大事な自然を下手にいじくらないで!

〜三番瀬保全団体が市川市と交渉〜



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 「三番瀬を守る連絡会」(千葉の干潟を守る会など8団体で構成)は(2009年)8月11日、市川市と話し合い(交渉)をおこないました。三番瀬の人工干潟化などを求める要望書を市川市長が森田知事に提出したため、この件で市長に話し合いを求め、実現したものです。
 市川市は、市長代理の田草川信慈行徳支所長など4人。連絡会は11人が出席しました。

 議題は次の3点です。
  • 市川市長が5月28日に知事に提出した要望書
  • 「自然病む三番瀬……」の大見出しをつけた『広報いちかわ』の記事
  • 市が進めている三番瀬の人工干潟化構想

 以下は、やりとりの概要です。


◆知事あて要望書は再生会議無視では?

◇連絡会
     三番瀬の保全・再生については、県の三番瀬再生会議(市民参加組織)で議論がつづいている。なのになぜ、市川市は再生会議を無視し、人工干潟化などを求める要望書を県知事に提出したのか。これは、市民参加による合意形成の流れを逆戻りさせることではないのか。
◆市川市
     市は、再生会議の中でつねに意見を述べてきた。再生会議は知事の諮問機関である。したがって、知事のほうに要望書を提出するのが筋だ。


◆「自然病む三番瀬」の根拠は?

◇連絡会
    『広報いちかわ』(No.1335)の大見出しに「自然病む三番瀬……」と書いてあるが、どういう根拠にもとづいて「自然病む」としたのか。調査はしているのか。
◆市川市
     いまの三番瀬は、人間にたとえると、とても健康な状態ではない。埋め立て前と比べると環境が悪化している。アサリの漁獲量も減っている。
◇連絡会
     三番瀬を半分近くも埋め立てたのだから、埋め立て前よりアサリの漁獲量が減ったり、環境が悪化するのは当然だ。しかし三番瀬は、埋め立てが終了した後は環境が安定している。埋め立て前の環境にもどすというのなら、埋め立て地を海にもどすべきだ。しかし、それは現実問題として無理があるだろう。
◆市川市
     残っている海をできるだけ元の状態に戻したいと考えている。
◇連絡会
     埋め立て地は元にもどせないということを前提にしているのだったら、埋め立て前と比較すべきではない。また、いま残っている三番瀬海域は、これ以上悪くすべきではない。人工干潟などにすべきではないということだ。そもそも、埋め立てによって三番瀬を痛めつけてきたのは市川市や県ではないか。その反省がみられない。
◆市川市
     浦安市と違って、市川市にはまだ海が残っている。三番瀬を少しでもいい状態にもどすために、人工干潟をつくることが必要だと考えている。青潮がやってくれば生物が死んでしまうというのは、健康な状態ではない。


◆保全策のあり方

◇連絡会
     「健康状態」の干潟であっても、青潮に襲われれば生物は死ぬ。青潮の発生源は三番瀬にあると考えているのか。
◆市川市
     そうは考えていない。
◇連絡会
     アサリの漁獲量が減った最大の原因は埋め立てだ。また、青潮のほか、台風時の行徳可動堰開放による淡水・汚泥の流入も大きな被害をおよぼしている。したがって、まず先に、行徳可動堰の問題などについて対策を講じるべきではないか。
◆市川市
     台風時の可動堰開放はやむをえない場合もある。三番瀬を、そういう自然災害に対して強い構造にしたほうがよい。そのためには、かつてのように浅くしなければならない。少しでも浅くすれば、青潮や淡水流入の被害を少なくすることができる。
◇連絡会
     三番瀬は、埋め立てによって痛めつけられ、また、生活雑排水の流入など陸側からの負荷を受けているが、いまも豊かな自然を維持している。県の補足調査でも、希少種も含めた鳥類が89種、魚類は101種確認されているとか、底生生物やプランクトンも豊富で、13万人分の下水処理場に匹敵する水質浄化能力があるという結果で示されている。


◆「スズガモ大幅減少」の根拠は?

◆市川市
     それは認識している。しかし、たとえばスズガモは大幅に減少している。かつては20万羽もいたが、いまは数万羽しかいない。
◇連絡会
     かつて20万羽いたという根拠はなにか。そういうデータはないはずだ。最高で10万羽くらいいたというデータはある。
◆市川市
     20万羽の根拠は調べてみる。
◇連絡会
     スズガモは、三番瀬にいまも6、7万羽いることが確認されている。葛西臨海公園と行ったり来たりしていて、葛西臨海公園とあわせると、いまも9万羽が飛来する。
◇連絡会
     市議会における田草川支所長の答弁をみると、環境省のガンカモ類生息調査結果をもとにし、「三番瀬のスズガモ飛来数は、2000年には9万8450であったものが、2002年には6万4730、2004年には5万9871、そして2006年には4万9203と減り続け、6年間で約半分になっております」と述べている。しかし、その調査結果をみると、たとえば、1997年度7万2818羽、1998年度4万693羽、2007年度5万1115羽、2008年度4万2554羽というように、年によってかなりバラツキがある。
     しかも、この調査は、年にわずか1回だけの調査である。こういう調査結果だけをみて、大幅に減少しているなどとはいえない。環境省の担当者も、「この数字だけで増減を判断するのはむずかしい」とクギをさしている。
     また、ある野鳥専門家は、「自分も調べているが、環境省の調査より多い結果がでている」と言っている。


◆人工干潟にすれば鳥が増える?

◇連絡会
     人工干潟にすれば、鳥が増えるのか。
◆市川市
     人工干潟をつくれば、鳥は増える。行徳漁協がつくった養貝場(人工干潟)にもシギ・チドリ類がやってくる。
◇連絡会
     市川市がつくったイメージ図をみると、人工干潟ではなく人工海浜をつくろうとしているようにみえる。浅瀬を人工海浜にしたら、鳥は減っても増えることはない。
◆市川市
     市がつくろうとしているのは人工海浜ではなく、人工干潟だ。
◇連絡会
     どういう人工干潟をつくろうしているのか。
◆市川市
     砂干潟もあれば泥干潟もあるなど、多様な干潟をつくりたい。
◆市川市
     いまの猫実川河口域は泥干潟だ。泥干潟は人工ではつくれない。
◆市川市
     そうであれば、泥干潟は残すことを考えてもよい。このように、前向きに考えるべきだと思う。要するに、元の干潟を取り戻すために、少しずつでも努力することが必要と考えている。


◆人工干潟造成に用いる土砂

◇連絡会
     人工干潟造成に用いる土砂はどこからもってくることを想定しているのか。
◆市川市
     航路の浚渫(しゅんせつ)土砂を使えばよい。
◇連絡会
     航路の浚渫土ではまったく不足する。あとはどこから持ってくるのか。たとえば三河湾では、航路浚渫土だけでは不足し、人工干潟造成に必要な砂の入手が困難となっているため、鉄鋼スラグを使用した干潟造成を実験中である。市川市は、そんな状況をどう認識しているのか。
◆市川市
     航路の浚渫土だけでは不足するというのなら、造成の期間はいくらかかってもよい。少しずつやればいい。


◆自然は人間の思いどおりにならない

◇連絡会
     浅瀬に土砂を盛って人工干潟をつくれば、いま生息している生き物は死滅する。下手に手をつけるべきではない。人工干潟をつくれば、生き物が増えたり、環境がよくなると、本当に考えているのか。
◆市川市
     少しでも努力することが必要だ。人工干潟造成もやってみるしかない。いま生息している生き物は一時的に死滅するが、造成後の干潟に新たな生き物が定着する。
◇連絡会
     たくさんの生き物が生息する猫実川河口域でわざわざそんなことをする必要はない。自然は人間の思いどおりにならない。大事な自然を下手にいじくるべきではない。カキ礁があり、泥干潟が広がっている猫実川河口域は手をつけないで残してほしい。
◆市川市
     市川市は、そこ(猫実川河口域)を人工干潟造成の対象地にするとはっきり決めているわけではない。三番瀬の市川側海域の全体を対象にし、少しずつ元の干潟にもどしたいと考えている。
◇連絡会
     三番瀬円卓会議がまとめた「三番瀬再生計画案」においても、猫実川河口域は保存すべきゾーンとしている。


◆船橋側の埋め戻しは人工干潟の成功例?

◇連絡会
     人工干潟の成功例はないはずだ。
◆市川市
     「ふなばし三番瀬海浜公園」前の干潟はどうなのか。ここは人工干潟だ。
◇連絡会
     そこを人工干潟の成功例とみることはできない。「ふなばし三番瀬海浜公園」前の干潟は分岐水路(航路)を埋め戻したものであるが、その前面に天然の干潟が残っていたために、埋め戻した箇所にも底生生物が生息し、シギやチドリなどの水鳥が飛来したり潮干狩りも楽しめるようになった。しかし、この箇所に生息している生物は、前面の天然の干潟や浅瀬と比べると、ずっと少なくない。また、ただの砂浜となっている部分には、底生生物はまったく生息していない。
◆市川市
     とにかく、いまの状態がいちばんいいとは思っていないので、少しずつでも努力すべきだと考えている。


◆現存する湿地の保全維持を優先すべき

◇連絡会
     ラムサール条約の「湿地復元の原則とガイドライン」は、現存する湿地(干潟など)の保全維持を優先すべきとしている。それは、現存する湿地の機能を上回るものは人工的にはつくれないという世界の実例から導き出されている。したがって、三番瀬のように生物相が豊かな海域は手をつけず、ほかで再生を検討すべきだ。
◆市川市
     三番瀬をできるだけ元の状態にもどしたいというのが市の考えだ。
◇連絡会
     「市民が海に親しめるようにする」ということだが、たとえば江戸川放水路は東京湾の入り江(海の一部)となっており、そこに干潟にはたくさんの生き物がいる。現に、市川市自然博物館はそこで散策会を実施しており、博物館の広報紙には、放水路の干潟に海の行き物がたくさん生息していることや、散策会に参加した大人や子どもが感動したという報告がされている。ここを、市民が親しめる海として活用してほしい。
◆市川市
     そのことは承知している。
◇連絡会
     市民が入れる場所を目的に人工干潟をつくると、ステレオタイプの砂浜になってしまう。そうではなくて、泥干潟は泥干潟としてのつきあい方がある。たとえば、ハゼがたくさん釣れる。
     だから、泥干潟の猫実川河口域は保存すべきだ。砂干潟がほしいということであれば、砂干潟の養貝場(人工干潟)を活用すればいい。また、船橋側の砂干潟を利用することも考えるべきだ。(船橋側の砂干潟の一部は市川市の行政区域となっている)

□          □

 以上です。
 結局のところ、田草川支所長らは、私たちの言い分をある程度認めながらも、「いまの状態がいちばんいいとは思っていないので、少しずつでも努力すべき」「元の状態に近づけるために人工干潟化が必要」と言い張りました。人工干潟にすれば三番瀬を「元の状態」(埋め立て前の状態)に戻せるという根拠はいっさい示さずに、です。
 その背後には、猫実川河口域に面する塩浜地区の再開発と一体でこの海域を人工ビーチにしたいという本音が見え隠れです。

 とはいえ、三番瀬問題で市川市と初めて話し合いを持ち、保全団体と市川市がそれぞれの考えや主張を言い交わしたことは大きな意義があったと思います。1時間という制約がありましたが、市の発想の問題点がかなり浮き彫りになりました。








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