★三番瀬再生計画素案に対する意見


猫実川河口域の生物相は藤前干潟よりも豊か

なぜ、そんな海域をわざわざ人工干潟にするのか

〜名古屋市・小嶌健仁さん〜




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 三番瀬再生計画素案に対し、県外からも多数の意見が寄せられました。そのうち、名古屋市の小嶌健仁さんの意見を要約して紹介します。
 小嶌さんは、「人工干潟の現状と問題点」をまとめた「人工干潟実態調査委員会」の一員です。この調査報告は、藤前干潟の埋め立て中止に大きな影響を与えました。
 小嶌さんは、三番瀬(猫実川河口域)の市民調査にもゴムボート持参で参加されました。


意見書




「三番瀬再生計画素案」についての意見



名古屋市 小嶌健仁



◆具体的な部分についての修正等の意見
 第1章と第2章では、猫実川河口域は重要であり保全すべきである、という記述が随所に出てきます。ところが、この記述に反し、「市川市塩浜2丁目の改修護岸前面の干出域化」の提言がされています。これは、第1章、第2章の記述を無視した提言です。156ページ8行目の「市川市塩浜2丁目の改修護岸前面の干出域化」は削除していただきたい。

 また、109ページの市川市塩浜2丁目の護岸イメージ図(断面図)も削除していただきたい。
 97ページに「現在の海岸線は基本的に動かさないこと」、98ページに「この区域はできるだけ海に張り出さない構造としつつ」という記述があるにも関わらず、図で示されているのは、海側に張り出した石積み護岸です。さらに、その先へ土砂を投入するという環境破壊型のプランでしかないと思われます。

◆全体にわたる事項についての意見

 第1章、第2章の随所に出てくる、猫実川河口域は重要であり保全すべきである。という記述に対して、提言では「市川市塩浜2丁目の改修護岸前面の干出域化」といった記述がありますが、どういう経緯で、あるいは判断でそのような提言になるのでしょうか。
 少なくとも素案を初めから読んでゆくかぎり、猫実川河口域については、「重要であり、保全べき」とあるにもかかわらず、提言には、20世紀型とも言える、「環境破壊型公共事業」の見本のような、 現在の護岸の全面に石積み護岸、さらにその前には土砂を投入して干出域を作る、という理解しがたい内容が示されています。
 素案の、三番瀬の現状、生態系、環境といった項目に、生物種の多様性に関して、少なくとも7カ所、種の多様性を維持するうえでの重要性、餌資源の供給源としての重要性、三番瀬で唯一とも言える泥質環境など、猫実川河口域の重要性が指摘されています。

  p.28 猫実川河口周辺域は、泥質域が作られ、三番瀬内では唯一
     の泥質環境となっています。
  p.33 ウ)猫実川河口域の底生生物相 の項
     ...三番瀬の生物多様性の保全において特に重要な場所と
     考えられます。...
  p.33〜34 3)魚類 の項
     ...餌としては主に甲殻類と多毛類で、浅海域に仔稚魚が
     多く来遊する春に、猫実川河口域及びその周辺を中心に多
     量に発生しています。
  p.58〜59 イ)餌生物 の項
     ...餌として重要なアリアケドロクダムシも春に猫実川河
     口域及びその周辺を中心に多量に発生し...
  p.77〜78 4)その他 の項
     ...補足調査ではこの海域の底生生物が魚類の仔稚魚の重
     要な餌資源となっているという点や、三番瀬の種の多様性
     の維持の視点からこの海域の重要性も指摘されています。
     ...
  p.85 ...三番瀬に多様な水・底質環境が存在していたからこそ、
     三番瀬の生物多様性が維持されていたと考えられるのです。
     ... 
  p.86〜87 ...泥質で汽水域の生物が生息する干潟・浅海域は猫
     実川河口域と江戸川放水路河口右岸部分にわずかに存在す
     るに過ぎません。...


 さらに、環境への影響に関しての記述にも、少なくとも4カ所、現在の猫実川の環境を改変することの危険性や、環境の回復に当たっての留意事項があります。

  p.42 一方では現在の泥干潟を砂浜に変えることは生物や環境の
     多様性を失わせることにもなります。...(以下3ページに
     続く)
  p.43 環境の多様性の回復に当たっては、人工的に環境をつくり
     あげるというよりは、海と陸との連続性の確保でも述べた
     ように、河川を通じた淡水と土砂の供給、地下水を通じた
     淡水の供給など、健全な水循環と土砂供給をとりもどすこ
     とこそ、究極の目標であることを忘れてはなりません。
  p.87 1)海域をこれ以上狭めないことを原則として三番瀬の再
     生を実施する
     ...浅海域を干出域につくりかえることが、干潟の機能を
     支え補強している貴重な浅海域をつぶすことにもなること
     を忘れてはならないのです。...
  p.89 5)多様な底質環境を保全し、創出する
     ...多様性を失って、均一な砂質の底質環境となりつつあ
     る現三番瀬において、泥質であり汽水域の生物が多数生息
     している猫実川河口域、そして市川航路市川側・船橋航路
     跡周辺の貝殻質干潟、さらには三番瀬中央部の砂質の底質
     環境はまず保全すべきです。...


 このように、「重要性」「まず保全すべき場所」という指摘が随所にあるにもかかわらず、護岸改修により海域を狭め、土砂の投入により泥質域を砂質化しようとする提言は、理解できません。
 かつて、私の地元、名古屋市の藤前干潟においても最終処分場の建設計画がありました。名古屋市の出した代替措置としての人工干潟造成プランは、環境省(当時環境庁)に 「現在ある良好な環境の干潟を使って人工干潟の実験を行うなどもってのほかである」と厳しく批判されました。
 私は、かつて藤前干潟の底生生物調査に協力しておりました。(このような言い方も変ですが)現在ラムサール登録地となっている藤前干潟の生物相よりも、猫実川河口域の生物相ははるかに豊かなものです。何故、その環境にわざわざ手を入れる提言をされるのでありましょうか。
 市民調査に同行し観察したところ、現在の猫実川河口域は生物の多様性の面からも、浅海域としての役割の面からも、改変の必要を感じない状態でありました。むしろ、人間が手を加えることで、現在の状態を悪くする可能性の方が大きいと思えます。

 以下、いくつかの点で、改変の必要がないと私が考える理由を述べます。
  1. 自然に復元してきた環境が安定している猫実川河口域をかく乱する必要はない。

       猫実川河口域には、数ヶ所の天然のカキ床ができ上がっています。市民団体の調査では「カキ殻島」となっていましたが、実際には、泥干潟に定着したカキが、死亡したカキの殻に着底し(カキの殻は、薄い殻の重なった構造で、泥干潟に「浮き」ます)、何代にもわたって繁殖した結果このようなカキ床が発達しているということです。その大きさからみても、少なくとも10年以上は、この海域が安定している。ということだと考えます。

  2. 土砂の投入で作ろうとしている環境は、現在の泥質域を数年間かく乱するだけで、砂質域の創出には至らない可能性がある。

       上記に述べたように、現在の猫実川河口域は安定した状態であるといえます。すなわち、「人間が海域を狭め、静穏化し、河川からの淡水の流入が減少した」という環境にあわせて復元してきた環境です。したがって、砂を投入したところで、シルト、粘土分が堆積してゆき、数年で泥質域に戻る可能性もあります。
       三番瀬のとなり、葛西人工海浜(西なぎさ)では、市民に開放する目的で砂を投入して人工海浜を作りましたが、アサリが定着したのは数年。荒川、江戸川からのシルト、粘土分が堆積し、シオフキガイが大量に発生し、アサリは激減、泥質化した砂を入れ替えるという事態に至ったはずです。猫実川河口域でも同じことになる可能性も否定できません。
       つまり、安定している現状に、砂を投入するなどという環境かく乱行為は止めたほうがよいと考えます。

  3. 猫実川河口域に土砂を投入するとしたら、どこから土砂を持ってくるのか?

       猫実川河口域の干出域化、という名目で、別の場所の山を切り崩すといった行為は慎まねばなりません。浚渫泥はどうか、というと、すぐに使う事は実質不可能です。航路、澪(みお)の部分は、嫌気的環境になりやすく、いわゆるヘドロ状態になっていると考えられます。それを直接浅海域に投入すれば、人為的に、青潮、もしくは大雨により河川底部に堆積した嫌気状態の泥分が流入して、底生生物にダメージを与える状況をつくることになります。
       土砂の供給元の問題は素案には書かれていなかったと思いますが、この問題はどうするのでしょうか。





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