三番瀬の人工干潟化を主張する学者に思う

〜職業科学者に関する高木仁三郎氏の指摘〜


鈴木良雄


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 三番瀬の市川沖に広がる猫実川河口域は、多種多様な生き物が生息しています。大潮の干潮時には広大な泥干潟が現れ、約5000平方メートルのカキ礁も姿を現します。アナジャコも無数生息しています。
 そんな生き物豊富な湿地(浅瀬)に土砂を入れ、人工干潟をつくるべきと盛んに主張している海洋生物学者がいます。


■「時代は環境保全から環境修復へ」
  〜自然保護や環境保全は時代遅れ?〜

 (2005年)5月26日の『朝日新聞』(千葉版)は、その学者の主張を大きくとりあげています。記事はこんなことを書いています。
  • ここ数十年、東京湾では海底の酸素が欠乏したり、青潮が発生したりして年間数万トンの魚介類が死んでいるという。原因は「浅瀬や干潟が消えたことだ」と話す。
  • 研究目的は、東京湾の再生をめざすことだ。18の学会で構成する「東京湾海洋環境研究委員会」を立ち上げ、提言し続けている。
  • 時代は環境保全から環境修復へ。「豊かな環境を次世代に残すことこそ、公共投資の価値がある」と話す。
 要するに、「環境保護」や「自然保護」「環境保全」は時代遅れであり、これからは「環境修復」の時代というわけです。
 これは、同氏が顧問をしている環境NGOの主張とそっくり同じです。つまり、「保護ではなく保全・再生が必要」「環境保全開発が必要」という主張です。


■職業科学者は、自然を冷い血の通わぬ〈物〉へと転じさせ、
  自然を搾取し、商品化する傾向がある

 「浅瀬や干潟が消えたこと」が東京湾環境悪化の原因としながら、湾の環境維持に大きな貢献をしている浅瀬(猫実川河口域)に土砂を入れて疑似自然(人工干潟)をつくるべきというのはどういうことでしょうか。猫実川河口域の現場を見ないからこんなことが言えるのではないでしょうか。
 海洋生物学の権威者がこんなことを堂々と主張しているのです。
 そんな学者をみると、故・高木仁三郎氏の言葉を思い出します。高木氏は、自著『いま自然をどうみるか』(白水社)でこんなことを述べています。
     「自然科学者たちの多くが、その専門の領域においてはいかにも『科学的』であり、合理主義的であるようでいて、その専門を離れた問題とか生活上の問題では、いかにも非合理・非科学的で、お守り札に運命を託すような生活信条の持主である例は、現在においても枚挙にいとまがない。むしろ、このような全人格の二元化をこそ、『近代的』、さらには『合理的』と呼ぶべきなのかもしれない」

     「職業科学者たちの自然観こそ、自然をさながら人間の外なる研究や利用の対象、冷い血の通わぬ〈物〉へと転じさせ、自然を搾取し、商品化することへと道をひらいた。それはその立場ゆえの当然であったともいえるが、資本主義社会の発展と結びつくことで、この自然観は支配者たちのイデオロギーとなった」
 つまり、職業科学者は、自然を自分の研究や利用の対象として扱い、自然を「冷い血の通わぬ〈物〉へと転じさせ、自然を搾取し、商品化する」傾向があると述べているのです。
 まったくそのとおりだと思います。前述の海洋生物学者は、自分の研究のために、生き物豊富な湿地(猫実川河口域)を疑似自然、つまり「冷い血の通わぬ“物”」に変えようとしているのではないでしょうか。

(2005年5月)










猫実川河口域は、大潮の干潮時に広大な泥干潟が現れる。








猫実川河口域に生息する生き物



猫実川河口域の泥干潟に踏み入れると、
たくさんの生き物を発見することができる。
千葉県のレッドデータブックに掲載されている絶滅危ぐ種も、
市民調査で5種類が確認されている(2005年5月時点)。
そんな海域に土砂を入れて人工干潟をつくるべきということが
声高に叫ばれている。




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