貴重な浅海域をつぶしての人工干潟造成は

  ムダ、有害

    〜三番瀬人工干潟造成検討事業で質問〜




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 千葉県は2014年度、「干潟的環境形成検討事業」を実施中です。市川市塩浜2丁目護岸前の三番瀬海域において100m×50mの規模の人工干潟を机上で検討するとしています。その中間報告を(2014年)9月18日の三番瀬専門家会議で提示しました。人工干潟の比較案としてA案、B案、C案を具体的に示しました。
 そこで、千葉の干潟を守る会、三番瀬を守る会、三番瀬を守る署名ネットワーク、千葉県自然保護連合など9団体で構成する「三番瀬を守る連絡会」は10月3日に県と交渉し、人工干潟造成検討の中止を要請しました。すでに埋め立てられたところで人工干潟をつくるのならいいのですが、貴重な浅海域をつぶしての造成はムダで有害だからです。
 以下は、そのときに提出した質問事項の全文です。


     ※県交渉のリポートはこちらを参照




質問事項の全文




「干潟的環境形成検討事業」に関する質問事項

2014年10月3日
三番瀬を守る連絡会


【問1】干潟的環境形成検討事業では全国各地の人工干潟造成の実例や教訓も検討すると思われたが、そうなっていないようにみえる。人工海浜「幕張の浜」や市川市塩浜1丁目地先の人工干潟の失敗例も検討されていないようだ。その理由はなにか。

  • 「幕張の浜」は県企業庁が造成した人工海浜である。約32億円をかけ、238万立方メートルの砂で造成し、1979年2月に完成した。ところが、砂浜は完成直後から風や波の影響で浸食されつづけた。毎年1万立方メートルもの砂が流失するため、企業庁は砂の補給に大金を投入し続けることになった。そしてついに、砂の補給をやめてしまった。海水浴場も閉鎖した。

      《全知全能の神ゼウスは悪事を働いたシシュフォスに、山頂まで巨大な岩を運ぶ刑を科した。しかし、岩は頂が近づくと決まって転がり落ちる。シシュフォスは永遠に不毛の作業を繰り返さざるを得ない。ギリシャ神話のこの一節は、幕張に築かれた人工海浜の姿と重なる。毎年、この浜から1万立方メートルの砂が流失している。絶えず砂の補給を余儀なくされているのだ。
       長さ1170メートル、幅250メートルほどの幕張の浜は毎夏、10万人余りの海水浴客でにぎわう。しかし、海水浴シーズンの前になると、砂を満載したダンプカーが砂浜に現れる。『養浜工事』の始まりだ。
       波打ち際の1〜1.5メートルほどの段差に新しい砂を運び入れ、ブルドーザーで地ならしする。波に持ち去られにくいとされる粗めの砂を選んでいる。しかし砂の流失は止まらない。消波施設もなく、強い波の浸食に直接さらされている。埋め立てられ護岸堤ができたために、自然が果たしていた砂の供給もなくなった。さらにすぐ沖には埋め立て用の海砂を採ってできた深い穴があり、砂が流れ落ちる。
       昨年(1994年)は、約9400立方メートルの山砂が約40キロ離れた大栄町から運び込まれた。毎日ダンプカー20〜30台でピストン輸送し、半月かかった。浜の維持管理費は年間約8000万円に上るという。》(『朝日新聞』千葉版、1995年1月12日)

  • 市川市塩浜1丁目地先の人工干潟は、市川市行徳・南行徳両漁協が1982年から86年にかけて養貝場として造成した。この人工干潟「養貝場」造成事業(市川地区漁場改善事業)は失敗に終わった。アサリを撒いても育たなかったのである。そのため、潮干狩りも数年で中止になった。

【問2】千葉県環境部(当時)が1996年度に発表した「マクロベントス(底生生物)による海域全体での窒素浄化量」調査結果は、人工海浜(幕張の浜、検見川の浜、稲毛の浜)の窒素浄化量が自然干潟に遠く及ばないことを実証している。この調査結果は検討したのか。


【問3】ラムサール条約は、条約締約国に対して非登録湿地の保全も義務づけている。三番瀬円卓会議(三番瀬再生計画検討会議)が提言した「三番瀬再生計画案」も、三番瀬再生にあたってはラムサール条約の「湿地復元の原則とガイドライン」に沿ったものでなくてはならない、としている。このガイドラインとの整合性は検討したのか。

     「三番瀬再生計画案」では、「三番瀬の再生の方向性」としてこう記されている。
       《わが国はラムサール条約(特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約)の締約国であり、三番瀬はその登録湿地となることを目指していることから、その再生にあたっては、2002年の締約国会議において採択された「湿地復元の原則とガイドライン」に沿ったものでなくてはなりません。すなわち、湿地復元における最終目標・目標・評価基準の明確化、望ましくない副作用の回避、従来工法に対する生態工学の優先、現存する湿地の保全維持の優先、集水域レベルの計画、利害関係者の参加、伝統的資源管理、モニタリングと順応的管理、普及啓発などであり、今後三番瀬再生計画の具体化にあたっては、本指針との整合性を配慮する必要があります。》(42-43ページ)

【問4】人工干潟造成に用いる砂はどこからもってくることを検討しているのか。これまでの三番瀬人工干潟造成試験では君津地域の山砂が使われた。三番瀬漁場内の覆砂でも平成24年度は君津の山砂が使われた。白紙撤回された三番瀬埋め立て計画では、富津市にある鬼泪山国有林の山砂を使うとされていた。三番瀬で大規模な人工干潟を造成する場合、「君津地域では民有地からの大量の山砂採取は困難」「鬼泪山国有林しかないのではないか」という話も聞く。県は、人工干潟造成に用いる土砂の調達先としてどこを考えているのか。土砂の調達先を考えない「干潟的環境形成検討事業」(人工干潟造成検討事業)は検討事業に値しないと思われるが、どうか。

     1994年3月26日の『毎日新聞』千葉版によれば、県土石採取対策審議会は、三番瀬埋め立て(市川二期地区・京葉港二期地区計画)の工事用などとして、鬼泪山国有林の山砂5600万立方メートルを採取することの認可継続を認めたとされている。

【問5】兵庫県明石市の人工砂浜陥没で女児が生き埋めになって死亡した事故で、国土交通省と明石市の元職員4人の有罪が確定した。市川市塩浜2丁目地先に人工干潟を造成した場合、陥没事故も危惧される。干潟的環境形成検討事業ではそういうことを検討しているのか。また、人身事故が起きた場合、責任をとる覚悟はできているのか。

  • 明石の人工砂浜陥没で元国交省職員ら4人の有罪が確定
      《兵庫県明石市で2001年12月、女児(当時4)が陥没した砂浜で生き埋めになって死亡した事故で、業務上過失致死罪に問われた元国土交通省職員ら4被告について、禁錮1年執行猶予3年とした差し戻し後の一、二審判決が確定する。最高裁第一小法廷(白木勇裁判長)が22日付の決定で4人の上告を退けた。
       起訴されたのは、元国交省姫路河川国道事務所課長の梶勲(70)、元同事務所東播海岸出張所長の時沢真一(66)、元明石市土木部参事の青田正博(69)、元同市海岸・治水課長の金井澄(62)の4被告。一連の公判で4人は「陥没の発生を予想できなかった」などと無罪を主張していた。最高裁はこの日の決定で、「事故は予想できた」として4人を有罪とした差し戻し後の二審判決を支持した。》(『朝日新聞』2014年7月25日)

  • 2011年3月11日の東日本大震災のさい、ふなばし三番瀬海浜公園前の人工砂浜(芝生が生えている砂浜)もいたるところで陥没や亀裂が生じた。

【問6】「海に構造物をつくったら、なんらかの影響が必ず出る」というのが、土木技術者の間では常識になっていると聞く。また、近年の自然災害でよく使われる言葉として、「自然は人間の思いのままにはならない」「自然の脅威に人知は及ばない」「人工的に造ったものはいかに強いつもりでも自然の力の前では藻くずでしかない」がある。これらの点についてどう考えているのか。

  • 九十九里浜では侵食が深刻な問題になっている。その主因は、両端の屏風ヶ浦と太東崎(たいとうさき)の海食崖(かいしょくがい)の前面に消波堤を築き、九十九里浜への土砂の供給を止めたことである。県は、九十九里浜の侵食対策として、1988年から人工岬「ヘッドランド」の建設を始めた。ところが、人工岬は侵食防止にまったく役立っていない。人工岬が完成したところでは、その失敗を補うために養浜(土砂投入)を繰り返している。
     今年8月31日放送のTBSテレビ「噂の!東京マガジン」が「噂の現場」のコーナーで九十九里浜の侵食問題をとりあげた。番組の最後で、司会者の森本毅郎氏はこう述べた。
       「屏風ヶ浦は長年をかけて自然に削られてきた。あるとき、それを人工的に止めた。そこから(九十九里浜の侵食が)がはじまった。「いちど人間が手をつけたら、ずっと手をつけざるをえない」
       「自然に手をつけるということは、“お金がかかるぞ!”という覚悟が必要になるということだ。そういう覚悟がなければ、自然にまかせるというイギリス方式も考えなければならない」

  • 人工岬は離岸流を発生させるなど、弊害が多い。人工岬が34基つくられた茨城県鹿島灘海岸では2009年、離岸流に流された男児を助けようとした父親ら計3人が死亡した。以来、人工岬が完成している場所では海岸への立ち入りが禁止されている。

【問7】三番瀬円卓・再生会議やパブリックコメントの結果、さらには、平成25年度第2回専門家会議の議論を無視し、“人工干潟ありき”の姿勢で人工干潟造成に向かって突っ走っているようにみえる。人工干潟を造成すれば三番瀬の自然環境は本当によくなるのか、ということはまったく検討されていない。この点について県の見解をお聞きしたい。

  • 「千葉県三番瀬再生計画(第3次事業計画)(案)」に関するパブリックコメント(平成25年12月25日〜平成26年1月27日)では、意見を提出した13人のうち全員が「人工干潟、人工海浜は造成するべきではない」としている。

  • 平成26年1月18日開催の「三番瀬ミーティング」でも「人工干潟造成はやめてほしい」という意見が相次いだ。

  • 平成25年度第2回専門家会議(平成26年2月12日)において大西隆座長はこう発言している。
       「波に洗われたりということで、なかなか人工的につくったものを維持するのは簡単ではないと。一言で言えばそういうことになると。そういうことをやったこともあるんですね。今までの議論では、干潟を人工的につくるということを決めたわけではなくて、昔、干潟があったと。その時の、埋立が行われる以前の自然な環境っていうのがやっぱり良かったという意見は地元の方を含めてあるわけですね。ただ、人工的につくったものが、埋立以前の自然環境を取り戻すことになるのかどうかはクエスチョンマークなので、本当にそういう干潟をつくるということが、そういう効果があるのかっていうことを調査しようというのが、この干潟的環境の一連の調査だと思うんですね。だから、始めに干潟再生っていうか、干潟を人工的につくることありきで議論されているわけではないと思うんです。」
       「戦後の埋め立てや都市化以前の三番瀬に近づけるために海と陸との自然な連続的なつながりを回復させ、さらに環境の多様化を進めることにより、多様な生物が生息し、青潮の発生等による環境の急変からの回復力の強い干潟・浅海域を取り戻し、水質の浄化作用等の諸機能を強化することが重要だと。これが干潟・浅海域についての記述なんですよね。こういう目的で考えていくというのが趣旨で、この後に事業計画とか何かが展開されているんですね。少なくても今までの議論はこういうことを前提としてきたということは確認し、これ変えるんだったら変えるという議論をしないといけないという気がしますけどね。」
       「(三番瀬再生基本計画には)干潟的環境ってのは出てこないんじゃないの。」「(再生基本計画には)海や浜辺の利用ってのもあるけど、これを干潟的環境をそのまま前提としている訳ではないですね」「むしろここは関係ない。まちづくりと一体となったというところだからね。」  「これちゃんと議論していただいて、そこは変に歪めていくとですね、干潟、干潟と言っているのが変なものになってしまったということになると、せっかく熱心に取り組んできた人たちを裏切ることになるので、正攻法で是非やっていただきたいと思います。」

【問8】名古屋市が藤前干潟で人工干潟を造成するという計画を打ち出した際、環境庁(現環境省)は「人工干潟は非常識」との公式見解を示した。また、「仮に実験を何らかの形で実施する場合であっても、実験規模、期間、場所は、実験のコンセプトを良く検討した上で科学的に決定すべきであり、周辺浅場や干潟の生態学的評価もせずに貴重な干潟・浅場を大規模に使用して実験を行うことは、非常識の誹りを免れない」とした。その結果、名古屋市は「もう海は埋めない」とし、1999年1月25日に人工干潟化計画を断念した。このことをどう認識しているのか。

  • 環境庁企画調整局環境影響評価課環境影響審査室の「藤前干潟における干潟改変に対する見解について」(中間とりまとめ概要、1998年2月18日)はこう記している。
       「生物の豊かな干潟は、干潟単独で成立維持されるものではなく、周辺の浅場とも密接な関係を持ちながら全体として生態系を維持している。一般的に底生動物の多くの幼生は、むしろ浅海域で過ごすなど、特に幼稚仔期には双方の環境に依存しながら生存している。このため、藤前干潟周辺の浅場は干潟生態系を支えている重要な要素といっても過言ではない。周辺浅場を改変することは干潟の改変と同様に深刻な影響を与えるものと考えられ、厳に慎む必要があると考えられる。」
       「自然が長い年月を費やして作り上げ、精妙な生態系のバランスを保っているものを人工的な構築物で模造することには、本来、様々な限界があり、価値の高い自然がある場合は、自然本来の姿をとどめることがまず最優先されなければならない。」
       「干潟周辺の浅場は、干潟と一体となって、底生動物や魚類の高い生産性を維持する機能を有している。浅場を埋め立てることは、浅場から干潟に広がる一連の生態系を分断し、干潟の豊かな生物相にも大きな影響を与えることとなる」
       「仮に環境の質の低いところで実験を行うにしても、人工干潟が定常状態に達するまでに少なくとも5〜10年あるいはそれ以上の期間が必要であり、実験の評価にもこの程度の年月を要すると考えられる。また、一時的に底生動物が豊富になったように見えたり、一過的な底質の変化により特定の種が短期的に大量発生したりすることが過去の例においても見られるが、このような現象も一時的なものであり、いずれ底質環境が定まってくるに従い元の生態系以下の貧相な生態系となっていることにも留意する必要がある。仮に実験を何らかの形で実施する場合であっても、実験規模、期間、場所は、実験のコンセプトを良く検討した上で科学的に決定すべきであり、周辺浅場や干潟の生態学的評価もせずに貴重な干潟・浅場を大規模に使用して実験を行うことは、非常識の誹りを免れない。」

  • 人工干潟実態調査委員会がまとめた「人工干潟の現状と問題点」(1998年12月19日)も参考にしてほしい。この委員会は、世界自然保護基金日本委員会(WWFジャパン)、日本野鳥の会、日本自然保護協会(NACS-J)、日本湿地ネットワーク(JAWAN)、藤前干潟を守る会が設置したものである。

【問9】人工干潟の成功例はあるとみているのか。あるとすれば、それはどこの人工干潟なのか。

     県や市川市は、ふなばし三番瀬海浜公園前の干潟(潮干狩り場となっている干潟)を人工干潟の成功例としてあげている。だが、ここは人工干潟ではない。もともとあった干潟をいちど浚渫し、その後に埋め戻したもので、全国各地で進められている人工干潟とはまったくちがう。
     海浜公園前は、1970年代、もともとあった干潟を浚渫して船橋航路と市川航路を結ぶ「分岐水路」(横引き航路)として利用されていた。ところが波の力が激しく、前面の天然干潟の砂が流れて航路が埋められてしまう。そのため、航路の浚渫をくり返さなければならなかった。また、1974年の台風で、埋め立て地側(公園側)の垂直護岸がいたるところで倒壊した。自然の力にはかなわなかったのである。そのため、県はついに「分岐水路」を廃止し、1979年から2年をかけてここを埋め戻してしまった。その際、公園側をもとの干潟より高く盛り土し、50分の1の勾配で人工海浜をつくった。だが、波の作用で勾配が120分の1になるまでに削られてしまった。この点については、1998年8月20日の『朝日新聞』(千葉版)が次のように記している。
       「かつて公園(船橋海浜公園)に面した遠浅の海を、沖合350メートルにわたって人工海浜とする計画が進められ、大量の土砂が運び込まれた。ところが、数年のうちに土砂は激しい潮の満ち干で削られ、いま残る砂浜はわずかしかない。自然の姿に戻ろうとする三番瀬の力強さの前に、人知はあっけなく敗れた」
     県による人工海浜計画は見事に失敗し、ただの埋め戻しになってしまったのである。このことは、三番瀬においても、人間が思いどおりに人工干潟や人工砂浜をつくることは不可能ということを示している。
     なお、埋め戻し部分の前面に天然の干潟が残っていたために、埋め戻した箇所にも底生生物が生息し、シギやチドリなどの水鳥が飛来したり潮干狩りも楽しめるようになった。埋め戻し部分の干潟に生息している生物は、前面の天然の干潟や浅瀬に比べるとずっと少ない。この点は、たとえば風呂田利夫・東邦大学教授も、「(天然の)三番瀬と比べると生物の種類数、生息量は貧弱である」(『水情報』Vol.18、No.5、1998年)と指摘している。

【問10】人工干潟は失敗例が多く、それをマスコミもとりあげている。『熊本日日新聞』(2001年5月21日)は、千葉県企業庁が「人工干潟は失敗例が多いんですよ」と語ったことも紹介している。こういう報道や証言を重く受けとめるべきだと思うが、どうか。

     人工干潟(人工砂浜)の失敗例が多いことについては、たとえばこんな報道がある。
    • 「〔連鎖の崩壊─新瀬戸内海論〕思い上がり 失敗相次ぐ環境創造」(『四国新聞』1999年3月)
    • 「〔再生への有明海 第2部〕 三番瀬(下) 人工干潟の試み 膨大な費用…管理も難しく」(『熊本日日新聞』2001年5月21日)
    • 「〔三番瀬 保全と再生(中)〕人工干潟 少ない成功例」(『読売新聞』千葉版、2001年9月28日)
    • 「幻と消えた人工砂浜」(2008年3月30日放送のTBSテレビ「噂の!東京マガジン」。前年6月に完成した茨城県稲敷市浮島地区の人工砂浜は、わずか9か月で大量の砂が流失し、無残な姿をさらしている。13年前に造成された土浦市石田地区の人工砂浜も同じ)

【問11】三番瀬は昔と比べると自然環境が悪化した。その最大の原因は、県や市川市などが三番瀬の半分以上を埋め立てたことである。半分以上埋め立てられた三番瀬の環境を改善するためには、干潟を成り立たせていた条件をできるだけ回復することが先決である。そのための具体的方策として、三番瀬円卓会議は江戸川などからの淡水流入を提言した。三番瀬再生基本計画も、「水循環の健全化」や「河川等からの土砂供給を回復」をうたっている。これらのことについてどう認識しているのか。

     三番瀬再生基本計画では次のように書かれている。
       「戦後の埋立てや都市化以前の三番瀬に近づけるため、海と陸との自然の連続的なつながりを回復させ、さらに環境の多様化を進めることにより、多様な生物が生息し、青潮の発生等による環境の急変からの回復力の強い干潟・浅海域を取り戻し、水質の浄化作用等の諸機能の強化を図ることが重要です。そのため、三番瀬の水循環を健全化し、河川等からの土砂供給を回復させ、多様な塩分濃度を有する汽水的な環境を創出し、海と陸との自然のつながる場所を増やし、生物種と環境の多様性の回復を目指します。」

【問12】過去の三番瀬埋め立て計画(市川二期地区・京葉港二期地区計画)において、県は、市川塩浜2、3丁目地先で人工干潟(人工海浜)造成を計画した。そのうたい文句は、「人と海との触れあいの場を確保する」「海の環境の向上が期待できる」であった。この計画は平成13(2001年)年春の知事選で審判を受け、同年9月に白紙撤回となった。これについてどう認識しているのか。

     『ちば県民だより』平成12(2000)年5月5日号は、「自然と人との共生をめざして」をタイトルに掲げ、こう記している。
       「県民のみなさんが自由に海にふれあえるようにします。埋め立てする海域は、ヘドロが堆積し、良好な環境とは言えないだけでなく、海岸が直立した護岸であるために県民の皆さんが自由に海にふれあうことができなくなっています。これらの問題を解決するためには、人工海浜の造成が最も良い方法であると考えています。」

【問13】「人(市民)が三番瀬にふれあえる」ことを目的とするのなら、市川市塩浜1丁目地先の人工干潟を活用すればいい。この点についてはどうか。


【問14】平成26年度第1回専門家会議(9月18日)において、県は「三番瀬の自然環境は単調化が進んでいるから人工干潟の造成を検討する」という主旨の説明をした。「単調化」は三番瀬再生計画(第3次事業計画)」にも記述されている。しかし、三番瀬の自然環境が単調化しているという検証は、これまで一切されていない。逆に、過去の三番瀬自然環境調査結果では、三番瀬の特徴のひとつは自然環境の多様性にあるとされている。この点についてお聞きしたい。

  • 「市川二期地区・京葉港二期地区計画に係る補足調査委員会」が平成12年9月20日にまとめた「環境調整検討委員会意見に対する補足調査専門委員会の見解」より
       「三番瀬周辺では、マクロベントスだけでも平成5〜8年度の4カ年の既存調査で188種類の生息が確認され、多くの種が生息している。このような種の多様性が維持されている要因の一つとして、三番瀬が環境特性の異なるいくつかの水域で構成された多様な環境を有する浅海域であることがあげられる。」
       「生態系の観点から、市川二期計画の猫実川河口域(海域区分1)は、陸域からの汚濁負荷等を蓄積し、浄化するなど、陸域と海域を結ぶバッファゾーンとしての役割があり、エコトーンとして重要な価値がある。また、三番瀬の他の底質が概ね砂質であるのに対し、河口部底質は、泥分が高く、従って生物相も他の場所と異なるなど、多様な環境を保持している。見直し案では、人工海岸として砂を入れ、潮干狩りに適した均質な環境を提示しているが、三番瀬海域の生態系の多様性という観点から猫実川河口部の埋立てについて、どのように考察されたのか。」

  • 県土木部と県企業庁がまとめた「市川二期地区・京葉港二期地区計画に係る補足調査結果の概要について」(平成11年1月)より
     「三番瀬は地形や流況、波浪等の影響による多様な底質環境の特性をもった場で構成され、基本的には以下の5水域(@〜D)に区分された。@は市川側の西側奥部、Aは浦安市埋立地突端から船橋海浜公園前にかけての範囲、Bは船橋海浜公園前から砂堆にかけての範囲、Cは砂堆から浅海域斜面上部にかけての範囲、Dは水深3〜4m以深の沖合域である。このように変化に富んだ環境条件を有していることが、三番瀬の大きな特徴である。」

  • 三番瀬が多様な環境を保持していることについては、その後の三番瀬自然環境総合解析でも否定されていない。たとえば「平成22年度三番瀬自然環境総合解析報告書」は、猫実川河口域をこう評価している。
     「猫実川河口周辺のみに高密度のアナジャコ類等の生息孔やヤマトオサガニ等の希少種が確認され、アサリの確認は比較的少ない等、泥質の浅場に対応した生物相が形成されている。三番瀬海域には泥質の浅場環境を有する区域は他にはなく、生物の生息環境の多様性という面で重要な場所である」

【問15】塩浜2丁目地先の人工干潟造成検討は、市川市塩浜地区のまちづくり(再開発)事業と密接にからんでいる。しかし、この事業は遅れに遅れている。第1期先行地区(約12ha)の事業認可申請はいまだに出せない。第2期以降(約68ha)の事業化は絶望視されている。それでも人工干潟造成検討をどんどん進めるのか。


【問16】三番瀬をラムサール条約登録湿地にする場合は、その前提条件として国指定鳥獣保護区(国設鳥獣保護区)の特別保護地区に指定する必要がある。特別保護地区に指定されると、1haを超える人工干潟造成は規制対象となる(環境大臣の許可が必要)。人工干潟造成は人工改変(埋め立てと同じ)であるから、規制は当然である。県は、そういう自然保護政策に違反することをやろうとしている。このことをどう認識しているのか。また、三番瀬のラムサール条約登録に県が消極的な理由は、「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」で規制対象となっていることをやりたいからではないか。

     「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」第29条第7項の規定により、特別保護地区において建築物その他の工作物を新築・改築・増築したり、水面を埋め立てたり干拓したりする場合は、環境大臣(「都道府県指定特別保護地区」の場合は都道府県知事)の許可を受けなければならないとされている。環境省によれば、人工干潟造成は同項第二号の「水面を埋め立て、又は干拓すること」に該当するとしている。

【問17】世界自然保護基金日本委員会(WWFジャパン)が市川市長に提出した要請書(「東京湾三番瀬の干潟の保全に関する要請」、1999年5月25日)は、三番瀬海域における人工干潟の造成について、「人工干潟は自然干潟におよばない」「造成の費用対効果は割に合わない」「漁場回復や海の再生にはつながらない可能性が高い」としている。この点について、どう検討したのか。

  • 日本自然保護協会が千葉県知事に提出した「三番瀬埋め立て計画(市川二期・京葉港二期)見直し案に対する意見書」(1999年6月17日)もこう記している。
      《三番瀬の干潟・浅瀬の生態系は、その自然誌的な歴史性、浄化機能、生物多様性、人との関わり、景観などどれをとっても人工的な技術で代替できるものではない。人工干潟は、面積・地形等の維持、生物の現存量・多様性、シギ・チドリ類への餌生物供給能力、水質浄化能力、維持等にかかる費用など全ての面で自然の干潟に及ばず、これまでに人工干潟の成功例は報告されていない(人工干潟調査報告書、1999)。》
      《三番瀬は価値の高い自然であり、現存するこのような干潟・浅瀬は、保全することが最優先されなければならない。》

  • 『毎日新聞』(千葉版、2014年1月21日)は、人工海浜「いなげの浜」の砂補給に多額の公費がつぎこまれていることをとりあげ、造成工事にかかわった元市職員が「最後は人工物は自然の力に勝てないのかな」とつぶやいたことを紹介している。そして、最後にこう書いている。
       《自治体財政が潤沢だった「右肩上がり」の時代にオープンした人工海浜。当初のフィーバーはもうなく、静かに海辺の散策を楽しむ場となっているが、その維持が容易でない時代に移ってきている。》





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