アナジャコの生態をスーパーカメラで撮影

〜NHK「アインシュタインの眼」〜


鈴木良雄



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(2008年)12月9日放映(13日再放送)のNHK BS−hi「アインシュタインの眼」は「多摩川河口の不思議ワールド」でした。
 三番瀬・猫実川河口域の市民調査に参加している私にとっては、とても興味深いものでした。なぜなら、高性能の特殊カメラでアナジャコの巣穴の内部を撮影したりしてくれたからです。猫実川河口域にもたくさんのアナジャコが生息しています。


■干潟をより豊かにするため、大活躍している謎の生き物

 この番組の“売り”はこうです。
    《最新の高性能カメラを駆使して、私たちの身近にある「モノ」や「できごと」の世界を多角的に撮影し、「現代のブラックボックス」を探検する。撮影の舞台裏なども垣間見ながら最新の映像世界を堪能し、不思議の世界に迫る。》
 今回は、多摩川河口の干潟に生息するアナジャコの巣穴も撮影しました。2mもの巣穴を掘る“アナジャコ”の生態を内視鏡カメラで追跡したのです。
 案内人は高知大学教育学部の伊谷行准教授です。「多摩川河口の干潟には、干潟をより豊かにするため大活躍している謎の生き物がいる」「その謎の生物の正体に迫る」ということで、潮が最も引いた夜の11時、巣穴の中に筆をつっこみました。
 そうしたら、アナジャコが泥の中から姿を現しました。「謎の生き物」とはアナジャコだったのです。「アナジャコは、一生のほとんどを穴の中で暮らしている生き物」という説明がされました。


■2mもの巣穴を掘るアナジャコの生態を内視鏡カメラで追跡

 次に、内視鏡カメラでアナジャコ巣穴の中を撮影です。
 深さ40センチのところではまだ姿を現しません。さらにカメラを進めると、カメラに向かって水があがってきます。水の中にはたくさんの浮遊物が見えます。
 「この浮遊物はデトリタスといって、有機物を含んだ泥の破片だ。干潟の生き物の栄養源となっている」という説明がされました。
 どんどんカメラを奥に突っ込んだら、アナジャコが現れました。アナジャコが奥に引っ込んだら、海水がものすごいいきおいで穴の奥に吸い込まれていきます。


■アナジャコが起こす水流は大切な役目を担っている

 次は、巣穴の中のアナジャコの様子をたしかめるため、水槽(特性干潟水槽)で実験です。干潟の泥と同じかたさの寒天を用意し、それを深さ1mの水槽の中に流し込みます。そこにアナジャコを投入しました。そうしたら、アナジャコがどんどん穴を掘っていきました。延べ5日間で穴は水槽の底に達しました。
 水槽実験でわかったのは、アナジャコは最初にU字型の穴を掘り、次に下のほうにどんどん掘っていくということです。そして、最終的にはY字型になるということです。「その深さは最大で2mにも達する」との説明です。
 アナジャコは上のU字の部分で水流を起こし、上のほうから海水が下の方へ通るようにしています。ハイスピードカメラでみると、アナジャコはお腹の団扇(うちわ)のようなものを盛んに動かしています。巣穴の中の水流は、アナジャコが腹部にある鰭(ひれ)状の肢(あし)で起こしていたものでした。
 「実は、この水流は干潟には欠かせない大切な役目を担っている」との説明です。
 さらに、酸素濃度計を巣穴の中に入れてみました。
     「泥の中は酸素がほとんどないはずなのに、測定結果はなんと37%。アナジャコの巣穴には十分な酸素が行き渡っていたのだ」

     「干潟には有機物がたくさんあって、また、生物の活動も活発なので、ほっておけば酸素がどんどん消費されるような状況にある。しかし、上のほうの海水をアナジャコが巣穴に引き入れて、酸素をたくさん含んだ海水を干潟の中に循環させてくれている」

     「多摩川河口の干潟に開けられたアナジャコの巣穴。それは、水流を起こし、干潟のすみずみにまで酸素を送り込む自然の装置だったのです。こうして、多くの生き物が生きられる干潟の豊かさが保たれていたのです」
 こんな説明がつづきました。


■初めて見る巣穴の内部映像に感動!

 三番瀬市民調査でアナジャコやその巣穴に接している私としては、とても感動的な番組でした。
 ゲストのタレントが、「アナジャコはお寿司のシャコと同じですか?」と質問したのに対し、「お寿司のシャコはエビの仲間になる。アナジャコはそうではなく、ヤドカリの仲間だ」という説明もされました。


■アサリが繁殖すると水がどんどんキレイになっていく

 このほかに、「干潟をゆりかごにして、多摩川にはアユが200万匹生息している。それは、アサリが多摩川の河口域をきれいにしているからでもある」とし、アサリの浄化力の高さを水槽で実験したりしました。「アサリは1時間におよそ1リットルの水をキレイにすることができる」という説明がされました。
 アサリは多摩川河口の名物になっているそうです。アサリ漁を営んでいる地元漁師の方は、「アサリが繁殖すると水がどんどんキレイになっていく。川底の土もキレイになる」と言います。
 日本を代表するアサリの研究者とされる学習院女子大学の品川明教授はこう話しました。
     「川の汚染度は窒素やリンが指標となっている。窒素やリンがあると、まずプランクトンが窒素やリンを吸収してくれる。しかし、プランクトンは窒素やリンを吸収したあとすぐに死んでしまうので、窒素やリンは、また自然界に出てしまう」

     「そこで重要な働きをしているのがアサリだ。アサリなどの貝類は窒素やリンを吸収したプランクトンを食べて体内に窒素やリンを保持する。このことによって河口や川の環境を浄化してくれる」


■人間や鳥がアサリを食べることで河口域がキレイになる

 ハイスピードカメラが決定的瞬間をとらえました。アサリが何かをはき出したのです。よく見てみると、海水中のプランクトンを濾(こ)しとったあとのキレイになった水分と残りカスでした。
 品川教授はこう話しました。
     「アサリは多摩川や汽水域を浄化してくれているが、アサリを人間が食べないと同じ状況になる。結局は、人間や鳥がアサリを食べることで多摩川の河口域がキレイになる」
 最後に、ナレーターが次のように話しました。
     「窒素やリンは人体に欠かせないミネラルであり、私たち人間がアサリを食べても心配ない。まさにさまざまな生き物がつながり、支えあっているのだ」
 以上です。
 この番組は、干潟や浅瀬を保全することがなぜ大切かをわかりやすく教えてくれるものでした。
 なお、番組の概要はNHK「アインシュタインの眼」の「多摩川河口の不思議ワールド」をご覧ください。

(2008年12月)






アナジャコの巣穴(三番瀬・猫実川河口域)




アナジャコの巣穴数調査(三番瀬・猫実川河口域)




アナジャコは筆でも採れる。アナジャコが筆に食いついたら筆を引き上げる。




コアサンプラーを使ってアナジャコ採取




アナジャコ(三番瀬・猫実川河口域)




アナジャコの巣穴は水道管のようになっている。(三番瀬・猫実川河口域)




藤前干潟で採取されたアナジャコの巣型。深さは約3m。







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