企業庁型開発の終焉

〜 三番瀬埋め立て計画の白紙撤回を 〜


 千葉商科大学教授  竹内壮一(三番瀬を守る署名ネットワーク) 



トップページにもどります
「主張・報告」にもどります


●三番瀬埋め立ては、県企業庁事業の重要課題

 三番瀬埋め立て計画のうち京葉港2期計画(270ヘクタール)の事業主体は千葉県土木部であるが、三番瀬埋め立て計画全体の主導権を握っているのは、市川2期計画(470ヘクタール)の事業主体となっている千葉県企業庁である。
 そして、三番瀬埋め立て計画は、1980年代から企業庁事業の最重要課題の一つであった。80年当時、阿部晃氏が企業庁長に就任したとき、知事から3つのことを言われたという。「一つは幕張の学園の街と、もう一つは市川の人工干潟、もう一つはオリエンタルランドだと。この3つを画竜点睛(がりょうてんせい)にやってくれといわれましてね」と語っている(「座談会・企業庁事業20年を振り返って」、千葉県企業庁『企業庁だより』別冊、71ページ)。阿部氏がいう「市川の人工干潟」とは、市川2期計画のことである。その成否は別にして、すでに事業化された2つの事業とともに、三番瀬埋め立て計画は企業庁事業の重要課題として位置づけられてきたのである。
 ところで、企業庁は1974年4月に発足したが、その前身は開発部(1959年)・開発局(1963年)、そして開発庁(1970年)であった。企業庁は、その前身の時代を含めて、県内における京葉臨海工業地帯、ニュータウン、内陸工業団地の造成事業、工業用水供給事業のほとんどを手がけてきた。その意味で企業庁は、千葉県の工業開発のために、結果として東京湾と内陸部の自然環境の破壊に手を貸してきたのである。京葉臨海工業地帯建設のために東京湾の干潟を埋め立て、海岸線を進出企業に売り渡すことを主な業務としてきた企業庁(その前身部局)は、その体質からして、干潟・浅海域を埋め立て、産業用開発用地を造成することに抵抗感を持っていない、という歴史的特質がある。企業庁をはじめ千葉県という「自治体」が、京葉臨海工業地帯建設をはじめとする高度成長期以降の工業開発優先政策の歴史を反省せずに、現在もなおその路線の延長線上にいることが、三番瀬埋め立て問題の核心なのではないかと思う。






●企業庁事業は破綻目前

 臨海部の埋め立てを中心とする工業開発は、首都圏に位置するという立地上の優位さもあって、これまで経営的には大きな破綻をきたさず継続されてきた。しかし、90年代に入って従来型の工業開発が行き詰まりを示し、企業庁事業が財政的にも破綻を示しつつある。
 現在、企業庁が取り組んでいる主な事業は幕張新都心建設と工業団地の造成・分譲であるが、この2つの事業に破綻が生じているのである。造成した工業団地が売れ残ったままであり、97年度末現在で、工業団地などの未処分面積は1120ヘクタールある。すでに完成済みで売れ残っている用地は457ヘクタールもある。また、たとえ売れた場合でも、赤字を生み出している工業団地の例もある。たとえば、関宿はやま工業団地の場合、造成費は1平方メートルあたり14万円であったのに、分譲価格はその半分の7万円。この工業団地だけで14億円の赤字を出したといわれている。
 売れ残った用地を抱えて企業庁は、これまでの方針を変更し、物流業者への土地分譲を認めたり、不動産業者などに販売を委託するなど、売れ残り用地の処分に懸命になっている。
 幕張新都心事業も、商業地区・タウンセンター地区は1987年に分譲を開始したが、28区画24.6ヘクタール中、14区画9.5ヘクタールが売れ残り、売買契約が結ばれた14区画も5区画は建設されず、3区画が暫定利用という惨たんたる状況である。また、拡大地区も22区画35.5ヘクタール中、売買契約済みの区画は9区画、11.7ヘクタールあるが、建設に踏み切った企業は1社もなく、残りの13区画は買い手がついていないという破綻状況である。
 主要事業の工業団地の売れ残り、幕張新都心事業の行き詰まり、こうした事態を突きつけられて、企業庁も何らかの対策を講ぜざるをえなくなった。そこで、95年度に「企業庁基本問題検討会」を設置した。そうして96年2月、検討会は以下のような結論を出した。
@ 土地分譲を促進するために、小区画による分譲、物流業を対象に加えるための誘致業種の拡大、分譲代金の分割納入制度の拡充
A 保有資産の有効活用と市町村などへの資産引継の促進
B 幕張新都心活性化のための暫定施設、パルプラザ幕張の建設
C 効率的な業務の執行
 これが企業庁の「基本問題」に対する対策である。
 企業庁の基本問題の検討というから、開発の方法を含めて企業庁のこれまでの工業開発中心の歴史を振り返って根本的な問題を検討するのかと思ったが、そうではなかった。企業庁事業の行き詰まりの原因である「基本問題」の検討は行われず、当面の「小手先」の対応策が打ち出されたにすぎなかった。




●開発行政は根本から考え直すしかない

 企業庁の事態がきわめて不調であるにもかかわらず、企業庁の職員数は現在もなお約1000人で、たとえば県環境部の職員数の5倍の職員がいる。「自治体」としての県の本来の役割からすれば、とくに環境問題が切実な段階にある現在、環境部の職員が1000人で企業庁の職員敷が200人である方が健全な「自治体」なのではなかろうかと思うのだが、実際は逆である。これが産業開発優先の千葉県職員構成の現実の姿である。
 ところで、これから企業庁が手がけようとしている二大開発事業は、常磐新線開発事業と市川2期埋め立て事業である。いずれの事業も費用対効果の真剣な検討がなされておらず、このまま事業化が進めば「ムダ」な公共事業となる可能性が大きい。しかも、東京湾と北総台地の環境破壊を伴う従来型の大規模開発事業である。  企業庁の従来型の開発は破綻をきたしているのである。これまでの開発姿勢を根本から考え直すしかない。97年12月県議会で企業庁長は、「当面、(工業団地などの)分譲収入等の大幅な増加は見込めない状況であり、きびしい現状にあるものと認識している」「過大な先行投資の抑制及び経費の削減を通じて、事業の健全経営を図る」と述べている。企業庁長自らが厳しい財政状況の中で、「過大な先行投資」を抑制すると言わざるを得なくなっている状況である。
 『朝日新聞』の世論調査(回答総数1296人、98年7月実施)によれば、三番瀬埋め立て計画について、「計画通り進める」という回答が、わずかに86人(6.6%)しかなかった。「計画を見直す」が576人(44.4%)、「計画を中止する」が292人(22.5%)、両者を合わせれば67%の県民が現行計画に反対を表明しているのである。しかも、三番瀬埋め立て計画に対して十分に説明しているかという質問に対しては、「十分に説明している」と回答した人が42人(3.2%)しかいない。「(説明が)十分ではない」と答えた人が991人(76.4%)もいる。県民にたいし情報をほとんど開示せずに三番瀬の埋め立てを強行しようとした結果がこの数字である。企業庁が進めてきた従来型の開発行政の破綻を示す数字であると言ってよい。
 くり返し言う。従来型の企業庁の開発行政を根本から考え直すしかない。三番瀬埋め立て計画については、いったん白紙に戻して考え直すことこそが求められている。

(1999年3月)   








このページの頭にもどります
「主張・報告」にもどります

トップページ | 概 要 | ニュース | 主張・報告 | 資 料 |
催し物 | 自然保護連合 | リンク集 |