ラムサール条約の提案する「湿地復原の原則と指針」

〜ビル・ストリーバー氏来日講演から学んだもの〜


千葉県自然保護連合 代表 牛野くみ子



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 ラムサール条約科学技術検討委員会 湿地復原部会座長 ビル・ストリーバー博士が提案する「湿地復原の原則と指針」の講演会を(2002年)2月24日、和洋女子大学で120人名の参加者を得て開催しました。


●「行徳野鳥観察舎友の会」の湿地復元案を高く評価

 講演に先立ち、ストリーバー博士に、三番瀬(船橋側、市川側)と行徳鳥獣保護区を見ていただきました。
 ストリーバー博士は、次のように感想を述べられました。
 「この1週間、韓国と日本で興味深い視察をしてきた。とくに私が関心を持ったのは、人々がとても熱心だったことです。それは環境NGOだけでなく、行政、漁民と、みんな環境に熱心だったことです」
 「今朝、また新しいもう一つの危機に面している湿地(三番瀬)の例を知りました。そこに関して湿地復元の計画があることも知りました。行徳野鳥観察舎友の会の東さんからの提案については積極的に二つを支援したい。一つは、これ以上東京湾を悪くならないように配慮していること、二つは、私が原則に示したように、集水域を視野に入れたアプローチや、淡水池を含めて湿地復元を視野に入れていることで、感動しました。この友の会のプランは、たいへん良く考えられている。東さんと仲間の努力を心から評価したい」
 「一方、行政側の提案は、私が聞いた範囲では、批判するわけではないが、東京湾を悪化させる懸念を持った。私が話したことに照らし合わせてみると、今、いきなりいくつかの代替案が比較されている状況にある。最初に意見を出し合って、目標、目的、到達基準を設定する必要がある。今まで、湿地復元に関わってきたところが代替案をそれぞれ出して“どっちがいい?”とやってきたのだと思うが、もう一度原則を考えていただきたい」


●湿地復元の原則と指針

 次に、湿地復元の原則について一つずつ実践例を示しながら説明されました。
 原則は政策に組み込まれることを意図したもので、次のとおりです。
  1. 立案は流域レベルで行われるべきである。
  2. 立案は水資源の配分原則を考慮しなければならない。
  3. 計画の作成には地域住民の参加がなければならない。 
  4. 復元するという約束と価値の高い自然の湿地を引き替えにすることは回避されなければならない。
  5. 復元のためには長期間の管理が必要とされる。
  6. 「適応型管理」の原則を採用すべきである。
  7. 設計に際しては自然の課程を考慮すべきである。
  8. 慎重に計画することによって、好ましくない副次的な影響が現れる可能性を抑えることができる。
  9. 復元の成功不可欠なのは、湿地復元事業の目標、目的及び成果基準が明確に理解されていることである。
 指針は、個別の湿地における段階的なプロセスを明確にすることで、フローチャートが示されました。目標、目的、到達基準、モニタリング方法(達成しているかの判断)、修復措置(達成していない場合、手直しをする)が表になっています。
 最後に、「湿地復元事業は一つとして同じものはない。それでも、ある程度、一般化ができる」と述べ、最も重要な一般化として次の2点をあげられました。
  1. 良質の自然の湿地は、復元された湿地で置き換えることはできない。
  2. いかなる湿地復元事業においても、最も重要なステップは、非常に明確かつ具体的な目標、目的及び到達基準をつくることである。
と、締めくくられました。


●目標、目的、到達基準の明確化を何度も強調

 このあと質疑に入りました。
 最初に、目標と目的のちがいについては、目標とは、計画から生みだされる望ましい結果についての一般的表現である。たとえば、三番瀬を昔の東京湾に近づけるために、干潟をつくりだし、内陸の淡水池と結びつけるという表現。目的は、計画が生み出す望ましい結果についての具体的な表現である。たとえば、冬の間5000羽のシギがくるという環境をつくる、そういう設定。これらで大事なのは、
  1. 目標、目的を明確にすること
  2. 人々にいかに伝えるかである
と、語りました。
 ですから、代替案を最初に作るのは間違いであること。また、科学技術検討委員会の中でも、復元の定義について話し合いを持ったが、公式のものに特定するのはむずかしいので、いくつかの例を示しているにとどまっている。言葉の定義はむずかしいが、共通の認識として“湿地の機能を元に戻そう”と言う考え方がある。元あった湿地に戻すのは不可能という認識がされているともいわれました。
 さらに、「一度埋め立ててしまったところをはいだ所はあるか」との質問には、「例はある。埋め立てで人工物を造ったが、嵐や洪水がひどく、人工物が壊れたので元の干潟に戻した例はある。開発は失敗したのだと認めさせることがたいへんである」と答えました。そして、開発者にも湿地の重要性に関心を持ってもらうのに、アメリカでは30年かかったこと、三番瀬は、世界的に見ても重要で、他の国の人々が見守るに値する問題になっている、ヨーロッパでもアメリカでもカナダ、日本でも湿地に関心が高まりつつある。言い続けることが重要であるし、ラムサール条約という道具を、行政を納得させるために積極的に使って欲しい──とも言われました。期間については、短くて5年、長いものでは50年という計画もあり、目標、目的、判断基準を過小評価してはいけないと答えました。  何回も目標、目的、到達基準を明確にすることと言われたのが印象的でした。
 三番瀬も現在、「三番瀬再生計画検討会議」で検討がすすめられています。目標、目的、到達基準を明確にしていったとき、私たちはもとより子孫にも納得できる三番瀬になると確信しています。

(2002年3月)   






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