WWFジャパンが三番瀬保全で市川市長に回答書



トップページにもどります
「ニュース」にもどります
「人工干潟」にもどります


 自然保護団体「WWFジャパン(世界自然保護基金日本委員会)」は6月10日、市川市の千葉光行市長からの照会書に対する回答を送った。内容は「人工干潟は自然干潟に及ばない」などというもので、回答書の内容は次のとおり。





三番瀬保全に関する照会についての回答


世自基日委発第99-115号
1999年6月8日

 市川市長 千葉光行 様

(財)世界自然保護基金日本委員会
WWF Japan
会長 畠 山 向 子


 5月25日付けでお送りいたしました当会の文書「東京湾三番瀬の干潟の保全に関する要請」につきましては、さっそく、お目を通していただき、また、ご返事とご照会をいただき、厚くお礼申し上げます。
 ご照会いただきました件につきまして、別紙のとおりご回答いたします。この回答につきまして、さらに疑問の点等がございましたら、再び照会していただければありがたく存じます。
 よろしくお願いいたします。




別 紙

三番瀬保全に関する照会についての回答



1.人工干潟実態観査委員会の調査結果について

 「人工干潟実態調査委員会(1998)」の報告書「人工干潟の現状と問題点−人工干潟は藤前干潟埋め立ての代償措置になり得るか−」を添付します。
 同委員会は(財〕世界自然保護基金日本委員会(WWF Japan)、(財)日本野鳥の会(WBSJ)、(財)日本自然保護協会(NACS-J)、藤前干潟を守る会のメンバーによって構成されています。
 1998年に設置された同委員会の目的は、名古屋市が、藤前干潟を埋め立てるための代償措置として、人工干潟を造成する計画を打ち出したとき、その適否を調査し報告することです。
 既存の人工干潟3か所を調査した結果、藤前における人工干潟の造成に関しては、以下の点が結論として得られました。
 「人工干潟は、(1)面積が狭い、(2)地形、底質が不安定、(3)生物の多様性が低く、底生生物の種数・現存量とも不安定、(4)シギ・チドリ類の食物となる底生生物が少ない、(5)有機物・COD除去の水質浄化能力が低い、(6)後背湿地やアシ原、前面の浅場や藻場とのつながりがない、(7)造成と維持に莫大な経費がかかる、(8)造成用の砂泥の採集が二次的破壊をもたらす。これらの点を考慮すれば、人工干潟は自然干潟におよばないのは明らかである」。詳しくは、別添報告書をこ参照ください。
 なお、98年12月に、環境庁は、「藤前干潟における干潟改変に対する見解について〔中間とりまとめ〕」を発表し、人工干潟による代償措置を厳しく批判しました。その結果、名古屋市は藤前干潟におけるゴミ埋め立てを断念しています。ご参考まで、環境庁の同レポートのコピーを添付します。


2.葛西臨海公園、市川市塩浜地先、船橋臨海公園地先の
  人工干潟に対する評価について

 東京都葛西臨海公園の東なぎさ、西なぎさについては、前述の報告書に記載してあります。要約すると、造成俊、7−11年経過したが、底生生物の種類数、現存量ともに造成前のレベルには達しておらず、変動も大きい。鳥類は徐々に増加し安定している。また、底生生物、鳥類ともに、人工なぎさの前面(南側)に広がる自然干潟の三枚洲の存在が大きく関係しているということです。
 船橋臨海公園の人工海浜については、別添の碇京子氏ほかのレポート(1996)によると、生物量は自然干潟の半分しか認められない、種類数が特に乏しい、そのため、水質の浄化を求めるならば人工干潟は自然干潟以上の面積が必要、と述べています。なお、市川市塩浜地先については資料を持ち合わせていません。
 葛西臨海公園、船橋臨海公園ともに、大面積埋め立てによって失われた干潟を再生することを目指して造成されたものです。葛西沖には三枚洲、船橋沖には三番瀬という自然干潟が存在することから、この二つの人工干潟は自然干潟に及ばないまでも、生物の生息場所として、また人々の憩いの場所として機能していると言えるでしょう。
 東京湾では、すでに90パーセント以上の干潟が失われています。そのため、すでに干潟が失われたところに、人工的に干潟を再生しようとする試みは高く評価されます。
 しかしながら、これは、現存の干潟を埋め立てて、新たに人工干潟を造成すること、とは大きく異なります。両者はまったく別の問題です。自然干潟を埋め立てて人工干潟に置き換えることについては、前述の環境庁レポートが厳しく戒めています。


3.「猫実川河口域は三番瀬海域にとって欠くことのできない
  要素と考えられる」理由

 理由は以下のとおりです。(1)は前回の要請書と同じ趣旨ですが、(2)および(3)は今回追加しました。

(1) 「補足調査」結果に見られるように、三番瀬は底質環境の特性により5つの水域に区分され、それぞれに対応する底生生物相を有し、全体として生物の多様性に富んでいる。猫実川河口域はその水域のひとつであり、浅くて、シルト・粘土分が豊富で、有機物に富む、また、ホトトギスガイやニホンドロリコエビなどが多く、スズキ、マハゼなどの着底稚魚の数も多い重要な水域である。

(2) 東京湾奥部の干潟は、大まかに言えば、アシ原や塩性草地、湖上帯の砂泥地、潮間帯の干潟、潮下帯の藻場という連続した構造を持っていた。このような自然な干潟環境が生物の生息にとって、また持続的な漁業にとって価値がある。猫実川河口域は、きわめて浅い部分であり、このような干潟の原風景を再生する際に欠くことのできない場所である。たとえば、塩浜(市川)、日の出(浦安)の堤防に沿ってアシ原を復元することは、かつての景観を取り戻すことになるし、アシ原による水質浄化効果も上がると考えられる。

(3) 近接する習志野市の谷津干潟はラムサール条約に登録され、野島の観察場所として市民に利用されている。船橋市では、船橋臨海公園が市民が干潟に接することができる場所として活用されている。市川市においても市民が干潟に入ることができ、レクリェーションや環境教育のために利用できる場所を設けることが期待される。その場所は、猫実川河口から塩浜にかけての海岸線に限られることから、この海域は将来の干潟環境の保全とその賢明な利用の上で重要な場所である。


 以上のように、猫実川河口域は、三番瀬の保全の面からも利用の面からも重要な地域であると言えるでしょう。垂直護岸を緩傾斜に改め、市民が利用できる水場やトイレを設置する、あるいは、干潟や生物について学習するための野外パネルを設置するなど、野外の自然学習の場としての活用が期待されます。
 その際、防災や安全を考慮しなければならないことはもちろんですが、政策の検討および決定過程には、関係機関、学識経験者、地域住民、利害関係者、NGOなどが参加し、協議を重ねてプランを作成することが大切です。

以上   







このページの頭に戻ります
ニュースのページに戻ります
特集「人工干潟」のページに戻ります

トップページ |概 要 | ニュース | 主張・報告 | 資 料 |
催し物 | 自然保護連合 | リンク集 |