三番瀬と公共事業をめぐる動きや課題を学ぶ

〜 市川三番瀬を守る会が「三番瀬・緊急学習会」 〜




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 市川三番瀬を守る会は2002年9月3日、市川市中央公民館で「三番瀬・緊急学習会」を開きました。「三番瀬円卓会議」で三番瀬市川側(猫実川河口域)をつぶして人工砂浜(干潟)を造成すべきという動きが強まっていることから、緊急に開いたものです。





星野亘良事務局長の報告





  浅海域の人工干潟化は底生生物を皆殺しにするものであり、
  生物の多様性を破壊する

市川三番瀬を守る会 事務局長 星野亘良



 まず、同会の星野亘良事務局長が、「市川市のプランと円卓会議の問題点」というテーマで、市川市による人工干潟造成構想や円卓会議の議論の状況などを報告しました。
 星野さんの報告内容を一部紹介します。
  1. 昨年9月、堂本知事が埋め立て計画の白紙撤回を表明したことで三番瀬の埋め立ては中止になったはずだった。しかし、三番瀬の再生プランを検討しようと出発した円卓会議は、ここにきて、猫実川河口域を人工干潟にしようとする動きが強まっている。

  2. 猫実川河口域の人工干潟化は、たいへんな自然破壊をもたらす。水深2〜3メートルの浅海域に大量の砂を入れて人工干潟をつくろうというものだが、実質的には埋め立てそのものである。
     大量の砂を入れることによって、魚や底生生物などたくさんの生き物が生息している浅海域の自然は破壊されてしまう。アナジャコをはじめ底生生物を皆殺しにするものであり、生物の多様性の破壊である。

  3. 市川市はこの間、全国各地の人工砂浜を視察した。横浜市の海の公園、野鳥公園、東京都のお台場潮風公園、葛西臨海公園、静岡県の浜名湖松見ヶ浦、広島市の五日市地区人工干潟、山口県防符市の三田尻湾人工干潟、アメリカのサンフランシスコ湾などである。
     そのうちいくつかは市長も同行した。視察の結果、市長などは、猫実川河口域の人工干潟化はどうしても必要ということを、広報紙などで盛んに宣伝している。市長は、広報紙でこう述べている。
     「これらの視察を通じて感じたことは、自然を壊したのが人間ならば、その自然を再生し、かつ良好な環境で維持するのも人間がやらなければならないということです。三番瀬の保全と再生について考えをまとめる中でこれらの先例を実際に見たことは大いに参考になりました」

  4. 市川市はこれまで、猫実川河口域に砂を入れて300分の1の勾配をもつ人工干潟をつくるというイメージ図を発表していたが、最近は、勾配が1000分の1になり、より大規模なものを打ち出している。

  5. 市川市などが人工干潟化のメリットとしてあげているのは、(1)市民が海に親しめるようになる。(2)高潮対策に必要な堤防の高さを低くおさえることができる。(3)昔の景観を回復できる。(4)水質・砂質・生物を人為的にコントロールできる――などである。
     これらは表向きのものであるが、このほかに、口にはださないものとして、(1)国の「自然再生事業」にのれる。(2)埋め立てを前提とし、県が金融機関をつうじて漁協組合員に貸し付けた「漁業転業準備資金」(43億円)とその利息(56億円以上)をチャラにできる。(3)第二湾岸道路が建設しやすくなる――などがあると思われる。

  6. 円卓会議は、県民参加と情報公開による三番瀬再生のための計画立案の場として設けられた。これは画期的なことであり、私たちも大いに期待していた。
     しかし、じっさいには、過去の埋め立てについて何の反省もなく、目標なしで出発した。新たな公共事業を立案するための場となることも危惧されている。

  7. 以上のように、三番瀬は重大な局面をむかえている。円卓会議の動向や市川市の動き、そして、その底流としての公共事業をめぐる国の新たな動きなどをしっかりと把握し、三番瀬の真の保全を実現するために、気を引き締めて奮起したい。




羽室音矢さんの講演





   三番瀬円卓会議は、“器は新しいが中身は古い”

ジャーナリスト 羽室音矢



 つぎは、ジャーナリストの羽室音矢さんによる講演です。羽室さんは、「三番瀬、公共事業をめぐる国の動向」というテーマで、記者の眼からみた三番瀬円卓会議や公共事業を話してくれました。講演要旨はつぎのとおりです。
  1. 三番瀬円卓会議は、住民参加と情報公開で公共事業計画を策定するという、画期的なものである。完全公開なのでおもしろい。しかし、“器は新しいが中身は古い”という感じもする。従来型の公共土木事業を推進しようとする姿勢が強いからだ。この点は、今の日本の縮図といってもよいと思う。

  2. 堂本知事は昨年3月、知事選の途中で埋め立て計画の白紙撤回を公約するにいたった。堂本知事が選挙で公約したのはこれだけだった。このように、堂本知事が選挙で白紙撤回を公約し、昨年9月に埋め立て計画を中止するにいたった背景には、あきらかに埋め立て中止を求める30万署名の力があった。

  3. しかし、三番瀬円卓会議では、100ヘクタール規模の人工干潟造成がもちあがっている。これは、かつての101ヘクタールの埋め立て計画と、形はちがっているが、本質はおなじである。

  4. 港湾をみると、全国いたるところが過剰施設をかかえて四苦八苦している。いい加減な見通しで埠頭などをどんどんつくったためだが、この構造が人工干潟造成にも貫いている。また、港湾の土木事業は、政財官の癒着がとりわけひどい。癒着というより一体化しているという感じだ。港湾事業は住民から見えにくいからで、やりたい放題になっている。

  5. こうしたなかで、海洋土木工事にかかわるゼネコンは、人工干潟の造成工事を手がけたいのではないか。三番瀬で人工干潟を成功させたとなると、胸をはれるし、ほかのところでも工事がやりやすくなる。

  6. 市川市行徳漁協は、自民党市川支部に毎年6万円を政治献金している。その行徳漁協は、猫実川河口域の人工干潟化を強く要望している。また、市川商工会議所は、三番瀬の市川側について、船橋海浜公園前のように多くの市民がやって来れるよう、砂浜にしてほしいと要望している。千葉第5区(市川市など)選出の田中甲衆院議員(元民主党)も「人工海浜をつくるべき」「第二湾岸道路は必要」などと言っている。背景にこうした動きがあることも知っておいてほしい。

  7. 公共事業は、これまでのようなやり方が通用しなくなり、住民参加と環境を重視せざるをえなくなっている。
     環境重視という点では、たとえば干潟についていえば、諫早湾の閉め切りが大きな影響をおよぼした。かつては、干潟の価値はあまり認められていなかった。しかし、「干潟を守れ!」は、昔は少数派だったが、今は多数派になっている。国際的な流れも大きい。生物多様性保全条約の発効以降、環境が国家戦略になってきている。

  8. 公共事業のおける環境重視という点では、法律の改正も重要だ。河川法の改正にはじまって、海岸法、港湾法が改正された。改正点の柱は、環境と住民参加である。

  9. 三番瀬では浅瀬をつぶして人工干潟をつくるという動きが強まっている。しかし、浅瀬の方が人工干潟よりも価値はずっと高い。
     たくさんの生き物が生息している浅瀬に大量の砂を入れて人工干潟をつくるのはとんでもないことだ。
     人工干潟をつくろうとしても、砂が流出するので、砂の補給をつづけなけばならない。生き物も定着しない。これは、全国各地の実例でわかることだ。“今ある浅瀬を守ろう!”を高く掲げ、こうしたばかげたことはやめさせてほしい。

  10. 海岸法が改正されて環境がうたわれたといっても、この法律は、高潮から守ることを基本としており、環境は付け足しとなっている。環境の比重を高めさせるために、海岸法を研究し、対策をねってほしい。そして、みなさんの市川市で、住民参加による環境重視の、すぐれた海岸保全計画をつくってほしい。また、行政の計画づくりに対して積極的に発言したり提言をしてほしい。――これが今、NGOに求められている課題だと思う。





質疑討論



  「どこもかしこも人工砂浜にする必要はない」




 星野さんの報告と羽室さんの講演をうけての質疑討論では、三番瀬円卓会議への対応などについてさまざまな意見がだされました。一部を紹介します。

 「円卓会議では、高潮被害をふせぐために高い堤防をつくるべきだとか、前面海域を人工砂浜にすべきなどということが議論されている。しかし、これは防災の話であって、三番瀬の保全や再生とは直接には関係のないことだ。防災の話は別のところでやるべきだ。また、人工干潟をつくって水際線をなだらかにし、潮流をよくするというのも同じだ。潮流を改善するために三番瀬の海域をつぶすというのは、三番瀬の保全・再生でもなんでもなく、とんでもないことだ。さらに、市民が海に親しめるようにするために三番瀬をつぶすことも、それがどうして三番瀬の保全・再生につながるのか、まったく理解できない。そもそも、どこもかしこも人工砂浜にする必要はない」

 「市川市主催の行徳臨海部まちづくり懇談会で佐野さん(市川緑の市民フォーラム)が、猫実川河口域にアナジャコがたくさん生息していることを絵などを用いて訴えたが、大多数の委員は、“それがどうしたの?”という感じで受け止めていた。アナジャコが生息していることの意味や生き物の大切さはあまり理解されていないようだ。また、臨海部に立地する企業は、陸地を削って湿地を復元する案にかなり批判的だった」

 「県や市川市などは、干潟を埋め立て、そこを二束三文で企業に譲り渡した。干潟にはワタリガニなどがたくさんいて、私たち住民はそれをみそ汁に入れて食べたりしていた。しかし、大切な干潟が埋め立てによってつぶされてしまったために、私たちは干潟の恩恵をうけられなくなった。企業が“陸地を削るのは反対”と言うのなら、昔の干潟をつぶした責任をとってもらいたい」

 「県などが猫実川河口域の人工砂浜化に躍起となっているのは、第二湾岸道路をどうしてもつくりたいからだ。この海域が今のまま残ることになると、第二湾岸道は事実上つくれなくなる。この意味で、三番瀬の保全・再生と第二湾岸道の問題は密接にからんでいる」

(文責・『自然通信ちば』編集部)









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