年齢か。
― はい。歯による判定は専門医の鑑定結果を聞いた。
弁 骨の鑑定と併せて25〜30才と結論された?
― はい。
弁 身長の測定はどの様にして行なったか。
― 各部分の骨の長さを測定し、推定表と照合し判定した。
弁 計算方法は幾通りかあると思うが?
― 5つの計算式を使った。年齢的にそれぞれ特徴がある。
弁 年齢的な特徴と言うと?
― 身長推定式が古く、若い人に合うものが無い。17センチの巾は大きすぎるので、平成12年に研究することになっている。
弁 5つの計算式のうち信頼できるものは?
― どれが信頼できるとは言えない。
弁 都子さんの場合は?
― 結果として適格な数値が出た。
弁 本人特定に、歯の鑑定結果が大きいと思うが、照合・確認するする資料は?
― 生前の写真・歯科の診療記録・レントゲン写真等、神奈川県警のもで確認した。
弁 都子さん本人と確認できたか。
― 八重歯の確認・治療痕の合致等によって確認できた。
弁 レントゲン写真は治療前のものと思うが?
― 検証時のレントゲン写真の歯隋腔の形が合致する。
弁 都子さんと判定した要素は?
― 歯の治療状態・八重歯・年齢・身長・性別等で判定した。
弁 確率は100%と言っているが、否定的要素は無かったか。
― 都子さんでないとする要素は無い。
弁 死後経過年数を3年以上としているが?
― 外観検査・白骨化の状態・死蝋化の状態、等から推定した。
弁 具体的には?
― 脂肪の分解・死蝋化現象等は条件によって変化がある。その条件・環境などを考慮し経験によって判断するしかない。
弁 条件と言うと?
― 脂肪の量・場所・体位等による違いも考えられる。
弁 死蝋化については?
― 蝋死化は不飽和脂肪酸の変化によるもの。通気性が悪い〔湿性〕のも、その要件と考えられる。蝋死化の進行については、条件によって違いがあると思われるが、1年〜3年で全身死蝋化すると考えられる。
弁 白骨化については?
― 骨以外のものが溶けて白骨化する。軟骨は3年以内で無くなると思われている。
弁 死蝋化と白骨化の関連は?
― 死蝋化すれば白骨化は遅れる。
弁 それで3年以上経過と推定した?
― 軟骨の状態・死蝋化の状態・白骨化等を加味して、3年以上経過と言わざるを得ない。
弁 上限は推定できないのか?
― 文献にも巾がある。実験できる事柄でない。環境に左右されることもあり、上限を決めることは難しい。
弁 死蝋化が白骨化を遅らせたと言えるか?
― この場合、死蝋化した部分については白骨化を遅らせている。
弁 紫外線検査の結果については?
― 紫外線検査の結果は根拠としていない。外観検査を補強する意味で、私のところではやっている。
弁 所見として、何名かの意見が書いてあるが?
― スタッフの中で、何年かやっている者の見解を書いた。
弁 薬物の鑑定をしたか。
― 臓器が消失しており、臓器による鑑定は不可能だった。
弁 白骨化部分を検査したか。
― 白骨化・死蝋化した部分にも薬物による変化は見られなかった。
弁 死因について、主訊問で“頚部圧迫はどうか”と聞かれ「否定できない」と言っているが?
― 臓器・筋肉等消失しており、頚部圧迫によると断定もできないが、否定もできない。致死的な頭蓋骨骨折等、死因と思われる外傷は無く。
『死因不詳』とせざるを得なかった。
弁 鑑定書の写真の中で、舌骨の写っている写真はどれか。
― 写真19の、顎の骨の右。写真20の、顎の骨の左に移っている小さな骨が舌骨である。
裁判長 証人に「此処で休憩にしますが、午後も、もうちょっとお願いします」
12時00分 休憩
1時 15分 再開
弁 舌骨の構造はどのように成り立っているか?
― 舌骨帯と左右の小さな骨の3個で成り立っている。
弁 写真では3個は確認できないが?
― 小さな骨の幾つかは欠損している。
弁 遺体発掘の時“見落とした”と言うことか?
― 捜索はかなり念入りに行なわれたと思う。経験から言って、小さな骨まで全部揃っていた経験は無い。
弁 顎骨から脱落している歯があるが?
― 死後の脱落と見た。生前の脱落は、骨の部分が綺麗に抜けており、汚れが付いている。
弁 生前と死後の脱落は、どの様にして判定したか?
― 日大歯学部の判定を取った。
弁 血液型の検査をしているか。
― 血液型は北里大学で、専門に研究している講師が検査しA型と判定している。
弁 鑑定書に載っていないが?
― 書類に載せなかったのは、A型とAB型の識別に問題〔スーパーインポーズの設備が無い〕があり載せなかった。
弁 他の研究機関に依頼をしなかったのか?
― 国内の大学で研究しているところが無い。また、対象資料も不足である。
弁 骨折した状態の骨についての判定は?
― 出血の状況から判断し、死後の損傷と断定した。
弁 生前・死後損傷の判断は、何によって行なうのか?
― 血液の色素の付着状況によって判断する。
弁 損傷のあったのは、どの部位の骨か?
― 右第3肋骨が骨折していた。
弁 どういった状況のもとで、死後に骨折するのか?
― 死体現象は、環境・固体の体質によって異なり、如何なる想定も無意味と思う。
弁 (遺体収容後の)搬送中の損傷は考えられるか。
― 「有り得ない」とは言い切れない。
弁 遺体解剖の結果死因に関する手がかりは全く無かったと言うことか?
― 判定に必要な情報が得られなかった故に『死因不詳』と判断した。
弁 何が原因で情報を得られなかったか。
― 筋肉組織・臓器が全く無かった。手がかりとなるものが無かった。
弁 首を絞められて死亡した場合、どの部位に痕跡が残るのか。
― 頚部圧迫で死亡した場合は。一般的に口腔上部軟骨・下顎骨等の骨折・頚部、脳内等に出血が見られる。
弁 それらの部位から、骨折・出血の痕跡を発見できなかったか。
― この場合筋肉臓器とも消失しており、特定できる要素は得られなかった。
弁 軟骨が溶けるまで何年かかるか?
― 何年かかるか、現時点では言い切れない。
2時 5分 栗原教授への証人尋問を終る。
引き続き、青山(元弁護士)への証人尋問に入る。