東京湾の奇跡「巨大カキ礁」がつぶされる!!

〜『サンデー毎日』が三番瀬問題をでっかく報道〜




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 週刊誌『サンデー毎日』(2005年7月24日号)が、三番瀬・猫実川河口域のカキ礁と、この海域をつぶす「人工干潟」造成計画をでっかくとりあげています。きれいなカラーグラビア(3ページ)と4ページにわたる記事です。

 記事のタイトルは、「“埋め立て中止”の三番瀬に『人工干潟』計画?!──東京湾の奇跡『巨大カキ礁』がつぶされる」。カラーグラビアのタイトルは、「危機迫る──“江戸前”自然のワンダーランド」です。
 執筆はルポライターの永尾俊彦さん。写真は同誌のカメラマン・内林克行さんです。二人は、6月25日の市民調査を同行取材されました。

 グラビアの写真は、猫実川河口域のさまざまな生き物や市民調査の様子を生き生きと伝えています。また、記事も、三番瀬・猫実川河口域をめぐる状況を的確にとらえています。
 以下、記事の一部を紹介させていただきます。



『サンデー毎日』2005年7月24日号より抜粋

【グラビア】

危機迫る
〜“江戸前”自然のワンダーランド〜

 東京湾の干潟・三番瀬の猫実川河口(千葉県市川市沖)で、三番瀬市民調査の会(青山一代表)が、国内最大級ではないかと見られる5000平方メートルに及ぶ「カキ礁」を確認、6月25日に生物などの調査を行った。
 潮が引くと現れたカキ礁は、カキとカキがくっつきあって塔のようにそそり立ち、干潟から80センチほどの高さになっているところもあった。
 固く閉ざされたカキの殻をドライバーでこじ開けるとプリプリと肥えた身が現れた。死んだカキの殻はエビやカニ、ハゼなどの稚魚のすみかになっていた。また、殻の内側に、江戸前天ぷらのネタとして珍重されるギンポ(銀宝)の卵塊がびっしりと産み付けられているものもあった。
 浦安のディズニーランドのすぐそばに、こんな自然のワンダーランドが残されている。だが、市川市や地元漁協は、この海域を「ヘドロの海」だとし、埋め立てて人工干潟にすることを提唱している。“江戸前”の生き物の宝庫は失われてしまうのか。





【記事】

“埋め立て中止”の三番瀬に「人工干潟」計画?!
〜東京湾の奇跡「巨大カキ礁」がつぶされる〜

 東京湾三番瀬で巨大なカキ礁が確認され、豊かな生態系が形成されていることが分かった。三番瀬の埋め立て計画は中止されたのに、地元の市川市はここを「ヘドロの海」として、人工干潟を造成する計画を公表した。“東京湾の奇跡”はつぶされてしまうのか?

◇           ◇

 カキ礁から50メートルほどの対岸は浦安市の埋め立て地で、高層マンションが林立。この浦安地区を、千葉県は1960年代から70年代に東京湾に約3キロも突き出る形で埋め立てた。そのため、猫実川河口域は潮の流れが遅くなり、「ヘドロの海」「死んだ海」になったと市川市や地元漁協は主張する。そして、砂を入れて人工干潟を造り、砂浜が円弧を描くようにすれば潮の流れが戻り、ノリ養殖に良くなり、砂地を好むアサリも育つ、と言うのである。

 同市の千葉光行市長は、千葉県に何回も埋め立ての要望書を出している。その主張の骨子はこうだ。
 「猫実川河口を三角形の頂点にヘドロのたい積しているところがあり、(中略)漁業者も海の再生を望んでいます」
 「海の再生につながる埋め立てというと逆説的に聞こえますが、環境を保全し、環境と共生できる許される範囲の埋め立てというのがあるはずです」(『広報いちかわ』99年3月13日)

 これは、01年に千葉県が埋め立て計画を撤回する以前のものだが、「埋め立て」が「人工干潟」になった点を除けば同市の基本的な考え方は今も変わっていない。
 だが、「人工干潟」とは砂を入れて干潟を造成することで、実質的には埋め立てだ。
 これはおかしいと感じた市民が「調査の会」を結成。「『ヘドロの海』と言うが、本当にそうなのか。実際に干潟を歩いて確かめよう」と、2年前から始めたのが市民調査だ。


●カキ礁は生態系の要石

 水は「これが東京湾?」と思うほど澄んでいる。カキ礁研究の第一人者、鎮西清高・京大名誉教授によれば、15センチほどのカキの成体1個が、1時間に20〜30リットルの水をこす。アサリ1個が1時間にこすのが1メートルと言われているので、驚異的な浄化力だ。

 正午前、カサ礁が全貌を現した。カキ礁は、カキとカキがくっつきあって密集してできている。広さは50メートルプール5個分に相当する5000平方メートル。
 カキの固まりをイカダに持ち帰ってこじ開けると、丸々と肥えた身が現れた。死んでいるカキの穀も、エビ、カニ、ハゼなどの稚魚のすみかになっている。江戸前てんぷらの「幻のネタ」と言われるギンポ(銀宝)のクマゴが、内側にびっしりと産み付けられているものもあった。
 さらに、カキとカキのすき間には、千葉県のレッドデータブックで「非常に危機的」とされるウネナシトマヤガイが密集していた。ウネナシトマヤガイは、西隣の相模湾ではすでに絶滅してしまったという。その希少種が、この場所ではまだ生き残っている。生物たちはこのように、カキ礁の空間を実に巧みに「有効活用」しているのだ。

 海洋生物学が専門の同会の高島麗(うらら)さんによれば、干潟に比べるとカキ礁の表面積は50倍もあるという。
 「高層マンションのようなもので、デコボコの多い立体構造になっているため、さまざまな生物がすみかにします。カキ礁は、豊かな生態系を支える要石(キーストーン)の役割を果たしているんです」

 周辺の干潟には、ヤドカリの仲間のアナジャコの巣穴が無数にある。体長わずか5センチほどのアナジャコが、3メートルの巣穴を掘る。そして、地中にも酸素を送り込んで底質のヘドロ化を防いでいるそうだ。

 同会の調査では、これまでカキ礁周辺で100種類を超える生物が確認されている。大都会と京葉工業地帯を背景にした海で、これだけの生物がまだ生きているのだ。


●「再生」という埋め立て

 三番瀬も70年代に埋め立てられる計画だった。しかし、市民の懸命な保全運動によって辛くも埋め立てを免れた。そして、「三番瀬埋め立て計画白紙撤回」が唯一の選挙公約だった堂本暁子氏が01年に知事に当選、同年9月、計画は撤回された。
 その後、堂本知事は「三番瀬再生計画検討会議」(円卓会議)を設置した。円卓会議は02年から2年間で総計163回も開かれた末、04年1月に「三番瀬再生計画案」を堂本知事に提出した。この円卓 会議だけに、千葉県は3億円もの巨費を投じた。

 市民が参加して公共事業の計画を作り上げたわが国で初めての試みを、堂本知事は「ジャパンモデル」と胸を張った。確かに、「住民参加」「情報公開」の円卓会議で公共事業案を決めた点は画期的だ。また、再生案も「海域をこれ以上せばめないこと」が原則とされ、猫実川河口も「貴重な泥干潟を保全するゾーン」とされた。

 ところが、である。
 円卓会議の案をふまえて、今年4月に千葉県が発表した「三番瀬再生基本計画素案」では、猫実川河口の保全は明記されていなかった。

 さらに6月25日、市川市は猫実川河口に砂を入れて人工干潟化する「市の提案」を示した。人工干潟の規模は今後の県の検討次第なので明示されていないが、護岸の高さは高潮対策を考えて5.4メー トルとされている。

 砂が流されない砂浜の傾斜は1対100程度と言われているので、推計すると約500メートルも沖合まで砂を入れることになると市民調査の会は見ている。となると、河口から500メートルにあるカキ礁もつぶされる。

 円卓会議の後継組織である「三番瀬再生会議」は6月30日、県の「素案」を諮問した堂本知事に対し、修正意見などを答申した。だが、その中に猫実川河口の保全は「評価が分かれた」ことを理由に盛り込まれなかった。

 私は市川市行徳臨海対策課を訪ね、「円卓会議の案には、猫実川河口の保全が明記されているのに、そこを人工干潟にする市の計画は矛盾するのではないか」と聞いた。
 栗林正春主幹は、「(円卓会議の案は)両論併記的な面もあり、固まったものではないので、砂を入れても矛盾しません」と答えた。
 なぜ市川市は人工干潟を造りたいのか。市民調査の会のメンバーは、その狙いを「『三番瀬』の名前をダシに、地域開発をしたいのでしょう。『第二のお台場』を狙ったもの」と推測した。東京の人工海浜・お台場のようなこぎれいなビーチがあれば、今は工場や倉庫で殺伐とした市川市の海岸沿いの再開発もしやすいという狙いだ。

 自然「再生」という名のもとに、埋め立て開発が行われようとしている。
 だが、沖合漁業の漁民には、稚魚の産卵の場をつぶす人工干潟に反対する人が少なくない。船橋漁協元組合長の大野一敏さんは「海にいろいろな生き物がいないと漁業は成り立たない。あそこが埋まったら、ゲームオーバーだ」と言った。


●「二湾隠し」が問題の核心

 自然保護団体は、猫実川河口域の問題の核心は「二湾隠し」だと指摘する。二湾とは、東京都大田区から千葉県市原市までの約50キロを結ぶ「第二東京湾岸道路」のことだ。
 三番瀬以外の用地はすでに確保されており、埋め立て計画があった当時は、三番瀬を通す予定だった。計画が白紙撤回されて第二湾岸は宙に浮いているが、人工干潟で埋め立てれば建設しやすくなる、というのである。
 堂本知事は、第二湾岸は必ず造ると明言している。となると地下を通すか、高架にするかだが、どちらでも三番瀬への影響は必至だ。だからこそ、円卓会議では何人もの人が「第二湾岸の問題を議論すべきだ」と提起したのだ。

 しかし、岡島会長らは「第二湾岸を議論できる委員構成ではない」として議論させなかった。
 堂本知事は『生物多様性 生命の豊かさを育むもの』という本を書いており、生物への思いは人一倍ではないのか。昨年1月、最後の円卓会議の後で私は、堂本知事に「三番瀬に砂を入れると生物が生き埋めになるが、生物多様性の専門家としてどう考えますか」と直接聞いた。それに対して堂本知事は正面から答えるのを避けた。「生物学より、生物多様性条約が専門ですから……」

 埋め立てを中止し、干潟を守る決断をしたということは、今まで人間の都合だけで自然を改変してきたこととを反省し、生物の声に耳を傾け、生物と共に生きるということだろう。

 東京湾の「豊かな貝類を育む偉大な水辺」の象徴であるカキ礁と共に生きるまちづくりこそ、千葉県と市川市の個性を際立たせるのではないだろうか。




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