下水処理水の直接放流が

 アサリや魚の漁を減らしている

  〜三番瀬保全で優先すべきは阻害要因の除去〜


鈴木良雄


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●“造るにあらず除くにあり”
   〜自然再生事業の基本〜

 「NPO法人アサザ基金」代表理事の飯島博さんは、自然再生事業の基本は「阻害要因の除去」であると強調する。たとえば、『自然再生事業─生物多様性の回復をめざして』(鷲谷いずみ・草刈秀紀編、築地書館)のなかでこう記している。
     「自然再生事業は、自然環境を損ない、野生生物を絶滅に追いこんでいる要因を取り除くことを前提に進められるべきである」
     「『人民蘇生の良法、造るにあらず除くにあり』(田中正造)は、自然再生事業の原則でもある」

 まったく同感である。
 ところが、三番瀬では、こうした阻害要因の除去がまったく無視されている。そればかりか、猫実川河口域を人工干潟にすべきということが声高に叫ばれている。


●三番瀬の環境は改善に向かっている

 埋め立てがストップした1985年以降、三番瀬の環境は改善に向かっている。それは、2003年と04年にアサリの豊漁がつづいたことや、今年(2005年)は船橋側海域で天然カキが大繁殖したこと、さらには、昨年は92年ぶりに新種のゴカイ(サンバンゼツバサゴカイ)が発見されたことなどでも明らかだ。
 したがって、貴重な浅瀬(猫実川河口域)に土砂をいれて人工干潟をつくるなどいうことは絶対にしてはならないことである。いま早急にやるべきことは、海域の改変ではなく、三番瀬の自然環境を損なっている要因を取り除くことである。


●汚水処理場からの排水量増加に比例し、アサリや魚の漁が減少

 たとえば、船橋市の下水処理場は、大雨時に大量の汚水が三番瀬に直接放流している。多量の塩素を混ぜてです。これが三番瀬の環境を悪くしていることは明らかである〈注〉
〈注〉 県の第二江戸川下水処理場も、大雨時は、大量の下水処理水を未処理のまま猫実川河口域に放流している。
 このことは、三番瀬円卓会議の第12回「海域小委員会」(2003年5月19日開催)でもとりあげられた。船橋市漁協の若手漁師である相川貴央さん(同委員会委員)がこんなふうに述べたのである。
     「アサリもアマモも魚もいなくなった原因は、生活排水だけではなく、汚水処理場の影響もあります。(船橋市高瀬の汚水処理場で働いている仲間が言うには、)雨がいっぱい降った日には、処理場でさばききれない大量の汚水が流れてきます。海老川の宮本ポンプ場から汚水が出るのです。『これから塩素を大量にたたき込んで流すから、ポンプ処理場の河口へ行って見てみなさい」と言われたので、見に行きました。猫実川の河口でよくアユが死んだという話を聞きますが、その連絡があって1時間もしないうちに大量にアユが浮いたのです」
     「県のほうで汚水処理場を調べてみてもらえないでしょうか。アサリも魚も、砂の中にいる生物や水の中にいる生物をエサにして暮らしています。アサリや魚が実際に塩素を直接食べなくても、エサがなくなれば、アサリはわかなくなるし、魚は稚魚を産まなくなって、大人の魚もみんな死んでしまいます。そういうことが実際起こっていると思うのです」
     「周りの漁師の話を聞いても、汚水処理場からの排水量は年々増えています。それと比例して、アサリや魚の漁が減っているのです。漁師の何人かが県に調査を依頼したら、調べることはできないと断られています」
     「そういう漁師たちが傍らでつぶやいていても、実際は聞いてくれる場もないし、話したところで門前払いをくらっている状態です」
     「本当は、私たちは、高瀬の汚水処理場を調べてほしいのです。雨が降って水門が閉まり、潮回りのときには、大量に魚が浮きます。汚水処理場はここだけでなく、あちこちにあるはずです。青潮だって、船橋航路際から市川航路際に向かって伸びていきます。(三番瀬の東側の漁場では)ここ5年や6年はアサリの水揚げはありません。その全部が全部汚水処理場の影響ではないかもしれません。しかし、みんなが知らない間に、実際にそういうことが行われているのです」
     「この場で県の人たちにお願いします。汚水処理場を調べていただけないでしょうか」


●下水処理水の直接放流は生物を傷めつける

 相川さんが発言したあと、大野一敏さん(同じ船橋市漁協の漁師。環境団体の代表委員)がこう述べた。
     「サンフランシスコ湾などでは、干潟に下水処理水を直接流していません。というのは、潮位が下がり、真水というか、処理水だけになった場合には、生物は生きられないからです。しかし、海水が混ざっていれば生きられます。そういう配慮を我が国ではしていませんが、サンフランシスコ湾ではパイプで深いところまで引くとか、そういう発想をしています」
     「相川さんが言うように、真水は海の表面を流れてきます。最干潮のときにその水が漁場を通過したときには、ほとんど海水ではなくなってしまう可能性もあります。それは必ず生物を傷めつけます。心配なことです」


●汚水・塩素の大量放流を野放しにし、護岸改修を最優先
  〜三番瀬再生事業の問題点〜

 しかし、驚くべきことに、この問題の議論はこれっきりに終わってしまった。県も調査をする気がない。
 県が「三番瀬再生事業」でやろうとしているのは、「市川塩浜護岸の改修」や「漁場再生」であるす。護岸改修事業では、猫実川河口域の一部をつぶして石積み傾斜護岸をつくり、その前面に干出域(人工砂浜)をつくるということが検討されている。漁場再生事業では、猫実川河口域に土砂を入れて大規模な人工干潟をつくるということが念頭におかれている。
 ところが、三番瀬の自然環境を阻害している汚水や塩素の大量放流などは野放しである。これが、三番瀬再生事業の一つの大きな問題点である。

(2005年6月)






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