「再生の概念」について論議

〜第7回三番瀬「専門家会議」〜



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 8月3日、三番瀬「専門家会議」(三番瀬円卓会議の下部組織)の第7回会合が千葉市内で開かれました。
 この会議の構成員は専門委員9人です。しかし今回は、特別にその他の委員(小委員会の委員も含む)も出席でき、拡大専門家会議として開かれました。
 議題は次のとおりです。
(1)再生の概念
(2)海域小委員会からの検討依頼事項
 ・護岸が海域に与える影響
(3)その他
 会議時間は予定より50分延長になり、3時間20分です。そのほとんどを(1)の「再生の概念」に費やしました。



●「再生の概念」議論のいきさつ
   〜きちんと議論すべきという批判を反映〜

 今回の専門家会議で「再生の概念」が議題となったのは、こういういきさつがあります。
 昨年末にまとまった円卓会議の「中間報告」には、再生の概念が次のように書かれています。
 「三番瀬の再生においては、まず埋立計画が行われなくなったことの影響に対する手当を行う。そして、環境が悪化しているところがあれば正していく。これらにより、三番瀬の環境を維持・回復する。さらにそれを地域の向上につなげていく。これを実現するためには、可能な限り客観的データに基づいて、生態系・物質循環・食物網・水循環・流砂系・人間活動などがシステムとしてなめらかに働き、生物多様性が確保されるように努力する。この活動は市民・NGO・漁業者・利用者・行政・研究者などの友好的な協力(パートナーシップ)によって行われるものである。また、同時に、この活動を通じて三番瀬の将来を担う人材育成を行っていく」
 この再生概念は、円卓会議できちんと議論されたものではありませんでした。したがって、合意もされていません。自然保護団体などはこの点を問題にし、きちんと議論すべきということを再三にわたって要請しました。また、「まず埋立計画が行われなくなったことの影響に対する手当を行う」という記述はおかしいと批判しました。
 こうしたことから、「再生の基本的な考え方」や「再生の概念」をきちんと議論することになり、今回の拡大専門家会議が開かれました。

◇           ◇

 今回の会議では、三番瀬の自然環境の現状や再生の目標、流域の水循環確保などについてさまざまな意見が活発にだされました。
 円卓会議は、当初から猫実川河口域の扱いが最大の焦点となっています。すなわち、ここは三番瀬にとって大事な海域なので保存すべきという意見と、砂を入れて人工海浜(干潟)をつくるべきという意見の対立です。
 今回の会議でも、この点がひとつの争点となりました。ここでは、そのやりとりを紹介します。


●「猫実川河口域は三番瀬水生生物の最後の生き残り部分である」

◇望月賢二委員(千葉県立中央博物館副館長)

 「猫実川河口域はつねに議論されるが、ここは、底泥データでみると平成に入ったあたりからほぼ安定している。この部分は三番瀬の水生生物の最後の生き残りの部分になっている。こういう点では、非常に貴重な部分である。それから、行徳内陸性湿地も重要な要素を残している。この内陸性湿地や江戸川放水路と三番瀬全体の関係をどのようにしていくかが、水循環系の構造をつかむうえでポイントになる」
 「三番瀬の再生を考えるうえでは、まず、そういう自然のしくみを理解することが必要である。そのうえで何をめざすのかを議論すべきだ。生物多様性といっても、単に種類数が多ければよいのか、あるいは、干潟特有の昔のような自然環境というものを回復するのかによってちがう。それぞれの生き物は必要としている環境がちがう。総体として目標とすべき環境がきまってくる」
 「いずれにしても、ポイントは汽水域、つまり生き物が海水と淡水の間を行き来できるような自然環境をつくることだ。これを抜きにして生物多様性は考えられない。さらに、その受け皿として、後背湿地の存在がある。そういう構造をどう考えるのか。それを明らかにすれば、どこを問題にすればよいかがわかる。問題がわかれば具体的な対策が洗い出せる。これが手順として必要なことだ」
 「今までの円卓会議の議論でいちばん遅れていたのは、こうした自然のしくみである。三番瀬が本来もっていた自然を明らかにし、それが何によって壊れたから再生の必要がでてきたのかを検討することが必要だ。きょうの会議はそれを中心に議論していただきたいと思う。人との関わりについての議論は、その次のステップになる」


●「かつての三番瀬にいたような生物相の復元を目標とすべき」
  〜つまり、猫実川河口域は人工干潟にすべきということ〜

◇岩田博武委員(コンサルタント会社社員)

 「私は護岸・陸域小委員会に属している。小委員会でここ1年ずっと議論してきて、みんなの意見はそう大差ない。しかし、どうしてもここだけは、というのがある。それが一致できれば、みんなの間で意見の不一致はあまりないと思われる」
 「それはなにかというと、再生すべき生物相をどこにおくかということだ。これが決まれば意見の差はなくなる。したがって、この専門会会議では、めざすべき生物相をどこにおくかということを検討してほしいし、みんなで合意できればと思う」
 「それで、私が問題にしているのは、猫実川河口域の泥干潟である。ここはすごく大切という意見もある。この海域は散々いじめられたのだから泥干潟になって当たり前という意見もだされている。しかし、これが昔の三番瀬かといえば、決してそうではない。昔の海岸地形をみても、ここに泥ができる要素は何もない。つまり、現状を追認するのか、それとも、どういう生物相を目標におくのかということが問題となっている。私は、めざすべき生物相としては、かつての三番瀬にいたような生物相にすべきと考える。そういうことを目標にしてほしい。そうすれば、おそらく簡単に意見は一致するのではないかと思う」


◇柿野 純氏(千葉県水産研究センター富津研究所所長)

 「岩田委員が、かつての三番瀬の生物相を再生の目標とすべきと言われたが、まったくそのとおりだと思う。その場合、いつごろまでに遡るのかということが問題になる。今の三番瀬の地形になった時点か、それとももっと前の昭和30、40年代までとするのか。しかし、昭和30、40年代まで遡るのは現実ではない」


◇磯部雅彦委員(東京大学大学院教授)

「岩田委員は猫実川河口域をどうするかについて発言されたが、この問題以外は大きな対立はない」

(文責・千葉の干潟を守る会)   






コメント



 9月に再生計画の素案をまとめるというのに、いまごろ再生の概念や目標を議論しているのですから、はっきり言って遅すぎます。しかし、この問題をはっきりさせないまま、しっかりした再生計画はつくれません。骨なしになってしまいます。
 ところで、三番瀬の現況調査に深く関わっている望月賢二委員の指摘は重要です。望月委員は、猫実川河口域について、「この部分は三番瀬の水生生物の最後の生き残りの部分になっている。こういう点では、非常に貴重な部分である」と重要な指摘をしました。
 望月委員は「三番瀬再生の概念(案)」という文章を配布されましたが、それには同海域についてこう書かれています。
「(三番瀬は)水循環系の仕組みが失われたため、放置した場合、大部分が中長期的には砂浜海岸化するとともに、それに対応した生態系に移行する可能性が高い。ただし、猫実川周辺は、波や流れの点での静穏性が高いことから、泥質域として維持され、干潟特有の生き物の生き残り場所になる可能性が高い」
 猫実川河口域はこんなに重要な海域です。このことは、私たち自然保護団体の市民調査でもかなり裏づけられています。

 一方、岩田博武委員は、「現状追認」ではなく、かつての生物相にもどすべき、と主張しています。つまり、猫実川河口域に砂をいれて人工干潟をつくり、昔の三番瀬のような干潟環境にもどすべきというのです。県水産研究センター富津研究所の柿野純所長も岩田委員の主張を支持しました。

 この点については、これ以上つっこんだ議論がされませんでした。結果的に、「再生の目標」の最大の焦点は、今回もあいまいにされたままです。
 ある傍聴者は、「委員はみんな、真剣に議論している。教えられる点もたいへん多い。しかし、どこかしっくりしない」と言いました。それは、「今の三番瀬海域をそのまま残したうえでよりよい自然環境をめざすのか、それとも、海域の一部に砂を入れて人工干潟(海浜)にすることを再生の目標にするのか」という根幹部分に決着をつけられないからです。






 

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