猫実川河口域への土砂投入は全く不可解

〜「千葉方式」が泣いています〜


千葉の干潟を守る会 竹川未喜男



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 去る11月13日の三番瀬再生計画検討会議(通称・円卓会議)において、私は「猫実川河口域への土砂投入は「不可解であり、不愉快だ」と発言しました。
 約180ページにおよぶ素案の内容は一見して優等生の作文のように立派ですが、一通り読んでも、そこに孕(はら)まれている矛盾や問題点を見出すのは難しいだろうと思います。その最たるものがこの“猫実川河口域への土砂投入”です。


●猫実川河口域を「特に重要な場所」と書く


 この「猫実川河口域」と呼ばれる海域は、三番瀬の西側の奥部で、市川市塩浜2、3丁目と浦安市入船、日の出地区に通ずる澪(みお)筋の西側、猫実川河口寄りの固有な環境海域、約266ヘクタールの海域を指すと考えられます。
「素案」の中では、「三番瀬内での唯一の泥質環境となっている」「静穏な干潟・浅海域であり、アナジャコをはじめ汽水性泥質干潟特有の生物多様性の保全において特に重要な場所」(第一章「2 三番瀬の現状」)とあり、「泥質で汽水域の生物が生息する干潟・浅海域は猫実川河口域と江戸川放水路河口右岸部分にわずかに存在するに過ぎません」(第二章「4 水・底質環境」)とも書かれています。
 円卓会議でも、泥質干潟の性質を保つため、砂や石などはもちろん、人が自由に入るのも止めにしようといった論議がされたのです。


●素案の後半には猫実川河口域への土砂投入を盛り込む


 ところが同じ素案の後半では、この保全ゾーンへの土砂投入が“別の言葉”で書き込まれ、図解まで出てきます。「海側においてアセスメントとモニタリングをしながら、徐々に砂を入れ干潮帯や破砕帯ができるようにしていく」(第二章の「5 海と陸との連続性・護岸」)とか、「猫実川河口部分については海域の再生という観点から手を入れていくべきという意見があり、生物調査や潮流のシミュレーション結果などを踏まえつつ検討することが必要」(同「6 三番瀬に向き合う街づくり・景観」)という記述です。
 「市川市所有地から塩浜2丁目側の区域はできるだけ海に張り出さない構造としつつ、人と三番瀬の適切なふれあいを確保していく区域とすべきです。(中略)この区域の前面では、子どもが遊べる場所も検討し、再生スポットでは海に降りられる構造とすべきです」(同「7 海や浜辺の利用」)
 「猫実川河口域は、(中略)夏季に潮下帯深場の停滞域を中心に酸化還元電位がマイナス値となる地点が現れ、部分的にアサリなどの海生生物にとって好ましくない底質環境になっていますが、(中略)種の多様性の維持の観点からこの海域の重要性が指摘されています」「底質の悪化した潮下帯深場の停滞域への試験的な土砂供給を順応的に行うなど含む干潟的な環境再生の方向を総合的に検討します」(同「3 漁業」
 いずれも猫実川河口域沿岸の護岸づくり、街づくり、海の利用に関連して海側に土砂を投入しようというものです。最後にあげた漁業側の「試験的な土砂供給を順応的に行うなど含む干潟的な環境再生」というのがそれぞれに共通した方向のようです。


●「計画段階から住民が参加した大規模な公共工事」が実現


 素案の最後の第四章に「提言」として三番瀬自然再生の具体的施策が並べられていますが、円卓会議で2年間これだけの論議を経て合意できた“猫実川河口域の保全”の言葉が見あたらず、「市川塩浜2丁目の改修護岸前面の干出域化」とだけ書かれたのはなぜでしょう。
 素案本文にはないのですが、円卓会議で問題とされたのが護岸のイメージ図です。素案とりまとめの段階で「具体的になったのは護岸だけのようです」と岡島会長が憤慨しました。
 これはイメージ図というより、寸法入りの工事仕様に近いものです。仮に石積み護岸とした場合のことで、「決定したものではなく、自由度はある」と説明されています。
 しかし、上記の「土砂と石の投入」の詳細計画が分かります。相当規模の土木工事です。しかも、 「計画段階から住民が参加した大規模な公共工事」という誇るべき「千葉方式」が実現するわけです。さらに「順応的管理」の工事が継続していけば、どこかの「きれいだけの人工海浜」になってしまうような危惧も感じるのです。
 後になって知らされたことですが、すでに県は国にたいして、塩浜2、3丁目1.7キロの護岸工事補助金の予算要求を出していました。この護岸工事は、塩浜2丁目の企業団体と市川市が押しの一手で勝ち取った工業専用区域の用途変更(目的は地価上昇)と、市から県への護岸管理責任の移管の結果として必要となった海岸保全護岸施設(海の環境とはあまり関係がない)の建設です。
 この図面はそもそも、県側が論議しやすいからと、「ポンチ絵でも描いてほしい」という表現でコンサル会社に依頼したものです。「海岸線基本設計計画」として、調査・設計しめて1000万円で発注していました。


●三番瀬円卓会議は「徹底した住民参加」とはいえない


 この「年度予算要求」のためにすべてが振り回されたのです。現況調査、総合解析はいずれも不十分との付帯意見がつきました。他方で、市民調査は成果発表の機会もなく、会場発言は極度に制限されました。市民が出した意見や要望も応答なしです。これでは、「徹底した住民参加」とはいえません。
 また、会議は細分化され、参加者は迷うばかりでした。委員ですら会議への参加準備もできないと聞かされました。
 開催された会合は、「円卓会議」(親会議)が19回、「海域」「陸域」「制度」の3つの小委員会が42回、6つのワーキンググループが58回、計128回という、まさに殺人的スケジュールでした。
 このように、三番瀬再生の素案づくりは綱渡りのようでした。素案づくり最後の会議であらためて強い疑問の意見と不信の声があがったのは、こうした背景と鬱積(うっせき)した思いがあったからです。

(2003年11月) 




海域に張り出して傾斜堤と砂浜をつくる「市川塩浜2丁目の護岸イメージ図」

三番瀬再生計画素案より




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