「再生計画」と三番瀬の漁業・漁民


三番瀬を守る署名ネットワーク 竹内壮一



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 「三番瀬再生計画」の「素案」を作成する最終段階で、漁業問題がネックになっている。
 第1次素案として出された再生計画の「漁業」の箇所で文章化されていたのは、「アサリ漁業の動向」という1項目に過ぎず、残りの9項目は文章として提出されなかった。三番瀬の再生計画を考えるうえで委員の誰もが重要と考えていながら、そして漁民の代表という形で、船橋漁協、行徳漁協、南行徳漁協、そして県漁連から4人の委員が出ているにもかかわらず、三番瀬の漁業について十分な検討が行われてこなかったからである。

 そのためもあってか、「素案」の「漁業」には項目立てで基本的に欠けている項目がある。三番瀬海域に係わる漁民の現状と将来的展望についての項目が設定されていないことである。「三番瀬漁民の現状と将来への展望」という項目を立てるべきである。

 4人の漁業者委員はなぜか3つの漁協に属する漁民の現状について、また漁民の将来への展望について、円卓会議で話されなかった。円卓会議も漁業の重要性を指摘しながら、漁業・漁民に係わる基本的データをもとに議論をしてこなかった。
 漁民に関する基本的データ、具体的にいえば、船橋・行徳・南行徳の漁協で事業としての漁業者が何人いるのか、兼業の漁業者はどれくらいなのか、漁業者の数は歴史的にどのように変化してきたのか。漁業者の年齢構成はどのようになっているのか、など、まず漁民の実態を示す基本データが円卓会議の中で共有されていない。

 さらに魚種別漁獲高の推移、規模別漁船数、漁獲金別漁業者数の推移、魚類・貝類・ノリなどの種類別漁業者数の推移など三番瀬漁業を支える漁民の現在と将来を展望する資料の提示が行われてこなかった(配付された資料には、1999年に県土木部と企業庁がつくった『三番瀬の環境の推移』があり、その中には「漁業活動の変化」という項があって、グラフが掲載されているが、実数の記載はない)。

 もちろん三番瀬漁業に関する基本的データの入手は容易である。『千葉県統計年鑑』の「水産業」の項、千葉農林水産統計年報、農水省の漁業センサスなどを見れば基礎的データはすぐに提示できる。また、個別漁協のデータは3漁協の代表が委員に加わっているのだから容易に入手しうるはずである。
 そしてなによりも、4人の漁業者代表が漁業と漁民に関するデータを提示して、漁業と漁民の現状、そして漁民の将来を円卓会議のテーマとして設定すべきであったと思う。
 そうした作業を通して、円卓会議が三番瀬の漁業と漁民についての認識を共有し、そのうえで市川漁港の移設問題やラムサール条約登録に関わる漁業振興の問題などを討論すべきであった。

 農水省の漁業センサスを見ればすぐにわかることだが、3つの漁協で漁業を専業としている漁民は船橋が64人、行徳が33人、南行徳が1人である(第10次漁業センサス、1998年)。市川市の漁業者で漁民そのものという人は34人だけだ、という認識がまずでてくる。
 もちろん、数は少くとも三番瀬の保全に関して漁民の果たす役割はきわめて大きい、ということは論を待たない。そして生活のすべてが漁業に連なっているという漁民は市川には34人しかいない、南行徳漁協ではたった1人だ、ということも、事実としてある。

 また、1998年の漁業センサスによれば行徳と南行徳の漁業就業者の年齢構成は15−19歳がゼロ、20−29歳が9人、30−39歳が16人、40−49歳が20人、50−59歳が52人、60歳以上が107人となっている。漁業従業者総数206人の半数以上(52%)が60歳以上で、高齢者によって三番瀬の漁業が担われていることがわかる。
 この数値は5年前のものであるから、2003年段階で高齢化はいっそう進んでいることが予測される(漁業センサスは5年おきに行われるので、今年の11月、新たな漁業・漁民の実態が明らかになるはずである)。もし新規参入者がなければ、5年後の2008年に市川の漁業者で60歳未満の人はわずかに45人となってしまう。

 こうした現状をまず把握したうえで、漁港移転、漁港建設などの問題を議論すべきではないのか。事業漁業者の絶対的少なさ、兼業者の中で「漁業が主」という漁業者を含めても市川市の漁業者は1998年、87人である。そのうえに劇的な形で高齢化が進んでいる。
 こうした現状を深刻に受け止めたうえで、漁業問題が語られるべきではないだろうか。

(2003年10月)   






スズガモの群れ。三番瀬は日本有数のスズガモの
渡来地となっており、冬期は10万羽もやってくる。




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