湿地の保全と復元を、行政の転換を


内川と内川河口をよみがえらせる会  木村真介



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1.はじめに

 2年前の4月、長崎県諫早湾の奥部がギロチンのような鋼板で一気に閉め切られた光景は、人々に衝撃を与えた。この諫早湾干拓以降、名古屋市藤前干潟の埋め立て中止、千葉県三番瀬埋め立て計画の大幅縮小、そして徳島県吉野川河口堰建設計画と湿地をめぐる環境問題が大きくとりざたされ、人々の関心も高まってきている。
 このような時、5月10日から中米コスタリカで、湿地保全のラムサール条約締約国会議が開催された。いま、ここで改めて日本と世界の湿地、会議の結果について考えてみる。



2.ラムサール条約締約国会議の決議は
  湿地の生態系全体の保全を明確にした

 この条約は、正式には「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」といい、1971年に初めて開かれたイランの町ラムサールの名をとって、通常ラムサール条約という。条約は、湿地の「保全」とその「賢明な利用」「人間と自然の共生」を掲げている。条約上の湿地とは、湖、沼、池、河川、湿原、田、干潟、浅瀬、6メートルより浅い海域などである。そして、それらは天然のものであるか、人工的なものであるかを問わない。
 今回の会議では、特に水鳥にはこだわらず、重要な湿地の生態系全体を保全するということが明確にされた。植物、底生生物、水生生物、鳥や動物など、湿地の生態系そのものの保全に重要な重きを置いたことで、その対象となる湿地は格段に増えたのである。ゆえに、サンゴ礁、マングローブ林、カルストなど、さほど水鳥の多くない湿地でも有力な対象となった。
 この新基準にもとづいて、現在、約980カ所ある世界の登録地を、2005年までに2000カ所にする数値目標を掲げた。2002年のスペイン会議では、これに対する各国のとりくみが問われることになる。
 会議はまた、失われた湿地の復元と、潮間帯湿地(干潟)の保全と賢明な利用の促進を決議した。



3.日本は干潟の破壊を続行
   〜世界の流れは、湿地の保全・回復〜

 ところで、我が国はどうであるか。我が国は、この会議で沖縄県の漫湖ただ1カ所を追加登録したにすぎない。
 我が国では、干潟や浅瀬は格好の埋め立ての対象とされ、工業用地、物流用地などに変貌した。過去と今の地図をみれば、その埋め立ての大きさに驚くばかりである。1945年以降、全国の干潟の4割以上が失われ、今も、残された干潟・浅瀬の埋め立て計画が相次いでいる。
 干潟・浅瀬のもつ、生物の豊かさ、多様性、優れた海水浄化作用、そして私たち人間の憩う潤いの場といった重要性は無視されて、まだ顧みられない。米国、オランダ、デンマーク、イタリアでは、、埋め立てを止めるどころか、埋め立て地に海水を入れて、干潟の復活が試みられている。世界の湿地へのとりくみは、埋め立て中止、さらなる保全、湿地の回復という3つの大きな流れにある。
 これほどの湿潤の国で、これほどの湿地を持ちながら、これほどの破壊を続ける国はない。ラムサール条約登録湿地を欧米とくらべると、数と面積において、あ然とするほど少なく小さい。同じ島国で日本より小さい英国の100分の5の面積しかないのである。しかも、干潟・浅瀬の9割以上を埋め立てた東京湾に残された三番瀬をまだ埋め立てるというのである。



4.干潟の保全促進が求められている

 諫早湾のあの衝撃的な埋め立ては、広々とした干潟が一瞬にして破壊され、死んでゆくという残酷さを私たちに刻みつけた。誰もが人間の業、そしてその罪深さを感じたに違いない。徐々に干上がってゆく中で、貝、ゴカイ、ムツゴロウなどの無数の生き物があえぎ、死んでゆく。人々はまたそれらを食べていた鳥たちの行く末を案じた。この恐ろしいほどの殺生をどう考えればよいのであろうか。
 ここまで行き着いた我が国は、いまや、埋め立てどころか、干潟を復活させ、保全を促進し、賢明な利用をして、かつて私たちが日常的に遊び楽しみ、その豊かな恵みを享受していたあの喜びをとりもどす時にきている。今回のラムサール条約会議では、まさにこれらのことが決議されたのである。



5.行政も変わるべき時がきた

 “環境の時代”といわれる今、我が国は高齢化・少子化社会になり、経済もまた成長が止まった。このような時代において、干潟・浅瀬の埋め立てのみならず、巨額の税を投入し、多大な環境破壊を伴う巨大公共事業を、今までどおりに続けてよいのであろうか。時代と社会、そして環境が変わった。人々の意識も変わった。いまや行政も変わるべき時がきたのである。

(1999年8月)








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