ラムサール条約湿地

谷津干潟の現状と課題



田久保晴孝


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日本の干潟登録第1号

 谷津干潟は東京湾奥部に位置する約40haの干潟である。もともとは三番瀬につながる広大な干潟の一部であった。千葉県は1969年に京葉港地区の埋め立てを開始するさい、谷津干潟も埋めようとした。しかし谷津干潟は大蔵省所管の国有地であったため、公有水面埋立法では埋め立てることができなかった。周囲の埋め立てにより、谷津干潟は長方形の干潟として残った。

 その後、習志野市が谷津干潟を埋め立てる計画を打ち上げた。住宅用地などの造成が目的であった。そのため、「千葉の干潟を守る会」や「千葉県野鳥の会」(当時は日本野鳥の会千葉支部)、袖ヶ浦団地住民を中心とする習志野市民などが共同で大規模な埋め立て反対運動を繰り広げた。その結果、市は1984年に埋め立て計画を断念した。1988年、谷津干潟は国指定鳥獣保護区(ほとんどが特別保護地区)に指定された。そして1993年、ラムサール条約第5回締約国会議(釧路会議)においてラムサール条約湿地に指定された。日本で7番目、干潟としては初のラムサール条約登録であった。

 1994年、谷津干潟自然観察センターがオープンした。センターは習志野市の施設である。現在、「社団法人アーバンネイーチャーマネジメントサービス」が指定管理者としてセンターの管理運営業務をおこなっている。


シギ・チドリ類が大幅減少

 ラムサール条約登録から20年を超えた谷津干潟は、渡り鳥(水鳥)が減少しつづけている。とくにシギ・チドリ類は大幅減少である。シロチドリ、メダイチドリ、ダイゼン、ハマシギ、オオソリハシシギ、ダイシャクシギなどである。これらは三番瀬や盤洲干潟などでも減少している。だが、谷津干潟は減少が著しい。たとえばシロチドリは、1974年は約3000羽確認されたが2013年は1羽しか確認されていない。ハマシギも、1986年の4300羽が2012年は1000羽に激減した。オオソリハシシギは、1990年の約300羽が2012年は140羽に減少した。セイタカシギはかつて50羽を超えていたが、いまは10〜20羽である。

 減少の主な原因はつぎの4点である。

 第1は、泥が流出しつづけ、干潟の砂質化が進んでいることである。下水道の整備にともない、淡水や有機物が流入しなくなったことも大きい。その結果、底生生物の生息環境が変化し、シギ・チドリがエサとしているゴカイやカニが減った。

 第2は、春と秋にアオサが干潟の表面を覆うことである。これは、淡水が流入しなくなったことに起因する。夏や冬になると、そのアオサが腐敗する。

 第3は、外来種のホンビノスガイが増えていることである。びっしりと生息し、ゴカイやカニの生息場所をうばっている。三番瀬ではホンビノスガイの漁が盛んである。ホンビノスガイを採る潮干狩り客も多い。ところが谷津干潟は、漁業権がなく、国指定鳥獣保護区の特別保護地区となっているため、立ち入りや採取が禁止されている。

 第4は、東日本大震災によって干潟が10cmくらい地盤沈下したことである。そのため、干潟の西側はほとんど干出しなくなり、シギ・チドリがエサをとりづらくなった。

 第5は、猛禽類(オオタカとノスリ)が増えたことである。

 こうしたことから、環境省関東地方環境事務所は2010(平成22)年度から谷津干潟の環境保全事業をはじめた。砂付け(干潟の嵩上げ)やアオサの除去などの対策を進めている。しかし、今のところ効果はでていないようにみえる。

課題

 習志野市はかつて、協議会(「谷津干潟環境保全交流会」)の音頭をとっていた。協議会にはさまざまな環境保護団体や市民団体、市民が加わっていた。ところが、環境省が保全事業をはじめたころから、市は協議会の音頭取りをやめてしまった。協議会は解散状態になった。また、市は谷津干潟の保全事業を環境省に丸投げしている。

 谷津干潟はいまや習志野市のシンボルになっている。そして、市のいちばんの観光スポットになっている。市民アンケート「私が選んだ習志野いちばん」では、「自然・場所」の分野で谷津干潟が堂々の1番に選ばれた。これは市の観光ガイドブック(2013年2月発行)に掲載されている。

 谷津干潟は、都心に近く、年間を通じて多くの野鳥が見られる。そのため、野鳥観察や散策、自然学習などの場として多くの人々に親しまれている。習志野市は、市民が誇りとしている谷津干潟の保全に責任と意欲をもってとりくんでほしい。そのために協議会を復活させてほしい。「千葉の干潟を守る会」などは、協議会の復活を求めたり、上総掘(かずさぼ)りによる淡水流入などを提案したりしている。
(2014年12月)
















谷津干潟



谷津干潟のセイタカシギ






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