東京湾三番瀬をめぐる諸問題



牛野くみ子



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*生きもののふるさと三番瀬

 三番瀬は東京湾の最奥部に位置している。千葉県の市川市と船橋市の地先に広がる干潟・浅海域である。面積は1800haだ。周りは埋め立てられてしまったが、三番瀬ではいまも漁業や潮干狩りがおこなわれている。潮干狩りシーズンは、一日に1万人以上が訪れる。三番瀬は首都圏住民の貴重なオアシスとなっている。昨年は青潮の被害が少なかったので、冬でもアサリがざくざく採れた。
 潮が引いた干潟では、カニがワサワサ出てくる。砂を掘ると、アサリ、シオフキ、ホンビノスガイなどが採れる。シギ・チドリ類は嘴(くちばし)を使ってゴカイをつまみだし食している。そのように、のどかな風景が広がっている。
 近年、珍鳥のミヤコドリが増え続けている。今年1月5日の自然観察会では281羽を数えた。日本に渡来するミヤコドリは総数で450羽とか500羽とかいわれているので、その半分以上が三番瀬に来ていることになる。また、スズガモも何万羽を数えることができる。
 三番瀬のひとつの特徴は環境が多様なことだ。底質についてみると、東の船橋側は砂干潟、西の猫実川(ねこざねがわ)河口域(市川市の塩浜2・3丁目地先)は泥干潟となっている。
 泥干潟を人間がつくるのは不可能といわれている。しかし、猫実川河口域は開発の危機にさらされている。かつて、開発派はこの海域を「ヘドロの海」と呼んでいた。そのため、私たちは2003年からこの海域の市民調査をつづけている。調査の結果、「ヘドロの海」ではなく、生物相が非常に豊かな海域であることを証明した。


*三番瀬の危機

 三番瀬はいま、何度目かの危機に見舞われている。
 県はこれまで、「三番瀬再生」を掲げて再生事業を総合的に進めてきた。しかし最近、事業計画策定から10年になる平成28年度末をもって総合的な事業推進をやめると言い出した。29年度以降は部局ごとの縦割りで事業を進めるとしている。
 三番瀬埋め立て計画は、埋め立て反対運動の高まりにより2001年9月に白紙撤回された。その後、県は総合的に再生計画を進めてきた。これは、先進的なとりくみとして全国からも注目を浴びた。結果的にはよかったと思う。しかし、部局ごとの事業推進になると、どうなるのか。環境行政の後退である。
 現在設置されている三番瀬専門家会議も廃止される可能性が大きい。そこで私たちは、総合的な施策推進と三番瀬専門家会議の存続を求めている。
 なお、三番瀬専門家会議の会長を務めていた大西隆さん(日本学術会議会長)が、今年3月に会長と委員を退任した。猫実川河口域の人工干潟化にこだわる県の姿勢を批判していたので、大西さんの退任は痛手である。


*それぞれの思惑

 ラムサール条約事務局長(当時)のデルマー・ブラスコさんは、2001年に三番瀬を視察し、「三番瀬は今すぐにでもラムサール条約に登録できる」と述べた。三番瀬は登録の国際基準を満たしている。
 しかし、県や市川市はいまも三番瀬の開発を考えている。三番瀬を漁場とする3漁協(船橋市漁協、市川市行徳、南行徳漁協)も、「ラムサール登録より漁場再生が先」と主張し、ラムサール条約登録に反対している。しかし、「漁場再生」の具体的な内容は言わない。
 市川市は「市民が海にふれあえるようにしたい」と言い、猫実川河口域の人工海浜化を強く求めている。県は、そうした市川市の要望を口実にし、猫実川河口域の人工干潟化をめざしている。その本当の目的は、第二東京湾岸道路を猫実川河口域に通すことである。
 三番瀬の埋め立て計画は白紙撤回されたが、第二湾岸道路の構想は残っている。県は現在、「干潟的環境の形成」という訳の分からない言葉を使って、人工干潟造成を目論(もくろ)んでいる。それをなんとしてでも止めなければならない。


*今後の課題

 野鳥を観察したり、貝掘りをしたり、散策をしたり、カヌーでやって来たりと、多くの人が三番瀬を訪れている。たくさんの人が来ることにより、野鳥を脅かしたり、貝類を根こそぎ持っていったりということも起きている。そこで、ルールづくりが必要となっている。
 また、一日も早くラムサール条約に登録して三番瀬を永久保全することも課題になっている。私たちは、行政交渉を続けたり、市民に三番瀬の価値を知ってもらったりと、保全に力を尽くしている。

(2014年4月)











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