三番瀬円卓会議をめぐる状況


三番瀬を守る署名ネットワーク 竹内壮一





1.円卓会議の外側での動き

 堂本知事は(2002年)6月9日、自民党県連の三番瀬問題検討会に出席し、年度内に「三番瀬再生」のアウトラインを決定すると述べた。
 また、三番瀬再生検討会議(三番瀬円卓会議)の「海域小委員会」「護岸・陸域小委員会」で公募委員を選ぶ際に、不明朗な点が問題となった(この点については、別掲の「三番瀬円卓会議の運営等についての意見書」を参照)。

 こうした三番瀬円卓会議をめぐる状況は、国土交通省など政府の東京湾をめぐる動きと密接に関連している。
 千葉県や千葉市が加わる7都県市と国土交通省などは今年2月、東京湾再生推進会議を設置したが、早くも6月には「東京湾再生のための行動計画(案)」を発表した。
 それによれば、「都市環境インフラとしての海の再生」という視点で東京湾を位置づけ、「快適に水遊びができ、多くの生物が生息する、親しみやすく美しい『海』を取り戻し、首都圏にふさわしい『東京湾』を創出する」ことを目標として設定した。具体的には、三番瀬をはじめ7カ所が再生をめざす重点エリアとして指定された。
 そして、再生のための施策として、湿地・干潟の再生などが課題とされ、そのために干潟浅場・海浜・磯場の再生、生物付着型の港湾構造物等の整備、生態系に配慮した緩傾斜護岸への改修などが検討課題になった。

 さらに、このような動きに連動するように国交省港湾局は7月、学識経験者、港湾管理者(関係自治体)、関係行政機関(国土交通省、環境省)からなる「東京湾の干潟等の生態系再生研究会」を設置し、以下のような課題に取り組むことを明らかにした。
  1. 三番瀬をはじめとする東京湾における干潟・藻場・浅場等の自然環境の現状調査
  2. 東京湾における干潟・藻場・浅場等の保全・再生などのあり方の検討
  3. 生態系保全を視野に入れた東京湾の総合的な海域環境改善方策の検討など
 そして、この研究会は年度内に報告書を作成するということである。
 こうしてみてくると、政府レベルでの三番瀬の「再生」をめぐる動きは急である。しかも、施策のための結論を出すことを急いでいるふしがある。

 憂慮すべき点はまだある。鉄鋼・建設大企業などを中心とする財界の大規模開発推進団体「JAPIC」(日本プロジェクト産業協議会)が、6月、「東京湾再生特別措置法」(10年間の時限立法)の制定による東京湾臨海開発の提案をおこなった。JAPICなどが絡んでくれば、どうしても開発が先行し、保全がないがしろにされることは目に見えている。

 そして、今国会における「自然再生推進法」制定の動きである。現在示されている「法案」には検討すべき多くの問題が含まれている。たとえば日本弁護士連合会の「会長声明」が指摘しているように、
  1. 残された自然と再生される自然との関連が欠落していること
  2. 国および地方自治体の責務が不十分なこと
  3. 取り戻すべき自然環境の内容に生物多様性の確保についての明文の規定がないこと
  4. 自然再生協議会の組織化に関する手続きが明確ではないこと
などが問題としてある。

 この法案は、今国会では継続審議になったが、次の臨時国会で採決される可能性が高いといわれている。法案については各地の自然保護団体の意見を入れて、根本的に検討することが早急に求められている。
 このような三番瀬・東京湾、環境問題をめぐる状況が「円卓会議」の進行に少なからず影響を与えている。



2.「円卓会議」と「護岸・陸域小委員会」での当面の争点

 7月12日に開かれた「護岸・陸域小委員会」で、円卓会議事務局は三番瀬海域の「高潮時に必要な堤防の高さ」として、直立護岸の場合、堤防の高さが8メートルになるという試算を発表した。
 満潮時の潮の高さは通常の平均的潮の高さより 2.1メートル高い。その満潮時に伊勢湾台風(1959年の死者約5000人、流失家屋約4万戸を出した戦後最大の大型台風)級の台風が発生した場合、海水面はさらに約3メートル高くなる。その巨大な台風が仮に大潮の時に発生するとすれば、海水面はさらに2.1メートル上昇する。さらに地盤沈下などの不測の事態を考えて余裕高として 0.5メートルを加えれば、高潮を防ぐためには約8メートルの高さの護岸が必要となる──という説明がおこなわれた。
 また、8メートルの垂直護岸は、景観上問題が残るし、三番瀬への市民のアクセスを妨げることになるから、これを避けるとして、たとえば50分の1の傾斜を持つ人工海浜を堤防の前面につくれば波を消すことになるので、8メートルの高さを6メートルにすることは可能である、などの説明があった。

 この「護岸・高潮対策問題」は来年度予算請求と関連するということで、円卓会議でも緊急課題としてとりあげられた。
 円卓会議では、当面緊急に対処すべき堤防の補修と将来の海域条件を大きく変更させる「8メートル垂直護岸問題」や「300メートルの傾斜を持つ人工海浜問題」などは別に考えるべきであり、現時点では当面の緊急補修対策のみを問題にすべきである、という説得的な提案がなされたが、円卓会議委員の合意は得られていない。

 緊急の課題だということで、いま護岸・高潮対策問題に焦点があてられているが、円卓会議の役割は三番瀬の保全・「再生」の基本理念をつくりあげ、この基本理念に基づいた保全・「再生」案を知恵を出し合って話し合う点にある。
 もちろん、護岸・高潮問題は重要な課題であるが、この問題を「テコ」にして猫実川河口域を含めた塩浜地先の海域を人工海浜化しようという案については、とうてい認めることはできない。それは、実質的には三番瀬の新たな環境「破壊」計画であり、埋め立て計画の白紙撤回という流れの中で設置された円卓会議が選ぶ道ではないはずだ。

 これまでの調査結果で明らかなように、猫実川河口域の泥質海域は三番瀬の豊かさや多様性の保証でもある。まずは「三番瀬の海域を埋め立ない、保全する」という基本的方針を円卓会議委員と小委員会委員がはっきりと確認し、そのうえで、現状の垂直護岸問題を解決する知恵をあらゆる努力を傾けてなすべきだと思う。
 それが三番瀬円卓会議にゆだねられた使命なのではないだろうか。護岸堤防問題を論ずる場合でも、「三番瀬を埋め立てない」という基本原則を確認したうえで、当面の対策と「中・長期的対策」が話し合われるべきである。

(2002年7月)








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