三番瀬・猫実川河口域は

“命はぐくむ海のゆりかご”

〜2008年市民調査報告会〜



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 三番瀬市民調査の会は(2008年)12月6日、2008年の調査報告会を船橋市内で開きました。参加者は50人です。
 同会は、2003年から猫実川河口域の調査をつづけています。この海域が、「三番瀬再生」や「海辺再生」の名で人工干潟(人工海浜)造成の対象にされているからです。
 調査には全国の市民団体や研究者の協力も得ています。調査の結果、この海域は多種多様な生き物が生息する豊かな海であることを確認しています。
 調査項目は次のとおりです。
  • 生き物
  • 酸化還元電位
  • 強熱減量
  • 粒度組成
  • アナジャコ類の巣穴数
  • カキ礁の形成と生物群
  • 塩分濃度
  • 堆積傾向
  • 二枚貝の生息状況
  • マガキの重金属分析



◆“東京湾のゆりかご”を証明

 猫実川河口域では大潮の干潮時に30ha以上の広大な泥質干潟が現れます。2008年の調査では動物59種、植物11種(ほかに野鳥23種)を確認しました。2004年以降では動物132種、植物16種(同33種)を確認したことになります。
 ちなみに、千葉県が2004年11月から05年7月にかけて実施した生物調査結果では、動物195種、植物15種が確認されています。そのなかには、県レッドデータブックに掲載されている希少種も、ウネナシトマヤガイ、エドハゼなど11種が含まれています。
 まさに、ここは三番瀬の中でもっとも生物の多い海域です。稚魚の産卵・育成場でもあり、“東京湾のゆりかご”となっていることが証明されているのです。


◆「ヘドロの海」ではない

 猫実川河口域について「人工干潟にすべき」とか「埋め立てて森林公園をつくるべき」と主張している人たちは、この海域を「ヘドロ化している」と言います。
 しかし市民調査の結果、この海域はヘドロ化しておらず、むしろ逆に年々酸化的傾向が強くなっていることが明らかになっています。

 酸化還元電位は、夏場に一部の地点がマイナスの値になるものの、大部分の地点はプラスの値です。
 酸化還元電位は、底泥に酸素がたくさんあるかどうかを表すモノサシです。電位の値がプラスを示せば酸素が多いということを、マイナスは酸素が少ないということを表します。大部分の地点がプラスの値ということは、猫実川河口域は全体的に酸素が豊富で、生き物が生息しやすい環境であることを示しています。

 次に、強熱減量の測定結果も2〜7%です。
 強熱減量は底泥を強熱した際の減少量であり、主として有機物等の燃焼によるものです。値が大きいほど有機物の量が多いことを示します。通常の底質は13%以下であり、これを超えると「ヘドロ化している」といわれています。

 こうした酸化還元電位と強熱減量の測定結果は、千葉県が1996年から3年かけて実施した「補足調査」の結果とほぼ一致しています。ようするに、猫実川河口域は「ヘドロの海」ではないということが科学的に実証されているのです。


◆干潟のすみずみに酸素を送り込むアナジャコ

 猫実川河口域にはアナジャコが広範囲に生息しており、1uあたり100〜600個の巣穴数を数えています。アナジャコの巣穴はYの字をしていますので、1uあたり50〜300匹のアナジャコが生息していることになります。

 NHKテレビ「アインシュタインの眼」の「多摩川河口の不思議ワールド」(2008年12月9日放送)が内視鏡カメラでアナジャコの巣穴を撮影したところ、アナジャコは腹部の鰭(ひれ)を盛んに動かして巣穴の中で水流を起こしています。そのため、巣穴の中は酸素が豊富です。酸素濃度計による測定結果は37%でした。こうしたアナジャコの生態観察にもとづき、同番組はこう結論づけました。
     「アナジャコの巣穴には十分な酸素が行き渡っている」
     「アナジャコは上のほうの海水を巣穴に引き入れて、酸素をたくさん含んだ海水を干潟の中に循環させてくれている」
     「アナジャコの巣穴は、水流を起こし、干潟のすみずみにまで酸素を送り込む自然の装置だ。こうして、多くの生き物が生きられる干潟の豊かさが保たれている」
 そんなアナジャコが猫実川河口域にはたくさん生息しているのです。そうした海域が「ヘドロの海」であるはずはありません。


◆カキ礁の掘削調査

 報告会では、猫実川河口域が堆積傾向にあることなどの調査結果も報告されました。

 また、2008年は東京大学大学院の大路樹生研究室の協力を得てカキ礁の掘削調査をはじめておこない、その結果を大学院生の久保さんが報告しました。
 この調査は、カキ礁の中心部を掘削し、カキ礁が形成された年代や、カキ礁に付随する生物群がどのように変遷するのかを把握しようとするものです。表面から深さ60cmまで掘削し、深さ50〜60cmと深さ20〜30cmの2カ所でカキや付随する生物・泥を採集しました。カキに付随する生物には二枚貝類や巻貝類、そして泥の中には底生有孔虫類や貝形虫類が存在すると予想されています。現在、これらを詳細に分析中です。

◇           ◇

 質疑討論では、とくにカキ礁掘削調査結果について多くの質問がだされました。報告会のあとの懇親会では、「たいへんレベルの高い調査であり、驚いた」「中身が濃い」などの声とあわせ、「調査結果をいろいろなところに知らせてほしい」という要望が相次いでだされました。










報告や質疑を熱心に聞き入る参加者




東京大学の大路研究室が作成してくれたカキ礁の地図




大路研究室の久保さんは、カキ礁掘削調査の分析結果(分析中)を報告。
「未解明の点が多く残されている」とことわったうえで、
「航空写真や放射性炭素による年代測定の結果、猫実川河口域のカキ礁は
この約20年間に形成されたのではないか?」との仮説を述べた。




猫実川河口域の泥質干潟の酸化還元電位などを調査しているメンバーは、
「酸化還元電位(夏季)の値は増加傾向」「シルト・粘土分は減少傾向」
「強熱減量は減少傾向」との分析結果を発表した。





「泡瀬干潟大好きクラブ」の水野隆夫代表も沖縄から参加。
沖縄地裁が泡瀬干潟埋め立て事業費の支出差し止めを命令したことなどを報告し、
保全運動への支援を訴えた。








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