日本弁護士連合会が

 三番瀬埋め立てに対する意見書を

 環境庁と千葉県に提出

  〜埋め立て計画の即時中止とラムサール条約登録を求める〜




トップページにもどります
「ニュース」にもどります


 日本弁護士連合会は(1999年)12月17日、三番瀬埋め立て計画に対する意見書を環境庁と千葉県に提出しました。
 意見書では、三番瀬埋め立て計画を即時中止し、ラムサール条約上の湿地登録をして保全をはかることなどを求めています。
 以下は、意見書の全文です。


 

意見書



三番瀬埋立事業計画に対する意見書

1999年12月17日

日本弁護士連合会





意見の趣旨

  1. 千葉県は、市川二期地区・京葉港二期地区計画(以下「三番瀬埋立事業計画」という)を直ちに中止し、三番瀬について自ら積極的に保全措置を講じ、ラムサール条約上の登録湿地としてその保全をはかるよう政府に働きかけるべきである。

  2. 環境庁は、千葉県に対し、三番瀬埋立事業計画の即時中止を求め、三番瀬について、鳥獣保護法上の国設鳥獣保護区に指定する等の保全措置を講じ、ラムサール条約上の湿地登録手続をなすべきである。


意見の理由


はじめに

 1997年、農林水産省が諫早湾の潮受堤防を閉鎖して同干潟を干陸したが、これに対し、国内外から激しい抗議が相次いだ。1998年には、藤前干潟について名古屋市は最終的に同干潟の埋立を回避する旨決定し、これは国内外で評価された。そして、今、千葉県が計画している三番瀬の埋立が内外の注目を集めている。千葉県の三番瀬埋立事業計画の内容および経過の詳細は後記のとおりであるが、下水道終末処理場用地その他の目的のために三番瀬を埋め立てるというものであり、当初計画埋立面積740ha(以下「当初計画」という)をその後の補足調査の結果等を受けて1999年6月、101haと縮小した(以下「縮小計画案」という)。
 当連合会は、三番瀬に関し、1999年5月以来、「千葉の干潟を守る会」等の地元自然保護団体、日本自然保護協会、千葉県、船橋市、市川市、浦安市および環境庁野生生物課等へのヒアリングを実施し、また三番瀬を実地に踏査し、さらに千葉県による三番瀬に関する調査報告書等の文献を検討する等、調査を進めてきた。
 その結果、三番瀬は優れた生態系を有し、多様な生物の生息地、渡り鳥等鳥類の貴重な採餌場所として極めて重要な意義を有しているとともに、大都市近郊において奇跡的に残された貴重な干潟であるとの結論に達した。このような三番瀬の環境上の価値に照らし、三番瀬は小面積といえども埋め立てることは回避されるべきであり、三番瀬埋立事業計画は直ちに中止され、国内法上保全措置を講ずるとともに、ラムサール条約の登録湿地とすべきである。


第1 三番瀬の価値および重要性

1 干潟生態系とその水質浄化機能

(1) 三番瀬は、東京湾最奥部、千葉県の船橋市、市川市、浦安市の埋立地に囲まれた、泥質および砂泥質の干潟(140ha)と水深5m以下の浅瀬を含む約1650haの海域である。三番瀬には大量の付着藻類や植物性プランクトン(浮遊藻類)が存在しており、これらは水に溶け込んでいる窒素や燐の栄養塩類を吸収して生活し(一次有機物生産)、光合成により多量の酵素を放出する。動物プランクトンはこれらの酸素を吸収し、さらに付着類を餌として増殖する。底生生物は藻類、動物プランクトン、デトリタス等その他の有機物を、魚類はこれらを、鳥類は底生動物や魚類をそれぞれ順次摂餌する。そして、魚類や鳥類はそれぞれ干潟外に出て行く。付着藻や植物性プランクトンが順次摂餌されることで有機物が干潟から減少し、富栄養化が防がれている。砂泥層に存在するバクテリア、線虫、原生動物は、底生生物のフンや死骸、植物の枯死体などを含む有機物を分解し、最終的には水に溶ける栄養塩類にする。栄養塩類は再び付着藻や植物性プランクトンに吸収され、干潟および周辺浅海域の生態系を循環していく。

(2) バクテリア等の栄養塩類分解の機能は窒素に対して特に重要であり、脱糞素作用により、窒素をアンモニア態や硝酸態から気体窒素に変化させ、大気中に放出する。
 三番瀬におけるこの浄化機能は極めて大きく、千葉県が行った三番瀬に関する生態系についての補足調査「市川二期地区・京葉港二期地区計画に係る環境の現況について」によれば、窒素量で年間575トンを浄化、COD(化学的酸素要求量)浄化量で年間2245トンの浄化能力を有することが明らかにされた。この浄化能力は13万人分の下水処理場に匹敵する。


2 生物の多様性

 前記のように循環する干潟および周辺浅海域の生態系には、藻類、植物プランクトン、動物プランクトン、底生生物、魚類、鳥類等が、それぞれ相互に依存して豊かな生態系を形成している。
 三番瀬では、付着藻類、海藻類、植物プランクトンが基礎生産の役割を果たしている。底生生物は水深0〜1mの海域に多く見られ、ドロクダムシ、ホトトギスガイ、エドガワミズゴマツボ、ニホンドロソコエビ、アサリ、ヨツバネスピオ、シズケガイ、チヨノハナガイなど多様な種類が確認されいる。この藻類等は三番瀬の多様な環境条件に対応して生息している。これらを餌とする魚類は100種類が確認されており、中でも浮遊仔稚魚、着底稚魚、幼魚の種類数が多く、この海域が幼稚魚の生育場として高い価値を有していることを示している。
 前記補足調査によれば、鳥類は2年間に89種が確認されており、最も多く確認されたのがシギ・チドリ類31種、次いでカモ類が15種となっている。チュウサギ、セイタカシギ、ホウロクシギ、ズグロカモメ、コアジサシなどの希少種も確認されている。また、ラムサール条約における水鳥類にもとづく特定のクライテリアの基準を上回る種は、スズガモ、ダイゼン、ハマシギ、コアジサシ等の20種に及ぶとされている。


3 渡り鳥の飛来地としての重要性

 これらの渡り鳥は、シベリアや中国大陸と東南アジアやオセアニアとの間を季節的に移動して生活しており、三番瀬はその渡りのルートに位置する重要な中継地であって、渡り鳥の貴重な採餌場所となっている。三番瀬を保全することは、この渡りのルートを維持し、渡り鳥の国際的な保護を成し遂げるうえで、極めて重要な意味を持っている。


4 人間生活との結びつき

 三番瀬は、魚類の稚仔等に生育場所を提供し東京湾の水質浄化に寄与すること等により、漁業の維持発展の基礎をなしている。前記補足調査では、三番瀬における食物連鎖を検討した結果、生態系の上位者として鳥類とともに人間による漁業活動を位置づけており、「三番瀬における生態系は人の影響をうけながら成立している」としている。また、三番瀬は、市民に対しバードウォッチングや潮干狩りなどで干潟に触れる機会を提供する等、人間生活にも密接に結びついている。


第2 縮小計画案について

 ところで、千葉県は、1999年6月に三番瀬埋立事業計画の見直しを行い、埋立規模の大幅な縮小を行った。この縮小計画案によれば、埋立面積は主要には三番瀬最奥部の猫実川河口域に限定されることになる。縮小計画案は当初計画より環境負荷を小さくするものであるが、これにも次のとおりの問題がある。
 第一に、見直し案は、猫実川河口域については、ヘドロ状を呈し、有機物、汚染物質が多く、埋め立てても全体への環境影響は小さいと評価しているが、これを裏づける客観的データは示されていない。むしろ、三番瀬は、泥質、砂泥質、砂質と連続した環境条件を一体として備えており、それぞれの環境条件が価値を有しているとともに、相互のつながりに環境的意味があると考えられるにもかかわらず、この点での影響については全く考慮されていない。
 第二に、猫実川河口域には、ドロクダムシ、ホトトギスカイ、エドガワミズゴマツボ、ニホンドロソコエビなど、三番瀬の他の環境条件には存在しない底生生物が多く発見されており、生物多様性の観点からはこれらも失われていいということにはならない。
 猫実川河口域は、確かにヘドロ状を呈し、有機物、汚染物質が多いが、この区域も浄化機能を果たしており、特に単位面積あたりのCOD浄化量は前記補足調査で明らかにされたように、他の環境条件での値と比較しても遜色がない。これは、この区域が都市部から流れ込む汚染物質の受け皿となり、前に示したような多様な底生生物の存在により、活発な浄化作用が行われていることを示している。猫実川河口域の環境条件も三番瀬全体の環境の中で重要な役割を果たしているのである。


第3 全国の干潟の減少

 干潟や浅海域は、開発が容易であるために、特に第二次世界大戦後、埋立や干拓の危機にさらされ続けてきた。1992年9月に発表された環境庁の干潟調査によると、わが国で現存する干潟の総面積は5万1462haであるが、戦前には8万2600haの干潟が存在したと推定されており、戦後47年間に実に40%もの干潟が消失していることになる。前回の干潟調査の1978年から13年間における消失面積は4076haにも及び、消失の理由は埋立46%、浚渫9%、干拓2.1%などで、自然の変化による消失はわずかに6.2%である。その後、1997年諫早湾(3550ha)の潮受堤防が干拓のために閉め切られて貴重な干潟が消滅した。浅海域も含めればさらに膨大な水辺環境が消失している。残されている代表的な干潟にも開発による破壊の危機が迫っている。
 東京湾岸には、かつて江戸川河口から千葉、五井、富津へと広がる大規模な干潟が存在した。1960年代半ばまでは、習志野から千葉に至る約15kmの海岸は自然のままの干潟が残っており、潮干狩りの盛んな場所として市民に親しまれた。しかし、この干潟の海は、1960年代から70年代の高度経済成長期に次々と埋め立てられ、東京湾京葉工業地帯に変貌し、干潟のほとんどは消失した。
 千葉県だけをとってみると、1945年には8000ha近くあった干潟が1978年には約1000haとなっており、この間に消失した干潟の面積は全国一であった。干潟の消失率も干潟のほとんどを失ってしまった神奈川県に次ぐものとなっている。
 いまや三番瀬は、ほとんど失われてしまった東京湾の干潟や藻場を残す最後の海域となっている。

第4 干潟埋立の環境法上の問題点

1 国際環境法上の問題点

(1)ラムサール条約からみた問題点

 ラムサール条約は、1971年、水鳥の生息地として国際的に重要な湿地や、湿地に生息する野生生物の保護を目的として採択され、1980年に日本について発効した。
 同条約前文は、湿地の一般的な価値や水鳥の生息地としての重要性を確認し、湿地の喪失が取り返しのつかないものであることから、その喪失を阻止すべきことを明らかにし、湿地とそこに生息する動植物を国際行動によって保全すべきものとする。
 同条約第2条は、湿地の登録義務について規定し、ラムサール条約第4回締約国会議勧告で確立された「国際的に重要な湿地を期待するためのクライテリア」に該当する湿地は、締約国において登録義務を負うものとされ、三番瀬は同クライテリアを充足すると言われている。したがって、三番瀬については、その湿地を保護区に指定する等の措置を講じることによって(具体的には鳥獣保護法上の国設鳥獣保護区等が考えられる)、湿地および水鳥の保全を促進し、かつ、その自然保護区の監視を十分に行って、ラムサール条約に基づく湿地登録を行うべき国際法上の義務を負っているものである。
 そして、1999年5月に開催されたラムサール条約第7回締約国会議では、「湿地の登録基準の枠組みの見直し」決議において、新たに生物地理区分上の代表的な湿地の位置づけなど登録基準の枠組みを見直す決議がなされた。また、2005年までに全登録湿地数を現在の2倍に相当する2000カ所とする旨決議されるなど、日本においても一層の湿地保全の努力が要求されている。

(2)二国間渡り鳥条約からみた問題点

 二国間条約として、日米渡り鳥条約(1974年9月19日発効)、日ソ渡り鳥条約(1988年12月20日発効)、日豪渡り鳥協定(1981年4月30日発効)、日中渡り鳥協定(1981年6月8日発効)がある。これら二国間渡り鳥条約は、共通の基本的構造を持っている。すなわち、各条約は、その適用対象となる「渡り鳥」を定義し、かつ、その具体名を「付表」に掲げる。そこでの掲載種に該当し二国間の渡りをする鳥は、各条約の適用対象となる。三番瀬に飛来する渡り鳥の大半の種は、各渡り鳥条約の掲載種に該当している。
 各条約は、渡り鳥の「捕獲」の禁止を謳い、「保護区その他の施設の設定」を義務づける。さらに、絶滅のおそれのある鳥類につき特別の保護措置を求める一方、条約によって保護される鳥類一般について、その環境の保全と改善のために適当な措置をとるべきことを定める。各条約は、直接的、間接的であるかにかかわらず、当該鳥に重大な悪影響を及ぼす行為を全面的に禁止する趣旨を含むものである。三番瀬の埋立は、渡り鳥の中継地である干潟の一部を消失させるものであるから、渡り鳥に重大な悪影響を及ぼすおそれがあり、各条約の趣旨に反するものと言わざるを得ない。


2 国内環境法上の問題点

(1)環境基本法からみた問題点

 環境基本法14条は、自然環境保全の目標の一つとして、生態系の多様性や野生生物の種の保存などの生物の多様性の確保を図るとともに、水辺地などにおける多様な自然環境が地域の自然的、社会的な条件に応じて体系的に保全すべきことを定める。
 干潟は、生態系の多様性や生物の多様性を確保するうえで不可欠な空間である。日本に残された有数の干潟(浅海域)である三番瀬は、生態系の多様性や生物の多様性の観点からも、現状のまま保全される必要がある。

(2)環境基本計画からみた問題点

 環境基本法15条にもとづき環境基本計画が策定されている。同計画は、自然保護に関係する長期的目標の一つとして、かけがえのない貴重な自然の保全、二次的自然の維持管理、自然的環境の回復および野生生物の保護管理など、保護や整備などの形で環境に適切に働きかけ、その賢明な利用を図るとともに、様々な自然との触れあいの場や機会の確保を図るなど、自然と人間との間に豊かな交流を保つことによって、健全な生態系を維持回復し、自然と人間との共生を確保することを定めている。三番瀬の埋立は、当初計画からは相当埋立面積が減少したとはいえ、干潟の一部を消滅させるもので、賢明な利用とは言いがたく、自然と人間の共生を図る所以ではない。

(3)生物多様性国家戦略からみた問題点

 生物多様性国家戦略は、生物多様性条約にもとづき策定され、同条約実施のための基本指針を示している。その中で、二つの長期的な目標として、第一に、日本全体として、また代表的な生物地理区分ごとに、それぞれ多様な生態系と動植物が保全され、持続可能な利用が実現されていること、第二に、生物の再生産や繁殖の過程が保全されるように、まとまりのある比較的大面積の地域が保護地域として適切に管理されることを掲げ、これらの目標が相互に有機的に連携することを企図している。この目標達成のため、当面の政策目標として、わが国に生息生育する動植物に絶滅のおそれが生じないようにすること、生物多様性の保全上重要な地域が適切に保全されること、生物多様性の構成要素が持続可能な方法で利用されるべきことを要求している。三番瀬の埋立は、このような生物多様性国家戦略にも相反する事業である。


3 まとめ

 前記の三番瀬の生態的、自然的に重要な価値に鑑みれば、同干潟は日本に残された重要湿地として、埋立面積が当初計画より大幅に減少されたとしても埋め立てることは前記法の趣旨に反すると言うべきであり、保全の措置を講ずべきである。


第5 人工海浜について

 千葉県は、縮小計画案においても、住民の三番瀬へのパブリック・アクセスの手段として人工海浜をつくり、市民と豊かな東京湾の自然と接する場を提供するとしている。
 しかし、人工的に海浜、干潟をつくって、三番瀬と同じような貴重な自然環境を再生する技術は未だ確立していない(「藤前干潟における干潟改変に対する見解について」(中間とりまとめ概要)環境庁企画調整局環境影響評価課環境影響審査室、1998年)し、実際、これまで国内で造成された人工干潟を検証した結果、面積、地形、底質、生物多様性、渡り鳥の餌となる生物の数、種数・現存量、水質浄化機能等の点で、自然の干潟に及ばない(「人工干潟の原状と問題点」人工干潟実態調査委員会、1998年)という報告がなされている。環境庁の前記「藤前干潟における干潟改変に対する見解について」によっても、価値の高い自然がある場合は、自然本来の姿をとどめることがまず優先されなければならず、十分な検証もなく干潟を造成して人工海浜を作出することは極めて不適切である。
 また、失われる干潟と同一の機能を有する質の高い人工的な海浜や干潟を造成し、これを維持するには莫大な費用を要する。干潟の持つ水質浄化やその他の機能を失わせる一方、莫大な費用をかけて代替機能を十分に果たし得ない人工干潟を造成することは、費用対効果の点で極めて疑問であり、公共事業のあり方としても問題である。





(別紙)「三番瀬埋立事業計画」調査の概要



第1 三番瀬埋立事業計画の概要と経過

1 三番瀬の現況

 三番瀬は、東京湾最奥部、千葉県の船橋市、市川市、浦安市の埋立地に囲まれた、泥質および砂泥質の干潟(140ha)と水深5m以下の浅瀬を含む約1650haの海域である。
 三番瀬に流入する河川には江戸川(放水路)・真間川・猫実川・海老川・谷津川等があるとともに、浦安市・市川市の埋立部分は、浦安一期・二期、市川一期工事の終了により直立護岸が施され、また、船橋市側には人工海浜が存在する。
 一期工事は、1961年に浦安から富津に至る京葉臨海工業地帯造成計画の一環として計画されたもので、市川一期(195ha)は主に都市開発のため、京葉港一期(132ha)は港湾予定用地確保のため計画されており、ともに1969年に埋立免許、1974年から1983年にかけて埋立認可となっている。
 浦安市の埋立については、すでに計画が終了しており、今後埋立の予定はない。


2 三番瀬埋立当初計画の概要等

(1)当初計画の経緯

 三番瀬埋立事業計画は、市川二期地区計画・京葉港二期地区計画からなり、前者については千葉県企業庁が、後者については千葉県土木部がそれぞれ主体となって進めている。これらの計画は、昭和40年代後半から昭和50年代にかけて第一期計画が竣工認可となった後、1987年から、県西地域の都市環境の改善を進めるための用地確保とその立地を生かした自然と人間とが共生できる土地づくりという名目のもと立案され、1993年3月に基本計画が決定された。

(2)当初計画(別紙図面参照)の規模等

 市川二期470ha、京築港二期270haの合計740haの埋立が計画された。
 市川二期地区は、埋立後、広域公園を利用した廃棄物処分場・下水道終末処理場用地、第二東京湾岸道路、住居・商業用地、都市再開発用地、人工海浜や海浜レクリェーション用地などで形成されており、京葉港二期地区は主に港湾用地で形成されている。


3 三番瀬埋立計画「縮小計画案」の概要等

(1)縮小計画案に至る経緯

 千葉県は、大規模開発の計画立案段階における環境影響評価に関する指導要綱を有しており、その一環として、1993年3月、千葉県環境会議に本埋立に関する「環境保全計画書」が提出され、それを受け、1995年11月に同会議から提言がなされた。提言は、三番瀬の生態系の特徴、埋立工事(人工海浜を含む)が生態系に与える影響、埋立の必要性等に関する補足調査および補足調査を踏まえた具体的な計画案についての報告並びに有識者で構成する専門委員会の設置(市川二期地区・京葉港二期地区計画策定懇談会、以下「計画策定懇談会」という)等を指示するものであった。
 環境会議の提言を受け、1996年1月に補足調査が開始され、1998年5月には中間報告が出され、同年9月、補足調査結果が公表された。これによれば、三番瀬の浄化機能、底生生物や鳥類の分布等生態系の特徴とその重要性が数字によって明らかにされた。そして、1999年1月に公表された、当初計画どおり埋立が実施された場合の予測結果によれば、COD値の増加が予想され、マクロベントスや魚類、鳥類の個体数の大幅な減少が予測されている。
 1999年6月、前記補足調査の結果や計画策定懇談会・地元等の意見を踏まえ、三番瀬埋立事業計画は、従来の約740haの埋立から、市川二期=約90ha・京葉港二期=約11haの合計約101haへと縮小された。
 縮小計画案は計画策定懇談会に報告されたが、「土地利用の必要性」「人工海浜造成に伴う問題性」「縮小案の環境に対する影響予測の調査」についての検討・報告が同懇談会から指示されている。
 今後、前記調査、検討事項を計画策定懇談会に報告し、環境会議の審査を経ることになり、仮にそこでの了承が得られれば、環境影響評価法にもとづくアセスメント手続へと進むことになる。

(2)縮小計画案の規模等

 縮小計画案における埋立面積は、合計101haである。
@ 市川二期については、猫実川河口部分を中心として埋め立てたうえ、街づくり支援用地として25ha、海へのパブリック・アクセスを確保する目的として公園緑地用地(人工海浜を含む)22ha、下水道終末処理用地として20ha(計画人口および原単位の見直しを行った)、道路・漁港・護岸用地として23haがそれぞれ確保され、そして、この埋立地海側の浅海域に人工海浜60〜70ha(後に13〜15haに縮小した旨報道されている)を造成する計画となっている。
A 京葉港二期については、既存の水深マイナス10m岸壁1バースを改良し、これに付随する埠頭用地、第二湾岸道路、緑地のために11haを新たに埋立整備することとされたが、それ以外の部分については計画は撤回された。
B その他、第二湾岸道路の見直し等も盛り込まれている。

(3)縮小計画案に対する千葉県の総括

 千葉県は、「以上のような縮小案により、自然環境に与える影響は従前と比べ非常に小さくなり、都市環境改善のために必要な最小限度の土地利用が確保されるとともに、東京湾に接する豊かでうるおいのある生活環境を創造することができるなど、人の利用と自然の共生が実現するものとなった」としている。


第2 アセスメント手続の評価と問題点

1 千葉県計画アセスメント手続に対する評価

 前記のとおり、当初埋立計画は1993年までに策定され、千葉県環境会議の審査に付された。
 千葉県環境会議は1992年6月に設置され、「千葉県計画アセスメント制度」にもとづき、大規模開発について環境に配慮した事業計画となるように計画立案段階において必要な調整、指導を行う機関である。従来の環境アセスメントは、いわゆる事業アセスであり、事業実施計画策定後のアセスメント手続であるため、仮にそれが環境に大きな影響を与える事業であったとしても、事業の大幅な見直しあるいは事業計画の廃止には至らずに、当該事業の実施を前提とした小手先の計画修正にとどまって、環境の保全に十分な効果をもたらさないという問題点がかねてより指摘されていたところである。環境会議の提言を踏まえての今回の一連の調査、検討は、実質的に、事業の基本計画段階での環境アセスメントを実施し、環境への配慮を行ったうえで事業計画の見直しを行おうとするものであり、その結果、事業計画の大幅な縮小が決定されたことは、従来のアセスメント手続の前記問題点を一定程度克服するものとして評価できる。


2 本件アセスメント手続の問題点

 しかし、前記環境アセスメント手続にも以下に指摘する問題点がある。
 まず第一に、事業の必要性ないし代替案の検討が十分なされていないという点である。当該事業によって環境にどのような影響を及ぼすかを評価するに際しては、当該事業の目的を達成し得る他の手段・方法(代替案)との比較、検討が不可欠であることは、当連合会の意見書「よりよき環境アセスメント条例の制定に向けて」(1997年12月)においても指摘したところである。もちろん、事業の必要性の有無についての検討が十分なされることは当然の前提である。しかし、今回の縮小計画案決定の経過を眺めれば、これらについての検討が十分なされたとは思われない。事業目的との関係で埋立が本当に必要なのかの検討を十分に行わないままで、埋立に固執してしまったのではないかとの感を否めない。
 具体的には、事業目的の一つである第二湾岸道の建設に関しては、環境庁等において地下化の可能性も検討されているとのことである。また、下水道終末処理場の建設に関しても、流域下水道による処理方法そのものが建設省によって見直されている現状に鑑みれば、必ずしも終末処理場を設けなくても、内陸部における分散処理、下水処理方法の多様化によって十分に処理が可能であるという市民団体からの提言は十分検討に値する。「街づくり支援用地」「公園緑地」についても、果たしてそれらが本当に必要なのか、仮に必要だとしても埋立以外他にとり得る手段がないのかどうかの検討過程が明確ではない。
 第二に、縮小計画案は、埋立が環境に与える影響について十分検討されていないのではないかと思われる。千葉県は市川二期地区の海域を基本的に「ヘドロの海」と評価して、その干潟環境全体に対する重要性を重視していない。しかし、この海域はそれ自体生態系として重要であるばかりでなく、三番瀬全体の中で重要な位置を占めていると考えられることは前記のとおりであり、この点を過小評価すべきではない。
 第三に、住民参加の手続が不十分である。環境アセスメント手続において、住民参加は重要な柱の一つであり、法にもとづかない要綱アセスにおいても住民参加は制度的に保障されるべきである。計画策定懇談会に住民代表とも言える環境NGOの代表が加わっていることは評価し得るが、それ以外にも幅広い自然保護団体、地域住民の意見を聞き、それを計画に反映させる制度を講じるべきであった。


3 まとめ

 以上、本件計画アセスメント手続は、評価すべき点はあるものの、なおかつ問題点も多い。もし、前記問題点をも踏まえたアセスメント手続を行っていたならば、本件干潟の重要性からみても、埋立を中止する方向での結論が導き出されていた可能性が極めて高いと考えられる。



★関連資料

このページの頭にもどります
「ニュース」にもどります

トップページ | 概 要 | ニュース | 主張・報告 | 資 料 |
催し物 | 自然保護連合 | リンク集 |