国際湿地シンポジウム in 東京湾三番瀬

〜「全国の湿地、干潟の開発を中止させよう」を宣言〜


「三番瀬は埋め立てずにラムサール条約指定へ」も決議



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 全国の湿地を保全しようと、日本湿地ネットワーク(JAWAN)主催の「2001 国際湿地シンポジウム in 東京湾三番瀬」が(2001年)9月15、16日の両日、市川市で開かれました。県内外から延べ400人が参加し、「湿地・干潟の保全と復原」や「三番瀬をラムサール条約指定に」をテーマにし、活発に議論しました。

 このシンポは、新しく千葉県知事になった堂本知事が、新たな三番瀬計画の方向性を9月県議会で示すとしている状況のもとで開かれました。堂本知事は、101ヘクタールの現行埋め立て計画を白紙にすると表明しているものの、「埋め立ての中止」は明言(いわゆる「脱埋め立て宣言」)していません。「里海の再生」をしきりに強調し、三番瀬の一部を埋め立てることもほのめかしています。
 こうしたなか、シンポでは、現存する湿地(干潟など)を保存することの大切さや、修復の問題が議論の焦点になりました。

 初日の15日は、三番瀬などを視察したあと、全国各地で湿地保全にとりくんでいる団体がそれぞれの活動を報告しました。諫早湾干拓によって有明海の環境に異変が生じていることから、諫早湾の潮受け堤防の開削または前面撤去などを求めて運動していること。泡瀬干潟は奇跡的に残った琉球列島最大規模の干潟であるが、バブルのときに立てられたリゾートホテル主体の埋め立て計画に免許が下ろされて危機に瀕していることから、同干潟を守るために埋め立て事業の中止を求める運動を進めていること。名古屋市の藤前干潟は、ゴミ処分場として埋め立てられる予定だったが、それを中止させ、今はゴミの排出量を減らす真の循環型社会の実現をめざして活動していること──などです。

 各地をむすぶリレートークでは、和白干潟(福岡市)や中池見湿地(福井県敦賀市)、汐川干潟(愛知県豊橋市)、吉野川河口干潟(徳島市)、盤洲干潟(千葉県木更津市)、三番瀬(船橋、市川市)などの保全活動が報告されました。

 2日目の16日は、米国の同時多発テロ事件の影響で参加が遅れた釧路公立大学・元ラムサール事務局員の小林聡史氏に代わり、JAWAN国際担当の鈴木マギー氏がラムサール条約の内容などについて講演。鈴木氏は、「ラムサール条約は、それぞれの締約国が1カ所以上の登録をすることになっている。そして、登録地だけでなく、すべての湿地について、保護したり、ワイズユース(賢明な利用)を推進することを義務づけている」と強調しました。

 つづいて、同事件の影響で来日できなくなったラムサール条約科学技術検討委員会湿地復原部会代表のビル・ストリーバー氏に代わり、世界自然保護基金ジャパンの東梅貞義氏が、ラムサール条約が提案している湿地復原の原則と指針(ガイドライン)について講演しました。東梅氏は、「提案では、湿地を修復したり復原したりする際は、“復原するという約束を価値の高い自然の湿地を引き替えにすることは回避されなければならない”としている。つまり、“今ある湿地はつぶさない、減らさない”──これが大原則である」と述べました。

 「バレンシア会議に向けて」というテーマで講演した環境省自然環境局野生生物課の黒田大三郎課長は、2002年にスペインのバレンシアで開かれるラムサール条約締約国会議に向けた環境省のとりくみなどを話しました。黒田課長は三番瀬についてもふれ、「三番瀬はスズガモやシギ・チドリの重要渡来地であり、国際的に保全すべき価値は十分にあり、ラムサール条約に登録する資質がある。したがって、登録の前提条件である国設鳥獣保護区の予定地に含めることを前向きに検討している」と表明しました。

 パネルディスカッションでは、「三番瀬が守られるかどうかは日本の湿地が守られるかどうかの問題でもある」「三番瀬は市川側だけを埋め立てたとしても、その影響はほかの区域におよぶ。沿岸域を一体とした統一的な管理が必要」「今ある干潟や浅瀬をつぶして人工干潟をつくるのはナンセンスなことは、藤前干潟に関する環境庁見解でも明らかにされている」などの意見がだされました。また、いまある干潟や浅瀬をつぶさないで、遊休埋め立て地などを湿地にもどす提案が、「市川緑の市民フォーラム」と「行徳野鳥観察舎友の会」からそれぞれ発表され、反響をよびました。

 最後に、「目的のいかんを問わず、全国の湿地、干潟の開発を凍結、中止、廃止させよう」「三番瀬の当面の保全対策について、専門家、市民などの考えを尊重して、浅海・干潟の埋め立ては行わず、早急に青潮の発生源である浚渫跡など、傷だらけの海底を埋め戻し、海岸線後背地域の湿地化などの修復工事を着手させよう」などとする宣言文を採択し、閉会しました。











シンポジウムの概要





日本湿地ネットワーク結成10周年

2001 国際湿地シンポジウム in 東京湾三番瀬

〜湿地・干潟の保全と復原〜



■開催日   2001年9月15日(土)〜16日(日)
■開催場所  和洋女子大学(市川市)
■主 催   日本湿地ネットワーク(JAWAN)
■主管団体  千葉の干潟を守る会、千葉県野鳥の会、市川緑の市民フォーラム、
       千葉県自然保護連合、三番瀬を守る署名ネットワーク、
       三番瀬を守る会、行徳野鳥観察舎友の会
■後援団体  環境省、千葉県、公共事業チェック議員の会、日本自然保護協会、
       日本鳥類保護連盟、世界自然保護基金ジャパン、和洋女子大学
       公共事業チェックを求めるNGOの会

■プログラム
●9月15日(土)   
<午前の部>
 ・三番瀬などの現地視察
<午後の部>
 ・開会の挨拶……………………………………………………実行委員長 大浜 清
 ・歓迎の挨拶……………………………………………和洋女子大学学長 鈴木幸壽
 ・来賓挨拶………………………公共事業チェック議員の会事務局長 佐藤謙一郎
 ・基調報告「JAWAN10周年に寄せて」 ……日本湿地ネットワーク代表 辻 淳夫
 ・海外報告「韓国における干潟の現状と保護運動の課題」
       …………………………………韓国海洋研究所主席研究員 諸 淙吉
 ・重点報告(1)
   諫早(長崎県諫早市)……………諫早干潟緊急救済東京事務所 吉川多佳子
   泡瀬干潟(沖縄市)…………………………泡瀬干潟を守る連絡会 山城正邦
   藤前干潟(名古屋市)……………………………藤前干潟を守る会 辻 淳夫
 ・各地を結ぶリレートーク
   和白干潟(福岡市)………博多湾の豊かな未来を伝える市民の会 松本 悟
   中池見湿地(福井県敦賀市)………………中池見湿地トラスト 笹木智恵子
   汐川干潟(愛知県豊橋市)……………………汐川干潟を守る会 小柳津 弘
   吉野川河口干潟(徳島市)……………日本野鳥の会徳島県支部 山内美登利
   有明十六万坪(東京都江東区)……江戸前の海十六万坪を守る会 中野幸則
   盤洲干潟(千葉県木更津市) 
         ………………小櫃川河口・盤洲干潟を守る連絡会 御簾納照雄
 ・参加団体の紹介

<夕方の部>
 ・レセプション

●9月16日(日)   
<午前の部>
 ・基調講演(1)「ラムサール条約と日本」
        ………………………日本湿地ネットワーク国際担当 鈴木マギー
 ・基調講演(2)「ラムサール条約の提案する湿地復原の原則と指針」
	    ………………………………世界自然保護基金ジャパン 東梅貞義
 ・海外報告(1)「湿地と湿地、湿地と人をつなぐハマシギの渡り
	      ─湿地保全の取り組みの構築を目指して」
	    ……………韓国「湿地と鳥の友達」国際担当 ニール・モアーズ
 ・海外報告(2)「ビデオ報告:韓国始華湖の現状」
         ……………韓国・希望の始華湖市民連帯会議共同議長
                        チョエ・ジョンイン(崔 鍾仁)

   (注) 基調講演(1)の講師は、釧路公立大学・元ラムサール事務局員の小林聡史氏
     の予定であったが、米国の同時多発テロ事件の影響で参加が遅れたため、急
     きょ変更となった。また、基調講演(2)の講師は、ラムサール条約科学技術
     検討委員会湿地復元部会代表のビル・ストリーバー氏の予定であったが、同
     事件の影響で来日不可能となった。


<午後の部>
 ・重点報告(2)「バレンシア会議に向けて」
		………………………環境省自然環境局野生生物課長 黒田大三郎
 ・重点報告(3)「三番瀬ラムサール指定登録に向けて」
		…………………三番瀬を守る署名ネットワーク事務局 竹内壮一
		…………………………………千葉の干潟を守る会代表 大浜 清
 ・パネルディスカッションと質疑応答
   パネリスト:
     鈴木マギー(日本湿地ネットワーク国際担当)
     諸 淙吉(ジェ・ジョンギル。韓国海洋研究所主席研究員)
     ニール・モアーズ(韓国「湿地と鳥の友達」国際担当)
     黒田大三郎(環境省自然環境局野生生物課長)
     佐野郷美(市川緑の市民フォーラム事務局長)
     田久保晴孝(三番瀬を守る会会長)
   コーディネーター:
     堀 良一(博多湾の豊かな未来を伝える市民の会事務局長)
     牛野くみ子(千葉県自然保護連合代表)
 ・講演「ラムサール条約と日本」(補足)
     …………………………釧路公立大学・元ラムサール事務局員 小林聡史
 ・宣言と特別決議の採択
 ・閉会の挨拶











公共事業チェック議員の会の佐藤謙一郎事務局長


佐藤謙一郎さん

 来賓を代表して挨拶してくれた佐藤謙一郎衆議院議員(民主党)は、101人の超党派国会議員で構成される「公共事業チェックする議員の会」のとりくみを紹介し、「問題になっている現場を3党以上の代表で視察するようにしている。先週は、13人で沖縄・泡瀬干潟を視察した。みなさんの運動が局地でたいへん苦労しなくてもすむように、法律の整備(制定や改定)をめざして勉強会などをつづけている。たとえば、自然環境権を法律体系の中に位置づけることや、『東京湾保全法』の制定などを検討している」などと述べた。


主催者挨拶をしたJAWANの辻 淳夫代表


辻 淳夫さん

 主催者を代表して挨拶した日本湿地ネットワーク(JAWAN)の辻淳夫代表は次のように述べた。
 「諫早湾のギロチン(閉め切り)は、今回のニューヨークの惨劇に通じるもので、生き物を軽々しく扱い、皆殺し(ホローコースト)にするものだ。また、今回の諫早をめぐる行政の対応は、科学の名による事実の冒涜(ぼうとく)である。干拓面積を縮小するというが、それによって干潟が復元されるかどうはまったく不明だ」
 「諫早のギロチン衝撃は、結果として、名古屋の藤前干潟を救った。藤前の埋め立て中止は、ゴミの排出量をどう減らすかという社会システムのあり方を見直すきっかけにむすびついている。また、諫早の衝撃は三番瀬にも大きな影響を与えた。埋め立て計画の面積が740ヘクタールから101ヘクタールに縮小されるとともに、今年3月の千葉県知事選挙では、『埋め立て計画の白紙撤回』を公約した堂本氏が当選した」
 「先月開かれた千葉県主催の三番瀬シンポジウムにおいて、大浜清さんは、『海の問題の諸悪の根源は埋め立てにある』『多くの漁師が漁業権を放棄したが、慣れない陸での生活はうまくいっていない』などと述べられた。また、大浜和子さんは三番瀬に生息している小さな生き物の重要な役割を話され、このことをしっかりみてほしい、と述べられた。これらはすばらしい発言である。そんな大切な三番瀬などの保全にこのシンポジウムが役立つようにしたい」




韓国海洋研究所主席研究員の諸淙吉さん


諸 淙吉さん

 諸淙吉(ジェ・ジョンギル)さんは、韓国における干潟の現状や干潟保全活動などを話した。韓国の干潟の8割以上は西海岸に集中していること。日本と同じように、埋め立てや干拓によって多くの干潟が失われ、工場用地や住宅用地などに変わったこと。大規模な埋め立てが今も計画されているため、自然保護団体などが保全活動をすすめていること、などである。



諫早干潟緊急救済東京事務所の吉川多佳子さん


吉川多佳子さん

 吉川さんは、諫早湾干拓によって有明海の環境に異変が生じていることや、諫早湾の潮受け堤防の開削または前面撤去などを求めて運動していることなどを報告した。



泡瀬干潟(沖縄市)の活動などを報告する山城正邦さん


山城正邦さん

 山城さんは最初に、沖縄の干潟がズタズタにされていることを話した。そして、泡瀬干潟の埋め立て計画がバブルのときに立てられたリゾートホテル主体の計画であることや、沖縄の埋め立て計画にはつきものの人工ビーチが計画されていることなどの問題点を述べた。そして、泡瀬干潟の重要性や埋め立て計画の問題点を広くアピールし、埋め立てを中止させる運動をさらに強め、この運動を、沖縄が「アメとムチの政策」から自立するチャンスにむすびつけたい、と力強く決意を表明した。



「博多湾の豊かな未来を伝える市民の会」の松本 悟さん


松本 悟さん

 松本さんは、人工島建設で危機に瀕している和白干潟(福岡市)の保全活動を報告。「和白干潟沖を約400ヘクタール埋め立てる人工島建設工事が進行中である。事業者(第三セクター)は、“和白干潟を埋め立てずに沖合で人工島を建設するので、環境に配慮した公共事業”と言っている。しかし、これまでの埋め立てによって、博多湾はひどい状況になっている」「人工島を建設しても、売れる見込みはまったくたっていない。じっさいに、人工島の手前の埋め立て地はまったく売れていない」 などと述べた。



汐川干潟について報告する86歳の小柳津弘さん


小柳津弘さん

 小柳津さんは、貴重種の渡来が多く、豊かな自然環境を誇る汐川干潟(愛知県豊橋市)の現状や、「汐川干潟を守る会」のさまざまなとりくみを報告した。86歳でがんばっておられる小柳津さんの元気な報告に、会場からは大きな拍手がおきた。


「日本野鳥の会徳島県支部」の山内美登利さん


山内美登利さん

 山内さんは、吉野川河口干潟の保全活動を報告。「吉野川可動堰計画は白紙になったが、可動堰そのものがなくなったわけではない。吉野川の別の箇所に計画される恐れもあることから、ひきつづき活動を強めていきたい」などと述べた。


「市川三番瀬を守る会」の星野亘良事務局長


星野亘良さん

 星野さんは、同会の活動を報告するとともに、「堂本知事は、埋め立て計画をいったん白紙撤回したあとに『里海の再生』をめざすとしている。その内容は不明だが、新たな埋め立て計画の登場も危惧されているので、私たちは今後も三番瀬保全運動をすすめていく」と語った。


NPO法人「行徳野鳥観察舎友の会」の東良一理事長


東 良一さん

 東さんは、家庭雑排水を導入し、たくさんの野鳥が生息する湿地づくりを行徳鳥獣保護区(市川市)ですすめている同会のとりくみを報告するとともに、「鳥獣保護区の淡水湿地を三番瀬の後背湿地としてうまく機能させたい」などと語った。


JAWAN国際担当の鈴木マギーさん


鈴木マギーさん

 マギーさんは、ラムサール条約の内容などについてわかりやすく話し、「ラムサール条約は、それぞれの締約国が1カ所以上の登録をすることになっている。そして、登録地だけでなく、すべての湿地について、保護したり、ワイズユース(賢明な利用)を推進することを義務づけている」などと強調した。


世界自然保護基金ジャパンの東梅貞義さん


東梅貞義さん

 世界自然保護基金ジャパン(WWF−J)の東梅さんは米国同時多発テロ事件の影響で来日できなくなったラムサール条約科学技術検討委員会湿地復原部会代表のビル・ストリーバー氏に代わり、同条約が提案している「湿地復原の原則と指針(ガイドライン)」について講演した。東梅氏は、「提案では、湿地を修復したり復原したりする際は、“復原するという約束を価値の高い自然の湿地を引き替えにすることは回避されなければならない”としている。つまり、“今ある湿地はつぶさない、減らさない”──これが大原則である」と述べた。


韓国「湿地と鳥の友達」国際担当のニール・モアーズさん


ニール・モアーズさん

 ハマシギは普通の鳥だが、小さな規模の干潟でも見ることができるので大好き、というモアーズさんは、韓国における干潟の現状や鳥の飛来状況などを話し、「埋め立て事業者は、“干潟をつぶしても、鳥は他の干潟に移動するから大丈夫”と言っているが、実際の調査結果では、そんなことはない。干潟のエサの量や収容能力は限られているので、鳥が別の干潟に移って生息をつづけることはむずかしい」「鳥と湿地(干潟)と人間は、お互いに密接にかかわりをもっており、干潟はどんなに規模が小さくても自然環境や人間社会にとって大きな価値をもっている」「今回のシンポでは湿地の修復・復原が大きなテーマとなっているが、それをおこなうためには、鳥や底生生物などについて勉強や研究を深めなければならない」などと述べた。


韓国「希望の始華湖市民連帯会議」共同議長のチョエ・ジョンイン(崔 鍾仁)さん


崔 鍾仁さん

 ジョンインさんは、さまざまな野鳥や植物などが飛来したり生息する始華湖(韓国)の映像を見せながら、始華湖のすばらしさを強調し、自然を守ることの大切さを訴えた。


環境省自然環境局野生生物課の黒田大三郎課長


黒田大三郎さん

 「バレンシア会議に向けて」というテーマで講演した環境省自然環境局野生生物課の黒田大三郎課長は、2002年にスペインのバレンシアで開かれるラムサール条約締約国会議に向けた環境省のとりくみなどを話してくれた。
 黒田課長は三番瀬についてもふれ、「三番瀬はスズガモやシギ・チドリの重要渡来地であり、国際的に保全すべき価値は十分にあり、ラムサール条約に登録する資質がある。したがって、登録の前提条件である国設鳥獣保護区の予定地に含めることを前向きに検討している」と表明した。


「三番瀬を守る署名ネットワーク」の竹内壮一さん


竹内壮一さん

 埋め立て中止を求めて署名集めなどにとりくんでいる「三番瀬を守る署名ネットワーク」の竹内さんは、次のように述べた。
 「堂本知事は101ヘクタールの埋め立て計画を白紙撤回すると表明しているが、埋め立てそのものをやめるとは言わない。地元の市川市などは、猫実川河口域(三番瀬の市川側)を市民が親しめるようにするため埋め立てるべきと主張している。しかし、この海域は生物がたくさん生息しており、生物多様性にも富んでいる。私たちは、こうした湿地をつぶすことには、今後も反対していく」


パネルディスカッション


パネリストのみなさん

 パネルディスカッションでは、「三番瀬が守られるかどうかは日本の湿地が守られるかどうかの問題でもある」「三番瀬は市川側だけを埋め立てたとしても、その影響はほかの区域におよぶ。沿岸域を一体とした統一的な管理が必要」「今ある干潟や浅瀬をつぶして人工干潟をつくるのはナンセンスなことは、藤前干潟に関する環境庁見解でも明らかにされている」などの意見が活発にだされた。


まちづくり案を発表した「行徳野鳥観察舎友の会」の清水大悟さん


清水大悟さん

 「行徳野鳥観察舎友の会」の清水大悟さんは、友の会が市川市に提出した「市川の海と海辺のまちづくり」提案の内容を発表した。提案の要旨は次のとおり。
  1. 三番瀬の埋め立ては行わない。ただし、埋め立てによって生じた海底の深み、青潮の発生源や導入源となる航路など、必要な地形修復はおこなう。
  2. 猫実川の河口を中心として、水質悪化の意味を含め、干潟やアシ原を復元する。
  3. 現在の海岸線を陸地側へ後退させることも視野にいれて、可能なかぎり干潟や湿地の面積を確保し、水鳥の生息地、自然海岸としての機能を回復させていく。
  4. 行徳近郊緑地特別保全地区と海を、環境に連続性をもつような開けた水路で結ぶ。
  5. 保全すべき区域はきちんと保全するために、水鳥などが生息できるようにする「保全区域」と、人間が自然にふれあえるようにする「利用区域」を、別に設定する。
  6. 満潮時に水鳥が休息できる場所として、干潟や浅瀬の後背地に湿地を確保する。
  7. 「千葉県自然環境センター」「環境教育実践センター」「埋立博物館」などを設置する。これらは湿地復元に関する国際的な研修場とすることも考えられてよい。
 映像を使った清水さんの説明は、たいへんわかりやすく、また、説得性に富むもので、大きな反響をよんだ。たとえば、韓国の「湿地と鳥の友達」国際担当のニール・モアーズさんは、「この提案はグッド・フィーリング。すばらしい提案だと思う」と感想を述べ、「韓国では、今のところ、このような市民側からの提案はない」「三番瀬はムチャクチャに大切な場所だ。自然の河口干潟の場合は、たいていは淡水の区域がある。この提案のようなものが実現した場合、その役割を行徳鳥獣保護区が果たすのではないかと思う」などと語った。


三番瀬埋め立て問題について発言した永尾俊彦さん


永尾俊彦さん

 この8月に『干潟の民主主義─三番瀬、吉野川、そして諫早』(現代書館)を刊行されたルポライターの永尾俊彦さんは、次のように述べた。
 「三番瀬を取材して思ったのは、市民参加とか民主主義がまったくみられないことだ。たとえば、船橋ヘルスセンター関連用地(船橋市)の埋め立てでは朝日土地興業が大儲けした。京葉臨海コンビナート(市原市)、千葉市中央地区(千葉市)、東京ディズニーランド関連用地(浦安市)などの埋め立てでは、三井不動産が莫大な儲けを手にした。こうしたことをよくみると、埋め立ては企業や政治家の儲けを目的としておこわれたことがわかる。そして、こうした埋め立てによって、国民の財産である海が、いつのまにか、県民が知らないうちに私有地になってしまった。これは悪だと思う」
 「堂本知事が誕生して市民参加が期待されたが、どんどん後退している。はじめは、さまざまな考えをもった市民団体、漁協、企業、行政担当者らが一つのテーブルで議論する『住民会議』を設置すると表明した。ところがその後、『住民会議はシンポジウムのこと』と言い、そのシンポジウムも、当初は5回ぐらい開くと言われていたのが、2回に減った。堂本知事には、“脱埋め立て宣言”を期待していたが、いっこうに埋め立てを中止するとは言わない」
 「地元の漁師に取材したところ、海苔漁をやっている漁民は、猫実川河口域は埋め立てたほうがよいと言っている。一方、底引き網の漁師は、猫実川河口域は稚魚の育成場になっているので埋め立てはやめてほしいと言っている」


釧路公立大学・元ラムサール事務局員の小林聡史さん


小林聡史さん

 小林さんは、米国の同時多発テロ事件の影響で終了直前に会場到着。映像を使いながら、「ラムサール条約は、世界中で湿地の破壊が進むなかで、このままではまずいと専門家などが動いてつくられた。湿地は、経済的価値や存在価値、生物多様性などのほか、お金に換算できない無限の価値をもっている。条約は湿地の“賢明な利用”推進を義務づけているが、それは登録指定地以外にも該当する」などと述べた。


サンフランシスコ在住の砂川さんのメッセージを代読する水間八重さん


水間八重さん

 泡瀬の干潟で遊ぶ会の会員でサンフランシスコ在住の砂川かおりさんがメッセージを送ってくれ、同会会員の水間八重さんが代読した。砂川さんはメッセージの中で、堂本千葉県知事が環境修復の成功例としているサンフランシスコ湾の人工湿地造成についてふれ、次のように述べている。
 「サンフランシスコ湾で活動する環境団体の方々の中には、開発による代替措置として、人工干潟などを作ってきたことには肯定的な意見を述べる方が多いです。しかしながら、生物の多様性について復元できるとは誰も言いませんし、思っていません。まずは、『最初の場所を守ること』が最も大事だと言っています。人工干潟は、元あった自然の干潟の代りはできません。行政の『人工干潟論』は一般の人々に、人工干潟が元の干潟の代わりになるような錯覚を与えるので、とても危険です。干潟保全に取り組む団体は、そのことを強く、一般の人たちに知らせていかなければなりません」


メゾソプラノの市野由美子さん


市野由美子さん

 市野さんは、三番瀬への思いをこめて、「三番瀬の四季」をレセプションで熱唱してくれた。


バロック・ダンスの市瀬陽子さん


市瀬陽子さん

 市瀬さんは、レセプションでバロック・ダンスをみせてくれた。


展示コーナー(ロビー)


展示コーナー

 展示コーナー(ロビー)は、さまざまな団体がもちよったポスターや資料などを見たり、署名したりする人でにぎわった。


閉会あいさつをした千葉県自然保護連合代表の牛野くみ子さん


牛野くみ子さん

 牛野さんは、閉会あいさつのなかで、「最近、“湿地の再生”とか、“里海の再生”とか、わかりにくい言葉が巷(ちまた)をとびかっている。しかし、私たちは、今回のシンポで重要なテーマとなった『湿地復原の原則と指針』により、「復原するという約束と引き替えに湿地を売ることは回避しなければならない」ことを学びました。埋め立てときっぱり手を切ることが必要だ」と述べた。


シンポジウムを支えてくれた実行委員の皆さん


実行委員の皆さん

 シンポジウムの企画や運営にたくさんの方が協力してくれた。








三番瀬宣言



 1991年5月6日、干拓工事で揺れる諫早で結成されて以来、JAWAN(日本湿地ネットワーク)は設立10周年を迎えた。
 20世紀、とりわけ第二次世界大戦後の半世紀、干潟は次々に破壊された。JAWANが設立されたとき、すでに多くの干潟が失われ、残された干潟も軒並み開発の波に洗われていた。このままでは日本の干潟は21世紀にその豊かな恵みを伝えることができないままに壊滅的な打撃をうけようとしていた。湿地を守ることの大切さや、無駄な公共事業の問題も、十分な国民世論とはなっていなかった。

 この間、JAWANは草の根ネットワークとして、ラムサール条約を核として国際的な湿地保全の世論と取り組みの前進に支えられながら、内外のNGOや環境庁と協力しつつ活動した。そして、この10年で、わたしたちの取り組みは前進した。とりわけ、衝撃的な諫早湾干拓事業の水門締め切りを契機に、干潟保全の世論は大きく高揚し、藤前干潟のゴミ埋立中止、三番瀬埋立計画の縮小などのかつてない展開を生んだ。ついには、諫早湾干拓事業もその見直しに着手することとなった。しかし、それらはいずれも本格的な保全の始まりでしかない。

 日本の湿地は、いまなお多くの問題点を抱え、政府と自治体は、いまだに時代遅れの法や政策に固執している。
 21世紀を本格的な保全の世紀にするためには、干潟の開発を野放しにしてきた公有水面埋立法を廃止して、それに代わる湿地保全法を制定しなければならない。第三者機関の適正な関与がないなど多くの問題点を有する環境アセスメント法は改正すべきである。決議7.22「潮間帯湿地の保全と賢明な利用の促進に関する決議」など、ラムサール条約締約国会議の成果を踏まえた国家湿地政策の立案も重要である。強い批判を浴びている公共事業優先の政策を転換し、時のアセスを実効性あるものにしなければならない。

 わたしたちは、2日間のシンポジウムを通じて、湿地の復元は重要ではあるが難しい課題であり、あくまでも保護が原則であることを学んだ。わたしたちは、人工干潟と引き替えに、安易に湿地破壊を行おうとする風潮に警鐘を乱打する。
 同時に、国際的にも取り組みが前進しつつある真の湿地復元の流れを正しく受け止め、失われた湿地の目録を作成し、社会的・文化的・技術的に受け入れ可能な湿地復元の取り組みに我が国も早急に着手すべきである。とりわけ、諫早湾の湿地復元は急務である。諫早において、従来の運動の枠を抜け出して始まった、湿地を生活の基盤にしている漁民と、湿地そのものの価値の保全を目指すNGOや住民の協力は、運動の新しい局面を開くものとして極めて重要である。

 JAWANは10年間の活動を通じて、イギリス、アメリカ、オーストラリア、ロシア、韓国をはじめ多くの国々の政府組織やNGOと交流してきた。国際的な湿地保全のネットワークを作り上げ、経験を交流することは、21世紀の湿地保全にとって今後とも重要な課題である。
 とりわけ、本年1月の有明海の異変に端を発して韓国のシファ(始華)湖、セマングムに対する人々の関心が高まっている。韓国とのネットワークは、両国に共通した湿地破壊の流れを協力して変 えていく上でも、東北アジアにおける人と湿地のつながりや渡り鳥のフライウェイを守っていくうえでも重視しなければならない。

 無謀な公共事業から湿地を守り、湿地の保全を確実にするためには、地域に根ざしたNGOによる調査活動が不可欠である。わたしたちは、各地で調査活動を充実させるとともに、ハマシギに関する調査・研究の取り組みなどの国際的な協力を重視する。

 科学的根拠にもとづいた湿地の保護と復元、賢明な利用は、日本や韓国をはじめ、アジアや世界で、文明の将来を支えるものである。
 21世紀の最初の年を、結成以来10年という節目の時で迎えた本シンポジウムにおいて、わたしたちはそれを実現するために全力を傾けることを宣言する。

 2001年9月16日

「2001 国際湿地シンポジウム in 東京湾三番瀬」参加者一同






三番瀬保全に関する特別宣言文



 北海道から沖縄まで、ほぼ30の団体と300名の市民が参加した本シンポジウムでは、全国の草の根運動を結集したJAWAN(日本湿地ネットワーク)10年の歴史を糧として、それぞれに地元の現状が訴えられ、会場は熱い共感で包まれました。
 同時に、湿地の「保全から復原へ」という世界的な流れの中で、依然として諫早湾をはじめ泡瀬、和白など、なお多くの湿地・干潟の開発が進行している日本の姿は、「経済・産業優先」「環境・文化後進国」の現状を示すものでした。

 “三番瀬をラムサール条約指定に”が今回のシンポジウムの一方の中心テーマとなりました。三番瀬を守る署名者教は現在30万人に達し、県民の世論は「埋め立て白紙撤回」を公約にした堂本暁子氏を知事に選びました。しかし、知事のいう「里海の再生」が果たして真の干潟の保全とラムサール条約の精神に沿うものかどうか、人々の厳しい目が必要とされています。三番瀬が国際問題となり、関係3市もラムサール条約の指定を言っています。私たちは、先日来日されたラムサール条約のブラスコ事務局長の「三番瀬は現状でラムサール条約の登録は可能である」との発言と、本シンポジウムにゲストとして参加されるはずであったラムサール条約科学技術検討委員会湿地復原部会代表、ストリーバー氏が提言されている「湿地・干潟の保全と復原の原則」どおり、三番瀬は保全を優先し、ラムサール条約への登録、指定を図るべきだと考えます。この原則と、韓国の大規模な始華湖開発および湿地復原の経験は、日本における湿地保全に新しい展望を開く国際的な道標であり、励ましと希望を与えてくれました。

 「三番瀬をこれ以上埋めてはならない。」、「東京湾を救え。」、「三番瀬をラムサール条約に指定せよ。」。これこそ、過日開催された千葉県主催の「三番瀬シンポジウム」で示された圧倒的な県民の声でした。埋め立て思考を絶つべきときです。その先にこそ、新しい日本の国土政策の展望が開かれるのです。
 日本は今、未曾有の経済、財政危機にあります。かつての造成地には、広大な未利用地と製鉄工場などの撤退跡地が残されています。それは、京浜、京葉地帯の工業最優先の政策と、極端な一極集中の都市化、無駄な巨大公共事業のもたらしたものです。そして、その政策の犠牲になって失われたものこそ、東京湾岸に延々と広がっていた豊饒な浅海・干潟であり、そこで暮らしを支えていたアサリや海苔を主とした漁業でした。

 日本の中心にあって、危機に瀕している三番瀬を救う問題は、現在わが国が当面している湿地・干潟保全の象徴的な問題となってきました。海は一つです。どのようにすれば、三番瀬を保全し、東京湾を救えるのか。自然保護を願う日本全国の人々、そして地球環境を守る国際的連帯の連動として世界の人々の期待に応えねばなりません。最後に、私たちの三番瀬干潟の保全に関する指針をあげ、本シンホジウム参加者一同の名前において宣言します。
  1. 目的のいかんを問わず、全国の湿地、干潟の開発を凍結、中止、廃止させよう。
  2. 埋め立てを目的とする「公有水面埋立法」を廃止し、「湿地保全法」(仮称)を制定させよう。
  3. 三番瀬の保全問題を東京湾全体の中で検討するため、専門科学者、NGO、一般市民を中心とした東京湾会議を設置し、十分な時間をかけて諸案を検討し、企画段階より環境影響評価の調査を行わせよう。
  4. 三番瀬のラムサール条約登録の手続きを直ちに進めよう。
  5. 三番瀬の当面の保全対策について、専門家、市民などの考えを尊重して、浅海・干潟の埋め立ては行わず、早急に青潮の発生源である浚渫跡など、傷だらけの海底を埋め戻し、海岸線後背地域の湿地化などの修復工事を着手させよう。

 2001年9月16日

「2001 国際湿地シンポジウム in 東京湾三番瀬」参加者一同






特別決議





 2001年9月15、16日、千葉県市川市和洋女子大学で開かれた「2001 国際湿地シンポジウム in 三番瀬」の参加者は、湿地保全のために、以下のことを決議する。
  1. 日韓両国の湿地と生息地に大きな影響を与えるセマングム干拓事業の中止に向けた韓国の人びとの運動を支持する。
  2. ナクトン(洛東)江河口の国際的重要性に鑑みて韓国プサン(釜山)のミョンジ(鳴旨)大橋の計画に対する反対を支持する。
  3. 一旦閉め切られ、汚染した韓国シファ(始華)湖の環境を取り戻すための市民、行政、その他すべての利害者が共に話し合う取り組みを高く評価する。
  4. 藤前干潟をラムサール登録地とし、木曾岬沖の広域処分場構想を取り止め、木曾岬干拓地の湿地復元を図ること。
  5. 三河湾のこれ以上の汚濁を防ぐために、六条潟の埋め立て、設楽ダム計画を中止すること。
  6. 中池見湿地に計画されているLNG基地建設計画を中止、湿地全体と周囲の山林を保全し、ラムサール登録地とすること。
  7. 国設浜甲子園鳥獣保護区後背地を共生環境整備事業の一環として、淡水湿地を取り入れた緑地公園にすること。
  8. 曽根干潟の72haの「土地利用対象ゾーン」を白紙撤回して、ラムサール条約へ登録すること。
  9. 諫早湾においては、国営干拓事業による農地造成を全面的に中止した上で、地域の防災対策と諫早湾の干潟生態系の復活を両立させ、有明海の復元を図ること。
  10. ダムを中止し、清流川辺川を守り、不知火海の保全回復を図ること。
  11. 泡瀬干潟の無駄な公共事業を撤回させ、多様な底生生物、それらに支えられた渡り鳥、この豊かな自然とのかかわりの中で育まれてきた人々の文化を次の世代に手渡すこと。

 2001年9月16日

「2001 国際湿地シンポジウム in 東京湾三番瀬」参加者一同







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